中国での携帯向け広告、ドコモが明かす成功の秘訣

中国での携帯向け広告、ドコモが明かす成功の秘訣
 中国に進出する日本企業が増えるのに歩調を合わせ、日本の携帯電話会社も中国市場での活動を積極化している。NTTドコモは2008年、上海に現地法人「都客夢(上海)通信技術有限公司(ドコモチャイナ)」を設立した。本業の通信サービスを手掛けない中国展開とはどういうものなのか。現地で話を聞いてみた。
 ドコモチャイナでは主に2つの業務を行っている。1つが日本からの旅行者や現地に長期滞在する日本人へのサポートだ。
 ドコモチャイナの石井良宗総経理は「上海市内にサポートデスクを開設し、日本からの渡航者に応対している。さらに、上海には約1万社に上る日系企業があるといわれており、中国で働く日本人が快適に日本語で携帯電話を使えるよう支援している」と説明する。
1年で1万4000人が来店
 上海のサポートデスクは、森ビルグループが運営する地上101階、高さ492メートルの複合ビル「上海環球金融中心(Shanghai World Financial Center)」の2階にある。6人のスタッフがいて、全員が日本語で対応する。
 日本からの観光客には充電や国際ローミングの設定方法をアドバイスすることが多いという。「09年10月25日に開設して以来、約1年で来店者数は1万4000人程度。来店理由では『充電器を日本に忘れてきてしまったので充電したい』が最も多い」とドコモチャイナの本間雅之氏は語る。
 現地で働く日本人向けには、中国の通信会社との携帯電話契約や端末購入をサポートしている。「上海には総領事館に届け出ているだけで4万8000人の長期滞在者がおり、2~3カ月の滞在者を含めると10万人ともいわれる。彼らが中国国内でも慣れた日本語で携帯電話を使えるようにお手伝いしている」(本間氏)という。
中国版「iチャネル」も無償提供
 中国では、日本から携帯電話を持ち込んで国際ローミングで使うこともできるが、通信料金は国内通話に比べて圧倒的に高くなる。そこでドコモチャイナでは、NTTドコモと同じW-CDMA方式のチャイナユニコムなど現地携帯電話会社との契約を勧めるとともに、日本語に対応した端末を紹介している。現地で売られているノキア製の端末やシャープが最近中国で発売したグーグルの携帯向けOS「アンドロイド(Android)」搭載スマートフォンが日本語入力などに対応しているという。
 さらにノキア製の端末向けには、中国版の「iチャネル」といえる機能をドコモチャイナが無償で提供し、日本や中国、上海の主要ニュースを発信している。「我々は中国で通信会社としての免許は持っていないが、現地の通信会社がいたらない部分を支援していく」と本間氏は強調する。
 日本への帰国が決まった長期滞在者には、日本ですぐに携帯電話を使えるように、あらかじめ上海のサポートデスクで契約手続きをして電話番号を決めておくサービスも提供する。その際に割引クーポンを渡し、ドコモショップで安価に端末を購入できるようにするといった施策も展開している。本間氏は「日本での新規契約者の獲得競争が厳しいなか、中国でもとれる契約はとっていきたい」と話す。
化けると大きい中国の携帯向け広告
 ドコモチャイナが中国で展開するもう1つの業務の柱が、携帯電話を活用したマーケティングのコンサルティングだ。日系メーカーなどが中国でモノを売る際のプロモーションでは、テレビや雑誌、街頭広告といった媒体があるが、携帯電話向け広告も重要になっている。しかし、多くの日系企業にとって中国の携帯電話は未知の領域で、そこをサポートする。
 中国の携帯電話契約数は8億件に達するが、まだインターネットを利用しているのは2.7億件程度にとどまる。しかし、ここにきてスマートフォンや高機能端末の普及とともに携帯向けコンテンツ市場が成長し、プロモーションでも大きな成果を上げる企業が出てきた。
 「中国のある企業は、バナー広告だけで1カ月にクルマを3000台販売するという実績を上げた。出版社がコンテンツを一部5元(約63円)で販売したところ、1カ月に1億2000万もダウンロードされ、6億元(約75億円)を売り上げたという話もある。ポテンシャルがあるだけに化けるときは本当に怖いのが中国のモバイル市場」とドコモチャイナの石悦寛氏は語る。
 ただ、やみくもに携帯電話に広告を出しても意味がないという。「8億という数字はあってないようなもの。中国の場合、沿岸部と農村部という地域の違いや属性、職業によって大きく収入が異なる。ユーザーを見極めて広告を仕掛けていくことが大切」と石氏は指摘する。
端末の価格帯別に広告を出し分ける方法も
 携帯向け広告を出す日系企業にドコモチャイナが進言するのが、「地域や端末を絞り込んで広告を配信する」という手法だ。中国では北京や上海といった都市別のほか、端末の価格帯別にも広告を出し分けることができる。例えば、4000元(約5万円)以上の端末に広告を配信すると設定すれば、富裕層に狙いを定められる。「ユーザーを絞り込むことで売り上げを20%伸ばした日系企業の例もある。携帯向けサイトを訪問したユーザーへのアンケート回収率が97%を記録したこともある。日本では考えられないことが中国では起きる」(石氏)
 とはいえ、中国のモバイル市場は立ち上がったばかりだ。石氏は「中国に進出してきた日系企業には、まずマーケティング活動を徹底するよう勧めている。半年間は可能性を探って、どれくらいのアクセスがあり、どんな反響があるかを試すことが重要だ。何が当たるかわからないし、ニッチなことをやっても大きな市場だけに日本では想像できない反響が返ってくることがある」と解説する。
 中国で事業を展開すると、独特の商慣習や知的財産侵害の横行などに戸惑うことも多い。逆に、マーケティングがうまく当たれば、大きなリターンを得られるというチャンスも十分にあるようだ。



