(゜Д゜;)y─┛~~新聞

ダウンロード違法化とBD課金の次にすべきこと(COLUMN)
 おそらく今月、知財関連の政策で2つの重要な決定が行われることになる。それに関するメディアの報道は間違いなく表層的になるだろうが、実は決定された後の動きが、日本のコンテンツ産業の将来に大きく影響するのである。その意味をあらかじめ解説しておきたい。
■違法コンテンツのダウンロード違法化は前進
 第1の決定は今国会に提出されている著作権法改正である。そこでの目玉は、ネット上にアップされている違法コンテンツをダウンロードする行為も違法化されることである。もちろん、対象は“違法と知りながら複製する”場合に限定されており、罰則規定もないため「万引きをしてはいけません」という常識的な注意書きと同じレベルの精神規定に止まっている、という問題は残る。
 しかし、ネット上に違法コンテンツが蔓延し、そのコピー/ダウンロードによりコンテンツ業界が大きな被害を受けてきたことを考えると、日本の文化の衰退を防ぐための至極当たり前の規定がようやく法的にも整備されることになる。
 おそらくネット狂信論者の人たちは引き続き反対を続けるのだろうが、まったく理解できないし、彼らの主張に正当性があるとは思えない。少なくとも、リアルの世界で同じ行為を行う人がほぼ皆無であることを考えれば、ネットだけ特別な世界であるかのように考えるのはおかしいと言わざるを得ないのではないか。
 しかし、この法改正で一件落着とは言えない。本当の問題は、法改正後に関係者がどんなアクションをするかである。これについては、2つの論点があるだろう。
■業界と国が考えるべきことがある
 1つは、罰則規定がなく精神規定に止まるなかで、違法化の条文にいかに実効性を持たせるかである。罰則規定がない以上、国がすぐにできることはほとんどない。従って、コンテンツ業界として対応することが必要になるであろう。例えば業界として違法コンテンツのアップロードとダウンロードの双方を頻繁に行っている者を徹底的に摘発する(アップロードの方が補足しやすいはず)などの断固たる態度を取ることが、リアルの世界で当たり前のマナーをネットでも普及させることにつながる。
 もう1つは、国が今後さらに踏み込んだ規制をできるかである。例えばフランスでは、ISPに対して違法ダウンロードした可能性のあるユーザーの情報を政府に提出させることを義務づけるとともに、そうしたユーザーには2回まで警告し、3回違法ダウンロードをしたらネット接続を最大1年間切断する「スリーストライク法案」が議論されている。先週の議会では否決され、近々再度評決されるようである。
 米国でも、ISPによる違法ダウンロードへの警告などの措置が議論されている。日本でも、単に違法コンテンツのダウンロードを違法化するだけでなく、これら欧米での取り組みに近い規定を設けるかどうかの検討を始める必要があるのではないか。
■ブルーレイに続き補償金の対象にすべきモノ
 第2の重要な決定は、私的録音録画補償金の対象へのブルーレイ・ディスク(BD)の追加である。一部家電メーカーの強硬な反対もあり、昨年6月の大臣合意以降も経済産業省と文化庁の間でずっともめていた懸案であるが、ようやく決着しそうな情勢になってきた。結論は、大臣合意どおりに追加することとなりそうである。しかし、これも一件落着と考えるのはあまりに早計であろう。
 私的録音録画補償金は、オリジナルと同じクオリティーのコピーが無制限に可能というデジタルの特性が、アーティストやコンテンツ制作者の所得機会を減少させることから、逸失所得を補填するために作られた制度である。
 そうした観点から考えると、おそらく今後の録画媒体の主流となるブルーレイが対象に追加されることは間違いなく前進であるが、それは録画補償金に限定された話である。
 一方の録音補償金を見ると、昔ながらのステレオは廃れてユーザーの音楽視聴手段は、iPodなどの携帯音楽プレーヤーやパソコンが中心となっている。にも関わらず、これらの機器は対象に追加されていない。これは明らかに不公平だろう。従って、ブルーレイを巡る1年越しの混乱が終わるのを契機に、録音補償金の問題についても改めて考え直す必要があるのではないか。
■コストとリスクの応分負担めざせ
 私的録音録画補償金という制度自体の見直しも課題になる。この制度はインターネットが普及するはるか前の1992年に作られたもので、ネットを誰もが使えるという環境を前提にしていない。しかし、ネットがこれだけ普及した今日では、通信事業者やISPも家電メーカーと同様にコンテンツ流通/利用の恩恵を被っているのである。
 即ち、コンテンツのバリューチェーン全体を考えると、ISPや「iTunes Store」などのプラットフォーム事業者、通信事業者などのインフラ事業者、家電メーカーなどの端末製造者、そしてユーザーがデジタルとネットの恩恵を受ける一方で、コンテンツ制作者だけが所得機会の減少などの被害を受けている。これは、コンテンツの供給システムにデジタルとネットという社会的なコストやリスクが反映されていないことにほかならない。
 そうしたなかで旧来の制度を小手先で手直しするだけでは、コンテンツのビジネスモデルも進化しにくく、結果として文化が廃れるだけである。制度自体のパラダイムシフトが必要となっているのである。
 文化庁は、コンテンツのバリューチェーンを踏まえ、そのステークホルダー全体が社会的なコストやリスクを応分に負担する制度の構築を目指すべきである。もしかしたら目指すべき将来の制度の最終的な理想型は“コピー回数無制限+コンテンツ税”といった形になるのかもしれない。



