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“ノキア・シーメンス+モトローラ”の衝撃 日本のケータイ市場にとっても他人事ではない
 フィンランドのノキアとドイツのシーメンスの合弁会社ノキア・シーメンス・ネットワークス(以下、ノキア・シーメンス)が7月19日、米通信機器大手モトローラの無線インフラ事業の大部分を12億ドルで買収することを発表した。
 モトローラといえば、ケータイ端末、基地局、セミコンのすべてを手がけ、米国では民生のみならず軍需産業をも手がける、総合的な通信機器ベンダーである。日本との付き合いも長く、その名を耳にした人は少なくないだろう。一方のノキア・シーメンスは、本連載の読者なら言わずと知れた、世界第2位のシェアを誇る基地局ベンダーである。
 このところ、基地局やセミコンといった、ケータイ産業を支えるプレーヤーたちの動きが激しさを増しているが、今回の一件は日本のケータイ市場にも直接的な影響を与えることになろう。そこで今回は、この買収が各方面に及ぼす影響を考察しつつ、その背後にある大きな潮流についてまとめてみる。
必ずしも競合ではなかった
 事実関係をおさらいしておくと、今回ノキア・シーメンスは、モトローラの無線インフラ事業の主要部分のほとんどを手にすることになる。この中には、GSM、CDMA、W-CDMA、モバイルWiMAX、LTEなどの方式が含まれる。記者会見でノキア・シーメンスのラジブ・スリCEO(最高経営責任者)はその目的を「顧客基盤の獲得」としており、今回の買収がノキア・シーメンス側の事業拡大を目的としていることがうかがえる。
 確かに買収の目的は、記者会見で説明された通りだろう。先日のルネサスとノキアの買収金額である2億ドルに比べると、そのおよそ6倍の12億ドルという規模の大きさが注目されるが、これは単純にモトローラの事業規模を反映したもの。例えば従業員数を見ても、ノキアの1200人に対してモトローラの7500人と6倍近い。
 基地局という商材には、「規格が一度決まってしまえば後は大規模生産による大量供給」というイメージがあるかもしれない。しかし実際は、国ごとに細かく異なる周波数や通信規格への対応、納入先の通信事業者に割り当てられた周波数への調整、電源や電波塔といった既存資産との摺り合わせ、さらにはノンストップの運用を実現するための保守点検が必要となる。
 そんなきめ細やかな開発・営業体制を必要とする基地局ビジネスを、モトローラは世界展開していた。彼らが有する商圏は、米国はもちろん、中国やインド、あるいは日本にも及び、各地で事業や研究開発を進めていた。その中核は、CDMAと呼ばれる通信規格で、日本ではCDMA方式を採用するKDDIが主要顧客となる。
 こうした市場で、モトローラとノキア・シーメンスとは必ずしも競合しておらず、場合によっては補完関係にあった。そしてモトローラ率いるCDMA陣営は、次世代規格の開発を概ね見送りつつあったため将来性に不安が生じており、業績も低迷していた。モトローラ全体としてみれば、ノキア・シーメンスからの買収提案は、渡りに船というところだろう。
 今回の買収によってモトローラの基地局ビジネスに残るのは、iDENなどの通信関連技術の一部に過ぎない。その詳細は明らかでないが、おそらくはセミコンダクターとの関係性が強い領域と、ナショナルセキュリティに直結する領域を残して、ほぼ全面的にノキア・シーメンスに売却したということになる。モトローラにとっては、市場における立ち位置を抜本的に変える大規模な事業再編ということになる。
エリクソンの狙いを再認識
 一方、ノキア・シーメンスは今回の買収によって、何を手にしたのか。これには、攻守両方の意味があると考えている。
 まず「攻め」のほうでは、世界中の商圏とその先にある顧客基盤の獲得であろう。前述の通り、モトローラは日本を含む世界市場で顧客を有している。そしてそれらの多くはCDMA陣営なのだが、CDMAの発展が止まった現在、KDDIがLTE採用を表明しているように、顧客企業は遠くない将来にLTEをはじめとした次世代技術への世代交代を迫られる。
 しかしLTEは規格の関係上、当面はデータ通信中心の技術であり、音声通信は現世代を利用しなければならない。そのため通信事業者は、CDMA2000とW-CDMAの如何に関わらず、3Gを残しつつオーバーレイの形でLTEの導入を進めることになる。
