通信大手の事業強化で変わる米クラウド競争の勢力図

通信大手の事業強化で変わる米クラウド競争の勢力図
 米大手通信会社のAT&Tとベライゾングループが海外事業を強化し、国際通信サービス市場の話題をさらっている。国際通信には、電話サービスの現地展開から国際データ通信網の整備まで多様な分野があるが、今回はネットワーク経由でソフトの機能を提供する「クラウドコンピューティング」の基盤となるデータセンターの拡張が主役となっている。
AT&Tとベライゾンが海外クラウドを強化
 AT&Tは10月、法人ユーザー向けのクラウドサービスやホスティングの需要増に対応し、ロンドンでは2カ所目となる国際データセンターを開設した。法人サービス部門のAT&Tビジネスでは、独SAPや米オラクルなどが提供する統合基幹業務システム(ERP)のホスティングサービスが人気を集めている。
 ロンドンのデータセンターは、4月にAT&Tが発表した国際事業整備計画の一環あたる。同計画の投資規模は2010年度だけで総額10億ドル(約827億円)に上り、多国籍企業や中小企業向けサービスの強化を狙う。クラウドベースでアプリケーションを提供するサービスのほか、ホスティングしたサーバーの運用を請け負う「マネージドホスティング」、大型スクリーンなどを使うビデオ会議の「テレプレゼンス」、携帯・固定電話や電子メール、ビデオ会議など企業通信を統合的に管理する「ユニファイド・コミュニケーション」を追加し、セキュリティー機能の充実も図っている。米国の多国籍企業による海外ビジネス展開を支援するため、データ通信を含む携帯電話と無線LANの国際ローミングにも力を入れている。
 ベライゾングループの法人事業部門であるベライゾンビジネスは10月、「CaaS(Computing as a Service)」と呼ぶ、クラウド・データセンターの大規模拡張計画を発表した。米国内を中心に進めてきたクラウド・データセンターの整備を国外にも展開する。建設済みのアムステルダム(オランダ)に加え、需要が拡大している環太平洋地区の香港でも10月にクラウド・データセンターを稼働させた。さらに11年には米サンノゼ、ロンドン、キャンベラ(オーストラリア)にも展開する。
IBMやHPと正面から競合
 米大手通信会社が国外のデータセンターを強化するのは、国際事業を展開する中堅以上の法人ユーザーがクラウドを使ったシステムに移行しているためだ。ただしこれらのユーザーはまだ、基幹業務ソフトをクラウドに載せ替えるのは技術的にもコスト的にも時期尚早と考えている。人事管理や顧客管理、社内コミュニケーションなどシステムの一部をクラウド・データセンターに移行させながら、コストダウンとシステムの機動性強化を進めている。
 国際クラウド市場に乗り出しているのは通信大手だけではない。米IBMや米ヒューレット・パッカード(HP)などの大手IT企業が、データセンターの効率化や自動化を強みに、通信会社と競合している。これに対しAT&Tやベライゾンは携帯電話や無線LANローミング、セキュリティーの強化など通信を核にしたサービスで違いを出している。ベライゾンビジネスは「MPLS(multiprotocol label switching)」と呼ぶ技術で信頼性を高めた専用ネットワークを用意し、クラウドサービスの充実を図っている。
 米大手通信会社は、国際データセンター市場が今後も成長を続け拡張競争が続くと予想している。日本でもNTTグループなどが米国やアジアを中心にデータセンターの拡張を進めている。
 米通信大手が国際ビジネスに力を入れる背景には、長引く景気低迷という経済環境もある。AT&Tやベライゾンは過去5年にわたりIPTVを軸とする放送事業に力を入れてきた。携帯電話では、第3世代(3G)ネットワークの機能強化や第4世代(4G)ネットワークへの移行準備を進めている。しかしこれらはどれも消費者向けサービスであり、なかなか回復しない米国経済のなかで伸び悩んでいる。
