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ディー・エヌ・エーは再成長を賭け、モバゲーのオープン化・海外展開で攻勢へ(COLUMN)
 「1人の知恵より、多数の知恵の方が必ず勝つ。この信念の元にモバゲーのオープン化という大きな決断をした」――10月5日、ディー・エヌ・エーの南場智子社長は、ゲーム開発デベロッパー向けに開催したフォーラムの場で、こう宣言した。
 ディー・エヌ・エーは、8月に携帯電話向けゲーム・SNSサイト「モバゲータウン」のプラットフォームをオープン化すると発表。オープン化によって、だれでも、モバゲー上で独自のゲームアプリケーションを開発、販売できるようになる。10月からゲーム開発者の登録の受け付けを開始、2010年1月以降、ユーザー向けにゲームのリリースを開始する予定だ。
 モバゲーがオープン化に大きく舵を切ったのは、南場社長の発言にあるとおり、ディー・エヌ・エー1社の力だけでは成長に限界が見えてきたからだ。
 モバゲーは、現在約1500万人の会員を擁する大手携帯SNS。日本の携帯SNS市場は、モバゲーを含め、会員数1700万人のミクシィ(mixi)、同1500万人のグリー(GREE)の3強が覇を争う状態にある。
 モバゲーは、無料ゲームをフックに集客し、SNSで使うキャラクター(アバター)の販売で急成長した。しかし、この1年ほどはブームもピークを迎え、業績は頭打ちとなっている。一方で、ライバルのグリーは、SNSならではのコミュニケーション要素を巧みに取り入れた釣りゲームを核に急成長、テレビコマーシャルの大量投入も功を奏し、今や会員数でモバゲーと肩を並べる存在になった。
 
 もちろん、ディー・エヌ・エーでも、アバターの高機能化や、大手ゲーム会社と提携してヘビーユーザー向けのゲーム配信事業を行うなど、さまざまなテコ入れを進めているが、いまのところ効果は限定的だ。一方、海外のSNS市場では、大手のFacebookがオープン化をきっかけにサードパーティのゲーム開発者を巻き込んで成長を再加速している。また、国内SNSでも、成長鈍化のため一足早くプラットフォームのオープン化に踏み切ったミクシィに早くも利用者数100万人を超えるゲームが登場するなど、オープン化の効用が現れてきている。こうした状況を踏まえ、ディー・エヌ・エーでもオープン化の決断に至った。
 今回のオープン化のビジネスモデルは、ゲームの課金収入のうち、携帯電話会社に支払う手数料分を除いた売り上げを、ディー・エヌ・エー30%、ゲーム会社70%の割合でシェアする。ヒットゲームが数多く登場すれば、それだけディー・エヌ・エーの収益も伸びるという仕組みだ。
 会社側では、月間100万人が利用し、月額100~200円程度の課金単価が得られるゲームが年間数本程度、登場してくれることを期待する。同時に、こうしたゲームでモバゲーが活性化すれば、アバターなど既存の自社サービスの販売拡大にもつながるという狙いもある。
 一方、開発会社側のモバゲーオープン化への期待も大きい。携帯ゲームを手掛ける会社は多数あるが、集客のカベが厚く利益が上がらないケースが多い。その点、1500万会員に直接アピールできるモバゲーの魅力は大きい。SNS向けのアプリケーションでは圧倒的にゲーム(ソーシャルゲーム)が人気で、その点、ゲームに特化したSNSといえるモバゲーには優位性があるといえるだろう。
 オープン化と同時に、ディー・エヌ・エーでは米国や中国でのSNS運営など、海外展開も強化している。10月5日には、iPhone向けのソーシャルゲーム開発プラットフォームを提供している米オーロラフェイント社との資本業務提携を発表した。会員数3億人超のFacebookは言うに及ばず、世界のマーケットは日本の数倍規模。南場社長は「日本の開発会社はゲーム、モバイルに強い。皆さんと一緒に、海外にも出ていく」とアピールする。



中国の新車販売台数、乗用車83%増 9月、最高101万台
 中国汽車工業協会が13日公表した9月の乗用車の新車販売台数(中国国内生産分のみ)は前年同月比83.62%増の101万5100台となり、月間の販売台数としては過去最高を記録した。この結果、1~9月の累計は724万1500台で昨年1年間の数字をすでに48万台強上回った。今年の販売台数は過去最高となった。中国政府の一連の景気刺激策などで需要の回復が鮮明になっている。
 同工業協会は近く商用車の販売台数も公表する。商用車を含めた新車販売台数も9月は大幅に増えているとみられる。
 8月の全体の新車販売台数は前年同月比81.7%増の113万8500台だった。7月の伸び率である63.6%よりも高まった。9月は乗用車分をみる限り、全体でも高い伸びを維持している可能性が大きい。