携帯電話、世界販売15%減 1―3月、新興国でも急ブレーキ
 世界市場で携帯電話機の販売が急速に落ち込んでいる。米調査会社IDCによると、2009年1―3月の世界販売台数(出荷ベース)は前年同期比15.8%減と大幅なマイナスを記録した。世界的な金融・経済危機の影響から、先進国での落ち込みが激しいうえ、市場拡大が続いていた新興国などでも販売に急ブレーキがかかった。
 携帯電話機の世界での販売台数は1―3月合計で約2億4500万台となった。昨年10―12月期の12.6%減に続く2期連続のマイナスで、減少幅はIDCが正式に調査を始めた04年以降で最大。08年前半までは中国やインドなど新興国の需要に支えられて15%前後の伸びを維持していたが、昨年半ば以降は減少に転じている。



不況に快走ハリウッド 今年の興行収入100億ドル突破見通し
 世界にリセッション(景気後退)の嵐が吹き荒れるなか、今年の米ハリウッド映画の興行収入が100億ドル(約9956億円)の大台を突破する見通しになった。映画産業は歴史的にも不況からいち早く立ち直り、高成長を遂げた歴史があり、不況に対する強さを改めて裏付けた。
 ≪最速の収益ペース≫
 映画業界の調査会社、メディア・バイ・ナンバーズによると今年のチケット売上高は4月中旬までに年率換算で前年比17%上昇。調査会社ボックス・オフィス・モジョによれば5月3日現在、興行収入が上位5本でいずれも1億ドルを上回っている。同社は今年の利益を前年比14%増と見込んでいる。収益の伸びは2002年以来、最速のペースだという。
 同社の調べでは、米ドリームワークス・アニメーション制作の3Dアニメーション「モンスターVS.エイリアン」は、3日時点でチケット売上高が1億8240万ドルに達しており、09年の興行収入でトップクラスだ。モンスターがエイリアンから地球を守るという内容のこの映画は当初、今月後半の公開が予定されていたが、ジェームズ・キャメロン監督の3D映画「アバター」との競合を避けるため前倒しで公開された。
 ≪3Dでネット対抗≫
 ハリウッドは好況不況、いずれの時代も乗り切ってきた。
 米国で初めて映画館が盛況となったのは、1929年に株価が暴落して大不況に見舞われたときのことだ。しかしメディア・バイ・ナンバーズによると、最終的には減速する経済に飲み込まれ、週末興行成績は1932年までの2年間で3分の1に落ち込んだ。米映画制作大手フォックス・フィルム、パラマウント・ピクチャーズ、RKOラジオ・ピクチャーズは破綻(はたん)。ワーナー・ブラザーズは資産を手放した。映画評論家のレオナルド・マルティン氏は「業績の悪い会社は映画事業から脱落していった」と当時を振り返る。
 1949年、53年、57年に起こった第二次世界大戦後の3回のリセッションや、80年、91年の経済停滞期にも興行収入は減少している。しかし今回のリセッションでは、第二次世界大戦後のリセッションとしては最長だった1973~75年や81~82年の不況時と同様の強さを見せている。