 おそらくノキア・シーメンスは、その際にCDMAの商流が活きてくると考えたのだろう。LTEの導入が進む一方、当面はCDMAのネットワークも維持しなければならない。ならば、CDMAの保守という既存商流をベースに、LTE移行のソリューションを提案できれば、営業効率が高い。あるいはCDMAとLTEを組み合わせたベンダーファイナンスのような財務を一体化させた高度な営業提案も、おそらく可能となるだろう。
 一方「守り」の意味としては、なんといっても北米市場の確保だろう。ちょうど1年前の本連載で、スウェーデンのエリクソンによるノーテルネットワークスの無線通信関連(CDMAとLTEを含む)の事業買収に触れたが、ノキア・シーメンスはこの巨大市場で昨年より相次いでいたM&A(合併・買収)競争にことごとく破れ、プレゼンスを低下させていた。
 この間、LTEを巡る事業環境は、大きく激変した。昨夏の時点ではまだLTE普及に関するリアリティが不足しており、「本当に普及するの?」という声も業界ではチラホラ聞かれた。しかし年末の頃から急速にLTEが次世代の主流派として台頭し始めた。特に米国では、バラク・オバマ政権下のFCC(連邦通信委員会)が進めるワイヤレス・ブロードバンド環境の整備において、主要技術としてLTEが位置づけられつつあり、急激な盛り上がりを見せている。
 今回の買収により、ようやくエリクソンなどと対等に渡り合えるところまでキャッチアップできたと考えるべきだろう。逆に言えばノキア・シーメンスは、ほぼ1年間にわたって事業機会を損失したということになる。このように考えれば、なぜ昨夏にエリクソンがノキア・シーメンスの提案額の2倍近い金額を提示してノーテルの事業資産を“強奪”したか、しみじみ分かるというものである。
一気に訪れたLTEの波
 では今回の一件は、ケータイ産業全体にとってどのような意味を有するのだろうか。それは大きく2つ挙げられる。
 1つ目は、次世代規格がほぼLTEに収束したということ。これは前述の通りだが、次世代規格を巡るLTE対モバイルWiMAXの戦いは、昨秋辺りから勝敗が見えていた。今回の買収内容の中にはモバイルWiMAX事業も含まれているが、おそらくノキア・シーメンスがこの技術を担いで営業する局面は、皆無とまでは言わないにせよ、既に免許交付や事業化が進んでいる国・地域などを対象とした限定的なものとなろう。
 一方、このモバイルWiMAXの資産継承とも緊密に関係するのが、TD-LTEの台頭だ。技術的な説明は割愛するが、LTEにはFDD(周波数分割複信)とTDD(時分割複信)という2方式がある。現在、世界で事業化に入りつつあるLTEはFDD方式なのだが、やはり昨秋辺りからTDD方式を採用するTD-LTEが台頭し始めた。
 このTD-LTEは、中国で3G規格に採用されているTD-SCDMAと一部互換性があること、また中国移動(チャイナ・モバイル)や華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ=Huawei Technologies)といった中国系通信企業が注力していたことから、中国由来の技術として警戒されることも多かった。確かに開発体制などからはそう思われる側面もあるのだが、ここに来てエリクソンをはじめ欧米系の通信機器ベンダーも商品化を進めており、今回のモトローラもその1社となる。
 そして前述のモバイルWiMAXも、実はTDD方式を採用する通信規格の1つである。そのため、次世代規格競争に敗れたかに見えるモバイルWiMAXだが、TD-LTEへの合流を図ることで起死回生を狙っているとも考えられているのだ。事実、モバイルWiMAXによる通信事業を行う米クリアワイヤも、米国におけるLTE重視という流れを察知し、TD-LTEの採用をほのめかしている。
 このTD-LTEに関しては、実は日本でも他人事ではない。会社更生中のPHS最大手のウィルコムが次世代規格として開発を進めたXGPも、実はTD-LTEと技術的な親和性を有しており、中国企業との交流も以前から活発に行っていた。こうした一連の動きをいち早く感じ取ったソフトバンクは、ウィルコムのXGP資産を引き取りつつあるが、おそらく同社は既に割り当てられている2.5GHz帯でのTD-LTE導入を狙うと目されている。