上期の中古車販売台数が過去最低に
 日本自動車販売協会連合会(自販連)が13日発表した平成21年度上半期(4~9月)の中古車販売台数(軽自動車を除く)は前年同期比7・3%減の191万5934台となり、1978年の統計開始以来、過去最低となった。
 景気悪化による消費不振や、新車販売の低迷で走行距離の短い良質な中古車の流通が少ないことが響いた。自販連は「消費者のコストへの意識が高くなっている。(21年度の)下半期も楽観することはできない」としている。
 車種別では、小型乗用車が5・6%減の86万6771台、小型貨物車も5・9%減の13万1572台となり、それぞれ過去最低。普通乗用車は7・4%減の76万3792台だった。



YUIがシングル3作連続首位、ユーミン、宇多田に続く史上3人目
 先週7日に発売されたシンガーソング・ライターのYUIの復帰第2弾シングル「It’s all too much/Never say die」が7.5万枚を売上げ、10/19付シングルランキングの首位に初登場。女性シンガーソング・ライターがシングル3作連続首位を獲得したのは、松任谷由実、宇多田ヒカルに続いてオリコン史上3人目。宇多田以来7年5か月ぶりとなる同記録に、YUI自身も「すごく嬉しいです!」と息を弾ませている。
■絢香のベスト盤が遂に09年女性初! 累積50万枚を突破
 年内での活動休止を発表したシンガーソング・ライターの絢香のベストアルバム『ayaka’s History 2006-2009』が、先週(10/12付)では発売2週目にして女性アーティストの累積売上げで今年最高枚数を記録していたが、今週はさらに8.7万枚と売上げを伸ばし、57.7万枚を記録。ついに累計売上が50万枚を突破した。
 なお、同日付の週間アルバムランキングでは2人組デュオ、ゆずの9thアルバム『FURUSATO』が、発売1週目で11.5万枚を売り上げ首位に初登場。シングルを含め、ゆずの首位は、2006/1/30付にオリジナルアルバム『リボン』で獲得して以来3年9か月ぶりとなる。



東芝初のBD搭載ノートPC
 東芝は10月13日、同社製ノートPCとして初めて、Blu-ray Discドライブを搭載した機種を発表した。22日から順次発売する。
 Windows 7を搭載したノートPC新製品10機種のうち、フラッグシップ機「Qosmio G60」や、dynabookシリーズ主力機「dynabook TX」など4機種にBDドライブを搭載した。
 東芝はBD対抗規格・HD DVDを推進していたが、08年に撤退。今年8月に、BDドライブ内蔵ノートPCとBDプレーヤー年内に発売すると発表していた。



米MS子会社、携帯ユーザーから預かったデータを消失
 【シリコンバレー=岡田信行】パソコンソフト世界最大手の米マイクロソフト(MS)と米携帯電話大手のTモバイルUSAは12日、携帯ユーザー向けにデータを預かる事業を手がけるMS子会社のサーバー管理ミスで、預かった電話帳や電子メールが消失したことを明らかにした。インターネット上で様々な機能を提供する「クラウド」サービスが普及するなか、安全性確保の面で課題を突きつけた格好だ。
 TモバイルとMS子会社のデインジャー社(カリフォルニア州)によると、Tモバイルが手がけるスマートフォン(高機能携帯電話)の「サイドキック」向けに電話帳や送受信した電子メールなどのデータを預かっているサーバーでトラブルが発生。データが消去したという。両社は原因を明言していないが、米メディア各紙はメンテナンス作業のミスとの見方を伝えている。



エコポイント・エコカー補助延長、経産省が見送り 概算要求
 経済産業省は15日に提出する2010年度予算の概算要求に、09年度補正予算に経済対策として盛り込んだエコカー補助金やエコポイントの延長を盛り込まない方針を固めた。両制度が09年度の時限的措置として導入された経緯などを踏まえ、同省としては現時点では見送る。
 エコカー補助金は低燃費車への買い替えを促す制度で、来年3月までに新車登録した場合に補助金を受けられる。09年度補正予算で3700億円の財源を用意した。
 エコポイントは来年3月までに省エネルギー家電を購入すると、省エネ商品の購入などに利用できるポイントをもらえる仕組み。09年度補正予算に経産、環境、総務の3省合計で約3000億円の予算を割いた。



