(#゜Д゜)/新聞

カプコン、交流サイト通じたゲームに欧米で参入
フェースブック会員網を活用、iPhone向け配信
 ゲームソフト大手のカプコンは欧米で交流サイト(SNS)を通じたソーシャルゲーム事業に参入する。米フェースブックが抱える5億人超の会員網を活用し、米アップルの高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」向けに9月からゲームの配信を始める。日本で従来型家庭用ゲームの市場が縮小するなか、新たな成長分野を開拓して収益源の多角化を目指す。
 米子会社カプコン・インタラクティブ(カリフォルニア州)を通じ、3本の新作ソーシャルゲームをアイフォーン向けに配信する。欧米ではこれまで家庭用ゲーム機向けのソフト販売が中心だったが、フェースブックを通じて新たなゲームユーザーを開拓する。
 ソーシャルゲームは交流サイトに登録した利用者同士が競ったり協力したりして一緒に楽しむ内容。基本料金は無料で、ゲームを有利に進めるための「アイテム」を取得する際に課金する手法が主流だ。
 カプコンも欧米でまず100万人規模の無料会員を獲得し、アイテムへの課金などで収益を確保していく。
 カプコンは日本でSNS大手のディー・エヌ・エーと組み、8月に「モンスターハンター」シリーズの派生作品の配信を始めたばかり。国内外のソーシャルゲーム市場で攻勢をかける。
 ゲーム専門誌発行のエンターブレイン(東京・千代田)によると、日本の家庭用ゲーム市場(ハードとソフトの合計、携帯電話などを通じたオンラインゲームは除く)は2009年に前年比6.9%減の5426億円と2年連続で縮小した。
 このため、ゲームソフト各社は新たな収益モデルの構築が急務となっている。バンダイナムコゲームスも年内をめどにフェースブック向けに2~3本のゲーム配信を始める。国内を中心にソーシャルゲームの配信に取り組んでいるが、海外でも本格展開に乗り出す。
 インターネットN広告大手のサイバーエージェントも子会社を通じてソーシャルゲーム配信を強化するなど、業態の垣根を越えた新規市場参入が広がりつつある。



世界初 3D対応スマートフォン シャープ、本格仕様で攻勢
 シャープは16日、裸眼で3D(3次元)映像を楽しめる多機能携帯電話(スマートフォン)を今年度中に国内外で発売する方針を明らかにした。同社によると、3D対応のスマートフォンは世界で初めて。スマートフォンは年々増加し、2010年中に世界出荷が1億7500万台に達するとの試算もある。市場では米アップルの「iPhone(アイフォーン)」など海外勢が先行しており、シャープは3D技術で攻勢に出る。
 今回の商品は、3D対応カメラを搭載し、撮影した静止画や動画が裸眼で立体的に見える。画面には4月にシャープが発表した3D対応の小型液晶パネルを採用予定。操作はタッチパネル式が有力で、撮影した映像は3Dテレビ「アクオス」でも鑑賞できる見通し。
 シャープは02年にも携帯電話に3D機能を付けて発売したが、通常の画像をソフトで加工する仕組みで、あまり鮮明でなかったことなどからヒットしなかった。
 今回は、対象を2つのカメラで別角度から撮影して立体的に見せる本格的な仕組みで、液晶の明るさも格段に向上。スマートフォンなので、対応する3D動画をインターネット上から手軽に取り込み楽しむこともできる。
 3D関連商品は増えているが各社の3Dテレビは専用眼鏡をかける必要があり、裸眼で楽しめるのは富士フイルムのデジタルカメラなどに限られている。