 メディア・バイ・ナンバーズによると、観客動員数は4月19日までの時点で15%上昇。同社のポール・デルガラベディアン社長は興行収入が今年、100億ドルに達すると見積もっている。
 ただ、インターネット技術の進歩により、今後、映画産業への逆風が強まる可能性もある。
 カリフォルニア大学のヤン・クリストファー・ホラック教授(映画学)は、インターネットやケーブルテレビ、テレビゲームなど、室内の娯楽が増えたことを指摘。もっと深刻で長期間にわたる不況に直面すれば、ハリウッドも連勝し続けることはできないとの見方を示した。
 技術的な集客という点で状況は1929年と似ている。当時のハリウッドはトーキー映画(音声付き映画)を導入したが、今年は家庭でまねできない多くの3D映画が公開されている。



【産経主張】中国海軍60周年 外洋型軍拡が緊張高める
 創設60周年を迎えた中国海軍は、空母戦闘群の創設を視野に、さらなる飛躍を図っている。中国は海洋に「力の空白」が生じると、これに乗じて海軍艦艇を差し向ける傾向があり、日米は共同で抑止力の強化を図る必要がある。
 中国海軍はすでに、台湾との紛争を想定した近海防衛型から、太平洋やインド洋にまで展開する外洋型に転換している。先月23日には、青島沖で初の国際観艦式を実施し、その作戦能力の高さを誇示した。
 米露など14カ国から艦艇21隻が参加したものの、残念なことに日本の海自艦は招かれなかった。日中の信頼醸成を高めるという観点に立てば、遺憾なことである。
 各国海軍代表を前に、軍事委主席の胡錦濤国家主席は「中国は防衛型の国防政策を堅持する。永遠に覇権を唱えず、軍拡競争をせず、いかなる国にも軍事的脅威にならない」と表明した。言葉の通りなら結構なことである。
 だが、1992年の領海法で係争海域である南シナ海を「中国の海」であるとの意思を示した。第2段階では海洋調査船を派遣し、第3段階で海軍艦艇や航空機を差し向け力で領有を明示した。
 つい最近も、米国の調査船が海南島の南120キロの公海上で、中国海軍の情報船を含む5隻から「危険な操船妨害」(米国防総省)を受けた。調査船は海南島に配備された中国原潜の音紋採取を行っていた。台湾海峡有事に派遣される空母の脅威となる中国潜水艦を警戒するためであろう。
 米中両国は表向き、協調を叫んではいても、海面下では熾烈(しれつ)な戦いを進めている。米国防総省がまとめた2009年版の年次報告書「中国の軍事力」では、初めて中国が空母戦闘群の創設に動いていると指摘した。中国は20年までに複数の空母を建造する方針で、ロシアから艦載機「スホイ33」の購入を目指しているという。
 国防省の黄雪平報道官は昨年、「空母は国家の総合力の表れ」と創設に意欲を示しており、胡主席のいう「軍事的脅威にならない」という姿勢とは矛盾する。中国がアジア諸国に広がる中国脅威論を打ち消すつもりなら、実際の行動で示すべきである。
 日本にとって南シナ海は中東原油を輸送する経済動脈である。ソマリア沖に護衛艦を2隻派遣するだけで与野党が足を引っ張り合う現状は国益を害するばかりだ。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:moblog