ビール系飲料、1~9月の出荷量最低 キリン3年ぶり首位
 ビール大手5社は13日、1~9月のビール系飲料の課税済み出荷量をまとめた。全体では3億4525万ケース(1ケースは大瓶20本換算)と前年同期比2.4%減った。夏場の天候不順などが響き同期間としては前年を下回り過去最低になった。メーカー別シェアはキリンビールが37.9%とアサヒビールを0.6ポイント上回り、同期間では3年ぶりに首位を奪回した。
 1~9月の酒類別出荷量はビールが7.3%、発泡酒が15.5%それぞれ減少。消費者の節約志向を反映し、第三のビールだけが21.9%伸びた。



米大リーグ・カブス、破産法申請 資産家に売却進める
 【ニューヨーク=武類雅典】米大リーグ球団カブスは12日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法)の適用を申請した。米メディアが報じた。カブスは米オンライン証券大手TDアメリトレード・ホールディングスの創業で知られる米資産家リケッツ家への売却が決定済み。破産法で債権関係を整理し、売却を早期に進める。球団売却は月末までに完了する見通しだ。
 リケッツ家はカブスのほか、本拠地の球場「リグレー・フィールド」などを引き継ぐ。破産法手続きを終えれば、カブスの所有権はリケッツ家に移る。売却資産は総額で約8億4500万ドル(約760億円)。カブスを所有する米メディア大手トリビューンは約7億4000万ドルを受け取る。球団買収額としては2002年のレッドソックス(6億6000万ドル)を上回り、過去最高という。
 トリビューンは昨年末に破産法を申請し、再建中。今年初めにリケッツ家へのカブス売却で両者が基本合意し、米大リーグも10月初旬に売却を承認していた。カブスには福留孝介外野手が所属している。