世界の携帯大手、明暗 スマートフォンが業績左右、4~6月
 【シリコンバレー=奥平和行】世界の携帯電話端末業界で高機能携帯電話(スマートフォン)の販売がメーカーの業績を左右する傾向が強まっている。この分野が好調だった英ソニー・エリクソンと米モトローラは4~6月期の営業損益が黒字転換する一方、従来型の端末が主力のフィンランドのノキアなどは減益だった。スマートフォンは単価が高いため収益への貢献も大きく、競争が一段と激化しそうだ。
 米調査会社ガートナーによると、世界の携帯電話端末市場に占めるスマートフォンの比率は2010年4~6月期で19%。前年同期比で5ポイント上昇した。スマートフォンのシェアは08年には11~12%台で推移。09年からじわじわと上昇し、10年1~3月期には17%となっていた。
 ソニー・エリクソンは米グーグルの携帯向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した「エクスペリア」の販売が増加。モトローラもアンドロイド端末が米国などで好調だった。ガートナーによると4~6月期に世界のスマートフォン市場でアンドロイド端末のシェアは前年同期より15.4ポイント高い17.2%に急拡大。両社などアンドロイド陣営の好調を裏付けた。
 スマートフォンを主軸に据えたソニー・エリクソンの4~6月期の端末平均販売価格が前年同期より約3割高い160ユーロ(約1万7600円)になるなど、この分野は収益貢献が大きい。
 「ブラックベリー」を手掛けるカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)は3~5月期の営業利益が前年同期比53%増加。米アップルは携帯電話部門の業績を開示していないが、「iPhone(アイフォーン)」などが好調で4~6月期の純利益は会社全体で78%増となった。
 一方、従来型の端末を主力とするメーカーは苦戦している。4~6月期は端末世界最大手のノキアに加え同2位の韓国サムスン電子も営業減益。3位のLG電子(韓国)は営業赤字に転落した。各社は新興国市場などで手ごろな価格の端末を大量販売することで事業を拡大してきたが、価格競争の激化により苦戦を強いられた。ノキアが主導するOS「シンビアン」はスマートフォンで最大のシェアを握るが、使い勝手などで「アンドロイド」陣営に押されている。
 ただ、ノキアはシンビアンの改良に取り組んでいるほか、サムスンも米マイクロソフトの新OSを搭載した端末を年内にも発売するなど巻き返しに余念がない。
 各社が収益性が高いスマートフォンに注力することで市場の活性化が見込まれる一方、この分野でも従来型と同様に価格下落が進む可能性がある。



Google、仮想通貨の新興企業Jamboolを買収
 仮想通貨プラットフォームを手掛ける米Jamboolは現地時間2010年8月13日、米Googleが同社を買収したと発表した。Jamboolの創業者で最高経営責任者(CEO)のVikas Gupta氏と最高技術責任者(CTO)のReza Hussein氏が同日付の公開書簡で明らかにした。
 Jamboolは米カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置く新興企業。CEOのGupta氏とCTOのHussein氏は米Amazon.comで決済システムや受注ワークフローシステムを手掛けた人物。
 2006年にJamboolを設立した当初は、ソーシャルネットワーク向けのアプリケーションなどを手掛けていたが、2008年に「Social Gold」と呼ぶ仮想通貨プラットフォームを開発。ソーシャルゲームやソーシャルアプリケーションに導入できる決済システムとして利用されている。
 創業者の両氏は、Googleの傘下に入ることについて、「我々のビジョンを実行するためには逃せない機会と判断した。Social Goldを世界中のGoogleユーザーに提供できることを喜んでいる」と述べている。
 Googleは8月6日に、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の米Facebookにソーシャルゲームを提供している米Slideを買収したと発表した。また米Zynga Game Networkに大規模な出資を行ったとも報じられている。同社のこうした最近の動向から、うわさされているFacebook対抗のSNS「Google Me」の開発を着々と進めているのではないかと英Financial Timesなどの海外メディアは報じている。



首相、円高・景気減速で経済対策を検討 エコポイントの延長浮上
 菅直人首相は16日、経済閣僚に対して円高の影響など景気の現状分析を指示するとともに、閣僚の報告を踏まえて円高・経済対策の検討に入る考えを明らかにした。政府・与党内では(1)12月末に終える予定のエコポイント制度の延長など消費刺激(2)新卒者の就職支援(3)円高に苦しむ中小企業の資金繰り支援――などが柱に浮上している。(関連記事総合・政治面に)
 首相は同日、荒井聡経済財政相、野田佳彦財務相、直嶋正行経済産業相の3閣僚に「近々それぞれの立場でいまの日本の経済の状態をしっかりみたうえで報告してほしい」と指示。「そういう中から今後のことは考えたい」と対応策の検討を示唆した。
 内閣府が同日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値が前期比年率で実質0.4%増に鈍ったことや最近の円高・株安を念頭に「為替の問題を含めて注意深くみておく必要がある」とも強調。円相場とともに景気の動向を注視する考えを示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
 民主党の政策調査会幹部も同日、「需要喚起や雇用対策を中心とした追加経済対策が必要だ」と指摘した。財源としては2010年度予算に計上した経済危機対応・地域活性化予備費の未使用分から約9000億円、09年度決算の剰余金から8000億円程度の合計1兆7000億円が使える見通し。政府内では国債の増発に慎重な声が多い。
 9月末に期限を迎えるエコカー補助金も焦点となるが、直嶋正行経済産業相は7月30日の記者会見で延長を明確に否定している。