(゜Д゜)bグーッ新聞

「番号持ち運び」不便解消…新携帯にメール転送、導入へ
 携帯電話4社が、「電話番号の持ち運び制」の使い勝手の悪さを改善しようと、携帯メールを新しいメールアドレスに転送するサービスの導入を協議していることが4日、わかった。
 今年度中の合意を目指し、転送サービスを始める方向で、携帯各社の契約者が一気に流動化する可能性もある。番号持ち運び制は2006年10月に導入されたが、アドレスは持ち運べず利用者の不満が多かった。
 携帯メールのアドレスは、携帯会社ごとに「@」以下の部分が異なる。携帯会社を変えると、電話番号は同じでもアドレスが変わってしまうため、新アドレスを「メル友」などに知らせる必要がある。
 携帯4社は、番号持ち運び制を使った契約者の古いアドレスに届いたメールを一定期間、新しいアドレスに自動転送する方向だ。同じ携帯会社の契約者間で電話番号をアドレス代わりに使う「ショートメッセージサービス(SMS)」も、他の携帯会社の契約者とやり取りできるようにする。
 システム改修などの負担が生じるが、契約者の純増数が増えているソフトバンクモバイル、イー・モバイルが積極的で、最大手のNTTドコモも協力する方向という。
 番号持ち運び制は、アドレスが変わることから期待されたほど利用されず、導入2年間の利用件数は、全契約者の5・5%にとどまっている。



米オバマ政権、雇用・利益の海外流出防止へ優遇税制見直し
 【ワシントン=大隅隆】オバマ米大統領とガイトナー財務長官は4日の演説で、雇用や利益の海外流出を招く税制優遇などを見直すと発表した。海外への投資を実質的に優遇している現行税制を見直し、多国籍企業の租税回避なども厳格に監視する。向こう10年で2100億ドル(約20兆円)の税収増を目指すとしており、企業にとっては実質増税になる。
 オバマ大統領は「現行税制は抜け穴が多すぎる」と指摘。「国内雇用の創出」を重視した税制の必要性を強調した。ただ、議会での審議の行方は不透明だ。
 現行税制では、海外で得た利益に対する納税は先送りできる仕組みになっている。今回の税制改革では利益に対する税金を支払わなければ投資を優遇する税制を活用できないようにする。一連の税制改革の増収分(1000億ドル強)の一部は国内の研究開発を促進する別の税制の財源にあてる。



伊フィアット、クライスラーとGM欧州部門統合めざす
 【フランクフルト=下田英一郎】伊フィアットは同社の自動車部門に、米クライスラーと独オペルなど米ゼネラル・モーターズ(GM)の欧州部門を統合する構想を表明した。クライスラーとはさきごろ資本提携に合意したばかり。今後米政府やGMと本格的な交渉に入る。実現すれば年間販売台数で約620万台(2008年実績ベース)となり、世界3位の独フォルクスワーゲン(VW)とほぼ並ぶ有力グループとなる。
 フィアットのセルジオ・マルキオーネ最高経営責任者(CEO)は4日にベルリンで、ドイツのグッテンベルク経済技術相と会談し、同構想を伝えた。独政府はオペルへの金融支援を検討している。
 GM欧州部門はオペルのほか英ボクソールや2月に経営破綻したスウェーデンのサーブを抱える。フィアットの構想では同社の自動車部門を分離し、クライスラー、GM欧州と統合。規模の拡大で生き残りを図る。統合新会社の売上高は年800億ユーロ(約10兆4000億円)、販売台数は世界3位のVW(627万台)と同じ水準になる。



