かつて世界を制覇した日本半導体産業の凋落

かつて世界を制覇した日本半導体産業の凋落
 1980年代の末に刊行された『Made in America』は、日本の製造業を高く評価した。特に絶賛したのは、半導体産業である。
 確かに、その当時の日本の半導体メーカーの活躍ぶりは目覚ましかった。90年における半導体の売上高の世界シェアを見ると、NEC、東芝、モトローラ、日立製作所の順であり、日本のトップ3社で、世界の約3割のシェアを占めていた。
 ところが、現在のトップ3社は、インテル、サムスン電子、テキサスインスツルメントだ。この3社で、世界シェアの約4分の1になる。
 これほど顕著な変化が、この20年の間に生じたのだ。これは、日本の地盤沈下を象徴する変化である。
 日本の凋落を論じるとき引き合いに出されるのは、一人当たりGDPの相対地位の低下などのマクロ的指標だ。これは確かに重要ではあるが抽象的である。したがって、なぜ変化が起きたのかをとらえにくい。
 それに対して、半導体産業における敗北は、具体的な事象であり原因の所在も確かめやすい。そこで、以下ではそれについて考えてみよう。
 最初に注意すべきは、『Made in America』が絶賛した日本企業の特性(短期利益に左右されない、人材が企業から離れない、銀行との間で株式の持ち合いがある、など)は、今でも続いていることだ。それにもかかわらず、逆転現象が生じたのである。それはなぜだろうか?
 日本の産業競争力が低下した理由として、企業再編が進まなかったことが指摘されることがある。しかし、半導体分野では再編が進められた。DRAM(メモリ素子)については、NECと日立が99年にエルピーダメモリを設立し、システムLSIについては、日立と三菱電機が03年にルネサステクノロジを設立した(10年にはNECも加わり、ルネサスエレクトロニクスとなった)。しかし、日本の劣勢を挽回することはできなかった。異なる企業の人材がうまく融和できなかったということもあるが、より大きな原因は、従来のビジネスモデルを変えられなかったことだ。
 日本企業の特性は変わらなかったのだが、80年代にはプラスに作用したその特性が、90年代からは逆向きに作用したとしか考えようがない。
 実際、以下で述べるように、90年代に技術体系と世界経済の大きな変化が生じたのである。この変化は、半導体ビジネスに大きな変化を要求するものであった。それにもかかわらず、日本企業は、それまでのビジネスモデルを継続したのである。
 日本企業の長所は短期的利益に左右されないことだと言われた。それはその通りなのだが、実は的確な長期的視点を持っていたわけでもなかった。単に市場の条件変化に反応しないというだけのことだったのだ。
先端的製品と低価格製品の両面で敗北
 80年代から90年代にかけて、技術体系に大きな変化が生じた。それは、ITの登場である。これは、二つの要素を持っている。一つは大型コンピュータからPC(パソコン)への変化であり、いま一つは電話からインターネットへの変化だ。
 DRAMにおいて日本が覇権をとったのは、大型コンピュータ用のものだ。ここでは、信頼性の高い製品が求められる。ところが90年代になって、PC用のDRAMの需要が増えた。これは大型コンピュータ用ほどの信頼性は要求されず、その代わりに、価格が安いことが求められた。
 この変化が生じたとき、日本は韓国、台湾のメーカーに太刀打ちできなくなったのだ。これらの国・地域の賃金は日本より低く、それゆえ低価格の製品を作ることができる。サムスンは、それに加えて、巨額の設備投資によって製造単価を引き下げた。なお、新興国メーカーが伸びたのは、為替レートの影響もある(もっとも07年までは円も安くなったから、日本のメーカーも為替レートの恩恵を受けたわけだ)。
 MPU(PCで用いられる超小型演算処理装置)は、半導体のチップだが、そこに書き込まれている計算回路の設計が重要な意味を持つ。インテルは、すでに80年代にDRAMから撤退し、MPUに特化した。
 DRAMのように製造工程が重要な製造業において日本は強いが、MPUのようにソフトウエア的要素が重要な製造業では日本は弱い。つまり日本は、ブルーカラー的製造工程には強いが、ホワイトカラー的な設計過程では弱いのである。
 こうして、日本は低価格製品が必要となったDRAMで新興国に敗れ、ソフトウエアの比重が高いMPUでアメリカに敗れた。結局、日本が強かったのは、基本的な技術が確立されている高性能製品を、効率よく生産することだったのだ。
 ところで、以上で述べたことは、半導体産業に限ったことではない。同じことが、今後自動車について起こる可能性がある。従来のガソリン車やハイブリッド車は機械的に複雑な製品であり、こうした製品の製造過程での「すり合わせ」に日本は強い。しかし、今後主流になる可能性がある電気自動車は、これらとは異質の製品だ。それはバッテリーなど個々の部品には先端技術が必要とされるが、機械的には単純な製品なのである。そして個々の部品に関しては、シリコンバレーなどのベンチャー企業が強い。したがって、MPUでインテルに負けたのとの同じことが、自動車でも起こる可能性がある。
 他方で、新興国での需要は、低価格車が中心だ。この面では、PC用のDRAMで韓国や台湾に負けたように、中国の自動車メーカーに負ける可能性がある。
 こうして、技術的にきわめて高度なものと、廉価品の大量生産という二つの分野に自動車が分離する可能性がある。そうなれば、自動車産業が半導体の二の舞になる可能性は、決して否定できない。
ソフトウエア産業に弱い日本
 MPUではソフトの比重が高く、この分野は日本が得意でないと、上で述べた。これは、製造業の範囲内の問題だが、もう少し視野を広げてIT一般を見ると、ソフトウエア産業の比重の増加は、きわめて顕著だ。そして、この分野で日本は大きく立ち遅れた。
 PCのOS(基本ソフト)に関して、マイクロソフトのウインドウズが標準的なものとして確立された。こうなると、それまでPCの「国民機」と呼ばれて日本市場を制覇したNECの9801のようなPCは、劣勢に立たされることになった。
 インターネット面では、日本の立ち遅れはさらに顕著だ。この面では、シリコンバレーのベンチャー企業の活躍が目覚ましい。『Made in America』は、「サンフランシスコ地域のベンチャーキャピタルが成熟企業からの人材の離脱を促すので問題」と言ったのだが、まさにそれらの人材がIT革命を実現したのだ。
 1990年にブラウザを提供するベンチャー企業ネットスケープが彗星のごとく登場し、ゴールドラッシュがカリフォルニアに再来したことを人々に実感させた。スタンフォード大学を中心とするシリコンバレーで、ベンチャー企業がITという新しい産業を立ち上げたのである。
 他方日本では、マイクロソフト、ヤフー、グーグル、アマゾンのようにソフトウエアに特化した先端的企業は、結局のところ現われなかった。こうして日本は、ITにおいて決定的な遅れをとることになったのである。



