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マイクロソフトとヤフー、提携成功に酔えないこの先の試練<COLUMN>
 米国時間7月29日、マイクロソフトとヤフーは検索エンジンおよび検索広告における提携を発表した。ヤフーにとっては、テリー・セメル元CEOに始まり、現在のキャロル・バーツCEOまで3代に及ぶマイクロソフトとの買収交渉劇が、検索エンジン分野の提携という形で決着を見たことになる。果たして今回の提携は両社に成功をもたらすのか。■2社の弱点を補強する提携
 まず、提携の骨子を簡単にまとめておこう。
・契約期間は10年間
・マイクロソフトの検索エンジン「Bing」はヤフーが提供する検索サービスの主要アルゴリズムとして採用され、ヤフーに有料で提供される。また、既存のヤフー検索エンジン技術をマイクロソフトはBingに採用することができる
・広告主が検索広告の出稿に利用するプラットフォームにはマイクロソフトの「AdCenter」を採用する。ヤフーは全世界で両社のプレミアムサーチ広告の独占的営業権を得る
・ディスプレー広告については今回の契約に含めず、両社は独自にビジネスを進める
・マイクロソフトの技術を使う検索サービスも含め、ヤフーはユーザーに提供するサービスの所有権を保持する
・ヤフーとマイクロソフトはレベニューシェアをおこない、ヤフーのサイトで配信した広告に関して最初の5年間はヤフーが88%を得る
・ヤフーは「サーチ・アフィリエーション・パートナーシップ」を継続する。
・ヤフーとマイクロソフトは、2010年早々と見込んでいる政府機関による提携承認後、全世界で統合作業が完了するまでに最長24カ月かかると予想している。ヤフーは提携により2億ドルの設備投資費を削減でき、年間の営業利益を5億ドル押し上げると期待している
・提携では個人情報の保護を行い、両社による個人情報の共有は最小限にとどめる(マイクロソフト、ヤフーのプレスリリースより)
 この発表を見ればわかる通り、提携はマイクロソフトとヤフーが両社の弱点を補強する内容になっている。米国のメディアやアナリストの多くは、提携内容について好意的な論調を示しており、両社にとって大きなメリットが期待できるだろう。
■ヤフーに配慮したマイクロソフト
 とはいえ過去の経緯を考えると、ヤフーに対してマイクロソフトがやや多めに譲歩したとの見方もできる。マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOは、約2年に渡ってヤフーを買収しようと追い続けた。長期低迷に悩むヤフーがこの買収交渉によって疲弊し、投資家からの信頼を失っていったことは承知のとおりだ。マイクロソフトのおかげで、ヤフーの将来は不透明感を増す一方、検索広告でグーグルの独走を招いた。
 発表文にある「提携は検索エンジン分野だけに限定し、レベニューシェアでは大半をヤフーが受け取る」「ヤフーの資産や既存事業については、その独自性を確保する」といった文面は、過去の経緯から見るとヤフーへ悪影響を最小限に抑えようとする配慮がにじんでいる。
 一方、マイクロソフトも「検索エンジン広告を軌道に乗せることだけを狙う」というほど、追い詰められた状況だ。グーグルは米国の広告検索市場約100億ドル(推定)の約7割を押さえる。この巨大な広告収入を背景に、次々と無料のネットアプリケーションを投入し、マイクロソフトの「ウィンドウズ・オフィス王国」を侵食してきた。
 マイクロソフトにとっても「広告アルゴリズム、広告営業プラットフォームをマイクロソフト側で確保する」一方で、苦手の「広告営業でヤフーの力を得る」という今回の協力関係は大きな利点となるだろう。また、売り上げの大半をヤフーに渡す代わりに、アップフロント・フィー(前払い保証金)を避けたことも賢い。
 両社にメリットがある提携内容だが、発表後マイクロソフトの株価は上昇し、ヤフーは若干下落した。この皮肉な結果を受け、マイクロソフトのバルマーCEOは投資家向け説明会でヤフー擁護の発言を繰り返している。
