日本勢の電子書籍端末に「PC-98」化の懸念

日本勢の電子書籍端末に「PC-98」化の懸念
世界を相手にしたハードウエアと言えるのか?
 小説や雑誌のインターネット配信を巡るニュースが日ごとに増えている。米アップルの「iPad(アイパッド)」、あるいは「iPhone(アイフォーン)」を筆頭に、書籍データの閲覧が可能な携帯電話や多機能情報端末の登場が相次ぎ、多くのメディアで「電子書籍元年」と伝えられているのはご存じの通り。
 インプレスR&Dによれば、日本の電子書籍市場は現在574億円で、2014年には1300億円規模に膨らむ見込みだという。
 ただ、盛り上がりの一方で、ある懸念が浮上している。それは書籍を読む端末なのだ。今回は電子書籍に不可欠な存在、ハード面にスポットを当ててみたい。
「電子書籍化」のオファーが来た
 「アイバさんの既刊を電子書籍化する企画が進行中です。ついては・・・」
 先月、筆者の元にこんな趣旨の連絡があった。数年前に筆者の小説を発売した版元からだ。この作品を電子書籍化し、早ければ来春にも再び発売するという。
 この小説は、既に筆者と他の出版社の間で文庫化の話が進んでいたが、電子書籍と文庫の権利を別々に管理することが可能とのことだったので、企画にゴーサインを出した次第だ。
 主要メディアで伝えられた、電子書籍を巡る主立った企業の連携、相関図は以下のようになる。
 まずは米国勢。「アップル」(端末は「iPad」「iPhone」)と「アマゾン」(端末は「Kindle(キンドル)」)が有力なのはご存じの通りだ。
 日本勢では、「ソニー/KDDI/凸版印刷/朝日新聞社」「東芝/凸版印刷」「シャープ/カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)」等々の陣営が事業化に向けて名乗りを上げている。現点で詳細は明かせないが、これらの陣営の1つから、拙著の優先配信が始まる見込み。
 筆者は新聞や雑誌での連載を抱えているほか、複数の小説をリリースしてきたこともあり、紙媒体に対する愛着は非常に強い。
 一方、電子書籍という新たな潮流とも無縁ではない。当欄をはじめ、ネット媒体で複数の連載を持っているからで、紙媒体と電子書籍とがうまく共存していくことを願う1人だ。
 出版不況の折り、電子書籍というチャネルを通じ、より多くの読者に拙著を知ってもらいたいというのが本音でもあり、これが先の電子書籍化のオファーを請けた最大の動機なのだ。
かつて「国民機」とも呼ばれたパソコン
 拙著の電子書籍化の企画が動き始めて以降、筆者は民生用電機や電子部品に詳しい旧知のアナリストたちに、日本勢の端末事情について尋ねた。すると意外な答えが返ってきたのだ。
シャープが12月に発売する電子書籍専用端末「GALAPAGOS(ガラパゴス)」〔AFPBB News〕
 曰く、「日本勢の端末は、かつて国民機とも呼ばれたパソコン『PC-98』のようになってしまうかもしれない」・・・。
 キーワードは、「ハードの世界標準」である。
 小説を例にとってみよう。日本の小説の大半は縦書きであり、無数の読み仮名、脚注等の日本語独特の要素を含んでいる。電子書籍を作るに当たり、こうした要因が、特殊な言語表記の処理に長けた様々な業界による「日系企業連合」の背景になっている。
 ただ、旧知のネタ元によれば、この要素がクセモノだというのだ。
 パソコンが個人向けとして普及し始めた当時、CPUの処理性能(CPUがソフトウエアを走らせるスピード)は現在よりも格段に劣っていた。そのため日本語の変換や表示を高速に行うのには、ハードウエアとしての処理が必要だった。
 当時、NECが開発した日本独自仕様のパソコン「PC-98」シリーズは、そうした高い日本語処理性能を持ち、圧倒的なシェアを誇っていた。
 ただ、その後、CPUとOSの性能が飛躍的に向上するとともに、海外メーカーのパソコンの日本語処理速度もレベルアップした。そんな中で、マイクロソフトのOS「Windows」を搭載したパソコンが日本でもシェアを高め、PC-98はやがて市場から駆逐されていく。
「iPad、ギャラクシーとその他大勢」という構図
 こうした構図を電子書籍向けの端末に置き換えてみよう。
 複数のアナリストに取材したところ、その大半からは「日本メーカーの端末は競争力に乏しい」との答えが返ってきた。その理由は、「1億人の市場のみをターゲットにしたものであり、アップルのiPadや、サムスンのGalaxy(ギャラクシー)のように数十億人のユーザーを想定した商品になっていない」というのだ。
 実際、筆者も某日系メーカーの端末に触れてみたが、日頃愛用しているiPadよりもズームやその他の主要動作が遅かった。平たく言えば、操作時の「サクサク感」が格段に劣っているとの印象を受けた。
 アマゾンのキンドルのように「読書専用」として機能を絞り込んだわけではない。iPadやギャラクシーのように「読書もできる多機能端末」を志向したものの、「その性能が中途半端」とアナリスト連は見ているのだ。
 某メーカー担当者が匿名を条件にこんな内情を明かしてくれた。「世界市場向けではないため、部材調達で規模のメリットを生かせなかったし、開発費も限定的にならざるを得なかった」。お叱りを承知の上で言えば、電子書籍の日本語専用端末は「そこそこの商品」というわけだ。
 今後、書籍の電子化が増加していくのは間違いない。ただ、日本の場合、この動きが諸外国のように加速するとは考えにくい。そう言い切るのは暴論だろうか。
 データを走らせる専用端末が企画当初から「そこそこ」であれば、消費者は見向きもしないはず。実際、筆者はiPadを上回る機能性、あるいは同等の性能がなければ、新たな端末を買い求めようとは思わない。むしろ、読書専用と割り切った端末を選ぶ。
 そして、コンテンツを供給する作家の立場としては、日本語専用端末の普及の度合い、ユーザーの意見を加味しつつ、今後の自作の電子化に向き合っていく腹積もりだ。



