(ノ゜Д゜)ノホレホレ新聞
キーワードは「停滞と変化」――2009年のモバイル業界を振り返る(COLUMN)
2009年も、あと少しで終わろうとしている。
これはモバイル業界に限ったことではないが、2009年の市場環境はとても厳しいものだった。リーマン・ショック後の景気後退と需要急減の余波は収まらず、筆者のもう1つの専門分野である自動車業界では、「100年に1度の不況」があらゆるスピーチの枕詞になるありさまだった。 モバイル業界を見ても、端末販売市場は全体的に冷え込み、キャリア間の競争も盛り上がりに欠けた。特に2009年前半は多くのユーザーが端末買い替えサイクルの狭間に入ったこともあり、市場全体に停滞感や閉塞感があったのは事実だろう。
しかしその一方で、新たな変化の兆しが見られたのも事実だ。キャリア各社は2010年以降に向けて新たなサービスやビジネスの種をまき、次世代に向けた新サービスもいくつか提案された。逆風下の端末市場でも、「iPhone 3GS」の躍進やAndroid端末の登場、モバイルデータ通信端末の販売数がかつてない伸びを示すなど変化が起き始めている。
2009年はどのような年だったのか。そして2010年はどのような1年になるのか。筆者の率直な感想と評価を述べたい思う。
安定基盤の下に、種蒔きに成功したドコモ
NTTドコモの山田隆持社長は、2009年を評して「種蒔きの年」と語った。まさに今年のドコモは、解約率の低さに支えながら、種蒔きに終始していたといってもいいだろう。
まず足元の競争環境で見れば、2009年はドコモの「2年契約割引(ファミ割MAX50/ひとりでも割)」と、販売規模の多かった905iシリーズの「2年割賦払い」というダブルの“2年縛り”が明ける直前に位置し、それが解約率の驚異的な低さにつながった。さらにドコモはこの数年間、携帯電話キャリアにとって重要な「インフラ強化」を地道に続け、同社のFOMAインフラはエリアの広さ・通信品質のよさで随一のものになった。
端末ラインアップをつぶさに見れば、ドコモの競争力が圧倒的というわけではないのだが、それでもドコモが安定的な成長ができたのは、料金プラン・販売モデルによる囲い込み効果と、インフラ力による安心感からくる解約抑制効果によるものが大きい。そして、この“足元の安定”により、ドコモは2009年、大小様々な未来への投資を行った。
それらの種まきの中で、もっとも重要なものが「オートGPS対応iコンシェル」と「スマートフォン」だろう。
iコンシェルは従来のiモードの延長線上に位置するが、そのコンセプトやサービス内容は時代を先取りしている。今後のモバイルインターネットでは「リアル連携」を軸に、コンテンツやサービスの洗練された提供が重要になる。iコンシェルではGPSや非接触IC(おサイフケータイ)を用いて、そこに独自のアプローチをしている。これはAppleやGoogleのモバイル戦略と並んで、注目の取り組みだ。
iコンシェルはまだ発展途上であり、PC向けWebサービスとの連携の弱さや、オートGPS対応iコンシェルに対応したモデルが主力のSTYLEシリーズに少ないなど、課題も多く残されている。また後述するスマートフォン分野ではなく従来型の携帯電話向けサービスのため、「海外市場への発展性はあるのか。またもや日本固有のサービスでメーカー・コンテンツプロバイダーの負担になるのではないか」という不安や批判も生じるだろう。来年、ドコモはこれらの問題をいち早く解消し、iコンシェルの可能性を引き出す必要がある。
一方、スマートフォンについてもドコモは積極的だ。同社はiPhoneの販売権を逃して以降、この分野で後れを取っているが、国内初のAndroid端末である「HT-03A」や、「T-01A」を始めとする多数のWindows Phoneラインアップの投入、さらにはRIMの「BlackBerry Bold」を拡販するなど、今年はスマートフォン重視の姿勢をさらに強くした。またiPhone 3GSの好調ぶりに経営陣は神経をとがらせており、山田社長が会議で「なぜ、うち(ドコモ)のスマートフォンはiPhoneに負けるのか」と檄を飛ばすことが度々あったという。
このようにドコモはスマートフォンを重視してはいるものの、Appleとソフトバンクモバイルの「iPhoneタッグ」に結局は勝てなかった。その原因の1つは“iPhone並みに魅力的なスマートフォンを獲得できなかった”ことにあるが、一方でドコモが従来型の携帯電話ラインアップに配慮し、ソフトバンクモバイルがiPhoneに対して行ったほどの厚遇を、自社のスマートフォンに向けられなかったことも理由だろう。ドコモは2010年、ソニー・エリクソンの「XPERIA X10」を筆頭に、魅力的なスマートフォンを獲得できる可能性が高い。その際に、料金プランや販売施策において、iPhone並みの優遇や厚遇ができるか。ここがドコモにとって試金石になりそうだ。