■評価が高まったヤフーのバーツCEO
 今回の提携にこぎ着けたことで、ヤフーのバーツCEOの評価は高まった。オートデスク元CEOだった彼女は、09年1月にヤフーのCEOに就任するとすぐにマイクロソフトとの提携交渉を開始する一方、各事業の見直しに入った。同社の現状を鋭く直視し、過去のしがらみに振り回されることなく、不採算部門の整理による財務体質の強化と基本戦略の練り直しを進めた。
 その間、バーツ氏とCEOの座を争ったスーザン・デッカー氏(元社長)マルコ・ボーリス氏(モバイル部門上席副社長)、ブラック・ジョージェンセン氏(元CFO)など、これまでヤフーを支えてきた経営幹部が次々と辞め、バーツ氏の激しい社内改革はネット業界でも注目を浴びた。
 従来、経営戦略の軸となっていたモバイル事業やオンラインコンテンツ事業に容赦ないメスを入れたその豪腕ぶりは、混乱も招いた。たとえば、経費がかかる携帯コンテンツ開発ツールの開発を棚上げにしたため、モバイル関連のデベロッパーに混乱が広がった。
 オンラインコンテンツでは、08年に1億6000万ドルで買収したオンライン・ビデオ・サービスのMaven Networksを閉鎖することを7月始めに明らかにした。同社はCBSやCBS Sportsなど30以上のメディア大手のオンラインコンテンツを管理していたが、閉鎖後は契約を終了する。この決定は、バーツCEOが「ビデオサービスは重要な分野」と発言してから1カ月も経たずに行われ、周辺に驚きが広がった。
■従来路線に回帰するヤフー
 こうした一連の改革を見ると、バーツCEOはヤフーを伝統的な戦略に回帰させているようだ。変化の激しいネット業界において、ヤフーは先端技術開発の内製化には力を入れず、新しいサービスや技術を買収や提携によって常に補強してきた。
 検索エンジンはその典型的な例だ。たとえば1998年、ヤフーはインクトミと検索エンジンの提携契約を結んだ。当時、アルタビスタとインクトミの激しい契約獲得競争はメディアで大きく取り上げられた。その2年後にヤフーはインクトミを捨て、急速に力をつけたグーグルを検索エンジンに採用する。その後、検索広告でグーグルと対立したヤフーはオーバーチュアを買収し、グーグルとの提携契約を解消した。それまで、検索エンジンの内製化には関心がなかった。マイクロソフトとの提携は、その従来路線に戻ったことになる。
 また、携帯コンテンツ開発ツール戦略の見直しも、技術内製化に距離を置く従来の方針から見ると納得できる。「iPhone」が切り開いたモバイルアプリケーション分野で、アップルと正面から競争してもヤフーが勝利するのは容易ではない。
 このようにバーツCEOは基本戦略に立ち戻り、ヤフー最大の資産であるウェブ事業の立て直しを進めようとしている。今回の提携はその意味で大きな重みを持つ。
 ただ、事業立て直しのためにマイクロソフトと提携するという選択は、この業界では珍しくない。たとえば、アップルに返り咲いた後、スティーブ・ジョブスCEOはマイクロソフトと提携し、アップル向けのオフィスソフトを確保した。また、独占禁止法裁判でマイクロソフトを激しく攻撃したサン・マイクロシステムズも、事業再建のため提携契約を結んでいる。
 こうして一時的に手を取りあっても、各社は最終的にはマイクロソフトと袂を分かち、独自路線を歩んでいる。ヤフーも10年の長期契約とはいえ、マイクロソフトと友好関係を続けるかどうかはわからない。
■マイクロソフトの反撃が始まるか
 「Windows Vista(ビスタ)」の不振や「Windows Mobile」の迷走など、ここ数年マイクロソフト社内には閉塞感が漂っていた。ビル・ゲイツ氏が引退し、重責を担うバルマーCEOにとって、今回の提携は大きな朗報だ。株式市場も提携に好感を示した。