米製造業、再活性化のカギは? 米ダウ・ケミカルCEO アンドリュー・リバリス氏に聞く 資本よりアイデア重要に
 米国の製造業の地位低下が著しい。国内総生産(GDP)に占める製造業の割合は1950年代初めは3割弱だったが、2009年は約11%。経済のソフト化の陰で、イノベーション(技術革新)の空洞化が起きていると危機感を強める経済人もいる。活発に政策提言する米化学大手、ダウ・ケミカルのアンドリュー・リバリス会長兼最高経営責任者(CEO)に聞いた。
 ――6月に製造業の再活性化策をオバマ政権に提言した。
 「貿易促進や規制改革、エネルギー戦略など7つの取り組みを『高度製造計画』として提言した。製造業が衰退すると研究開発がなくなり、人材教育も劣化する。いま米国は競争力を失う重大な危機にある」
 「米国はかつて政府が課題を設定し、産業界がそれに応える形で発展してきた。60年代は月面着陸に向けて米航空宇宙局(NASA)が設立され、航空宇宙産業やコンピューターが発達した。こうした時代のように政府と産業界が連携し、先進的な投資や人材育成を進めるべきだ」
 ――政府と企業の関係強化は正しい方向性か。
 「民間に任せきりでうまくいく時代ではない。いわば貿易戦争、経済戦争の時代だが、一方でグローバルな秩序の確立への意見交換も必要になる。政治や経済における勇気あるリーダーシップが非常に重要だ」
 ――米国で製造業の空洞化が進んだ理由は。
 「生産コストが安い場所への移転は空洞化とはいえない。真の空洞化は高度なイノベーションを他国に先行された結果生じる。韓国や台湾などハングリーな場所で技術力の高い製品が生まれ、米国の消費者はこうした製品を選んだ。米国勢は油断してイノベーションで追いつけなくなった。今後の競争は資本や労働力でなく、アイデアをどう迅速に商業化するかの勝負だ」
 ――日本の競争力をどうみる。
 「日本は現実に対し目を開きつつある。農業部門の開放の話などが日本人の口から出てくるとは想像しなかった。現実に基づいて厳しい選択をし、企業のリストラや経済の再編成を進めるべきだ。政府も意味のある形で民間にかかわり、アジェンダ(政策課題)を設定していく必要がある」
 「製造業も海外進出は果たしたが、迎え入れには成功していない。日本企業でびっくりするのは経営者がみんな日本人であることだ。当社のトップ20人には8カ国の出身者がおり、世界中からベストの人材を活用している。日本企業は真のグローバル企業になるための変身を遂げていない」
<聞き手から一言>国家間経済競争、リーダー重要に
 オバマ大統領が1月に打ち出した「輸出倍増計画」。リバリス氏はこの政策を推進する評議会のメンバーの一人でもある。官民が一体となって輸出拡大や製造業の再活性化に乗り出すさまは、米国の本気度をひしひしと感じさせる。
 世界に目を転じても、原発などの国家間セールスに官民の協調は欠かせない。「経済競争は総力戦の時代」に入ったのかもしれないが、それは癒着とは異なる。リバリス氏の指摘通り、政治や企業のリーダーシップによる高い目標設定が重要になる。



企業メセナ 文化支援での役割は大きい(11月28日付・読売社説)
 企業によるメセナ協議会が1990年に設立されて20年が過ぎた。
 以来、協議会を中心に数多くの企業が、美術館やホールの運営、芸術祭の企画、地域文化の振興など、様々な分野で社会貢献活動に一段と力を入れるようになった。
 日本には昔から、実業界の篤志家らが、教育や文化に資金を提供して育てる伝統があった。
 その多くは匿名で行われてきたが、今や企業活動にも説明責任が問われる時代だ。これまで以上に顔と個性が見える社会貢献が求められよう。
 「メセナ」は、芸術・文化支援を意味するフランス語である。
 文化庁の年間予算が約1000億円なのに対し、1年間の企業によるメセナ活動費の総額は約250億円と推計されている。少ない国の予算を企業が補う形だ。
 しかし、企業を取り巻く経営環境は厳しい。企業メセナ協議会のアンケート調査によると「経済状況の悪化で、メセナ活動が見直し・削減の方向にある」と回答した企業は40%に上っている。
 それでも「活動が定着し継続への期待が高い」「自社への信頼・評価を得ることにつながる」などの理由から、多くの企業が活動の継続を模索している。
 駅構内にアートエリアを設ける鉄道会社や、障害者参加の舞台芸術を支援する保険会社もある。
 島根県の医療用品製作会社は、石見銀山の史料を収集し、自前の資料館に展示した。これが石見銀山の世界遺産登録に貢献した。
 こうした企業にエールを送ってきた企業メセナ協議会の福原義春会長(資生堂名誉会長)が、今年の読売国際協力賞を受賞した。
 80年代後半のバブル経済の時代、土地などを買いあさる日本企業に対して、海外では「金もうけ主義」との批判が高まり、製品のボイコット運動も起きた。
 これを反省し、外国のメセナ組織と交流しながら、地道に内外で活動を続け、日本と日本企業のイメージアップに貢献したことなどが評価された。
 福原会長は、「日本の企業にも文化を大切にする心があることを示したかった」と、活動のきっかけを語っている。
 日本におけるメセナ活動の今後の課題の一つが、自治体と企業の連携を強化することだ。
 例えば、メセナ活動の経験豊富な民間の人材を、文化政策の専門家として自治体が登用するなら、行政と企業の間で、よりきめ細かな協力が可能となるだろう。
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