 そのため各社は、厳しい経済環境でも着実に売り上げを確保できる法人市場で収益拡大を目指している。国際クラウド・データセンターがにわかに注目を集めているのは、通信各社の懐事情を反映しているといえるだろう。
政府調達クラウドの獲得競争も白熱
 法人向け国際クラウドの一方で、米国内では政府が調達するクラウドの獲得競争が激しくなっている。10月29日、米グーグルは同社サービスを販売するオニックスネットワーキングとともに「クラウド・アプリケーションの調達過程が不公平である」として、国有資産を管理する米内務省を連邦裁判所に訴えた。
 現在、米国の連邦政府機関や各州政府は、メールシステムやドキュメント共有などでクラウドサービスの導入を検討している。ただし公共機関や自治体の情報システムではこれまでマイクロソフトのアプリケーションが支配的な地位を占めており、自治体などは同社のクラウドサービスに移行しようとする傾向が強い。
 グーグルはネット経由で電子メールなどソフトの機能を提供するサービス「グーグル・アップス」を中心に政府系調達に食い込みを図ってきたが、なかなか大きな成果は上げられていない。内務省を不公平調達で訴えたのには、裁判を通じてグーグルのサービスが政府調達の基準に十分適合していると証明しようとする狙いがある。
 ベライゾンビジネスは9月、11年第1四半期に米連邦政府向けクラウド・データセンターをマイアミ(フロリダ州)とカルペパー(バージニア州)にも開設すると発表した。現在も政府系クラウドのビジネスは着実に拡大しており、通信会社やIT企業に加えてアプリケーション企業までが入り乱れて、獲得競争を繰り広げている。
 ソフトウエアからハードウエア、通信回線まで多岐にわたるクラウド・データセンターは、コスト削減や省エネなど具体的な効果が見えやすいため法人ユーザーの支持を集めている。一方、日米の携帯電話会社は次世代通信サービスの「LTEなど高速データ通信網の建設に着手している。そのため、大手通信事業者はクラウド・データセンターから「クラウドモバイル」へブームを発展させようと狙っている。



シャープ、中国で最新鋭液晶パネル工場建設向け調査
 【北京=多部田俊輔】シャープが中国で最新鋭の「第10世代」の液晶パネル工場の建設に向けた調査を始めていることが19日、明らかになった。南京市当局が新工場建設の環境影響調査を実施する公告をインターネット上に掲載した。新工場の投資額は360億元(約4500億円)。政府の認可が得られれば、3年後をめどに稼働させる方向だという。
 南京市環境保護科学研究院がネット上に掲載した環境影響調査の公告によって、シャープの調査が明らかになった。公告によると、設立準備中の「南京中電熊猫夏普(シャープ)液晶顕示科技」が、経済開発区である「南京仙林高科技産業園」に第10世代の液晶パネル工場建設を計画。月産能力は8万枚を見込んでいる。ただシャープは「そういう計画はない」(広報室)としている。
 南京中電熊猫夏普の設立準備担当者は19日、「南京中電熊猫液晶顕示科技とシャープで計画をまとめたばかりで、まだ中国政府の許可を得ていない。できれば1年内に許可を得て建設を始め、着工から2年内に稼働させたい」と説明した。南京市当局は環境調査を進め、パブリックコメントを求めるという。
 シャープは2009年に「第8世代」の液晶パネルの生産を検討すると発表して中国政府に建設許可を申請中。中国メディアによると、中国政府は韓国のLGディスプレーとサムスン電子に許可を出す方針。シャープの許可取得は難航しているため、第10世代で巻き返しを狙うとの見方も出ている。
 第10世代は世界最大のガラス基板1枚から40型パネルを18枚とることができる最新鋭技術で、シャープが09年10月に堺工場で稼働を始めた。



トヨタ、エンジン生産で世界に新型ライン 少量でも採算