次世代携帯開発、技術協力強化で一致 総務相、中国副首相と
 【北京=高橋哲史】中国を訪問している鳩山邦夫総務相は4日、北京で中国の張徳江副首相と会談し、次世代携帯電話開発で技術協力を強化することで一致した。張副首相は「中国は6億人が携帯電話を使っており、ちょうど第三世代(3G)に移る」と説明。鳩山総務相は「日本には第3.9世代(3・9G)もある。ぜひ共同で研究を進めていきたい」と述べ、端末開発などで協力する考えを表明した。



ゆうちょ銀、投信仲介専門の郵便局 販売網5年で3000カ所に
 日本郵政グループは投資信託の販売網を大幅に拡大する。今夏にも個別商品の勧誘を一切しない仲介専門の郵便局を新たに300カ所弱導入。5年間で投信を販売する既存の販売拠点と合わせて3000カ所程度に増やす。ゆうちょ銀行の店舗と郵便局を合わせた投信販売網は3メガバンクを大幅に上回り、地域金融機関も交えた販売競争が激しさを増しそうだ。
 ゆうちょ銀が新たに導入するのは「準取り扱い郵便局(仮称)」。投信取引に必要な専用端末を置かず、顧客から投信口座開設などの依頼を受けた場合、投信を販売する最寄りのゆうちょ銀の店舗か郵便局に連絡して取引を仲介する。



ユーロ圏成長率、最悪4・0%のマイナス成長…09年予測
 【ロンドン=是枝智】欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は4日、独仏伊などユーロ圏16か国の2009年の実質GDP(域内総生産)成長率が、1999年の欧州単一通貨ユーロが発足して以来、最悪の4・0%のマイナス成長になるとの見通しを発表した。
 域外の予測は米国がマイナス2・9%、日本はマイナス5・3%で、世界同時不況の震源地だった米国よりも日欧経済の打撃が大きいことを示す内容となっている。
 欧州委は前回1月の予想(1・9%減)を大幅に下方修正した。プラス0・4%と当初見ていた10年も、0・1%のマイナス成長に転じるとした。
 英国なども含めたEU27か国でも09年は4・0%減、10年は0・1%減で、09年にプラス成長を維持できるのは27か国中、キプロス1国だけとなる。
 主要国では、09年の成長率は、輸出依存度が大きいドイツが5・4%減と落ち込みが最も大きい。マイナス幅は、フランスが3・0%、イタリアは4・4%、英国で3・8%にそれぞれ拡大する。金融危機が続くアイルランドは9・0%減、通貨危機のハンガリーでは6・3%減、ラトビアなどバルト3国はいずれも10%を超えるマイナス成長になる厳しい内容だ。



IT製品強制認証、日米が中国に撤回要求 共同声明
 【ワシントン=米山雄介】訪米中の二階俊博経済産業相は4日、米通商代表部(USTR)のカーク代表と会談し、共同声明を発表した。中国が来年5月に導入予定のIT(情報技術)セキュリティー製品の政府調達に関する強制認証制度について撤回を求めることを確認。保護主義の阻止や世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の早期妥結に日米が協力することでも一致した。
 会談は、ワシントン市内のUSTRで約45分間開かれた。共同声明は「世界のすべての国々が金融・経済危機に引き続き注意して対応すべきだ」と明記。アジア太平洋地域の経済統合の強化に向け、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の運営でも、日米が緊密に連携していく意向を表明した。