米動画サイト大手「フル」上場検討 米メディア報道
ニューズ、NBCU、ディズニーなど出資
 【ニューヨーク=武類雅典】米メディア大手のニューズ・コーポレーションやNBCユニバーサル(NBCU)などが出資するネット動画サービスの「Hulu(フル)」が株式公開を検討していることが16日、明らかになった。複数の米メディアが報じた。フルは大手メディアが米グーグル傘下のネット動画「ユーチューブ」に対抗して立ち上げた合弁事業。収益基盤が整いつつあると判断したと見られる。
 フルは大株主がニューズ、NBCU、米ウォルト・ディズニーなどで、2007年の設立。人気テレビ番組や映画を無料で視聴できるサービスを提供している。これまで広告収入で収益を上げてきたが、6月にはパソコンやテレビ、携帯電話などでハイビジョン画質の動画を視聴できる月9.99ドルの有料サービスに乗り出した。早ければ今秋にも上場すると見られ、上場後の時価総額は約20億ドル(約1700億円)と推定されている。
 米調査会社コムスコアが16日発表した7月のネット動画サービスのランキングによると、視聴者数ではユーチューブなどグーグル系サイトが約1億4300万で首位。フルは2800万超にすぎない。一方、動画広告視聴数の1位はフルの約7億8300万で、グーグル系の約3.6倍に達している。
 米メディアによると、フルはすでに黒字を達成しているという。視聴無料の素人投稿ビデオでネット動画サービスの草分けとなったユーチューブは赤字続きと指摘されているが、近く黒字転換するとも見られている。



出力3割増の新型原発開発 既存設備更新にらみ
30年運転開始 経産省方針
 経済産業省は2030年の運転開始を目指す新型原子力発電所の基本仕様を固め、民間企業と本格的な開発に着手する。発電出力は従来の3割増となる世界最大級の180万キロワットに設定。稼働率も最高水準の97%を可能にする。国の原子力立国計画に基づき、国内30基弱の建て替えに生かすほか、中国やインドなどアジア各国にも売り込む。
 経産省は17日開く政府の原子力委員会で新型原子炉の基本仕様を説明する。新型炉は経済性向上、安全性強化、環境負荷の低減の3つの目標を掲げる。15年度に詳細設計を終え、16年度以降は三菱重工業、東芝、日立製作所など重電各社が開発実験や安全審査などに入る。開発費は官民で約550億円を拠出する予定だ。
 新型炉は冷却水に普通の水を使う軽水炉。発電出力180万キロワット級は国内で現在稼働する最大規模の130万キロワットを上回り、米国などで計画中の150万キロワットより大きい。炉心の配置を変えたり、燃焼効率のよい燃料を投入できるような構造にしたりして出力を高める。この結果、使用済み核燃料が通常より3割減り、再処理や保管にかかるコストも削減できる。
 稼働率も高水準をめざす。現在国内原発の稼働率は約60%。柏崎刈羽原発(新潟県)の事故の影響で下がったが、もともと現在の技術では9割が限界。新型炉は燃料の燃焼効率を向上するとともに、機器の補修や改修にかかる期間を短縮することで稼働率を上げる。米国や韓国も90%台前半で推移しており、達成すれば世界最高水準になる。
 現在国内では54基の原発が稼働しており、総発電能力は約4800万キロワット。現時点では54基のうち最大30基が建て替え対象になる見通しで、仮にすべてが180万キロワットの新型炉に切り替わっただけで5400万キロワットの発電能力を持てる。これらの稼働率が6割台から97%に達すれば、計算上、最低でも1.8倍の能力増強が期待できる。
 経産省は「最新の安全技術を備え、将来の世界市場の獲得もめざす」(直嶋正行経済産業相)としており、中印や東南アジアなどへの売り込みも急ぐ。新型炉は工期を従来の50カ月から30カ月に短縮できる見込みで、海外市場開拓の有力な手段と位置付ける。電源規模が小さい国向けに発電出力が80万キロワット程度の中型機を作って売り込むことも検討中だ。
 日本では新しい立地に原発をつくるのは地元の反対が大きく、難しい。経産省は地球温暖化対策の一環で原子力の電源全体に占める割合を現行の3割強から4割程度で安定させたい考えで、既存原発の出力を大幅に向上させることが欠かせないとみている。50年には高速増殖炉の運転開始も計画しており、新型炉の運転とあわせ電力の安定供給につなげる。



