(*゜Д゜*)赤面新聞

本当の危機はどこにあるか? 中国IT産業振興計画の狙い <COLUMN1>
 世界同時不況のなか、中国は4兆元(約60兆円)の景気対策を打ち出すと同時に、個別産業の振興策を相次ぎまとめた。情報通信分野に関連する産業振興計画も発表され、その内容が注目されている。世界との競争を余儀なくされる中国の情報通信産業だが、政府は何を狙っているのか。
■産業構造の高度化を迫られる中国
 中国の情報通信産業はこれまで中国の輸出型経済を牽引してきた。しかし、一昨年のサブプライムローン問題から去年のリーマンショックを経て世界経済の危機が徐々に濃厚になるにつれ、その輸出型モデルへのダメージも日増しに深刻になっている。
 電子製品の売上高ベースの成長率は2008年1月の17%が10月には1.9%まで急低下した。半導体に至っては2007年の24.3%増が08年10-12月期にはここ10年来で初となるマイナスに陥ったほどだ。もちろん、世界のマクロ情勢に影響されている部分が大きいが産業全体のこの悪化ぶりは尋常ではない。
 中国の情報通信産業が市況に大きく左右される原因は、全般的に市場開拓を重視するあまり技術開発が疎かになったことによるコア・コンピタンスの欠如にある。このタイミングで打ち出された産業振興計画は、目先の景気対策よりも産業構造の高度化に重点を置こうとする中国政府の意向が色濃くにじんでいる。
 製品開発では「核・高・基」(コア・ハイエンド・基礎)というスローガンを掲げ、業界全般の開発力底上げにつなげようとしている。それに伴い産業再編や淘汰も厭わないスタンスだ。「危機をチャンスに」と言えば聞こえはいいが、産業全体の課題である研究開発を今まで放置してきたツケは非常に重いと言わざるを得ない。
■6大プロジェクトに9兆円投資
 産業構造の高度化に向けて、重点的に投資していく6大プロジェクトも決まった。
 それは(1)大規模集積回路の高度化、(2)新型ディスプレーの強化及びブラウン管からの完全脱却などによるカラーテレビのモデルチェンジ、(3)3G(TD-SCDMA)の産業チェーンの整備、(4)デジタルテレビの普及、(5)コンピューター産業と次世代インターネットの応用、(6)ソフト産業の育成――の6つである。今後3年間で6000億元(約9兆円)をこれらの重点分野に投資していくという。
 これらのプロジェクトはいずれも、コア産業の育成や次世代通信、ネット関連における発言力を高めようとする中国政府の戦略が見え隠れしている。今回の計画で特に抜擢されたといえるのは新型ディスプレーだ。今まで部品産業の一つに過ぎなかった新型ディスプレーは3G通信などの国家戦略プロジェクトと肩を並べることになる。これも莫大な市場をバックにデジタル化しつつある家電市場で、政府が主導権を握ろうとする意思表明だ。
 この6大重点分野に関連するプロジェクトは、すでに走っているものも数多くあれば、スケジュールに基づいて準備が着々と進んでいるものもある。この莫大なパイに群がろうとする国内・海外企業の争奪戦もすでに展開されようとしている。
■垂直分業から日米欧との直接競合へ
 中国の情報通信企業には、華為技術や中興通信などのように独自の開発力を蓄積し、世界のメジャーと堂々と渡り合うようになった例もある。しかし、多くはコア技術を持たず、コア部品を輸入に頼っている。つまり、安い労働力を活用し完成品レベルで日米欧などの多国籍企業と競合することもある加工型だった。
 産業チェーンの観点でみると、中国企業と海外メジャーの間には、ある種の垂直分業が成り立っていたといえる。しかし、売り上げ規模は大きくなっても、利益はコア技術を持つ外資系企業に流出する構造のため、中国企業は長い間、「図体は大きいが強くない」という企業体質に悩まされた。今回の振興計画でコア技術の開発を奨励するのも、その構造を変革するところに根本的な目的がある。