 もちろんこれは「言うは易し」の話だ。ウィルコムが取得した2.5GHz帯の周波数帯域は、あくまでXGPという技術を前提に割り当てられたものである。そしてXGPもTD-LTEも、それぞれ独立した技術としてITU-R(国際電気通信連合無線通信部門)での標準化が完了している。ITUの判断が日本のみならず世界的にも電波政策・通信政策の基盤である以上、現実的には不可能に思える。
 それでも、2012年に控えた周波数再編という電波政策の一大イベントを控え、何が起こるか分からないのも事実。特にLTEの波がこの1年で一気に訪れたことを考えると、M&A競争で苦汁をなめたノキア・シーメンスとしては、KDDI周辺はもちろん、それ以外のあらゆる方面にも商機を見出したいところだろう。
ノキアの新しい姿が見えてきた
 そして今回の一件がケータイ産業全体に与えたもう1つの意味は、ノキアの新しい姿が見えてきたということだと、筆者は考えている。
 本連載でもやんわり触れてきたが、実はノキアはここ数年重大な曲がり角に入ってきており、一部の資本市場筋では「ノキア再編」に向けた議論がとっくに行われていたところである。その大きな理由は、競争環境の変化である。
 GSM時代に安価で気の利いたデザインによる端末販売で急速に成長したノキアだが、3Gへの移行が進むにつれて付加価値市場での競争力を欠くようになった。現在は、出荷台数こそ新興国のGSM市場を中心に圧倒的な数字を記録しているが、スマートフォン市場では完全に遅れを取っており、2010年第1四半期の数字では、前年同時期に比べスマートフォンの端末販売価格が20%近く下落している状態にある。
 こうした中、ノキアは数年前から、事業形態の大幅な転換を目指していたように思える。その大きな方向性が、知財管理と資本管理を主体とした事業体への緩やかな転換だ。
 前回の本連載で触れた、ルネサスへのワイヤレスモデム事業部門の売却も、おそらくこの一環だろう。ルネサスという従来から商流を構築していた企業に、売却することで、緩やかに時間を稼ぎながら新たな姿に移行しようとしているのだろう。これは推測だが、この売買が予想よりも安価だったのは、こうしたノキアの意向をルネサス側が何らか汲んだからではないかと思われる。
 そして今回のノキア・シーメンスの強化も、筆者にはこうした動きの1つだと思える。というのは、ノキア・シーメンスは、財務上の位置づけこそノキアの連結子会社だが、現場の動きとしては概ねシーメンスの会社と思われるからだ。すなわち、シーメンスが実質オペレーションする子会社の成長戦略の一環としてM&Aを行い、親会社たるノキアはあくまでその果実を獲得する、という姿である。
 実はこの買収劇に並行する形で、7月20日付けのウォール・ストリート・ジャーナルに興味深い記事が載っていた。「ノキアがオリペッカ・カラスブオCEOに変わる新たな経営者を登用する可能性がある」と報じたのだ。現時点でノキアはその事実関係を認めていないが、明らかに経営判断のミスや事故などでもない限り、こうした経営者交代に関する新聞辞令的な観測気球が打ち上がる時は、事業構造や組織の抜本的な変革を意図していることが少なくない。
 もちろんこれも「言うは易し」の話だ。本当にそんなに都合よく話が進むとは限らないし、実際に格付け会社のフィッチは、そもそもの競争激化はもちろん、今回の事業買収・統合に係るリスクも厳しく評価しており、長期社債の格付けに影響を及ぼす可能性を指摘している。フィッチは2010年下期、つまり今後半年の動きが極めて重要だと指摘しており、ノキア・シーメンスは早々の成果やビジョンの明確化が求められている。
 いずれにせよ、ここ最近の目まぐるしい動きは、ケータイというビジネスが抜本的に変革していることを如実に表している。そして今回のような世界的な再編が進むとなれば、上位2社の通信事業者がLTEの導入を進めようとしている日本市場においても、影響必至であろう。新たな重商主義が求められる日本経済において、こうした海外企業の動きが国内市場に重大な影響を与えるという姿で「脱ガラパゴス」が進むのが本当に望ましいのかは、大いに議論の余地があるところだが、いずれにせよ状況を注視したい。



日本人有効旅券保持者、4年で400万人減少 海外旅行市場の縮小傾向鮮明