日経社説 規制緩和で多様な保育サービス充実を・チェンジ!少子化(5/5)
 「働きたいのに子どもを預ける先がない」。不況下の今春、こんな切実な声をしばしば聞いた。厚生労働省によれば、働きたいと望む女性がすべて就労する場合、保育所は100万人分、小学校低学年児を預かる学童保育は145万人分、受け入れを今より増やす必要があるという。
 少子化を克服するには、働きながら安心して子どもを産み、育てられる環境の整備が欠かせない。規制を緩和し企業や非営利組織(NPO)の参入を促すなど、多様な保育サービスの充実を急ぐべきだ。
民間参入に実質的な壁
 共働き家庭の数は専業主婦家庭を上回る。保育サービスのニーズが大きいのに供給が増えない原因の第一は、規制と公費の配分の偏りだ。株式会社やNPOは保育事業に自由に参入できるはずだが、実際には多くの障壁が参入を阻んでいる。
 保育所を建てる際に、社会福祉法人には国や自治体から助成金が出るのに、民間には助成金が出ない。都道府県の認可を得て運営費を補助してもらうには、国が定める最低基準を満たす必要があるが、子ども1人当たりの面積や保育士の数、調理室の設置など細かい基準をすべてクリアするのは容易ではない。自治体によっては、基準を満たしていても民間保育所の認可を渋る例もある。
 役所の認可外の保育所は、公的な助成なしで運営するしかない。これでは民間の参入は進まない。
 公立や社会福祉法人の保育所だけで需要に応えるのは難しい。しかも認可保育所の多くは開園時間が短く、日曜・祝日は休みになるなど、働き方の多様化に対応していない。
 こうした中で限られた財源を有効活用し、保育サービスを拡充する自治体もある。
 山形県東根市は、子育て拠点「さくらんぼタントクルセンター」に設置した公立保育所の運営を昨年4月に株式会社に委託した。条件としたのは、1年365日いつでも受け入れる体制と、午後8時までの延長保育、夕食の提供などだ。
 民営化で人件費など年間4000万円の経費を削減でき、その財源は未就学児の医療費無料化などに回せた。民間委託に不安を表明していた保護者も9割以上が満足している。
 待機児童に悩む仙台市は2002年から独自に基準を設けて補助金を出す「せんだい保育室」の認定を始めた。駅前に立地し採光要件など国基準の一部が満たせないA型と、小規模でも開設できるB型がある。
 A型は企業やNPO、B型は個人経営が中心だ。認定には1年の運営実績を評価して改善を指導するなど慎重を期している。補助金を出すことで利用料の上限を設け、親の負担を減らした。利用者との直接契約なので、各保育園がサービスに工夫をこらして競争している。
 厚生労働省社会保障審議会は2月に保育制度改革の一次報告をまとめた。基準を満たせば自動的に認可することや、民間企業へ施設整備費を補助することなどを報告に盛り込んだが、既存の保育団体などは「保育の質の低下」を理由に反対している。
 子どもの健全な成長や経営の安定に配慮するのは当然だが、規制を緩和し多様な事業体が知恵を競うことは保育の質の向上にもつながる。既得権益を守るための反対であってはならない。国はおおまかな目安を示し、自治体が実情に応じて独自に認可基準を決める形でいいはずだ。
縦割り行政の是正を
 もう一点重要なのが、縦割りによる二重行政を是正し、子ども本位の保育体制をつくることだ。
 保育所の待機児童が問題になる一方で、幼稚園には子どもが集まらない。国は両者の融合を図ろうと06年に認定こども園制度をスタートさせたが、幼稚園は文部科学省が保育所は厚労省が管轄したままだ。この制度は申請書類の枚数が増えただけでなんのメリットもないと不評で、約300件の認定にとどまっている。
 そもそも同じ子どもを預かる施設を分ける必要があるのか。年齢や子の置かれた状況に応じ、必要な保育や教育を提供するのが望ましい。幼稚園教諭と保育士の資格見直しも含め、新たな体制を考えるべきだ。
 最近、不足が大きな問題になっている小学校低学年児の放課後対策にしても、2つの省が重複して行っており無駄が多い。学校長が空き教室利用を拒む例もある。働く親から「小1の壁」と言われるほど要望の強い学童保育をどう充実するか、省庁の壁を越え迅速に対応すべきだ。
 保育の充実には費用がかかる。国は補正予算に盛り込んだ「安心こども基金」で支援するとしているが、一時的な支出では不十分だ。無駄を省き必要な財源をどこから持ってくるか、中長期の対応も必要である。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:moblog

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。