イオン、PB160品目10~15%値下げ 原料一括調達でコスト減
 イオンは2010年度中に、食品や飲料などプライベートブランド(PB=自主企画)の3%にあたる約160品目を10~15%値下げする。原材料や包装材をまとめて調達し、生産委託先のメーカーに供給するなどしてコストを下げる。09年度に約2000品目を値下げしたが、今年に入ってメーカー品の値下がりが進んだため、PBの価格優位性を維持する。
 従来は商品の仕様についてイオンが決めていたが、原材料の調達はメーカー任せのケースが多かった。小麦粉など一部については先行してイオンが一括で仕入れ供給してきたが、これを鶏、豚、牛の肉や食用油にも広げた。調達量はそれぞれ年間で数十万トン単位。容器や包装も素材や規格をそろえてコストを削る。
 生産委託先の工場集約などもあわせて実施し、10年度に入りまず約80品目を値下げ。368円のウインナーが348円、キャノーラ油が278円から248円になった。素材や仕様の変更のため単純に比較できないが、値下げ幅は平均で10~15%となる。今後は売れ筋商品のペットボトル入りお茶など食品・飲料類を中心に値下げする。



(成長鈍化 いま何が必要か) 法人税まず5%下げを 東大教授 伊藤元重氏
 日本経済の先行きに不透明感が広がってきた。4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率が大幅に鈍化し、最近の円高・株安が景気の足を引っ張る恐れも出てきた。いまの日本に必要な政策を識者に聞いた。
1ドル80円突破も
 ――国内景気の減速懸念が広がってきました。
 「米国も欧州もドルやユーロの下落を容認している。結果的に円が買われる構図だ。物価水準を加味した実質レートでみると、円は15年前よりまだ3割程度安く、円買いには安心感もある。市場が乱暴に動けば、1ドル=80円を突破しかねない」
 「最近の相場変動で最も打撃を受けそうなのが日本だ。回復に向かっていた日本経済の先行きに黄信号がともっている」
 ――円高は企業の海外進出も加速させます。
 「自動車も家電も日本国内では十分な収益を上げられない。成長市場の中国でも、収益の拡大が追いついていない企業が少なくない。アジアの市場で勝ち抜くには、グローバル化をもう一歩進める必要がある。雇用維持との兼ね合いで海外進出にためらいがあっても、為替が企業の決断に影響を及ぼす可能性がある」
 「日本の生産年齢人口は今後10年間で700万人以上も減少する。中長期的には海外の労働力を活用せざるを得ない。日本に本社機能などを残して海外に出るのは、決して悪いことではない」
 ――中国や韓国との競争も激化するでしょう。
 「日本の大手企業の話を聞くと、韓国のサムスン電子との違いは賃金コストだという。1人あたりの国内総生産(GDP)が日本より小さい国が技術力を高めてきた。それがグローバル化の怖いところだ」
 「今後20年もすれば、インドや東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済規模も日本より大きくなる。日本のGDPに対する輸出の比率は16~17%程度で、40%以上のドイツに比べて小さい。楽観的な見方をすれば、日本の輸出には増加の余地がある。産業の集約化も重要だが、日本企業のM&A(合併・買収)のスピードは遅い」
根深い需要不足
 ――政府は何をすべきでしょうか。
 「日本経済が抱える最大の問題は需要不足だ。根雪のようなデフレに特効薬はない。時間がかかっても成長戦略を着実に進めるしかない」
 「主要国の中でも高い法人課税の実効税率(現行40%程度)を見直し、来年度にまず5%引き下げるべきだ。その後も政府が引き下げの意思を示す必要がある。企業は高い税率に悩んでおり、3~5年も待ってはいられない。財政再建を進めるため、消費税率引き上げなどの見通しも示さなければならない」
 「世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)が頓挫しているため、主要国は2国間の自由貿易協定(FTA)締結に動いている。しかし日本のFTA戦略は出遅れが鮮明だ。農業の一層の自由化が避けられない」
 ――政府の危機意識が感じられません。
 「何を考えているのかというメッセージが伝わってこない。民主党の代表選を9月14日に控えていることも政治空白の一因になっているのではないか。経済のサイクルと政治のサイクルがかみ合っていない。本来なら政治的な手腕を発揮するチャンスでもあるはずだ」