一方で、ドコモの今後に不安があるとすると、長期的・大型の将来投資は充実している反面、短期的な店頭競争でのトレンド変化への対応力がやや弱いと感じるところだ。とりわけそれを強く感じるのがデータ通信端末での競争で、イー・モバイルの「Pocket WiFi」のような製品をいち早く出せなかったところに、ドコモのフットワークの悪さが垣間見える。非携帯電話のデータ通信端末市場は2010年にさらに広がる見込みであり、従来型の携帯電話のようなオーダーメイド型の製品だけでなく、既存の端末を組み合わせた形の商品やサービスも続々と出てくるだろう。ここでは店頭トレンドを先読みする力と、商品化に向けた決断と行動の速さが求められるのだが、それがドコモには乏しいのだ。
現実路線で建て直し――しかし課題も残るau
2009年、auの大きなテーマは「競争体制の建て直し」だった。
端末の共通プラットフォーム「KCP+」の導入でつまずき、ドコモ追随路線とソフトバンクモバイルの攻勢でキャリアとしての個性と競争優位性を損ない、市場流動性低下と端末販売不況によって旗下の端末メーカーが経営不振や撤退の憂き目にあう。2009年初めのauは、これまで好調だった要因がすべて裏目に出るという満身創痍の状況だった。しかし、この1年の努力で、その状況はずいぶんと改善した。
まず、懸案だった端末ラインアップだが、KCP+の成熟と不評だったUIの見直しが進み、ひと頃に比べるとかなりマシになった。特に2009年の冬モデル以降はUIの改善が進み、使いにくさはかなり解消されている。また他キャリアに比べてラインアップ数を絞ったことや、KCP+導入によるコスト削減効果も生まれて、流通在庫の圧縮や端末調達コストの低減に成功した。実際、この冬商戦では「最新モデルでもミドルクラス端末は新規契約で1万円以下」という価格を実現。新販売モデル以降、端末価格の割高感を覚えている消費者に、“新モデルの割安感”でアピールしている。
一方、キャリアとしての競争力向上では、今年8月に導入した「指定通話定額(ガンガントーク)」と、11月から投入した「ガンガンメール」により、コミュニケーションの割安感を訴求。両者は主婦層や学生層の利用スタイルに合致した割引サービスとして、効果を発揮している。
このように端末と料金プランにおいて、auのテコ入れは“現実路線”で進んでおり、実際の効果も出はじめている。しかし、その一方で、auにはいまだ解消されていない弱点や課題も残されている。
その中でも代表的なものが、スマートフォン分野の出遅れだろう。KDDIでは2009年になっても「スマートフォンはまだ早い」(KDDIの小野寺正社長)という姿勢を貫いており、市場規模が拡大してから本格参入する方針だ。実際の販売台数で見れば、確かに国内スマートフォン市場はiPhone効果をプラスしても従来型の携帯電話よりも小さい。「ドコモみたいにムダ弾は撃てない。そんな余裕はない」(KDDI幹部)という堅実路線のKDDIにとって、手を出しにくい領域というのは理解できなくはない。しかし、昨年のiPhone 3G登場以降、スマートフォンは市場規模こそ小さいものの、モバイルでのコンテンツサービスや新ビジネスにおける影響力・存在感が急速に拡大している。iPhoneがないのはしかたないにしても、コンシューマー向けのスマートフォンがまったくないという現状は、auがモバイルインターネットの次世代トレンドに乗り遅れてしまうリスクになっている。auはいち早くコンシューマー向けのスマートフォンを市場投入し、それを積極的に後押しして育てる必要があるだろう。
iPhone効果とともに、問題も見え始めたソフトバンク
ソフトバンクモバイルにとって2009年は、「iPhoneの年」だったといってもいいだろう。さまざまなキャンペーンの効果もあり、2009年前半から販売が伸び始めたiPhoneは、夏のiPhone 3GS投入によって人気が一般層にまで波及。都市部では女性ユーザーも増え始め、スマートフォンとして初めて“一般ユーザーも使っている”モデルになった。
このブレイクは、iPhoneそのものの魅力が高く、さらにiPhoneのアプリやアクサリーの増加など、利用環境が整ってきた効果ももちろんあるが、ソフトバンクモバイルが料金プランや販売施策で異例ともいえる厚遇をしたからという理由も少なからず影響している。
しかし、その一方で、同社の「iPhone頼み」ともいえる現状は、通信インフラの負担増大や事業バランスの悪化というリスクにもつながっている。
とりわけ深刻なのが、iPhoneによるインフラ負担の増大だ。