 垂直分業の構図を崩しても、何十年という技術蓄積がある日米欧先進国にすぐ追いつくことなど想像できないが、中国の“馬力”を考えると意外と遠くない将来に中国情報通信産業が外資系企業と真っ向から競合する日は来るかもしれない。
 半導体産業などで韓国や台湾企業に資本力や経営スピードで逆転されてきた日本企業にとっては、新たに中国企業というライバルが登場することになる。韓国や台湾と違うのは、中国が巨大な国内市場を持っているというところだ。いずれにして日本企業の中国戦略、ひいては世界戦略に影響を与えていくことになるだろう。
■求められるソフトパワーの強化
 中国は本格的な改革開放を進めて30年あまりが経つが、その経済成長は凄まじかった。08年の国民の1人当たりGDPは3000米ドルに達し、一般的な意味での「中進国」になったといえよう。しかし、今回の情報通信産業の構造改革は今までよりさらにハードルが高くなる。
 もちろん、それは先進国を目指す以上、避けて通れない道だが経験不足が否めない。実際、中国はここ20年、半導体産業を育てようといろいろと方策を採ってきたが、未だに成功とはいえない状況が続いている。
 今までローコストを十二分に活用し市場の拡大によって発展してきた中国はある程度、「ハードパワー」を備えていると思われる。しかしこの先はまさに「ソフトパワー」なしでは成し遂げられないことばかりだ。
 そのソフトパワーはもちろん、合理的な発展戦略とその戦略に基づいた国と企業の一心同体の実行力、そして知財保護をはじめとする法律の整備など諸々を含んでいる。中国政府の「見える手」と世界市場の「見えざる手」の駆け引きが今まで以上に激しくなるなかで、中国企業はいかにその間隙を縫って活路を切り開くか。その結果次第では、今までにない企業成長のあり方を世界に示せるかもしれない。



著作権法ダウンロード違法化でコンテンツ産業に課せられた責務(COLUMN2)
 昨年12月、文化庁の文化審議会著作権分科会に設けられた私的録音録画小委員会で、違法録音録画物のダウンロードをする行為そのものを違法化する「ダウンロード違法化」の方針を盛り込んだ報告書案が承認された。そして、今年3月には閣議決定されて、国会で審議中になっている。
 この結果、2010年1月1日から、インターネット上にある音楽や動画などの違法コンテンツは、ダウンロードすることを含めて違法になる可能性が高まった。著作権法第30条の私的複製の範囲から除外することが明記されるためだ。
 もっとも、この範囲がプログラムや文書にも及ぶのか、ストリーミングはどうなるのかなど、まだ細かな点は詰めなくてはならず、必ずしもどこからどこまでが違法かということが明確になったわけではない。また、実際に違法コンテンツをダウンロードした状態でも罰則はなく、警告の域を出ないという考え方もあるだろう。
 しかし、ドイツ、フランス、スペインなどはすでにダウンロードを違法化する法改正が行われている。インターネット上のコンテンツ流通を巡り、権利者と利用者が利便性と権利義務のバランスから綱引きをしていることは間違いない。
 私は結論から言うと、ダウンロード違法化についてはコンテンツ産業育成の面から賛成である。ただし、その条件として、コンテンツ提供側がこれまで以上にコストパフォーマンスに配慮すること、コンテンツを買う前に品質を確認できる手段をより多彩に提供することの2つを挙げたい。
 まず、なぜ賛成なのか。理由は単純である。優良なコンテンツを育成するためには、フリーライダーの発生を防がなければいけないためである。
 違法なダウンロードを取り締まらないと、コンテンツを有料で買う人と、無料で手に入れる人が混ざってしまう。その結果、フリーライダーの増加やモラルハザードが起きて、コンテンツに対する投資が回収できなくなる。投資が回収できないのであれば、誰もコンテンツに投資をしなくなる。したがって、コンテンツ産業の健全な育成のためにも、フェアな市場を確保することが必要だ。