TPP「交渉参加」表明見送り 出遅れ日本相手にされず、門前払いも
 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への「交渉参加」に踏み込めなかったことで、日本は参加国から相手にされず、ルールづくりに大きく乗り遅れるのは避けられない。交渉は来年11月の合意に向け着々と進行。米国は、農業問題を抱える日本が入れば、「スピードが遅れる」とあからさまな迷惑顔を見せている。このままでは米国主導で決まった枠組みを「丸のみ」するか、「不参加」という選択を迫られる恐れがある。
 「(菅直人首相の所信表明の)『参加検討』からほとんど前進していない。これではお話にならない」
 経済産業省幹部は、失望感を隠さない。
 原則としてすべての関税撤廃を目指すTPPは、2国間の経済連携協定(EPA)のように、コメなどの特定分野を例外扱いにした形での交渉参加は認められない。しかも参加を表明してもすぐに交渉に入れるわけではなく、参加9カ国と協議し、それぞれ承認を得る必要がある。
 10月に交渉参加が認められたマレーシアは、政府調達など非関税障壁分野の自由化方針を強くアピール。一方、カナダは酪農などの市場開放が十分でないとの理由で参加を断られた。
 外務省幹部は、「市場開放への相当の覚悟を示す必要がある」と指摘する。交渉参加を前提としない「協議」を申し入れても、カナダのように門前払いになる可能性がある。
 実際、米政府は日本の参加を表向きは歓迎しながら、「『ハードルを下げるつもりはない。農業問題を本当にクリアできるのか』との疑念を伝えてきている」(日本政府筋)という。方針決定をめぐる迷走で、米国がさらに不信を深めるのは必至だ。
 米国など参加9カ国は、今後6回の会合を行い、来年11月にハワイで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)でのTPP妥結を目指している。
 これに対し、日本がTPP参加で打撃を受ける農業の強化策を打ち出すのは、来年6月。「国を開くときは先に対策があって、その後に交渉、批准がある」(玄葉光一郎国家戦略担当相)というスピード感が欠如した対応では、TPPのルールづくりにまったく関与できない。
 「TPPに参加しないと日本は世界の孤児になる。政府関係者には国益をよく考えてほしい」(米倉弘昌日本経団連会長)
 出遅れが、国際競争力の低下に直結する経済界の危機感は菅政権には届いていない。



ブラジル 好調経済が生んだ女性大統領(11月7日付・読売社説)
 21世紀の世界経済を牽(けん)引(いん)する南米の大国ブラジルに、女性大統領が生まれることになった。
 ルラ大統領の任期満了に伴う大統領選挙で、与党・労働者党のジルマ・ルセフ元官房長官が先月、決選投票の末に野党候補を下し、当選した。来年1月に就任する。
 ルセフ氏が継承するのは、今年7%台の成長が見込まれる、世界でも有数の好調な経済だ。当選後の記者会見では、「経済の安定成長と貧困の撲滅、ブラジルの国際的な地位の向上に努める」と、ルラ路線の継続を約束した。
 元左翼活動家から行政官に転身したルセフ氏は、行政能力こそ折り紙付きだが、政治家としての能力は未知数だ。
 当選できたのは、圧倒的多数の国民が支持するルラ現大統領が後ろ盾になっていたことが大きい。独り立ちしても指導力を発揮していくことが求められよう。
 “師匠”のルラ氏は立志伝中の人物だ。貧しい家庭に育ち、旋盤工から労働組合の闘士を経て、4度目の挑戦で大統領になった。
 就任当時は急進左派と警戒されたが、その経済政策は現実的で、激しいインフレを収束させたカルドゾ前政権の財政安定化政策を踏襲し、世界10位内の経済大国へ発展させた。債務危機の常連国は、純債権国へと面貌(めんぼう)を一新した。
 その繁栄を背景に、低所得者層へ生活支援を行って所得水準を向上させた結果、中間層は約1億人に拡大した。
 国際社会では、開発途上国の代表としての発言力を強めた。
 ブラジルは、世界20か国・地域(G20)首脳会議の一員であり、日本やインド、ドイツと組んで、国連安全保障理事会の改革に取り組んでいる。ロシア、インド、中国とは新興4か国(BRICs)首脳会議を開いている。
 2014年のサッカーW杯、16年のリオデジャネイロ夏季五輪の開催は一層の飛躍につながる。
 ブラジルは、鉄鉱石やボーキサイト、レアアースなど豊富な鉱物資源を持ち、近年は、深海油田の開発が進んでいる。
 資源の調達先としても、巨大な消費市場としても、日本には重要な国だが、中国や韓国、欧米各国との競争は激しくなっている。
 日本は、移民100年の歴史などを通じてなじみが深い。そのきずなは最大限に生かしたい。女性大統領の登場を機に、省エネや農業開発、環境ビジネス、高速鉄道、宇宙開発など各分野で、両国関係をさらに進展させるべきだ。

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