REIT初の「株主優待」 投資先ホテルの割引券配布
 不動産投資信託(REIT)のジャパン・ホテル・アンド・リゾートが、投資主(株主に相当)に投資先ホテルの割引券を配る株主優待を始める。REITが優待制度を導入するのは初めて。投資しているホテルへの理解を深める機会をつくるほか、個人マネーの呼び込みも狙う。閑散期の物件稼働率を底上げする効果も期待している。
 ジャパン・ホテル・アンド・リゾートは、ゴールドマン・サックス・グループを母体とし、投資家から集めた資金でホテルに投資している。来春、中間期末にあたる2月末時点の投資主を対象に、神戸や沖縄など全国5カ所の投資先ホテルに50%割引で宿泊できる優待券などを配布する。
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ソニー「x-アプリ」はiTunesキラーになるか?(COLUMN)
 カセット、そしてMDの時代に携帯型オーディオプレーヤーの主役であり続けた「ウォークマン」だが、HDDやメモリーが主流となってからは、「iPod」の後塵を拝し続けることになってしまった。その理由はいくつも考えられるが、その1つとして音楽ファイルの転送ソフトとして製品に添付されていた「SonicStage」の熟成が進まなかったことが挙げられる。
 SonicStageはCDからの取り込みや音楽配信サービスである「Mora」からの楽曲の購入、楽曲の管理、そして外部機器であるウォークマンへの転送といった機能を持つジュークボックスソフトだ。iPodにおける「iTunes」に相当するものであり、楽曲を転送するために頻繁に利用することを考えると、携帯型オーディオプレーヤーの使い勝手を大きく左右するものだと言える。
 それだけ重要なものであるにも関わらず、ソニーは転送ソフトについてたびたび方針を転換し、ユーザーを混乱させることになる。それを象徴するのが、2005年11月に発売されたウォークマン「NW-A3000」などに転送ソフトとして提供されていた「Connect Player」だ。
 NW-A3000など当時のAシリーズは、ユーザーの好みを学習し、それをベースにソフトウェアによって自動で選曲を行なうというユニークな機能を持つ。それを実現するソフトウェアとして開発されたのがConnect Playerで、従来のSonicStageとは別ラインのソフトウェアとしてNW-A3000などに添付された。
 しかし、あまりにもConnect Playerのレスポンスが悪く、なかなか起動しない、転送が終わらないなど、評判は決してよいものではなかった。結局、ソニーはConnect PlayerをSonicStageに吸収し、「SonicStage CP」としてリリースすることになる。ジュークボックスソフトにおけるこうした混乱が、ウォークマンのイメージを損ねたとしても不思議ではない。
 そんな過去を持つSonicStageに代わり、10月8日に新たなジュークボックスソフトとしてリリースされたのが「x-アプリ」である。
音楽だけでなく画像や動画も一括管理
 もちろん、名称をSonicStageからx-アプリに変更しただけではなく、機能面でも強化が図られている。機能強化点でまず目立つのは、動画や写真、そしてポッドキャストの管理にも対応したこと。例えばデジタルカメラの写真をx-アプリに取り込み、そのままUSBで接続したウォークマンに転送するといった使い方ができるようになった。
 音楽や写真を楽しむための各種アプリケーションが搭載されたこともトピックと言えるだろう。具体的には、写真と曲を組み合わせてプロモーションビデオのような映像を自動的に作成してくれる「x-Pict Story」やフォトアルバムを作成できる「x-ScrapBook」、時間軸に沿って写真や曲が表示される「x-Chronology」といったアプリケーションが利用できる。
 意外と楽しめたのがx-Pict Storyで、適当に写真と音楽を選ぶだけでそれっぽい映像が出力される。古い写真と音楽を組み合わせて、深夜のCD通販番組を再現するなどいろいろな遊び方が考えられそうだ。
12音解析でおすすめの曲を自動で再生
 従来から搭載されていた「12音解析技術」を元に、時間帯や天気、あるいは季節などさまざまなテーマでオススメの曲を再生する「おまかせチャンネル」が新たに追加されている。
 12音解析技術は、楽曲の波形から音程やリズム、コード進行、構造などを分析し、楽曲に対して「特徴付け」を行なえる技術。おまかせチャンネルはこうして得られた分析結果を元に、「朝のおすすめ」「レイニー・デイ」「スローライフ」「ソファラウンジ」など、あらかじめ用意されたテーマに見合った曲を選択する。
 これまでは「SonicStage V」上で12音解析を実施し、その結果をおまかせチャンネル機能を持つ「NW-S730F」などに転送しなければ利用できなかったが、x-アプリでは単体で利用可能になったわけだ。
 仕事中のBGMなどとしてジュークボックスソフトを使って音楽を再生する際、どうしてもお気に入りの音楽ばかり聴いてしまうという人は多いと思うが、HDDに大量の曲を保存していると「すっかり忘れていたけれど実はかなり好きな曲」というのが少なくない。そうした曲を発掘できる可能性がある12音解析技術とおまかせチャンネルが単体で利用できるようになったのはうれしい。
SonicStageの正常進化を選択したx-アプリ
 インターフェイスは従来のSonicStage Vと大きな変更はない。基本的にはウィンドウ左下に並んだ「ライブラリー」や「取り込み・サービス」「アプリケーション」「ダイナミックプレイリスト」、あるいは「機器への転送」「音楽CDの作成」といった各項目から利用したい機能を選んでいくという形だ。
 インターフェイスを継承していることを考えると、名前こそ違うがx-アプリはあくまでもSonicStage Vの正常進化形だと捉えられる。ここで一気にジュークボックスソフトを刷新するという考え方もありえるが、これまでSonicStageを熟成させてきたこと、またConnect Playerをリリースしたときの混乱を考えると、従来の延長線上でx-アプリを開発した判断は正しかったのではないだろうか。
 レスポンスや安定性に関しては長時間触っていないため何とも言えないが、Core 2 Duo環境での利用では重たいといった印象はない。こちらもSonicStageで改良を重ね続けてきた蓄積が生きていると言えるだろう。
 ただ、現行のウォークマン、「NW-X1000」や「NW-A840」シリーズ、「NWD-W202」では、エクスプローラやiTunesなどからのドラッグ&ドロップに対応している。つまり、わざわざx-アプリを使わなくてもウォークマンに楽曲データを転送できるわけだ。
 また音楽CDのリッピングに関しても、最初からパソコンに入っているアプリケーション(WindowsならWindows Media Player、MacならiTunes)を使えばよい。つまり、x-アプリの立ち位置が微妙になっているのである。今後どのような位置付けでx-アプリを進化させていくのか、注目したい部分である。



ノーベル経済学賞、米の2氏 オストロム氏、初の女性受賞
 【ロンドン=吉田ありさ】スウェーデン王立科学アカデミーは12日、2009年のノーベル経済学賞を米国のエリノア・オストロム・インディアナ大教授とオリバー・ウィリアムソン・カリフォルニア大バークレー校名誉教授の両氏に授与すると発表した。オストロム氏はノーベル経済学賞では初の女性受賞者。両氏はそれぞれ市場以外で行われる経済活動の統治に関する研究が評価された。