 もちろん、違法コンテンツが増えたとしても、売れるものはそれなりに売れる。CDのマーケットがネット流通への移行で縮小しても、それなりにミリオンセラーが出ていることでわかるだろう。しかし、コンテンツの市場全体が縮小すると、ミリオンセラーに流通のリソースが集中しすぎるがあまり、どんどん新規参入者に対するチャンスが少なくなってしまうのだ。
 なぜこれまでコンテンツのダウンロード違法化が行われなかったかというと、端末メーカーやインフラ提供者との利害がコンテンツ側とは一致しなかった、という背景がある。端末提供者やネットワーク提供者の立場からすると、コンテンツはなるべく無料に近い形で手に入った方が、より普及が進むので望ましい。
 とはいっても、端末の普及と無料コンテンツのダウンロードが行きすぎると、ネットワークのトラフィックも必要以上のコンテンツのダウンロードで一杯になり、しかも誰も正当な料金を負担しないフリーライダーが増え、インフラ側も同じように資金がまわらなくなる、という具合で結局うまくいかなくなる。ビジネスモデル変更前の「ナップスター」がその典型だろう。
 違法コンテンツをアップロードした人は問題だが、ダウンロード側に罪はないとする考え方を支持する人もいるだろう。しかし、こういった違法コンテンツの損害は、アップロードに発生するのではなく、ダウンロードに発生するのである。だからこそ、アップロード側だけではなく、ダウンロード側も管理しないといけないのである。
 コンテンツの費用は、やはりユーザーが広く浅く負担を分け合うことで、結果的に安くなるのである。それは例えば、違法コンテンツがいまのところほとんど出回っていない書籍を、CDと比べるとわかりやすいかもしれない。
 現在、書籍は新書・文庫を含めると500円前後から売っている。これは、シングルCDの500~1000円と比べて、割安感があるのではないか。結果として今、書籍とシングルCDは少なくともランキングに入るための販売数がほぼ同じで、だいたい週に1万を超えると10位くらい、1位になるには週に5万―7万売れればいい。
 シングルCDの潜在ユーザーと書籍の潜在ユーザーでは、前者の方が人数がずっと多い。ところが、普段の売れゆきはほぼ同じくらいになってしまったうえ、ミリオンセラーになると、今はシングルCDよりも書籍の方がよほど出やすいのである。
 結果として書籍では、例えば「新書の乱立」と言われながらも、まだまだ多くの新しい著者が新しいテーマでチャレンジできる土壌がある。なぜなら、書籍をオンラインで無料ダウンロードしたり、無料で読んだりすることは今のところ、できないためである。
 ただし、違法コンテンツを取り締まるだけではユーザーにとっては意味がない。書籍は手にとって、立ち読みをして、内容を確認してから買うことができるのに対し、映像・画像系は実際に買ってから見たり聞いたりしないと、なかなか品質がわからないという欠点があるのである。
 だから、「買ってみたらB級コンテンツでがっかり」という事態を防ぐためにも、コンテンツの内容がわかるようにする努力を、コンテンツ提供側も考えなければならない。試聴ができる、ユーザーのレビューが見られる、満足度に応じて後払いをするなどの仕組みを作らなければならないのである。
 すなわち、コンテンツを守るためという理由でコンテンツ制作者の提供論理だけを押しつけることもなく、かといってユーザーが過度にフリーライドを求めることもなく、バランスよく互いに協力をしながら、多彩で良質なコンテンツを育成していく市場を創ることが必要であり、そのためにはやはり、ダウンロードは違法化されなければいけないのである。
 そして、私たちコンテンツ提供側も、この法改正の動きを重く受け止め、ユーザーが有料でも喜んで、薄く広く払ってくれるようなコンテンツの制作・開発に努力していかなければならないだろう。
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