製造設備「高齢化」進む
金融危機後、企業が国内投資抑制 経済成長の足かせに
 製造業が保有する設備が老朽化し始めている。工場や機械が稼働してからの年数を示す設備年齢は2010年に8.6年となり、2年連続で延びる見通しだ。リーマン・ショック後の世界的な需要の減少で企業が設備の更新を手控えたことが背景。円高に伴う設備投資の海外シフトにも歯止めがかからず、投資を原動力とする日本経済の成長力が高まらない要因になっている。
東海圏など顕著
 内閣府の統計などをもとに日本政策投資銀行が試算したところ、製造業の設備年齢は08年の8.2年を底に高齢化に転じ、10年時点で8.6年となった。04年の8.7年をピークに若返りが進んだがリーマン・ショック後に再び高齢化に転じている。
 金融危機で需要が急減した自動車業界などで設備投資を抑制する傾向が強まっている。地域別の設備年齢を見ると、自動車産業が集積する愛知県など東海圏では10年に8.1年と08年と比べ0.7年延びる見通し。首都圏は10年に10.0年で08年と比べ0.5年延びる。一方でシャープのテレビ用液晶パネル工場(堺市)投資などで関西圏は金融危機後も「若返り」傾向を維持し、10年は8.6年となる。



英エコノミスト「未知の領域に踏み込む日本」
 20日発売の英誌エコノミスト(本紙特約)は「未知の領域に踏み込む日本」と題した日本特集を掲載した。
 少子高齢化が、日本経済の再活性化やデフレ脱却の大きな障害になっており、日本はこの問題に最優先で取り組む必要があると警告した。
 同誌の本格的な日本特集は、「日はまた昇る」と日本経済の再生に明るい見通しを示した2005年以来だ。
 対照的に今回は、若者が新卒で就職できないと一生厳しい状況が続く「一発勝負」の雇用の現状や、企業に残る階層構造など解決すべき課題は山積していると指摘した。その上、日本の「穏やかな衰退」を食い止めるには生産性の向上や女性の活用など「文化的な革命が必要」と結論付けた。



ガンホー、高機能携帯向け交流サイト運営
 オンラインゲーム開発のガンホー・オンライン・エンターテイメントは12月をメドに、高機能携帯電話(スマートフォン)向け交流サイト(SNS)の運営を始める。ソフトバンクが販売している米アップルのiPhone(アイフォーン)などに対応する。自分の写真やネット上の自分の分身(アバター)を使い友人と交流できる。同事業をゲームに次ぐ新たな収益源にする。
 ミニブログのツイッターと連携しアバターやゲームなどのアイテムを使った交流を楽しめる。利用料は無料だが、アイテムに課金する。将来はNTTドコモなどのスマートフォンにも対応する予定。



成田空港、着陸料を最大半減 ハブ化へ競争力強化
時間延長も検討
 成田国際空港会社は来年3月末にも、航空会社の国際線の新規就航・増便分の着陸料を最大で半額にする方針だ。まず1年程度実施し、その後延長するかを検討する。韓国の仁川空港など空港同士の国際競争が激しくなる中、着陸料を大幅に値下げして、海外の航空会社を呼び込み、拠点(ハブ)空港化を目指す。運航時間の延長も検討する。
成田空港は、国際ハブ空港化を目指して機能強化を図っている
 成田空港会社は国際線に新たに就航したり、既存路線を増便したりする航空会社から徴収する着陸料について、通常の3~5割を割引する方向で調整している。割引は格安航空会社だけでなく、既存の航空会社も対象となる。期間は1年程度が有力だ。3年間にする可能性もある。



政府、NTT株3%売却へ 来年度予算の財源に
 政府は保有するNTT株の約3%を売却する方針を固めた。約1800億円の収入を見込んでおり、来年度予算の財源として活用する方針だ。NTTは今月、発行済み株式の7.97%を消却したためNTT株数が減少し、政府保有の持ち株比率が33.7%から、36.6%に上昇した。政府は法律でNTT株の3分の1以上の保有を義務付けられており、今回の持ち株比率上昇で3分の1を上回った余剰分を売却する。
 すでにNTTは株式を買い取る意向を打診しており、市場に放出しない「立会外取引」でNTTが自社株買いを行う方針。19日の終値(3860円)で換算すると、売却額は約1840億円となるが、政府は売却のタイミングを株価など市場の動向を見ながら決める。
 政府によるNTT株の売却は、2005年以来。来年度の予算編成で財源の捻出(ねんしゅつ)が難航するなか、売却収入を財源としたい考えだ。
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