【東京社説】
週のはじめに考える 初めまして EU大統領
 欧州連合(EU)に初の大統領が誕生しそうです。「顔」が見えない、といわれ続けて半世紀。国際政治に新スターは生まれるのでしょうか。
 最後の最後まで関係者はひやひやし通しだったことでしょう。
 EUの将来を左右するリスボン条約。昨年、アイルランドの否決で宙に浮いていたものが再度の国民投票で批准され、来年早々の発効になんとか目処(めど)が立ちました。金融危機の衝撃が世論を変えるきっかけになったようです。
 チェコの批准手続き上の「抵抗」が残っており、なお曲折もあり得ますが、大方の関心は早くも新条約で誕生する初のEU大統領に移っています。
◆大国の欧州 小国の欧州
 法の専門家でも解読不能、と揶揄(やゆ)されるほど複雑な法体系を持つ新条約です。欧州が実際どう変わるのか、はっきりしないところも多いのですが、下馬評で有力視される二人の候補者を対比させてみると、EUの進み得る方向性が浮かんできます。英国のブレア前首相と、ルクセンブルクのユンケル首相です。
 「ブレア大統領」は、英語文明に連なる欧州、というイメージを背負うことになるでしょう。思い出したくもないことでしょうが、欧州の結束を試すように引き起こされたイラク戦争を通して、ブレア英政権は「米国のプードル」とまでいわれながらブッシュ政権と寄り添いました。
 少し歴史を遡(さかのぼ)ると、「英語を話す諸国民の同盟」という言葉を思い起こさせます。第二次大戦に際し、チャーチル英首相がルーズベルト米大統領に参戦を促す際にも用いた表現です。「英語を話す諸国民こそ自由のトーチを灯(とも)し続けることができる」。こう記したチャーチルの言葉には、アングロ・サクソンの伝統主義を担う自負が滲(にじ)みます。
◆英語で話した独仏首脳
 一方、「ユンケル大統領」には、フランス語、ドイツ語の欧州大陸文化の系譜を担うイメージが伴います。大国の狭間(はざま)に位置する悲哀を身をもって知るユンケル首相は、ドイツ統一に関する小紙とのインタビューで「ドイツはもはや戦後状況の捕囚ではありません」「ドイツとフランスは歴史的な教訓を学び、もう争いは繰り返さない点で一致しています」と語ったことがあります。EUの核心にある不戦の誓いを体現する一人です。
 小国の指導者をトップに戴(いただ)くEUは、控えめながらよりきめ細かな調整機能を発揮するでしょう。これは、バルケネンデ・オランダ首相、リッポネン元フィンランド首相ら、名前があがっている他の候補者にも当てはまります。
 リスボン条約の批准がここまで難航した大きな原因の一つは、大国にのみ込まれかねない小国の不満にありました。新条約には、その不安を和らげる措置が採り入れられています。
 EUの立法措置が取られる場合、欧州議会とともに各国議会へも法案を提示する制度や、加盟国有権者の意思が直接反映される請願制度も導入されました。各国が大きな懸念を抱く場合、審議に一定期間待ったをかける仕組みも強化されました。
 しかし、そもそも新条約の狙いは、二十七カ国に膨張したEUを効率化することでした。「大統領」の新設は意思決定のスピードが鍵を握る国際社会で太刀打ちできる体質づくりへの期待がこめられています。英独仏三大国の影響力に頼る面も現実には否定できません。
 「世界語」の英語が映し出す欧州と、「欧州語」の仏独語に現れる欧州とは自(おの)ずと色合いが違います。三大国いずれをもってしても単独ではグローバルパワーたり得ないのが現在の欧州の実情です。
 欧州統合に積極的に取り組んだジスカールデスタン元仏大統領とシュミット元西独首相が、その三十年以上にわたる交友の間ずっと英語で話し合っていた事実は、新たな統合体を求めて模索を続ける新欧州を考える際、示唆に富むものです。
◆欧州市民のシンボル
 誕生する「大統領」の実際の役割は現在のEUサミットの議長を務める欧州理事会議長です。従来の半年ごとの輪番制を廃止して任期を二年半(再任可能)にするもので、実態は「常任議長」です。国際舞台でどこまで欧州全体を代表できるのか。同時に誕生するEU外相(外交・安保上級代表)との権限の重複はないのか。すべてはこれからです。
 未(いま)だ成熟しているとは言えない欧州市民のシンボルとして登場する欧州の「顔」。大国から選出されるか、小国からか。静かな変革ながら、欧州の新たな方向性を刻む大きな一歩となることには間違いありません。
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