 日本人が保有する有効旅券(パスポート)の数が、2009年には4年前に比べ約400万人減少したことが、外務省の旅券統計から分かった。政府は観光立国の推進を成長戦略の柱に位置づけ、海外からの観光客受け入れだけでなく、日本人観光客の海外渡航拡大にも力を入れている。しかし、日本人の海外旅行市場は縮小傾向にあるのが実態で、政府や旅行業界は抜本的な対策が求められそうだ。
 有効旅券数は、旅券統計の公表を始めた2005年末には約3493万人だったものが、09年末には約3088万人と、この4年間で405万人も減った。09年の一般旅券の発行件数は、前年より約5.6%多い約401万件だったものの、失効した旅券はこれを100万件以上上回った。有効期限を迎えた旅券を更新したり、初めて旅券を持とうとする人が減っているといえそうだ。
 有効旅券が減少している要因について、ツーリズム・マーケティング研究所の磯貝政弘主席研究員は、(1)少子高齢化(2)経済情勢の悪化(3)地方路線の減少-と指摘しており、減少傾向については「公表前の01年ごろから始まっていた可能性もある」とみている。
 実際、観光庁によると、09年に海外旅行に出かけた日本人は前年比3.4%減の約1544万人と3年連続で減少した。直近のピークである05年からは200万人近く減った計算だ。最近では景気後退や新型インフルエンザの流行などが影響したが、旅券を持っている人の数が減ってきていることも響いたとみられる。
 旅行各社も海外旅行市場の縮小傾向を感じており、最大手のJTBでは「海外旅行マーケットのすそ野は着実に狭まっている」と危機感をあらわにする。
 政府は今年度中に、日本人の海外旅行者数の2000万人達成を目標に掲げているが、09年実績からみれば実現しそうにない。旅行業界には魅力的な商品提案が求められると同時に、政府には旅券を取得しやすい環境整備なども求められそうだ。



【東京新聞社説】
経済財政白書 希望が見えてこない
2010年7月24日
 二〇一〇年度経済財政白書が閣議に報告された。家計支援だけではデフレ脱却は難しく、企業が活動しやすい日本にすべきという。どう実現するのか。豊かさを支える成長への希望が見えない。
 経済財政白書は日本経済の課題を分析し、経済運営の方向を客観的に示すことが目的だ。しかし本年度の白書は長期債務が国内総生産(GDP)の二倍近くに膨張した窮迫財政を背景に、家計支援の余裕はなくなったという国民向けメッセージに力点を置いたと見るべきだろう。
 昨年の政権交代後、鳩山前政権は子ども手当や高校の実質無償化など、家計負担を軽くして可処分所得を押し上げ、需要を掘り起こす政策に軸足を置いてきた。しかし、来年度からの子ども手当全額支給は、財源五・五兆円の見通しすら立っていない。
 そこで白書が登場させたのが、企業が日本でビジネスをしやすくする「居心地」論だ。最終章を「企業が居心地のよい国は、家計にも居心地がよいはずだ」との記述で結んでいる。財政支援に代わって、企業に需要創出の旗振り役を担わせるという台本だ。
 企業が生み出す付加価値はGDPの半分の二百六十兆円に上り、全労働人口の七割が企業で働いている。日本に進出した外国企業も含め、収益の拡大が期待できれば給料が上がり、需要を喚起してデフレからの脱却も見えてくる。
 しかし、企業が活動しやすい日本にするために白書が挙げているのは、外国企業の対日投資を妨げている語学の専門家不足の解消や、世界的にみて水準の高い法人税率を引き下げて外国企業の誘致を図る、などに限られている。
 いずれも、これまで再三議論されてきたテーマであり、それだけで需要の創出を期待するというのでは、あまりにも戦略に乏しいと言わざるを得ない。
 雇用にしても、企業の居心地のよさを追い求めるよりも、まずは女性や高齢者らを働きやすくさせる方が実現可能性が高い。
 育児のため通勤できない女性が働けるよう保育所を整備することも立派な成長戦略であり、より現実的といえる。勤労意欲が旺盛な高齢者に就労を促すこともデフレ脱却を後押しするだろう。
 菅政権は需要の創出を掛け声だけで終わらせてはならない。
 国会論戦などを通じ、国民が納得する力強い需要創出の戦略を、分かりやすく、もっと具体的に提示すべきだ。

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