日経社説
景気減速への危機感足りぬ政府・日銀
 世界経済は再び悪化する恐れが強まってきた。円高に見舞われている日本では、それを先取りして株価が大幅に下落した。
 2年前のリーマン・ショックで明確に表面化した世界的な経済・金融危機はいったん遠のいたかに見えた。だが問題の根は深く、米国でも欧州でも癒えたとはいえない。
 この世界的な成長減速の懸念に対し、民主党政権も日本銀行も危機感が足りない。
回復のリード役に陰り
 内閣府が16日に発表した4~6月期の経済成長率は、物価変動の影響を除いた実質で年率0.4%となった。1~3月期の4.4%からの大幅な成長減速で、名目では同マイナスの3.7%である。
 そのわずか6日前、日銀は金融政策決定会合で足元の景気について「海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある」というそれまでの判断を据え置いた。
 同じ日に政府が発表した月例経済報告は海外経済の回復テンポが緩やかになるとしながらも、日本の景気は「着実に持ち直してきており、自律的回復への基盤が整いつつある」と、基調判断を踏襲した。
 この1年半ほど日本経済の回復を支えてきたのは財政による景気刺激策と輸出である。ともに、これまでのようには頼りにならなくなった。エコポイント制度やエコカー補助の効果がほぼ一巡したことは4~6月の個人消費からも読み取れる。
 輸出は中国などアジア地域向けが伸び悩み、景気減速の兆しが強まる米国向けもあやしくなってきた。米欧中とも自国通貨の下落を黙認しているうえに、南欧諸国の金融・財政リスクが高い。このため日本円が実力以上に買われて円高となり、輸出企業を苦しめている。
 景気回復のリード役に確実に陰りが広がっている。政府・日銀の景気判断は極めて甘いのではないか。
 米国では「現状は(19世紀後半と1930年代に次ぐ)史上3番目の恐慌の初期段階にあるのではないか」(ノーベル経済学賞のクルーグマン・プリンストン大教授)という見方もある。その当否はともかく、10年ほど前から世界各国で急膨張した債務を今、調整中である事実も考えれば二番底、三番底もありうるとみておいたほうがよい。
 現実の日本の政策運営はといえば景気判断が甘いだけでなく、危機に備える気構えも体制も著しく弱いように思える。先週、円相場が15年来の高値をつけたときも、菅直人首相をはじめ政府関係者は「懸念の表明」という口先介入で時間稼ぎをするのにとどまった。
 民主党政権は子ども手当や高速道路無料化など公約した内政を優先する。それに集中するあまり、円高や海外経済の減速という外的な衝撃への感度が鈍いのではないか。
 強まる景気二番底の懸念に備えて政府・日銀がまず手をつけるべきは円高に歯止めをかけることだ。円高は輸出関連企業の収益を圧迫するだけでなく、放置すれば製造業が生産拠点を海外に移すのを助長し、雇用などに取り返しのつかない悪影響を及ぼす。
 「同じものを買うのにいくらかかるか」という発想から算出する円の理論的な価値、いわゆる購買力平価は1ドル=115円程度(経済協力開発機構)。競争力が強い輸出企業に単純には当てはめられないが、85円台はすでに実力以上だろう。
したたかな通貨外交を
 日銀は円高の阻止へ金融緩和策をとる余地がまだあるとみられる。財務省は外国為替市場への介入をためらうべきではない。介入の際は市場に散布した円資金を日銀が吸い上げず介入効果を高めるのが望ましい。自国通貨安を黙認する米欧や中国に対し、自らを防衛するのは当然だ。
 財務省は2003年から04年にかけ35兆円の円売り・ドル買い介入をした。今はオバマ政権が5年で輸出倍増の方針を掲げており、為替介入に米国の理解を得にくいのは想像に難くない。しかし日米は経済の面で幅広く結びついており、米国と何らかの取引をする材料はあるはず。
 そのために政府は通貨外交の戦略を持つ必要がある。それは6月につくった成長戦略の実行にも欠かせない。外国との過酷な競争に生き残るため、したたかな計算と行動で国民をしっかり守ってほしい。
 もし景気が深い二番底に陥る場合は、長期的な財政健全化の目標を変えず、短期的に国債発行を基に「いずれ必要な事業」を繰り上げ実施するのもやむをえない。病院や学校の耐震化や、東京外郭環状道の整備などだ。その際は日銀が債券市場からの国債購入を増やすなど政府と足並みをそろえることも大切だ。
 成長を促す改革や無駄な歳出の削減など構造政策とともに、景気の変動に機動的に対応する柔軟な政策運営が政府・日銀に求められる。
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