 トヨタ自動車は多品種少量生産でも採算が合う新たなエンジン生産ラインを世界展開する。これまで量産効果を引き出すため1ラインあたりの年間生産能力が20万基を最小単位としてきたが、10万基でも採算が合う高効率ラインに切り替える。まず国内の主力工場で年内に稼働し、アジアやブラジルなど新興国でも工場の新設や設備更新時に順次導入する。エンジンのつくり分けが必要なハイブリッド車の相次ぐ投入にも対応、環境車分野でのリードを拡大する。
 エンジンは生産規模が収益性に直結するが、トヨタは将来の生産拡大を前提にした「重装備型」のラインが多いため、採算が合う稼働率の維持が比較的難しく、減価償却費の負担も重かった。
 一方、海外拠点では中国、インド、ブラジルといった成長市場で車両の組み立てと並び、エンジンなど基幹部品の生産能力拡大が急務になっている。従来のラインは大型投資が必要で、削減してきた固定費を再び膨らましかねない。新ラインを需要に応じて段階的に設置し、減価償却費の増加を最小限に抑える。
 日本でトヨタの年産能力は車両組み立てが320万台だが、エンジンは海外拠点に供給する輸出分も含め600万基。1ドル=80円台前半で長期化する円高もあり、同社は中長期で「(エンジンや変速機など)ユニットの現地調達を海外拠点で加速する」(小沢哲副社長)方針を示している。
 新車投入のタイミングなどに伴い新ラインを順次導入し、小刻みにエンジンの生産拠点を需要地に移して国内に残る余剰感を解消するほか、国内外で激しく変動する新車販売や為替相場に対しても、一定の収益力を確保できる体制にする。



【産経主張】民主党の統治能力 国民の我慢も限界にきた
 民主党政権の統治能力の欠如がまた露呈し、政権運営がダッチロール状態になってきた。
 菅直人首相は19日の閣僚懇談会で「緊張感を持って取り組むように」と閣僚たちに指示したが、タガがはずれている状況をつくり出しているのは、政権を担当する能力が欠落しているためにほかならない。
 問題ある閣僚の続出が、そのことを端的に示している。もはや弥縫(びほう)策では、この政権の行き詰まりを打破することは望めない。国民の我慢が限界にきていることを為政者は深く認識すべきだ。
 国会の焦点は、答弁を軽視した地元の会合での発言が問題視され、閣僚の資質が問われている柳田稔法相の進退問題だ。
 自民党は22日に衆院に不信任決議案、参院に問責決議案を提出するが、野党が多数の参院では問責が可決される可能性がある。
 政府・与党は当初、法相の進退は問わないと判断、柳田氏も参院予算委員会で発言を陳謝したことから、「検察改革も大きな責務。成し遂げなければならない」と辞任しない考えを示していた。
 だが、その後、補正予算案の成立を確実にするためには、問責決議案の動きに合わせて、柳田氏を更迭することは避けられないとの判断へと転換した。
 当初の擁護姿勢は、柳田氏が辞任に追い込まれれば、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件やビデオ流出対応をめぐり、衆院で不信任決議案を出された仙谷由人官房長官や馬淵澄夫国土交通相らに対する問責決議案提出に発展しかねず、それを防ぐためだったという。
 その場しのぎの対応が繰り返されている。こうしたやり方を菅政権が取り続けていることで求心力を失っている。衝突事件で公務執行妨害の容疑で逮捕した中国人船長を釈放したことや、胡錦濤国家主席の来日とアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への出席を最優先させた対中姿勢も同じ文脈といえる。
 財政再建や社会保障など与野党で協議して解決すべき課題は少なくない。早急に取り組まなければ危機を脱することができない。にもかかわらず、先送り手法しかとらないのは極めて残念だ。
 民主党政権には無理なのであれば、国民の利益につながる政策を実現するため、国民の信を問い直すしかあるまい。
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