 次世代のアプリケーション業界、特にマイクロソフトが得意とする個人生産性ツールの分野では、ネットアプリケーションへの移行が欠かせない。グーグルが広告による無料化を進める以上、マイクロソフトも広告依存モデルに切り替える必要がある。今回の提携は個人生産性ツールの分野でマイクロソフトが反撃するきっかけとなるかもしれない。
 ただ、マイクロソフトの全社戦略から見ると、ヤフーとの提携は建て直しへの「最初の一歩」に過ぎないだろう。同社にとって競争相手はグーグルだけではない。企業向けの基幹システム分野ではIBMやヒューレット・パッカード(HP)、オラクルなどと戦わなければならない。バルマーCEOが提携成功に酔っている暇はない。
 なお、マイクロソフトに有利と評価した証券市場とは対照的に、広告業界ではヤフーへの支持が広がっている。グーグルの独占による広告価格の上昇やサービスの停滞などが懸念されていたためだ。
◇ ◇ ◇
 今回、両社はあからさまにグーグルへの対抗姿勢を表明した。グーグルとマイクロソフトの間で揺れ動いていたヤフーは、ようやく旗幟を鮮明にした。とはいえ、提携によってマイクロソフト・ヤフー陣営がグーグルを楽にキャッチアップできるわけではない。今回の提携はグーグルに負けている部分を埋め合わせる内容で、グーグルを超えるサービスやツールをマイクロソフト・ヤフー陣営がすぐに生み出してくるとは思えない。
 残念ながら、シリコンバレーを見渡しても、グーグルほど次世代のネットについてはっきりしたビジョンを持つ企業はない。提携発表後も、マイクロソフトやヤフーに対する厳しい視線は続いている。



IMF債発行 ドルの代替にはほど遠い(8月2日付・読売社説)
 国際通貨基金(IMF)が初めて債券を発行し、資金調達する。加盟国の融資に頼ってきたIMFには新たな一歩だ。
 この債券は、IMFが40年前にドルや金に準ずる通貨を目指して創設したSDR(特別引き出し権)建てである。
 SDRはドル、円などの加重平均で算出される合成通貨だが、ほとんど普及せず、計算単位にとどまっている。SDR金利は約0・3%で、IMF債の利息もこれに基づく低利となる見込みだ。
 そうした事情にもかかわらず、中国が500億ドル、ロシアとブラジルが各100億ドル購入する予定で、インドも検討中だ。
 BRICsがそろって大量購入するのは、SDRの基軸通貨化を期待してのことだろう。
 とくに熱心なのが中国だ。中国人民銀行の総裁は3月発表した論文で、SDRをドルに代わる通貨に育てる構想を表明した。
 外貨準備高が2兆ドルを超え、米国債の最大の保有国である中国にとって、ドルが急落すれば、資産が目減りしてしまう。資産運用の多様化は急務となっている。
 中国は米中戦略・経済対話で、ドル下落に対する懸念を表明した。SDR建てのIMF債購入は、ドルへの依存を減らしたい中国の意向に合致するといえよう。
 ロシア、ブラジルが同調した背景にも、新興国が結束してドルを牽制(けんせい)し、IMFなどでの発言力を高める狙いがうかがえる。
 しかし、SDRがただちに、ドルに代わる基軸通貨になると考えるのは非現実的だ。ユーロもまだ力不足で、ドルに代わる基軸通貨は見当たらない。ドル体制は当面、揺るがないとみられる。
 基軸通貨になる条件は、国際的な流動性があり、貿易などで幅広く利用されることだ。
 だが、IMF債の取引は、加盟国の政府や中央銀行などの公的部門に限定され、民間市場には流通しない。まず、SDRの用途の拡大や、SDR債の市場を育成することが課題となる。
 一方、SDR債の発行は、IMFの資金基盤の充実と、調達の手法を多様化する効果がある。
 IMFの機能を強化する一環として、融資枠を3倍に拡充する方針を盛り込んだ4月の金融サミットの合意にも沿う。
 昨秋以来の金融危機では、ウクライナなどがIMFの支援で救済された。危機は最悪期を脱したとされるが、迅速に対応するIMFの役割は重要だ。資金基盤の強化をさらに急ぐ必要があろう。
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