周知のとおりiPhoneは従来型の携帯電話よりもデータ通信利用量が多く、PC向けデータ通信サービス並みにインフラに負担をかける。さらにiPhoneの販売は著しく都市部に偏在しており、実際の販売台数以上に局所的なインフラ負担の増大が起きるのだ。“通信インフラの利用量を平準化し、効率よく収益化する”という通信キャリアの常識からすると、今のiPhoneの売れ方は「時限爆弾を抱え込むようなもの。通信品質の維持からすると悪夢のような状態」(キャリアの設備担当関係者)なのだ。
ソフトバンクモバイルは今年、スマートフォンだけでなく従来型の携帯電話でも無線LAN(Wi-Fi)利用を促し、一方でユーザーの速度制限にも踏み込むなど、インフラ負担の軽減に腐心している。しかし、来年もiPhoneの勢いが止まらず、さらに販売数が伸びることが予想される中で、これらの施策は焼け石に水だろう。抜本的な対策は「3Gインフラの増強」しかない。それも通信品質を重視し、コストをかけて行う骨太のインフラ投資だ。
それができなければ来年、iPhoneは一転してソフトバンクモバイルの重荷になることすら考えられる。またAppleにとっても、3Gインフラの逼迫問題・通信速度の低下がiPhoneのユーザビリティとブランドを損なう「ソフトバンク・リスク」になりかねない。繰り返しになるが、今年のiPhone好調を今後の追い風にできるかどうかの鍵は、3Gインフラの増強にかかっている。
ソフトバンクモバイルにとって2010年は、今年以上に舵取りの難しい1年になるだろう。iPhone獲得にいち早く動いたように、同社の次世代のトレンドをつかむ能力は高い。CM大量投入による空中戦や、家電量販店での店頭キャンペーン競争といった地上戦も巧みだ。しかし、来年ソフトバンクモバイルが直面する課題は、「インフラ増強がきちんとできるか」「地方でのエリア拡充とマーケティングがしっかりできるか」「中庸なユーザー向けのサービスやサポート体制を強化できるか」といった地道さが求められるものばかりである。2006年の携帯電話事業参入から3年あまり。ここまで急速に成長してきたソフトバンクモバイルにとって、2010年はキャリアとしての基礎体力とユーザーからの信頼が得られるかどうかが試される1年になりそうだ。
2009年も、あと少しで終わろうとしている。
これはモバイル業界に限ったことではないが、2009年の市場環境はとても厳しいものだった。リーマン・ショック後の景気後退と需要急減の余波は収まらず、筆者のもう1つの専門分野である自動車業界では、「100年に1度の不況」があらゆるスピーチの枕詞になるありさまだった。 モバイル業界を見ても、端末販売市場は全体的に冷え込み、キャリア間の競争も盛り上がりに欠けた。特に2009年前半は多くのユーザーが端末買い替えサイクルの狭間に入ったこともあり、市場全体に停滞感や閉塞感があったのは事実だろう。
しかしその一方で、新たな変化の兆しが見られたのも事実だ。キャリア各社は2010年以降に向けて新たなサービスやビジネスの種をまき、次世代に向けた新サービスもいくつか提案された。逆風下の端末市場でも、「iPhone 3GS」の躍進やAndroid端末の登場、モバイルデータ通信端末の販売数がかつてない伸びを示すなど変化が起き始めている。
2009年はどのような年だったのか。そして2010年はどのような1年になるのか。筆者の率直な感想と評価を述べたい思う。
安定基盤の下に、種蒔きに成功したドコモ
NTTドコモの山田隆持社長は、2009年を評して「種蒔きの年」と語った。まさに今年のドコモは、解約率の低さに支えながら、種蒔きに終始していたといってもいいだろう。
まず足元の競争環境で見れば、2009年はドコモの「2年契約割引(ファミ割MAX50/ひとりでも割)」と、販売規模の多かった905iシリーズの「2年割賦払い」というダブルの“2年縛り”が明ける直前に位置し、それが解約率の驚異的な低さにつながった。さらにドコモはこの数年間、携帯電話キャリアにとって重要な「インフラ強化」を地道に続け、同社のFOMAインフラはエリアの広さ・通信品質のよさで随一のものになった。
端末ラインアップをつぶさに見れば、ドコモの競争力が圧倒的というわけではないのだが、それでもドコモが安定的な成長ができたのは、料金プラン・販売モデルによる囲い込み効果と、インフラ力による安心感からくる解約抑制効果によるものが大きい。そして、この“足元の安定”により、ドコモは2009年、大小様々な未来への投資を行った。
それらの種まきの中で、もっとも重要なものが「オートGPS対応iコンシェル」と「スマートフォン」だろう。
iコンシェルは従来のiモードの延長線上に位置するが、そのコンセプトやサービス内容は時代を先取りしている。今後のモバイルインターネットでは「リアル連携」を軸に、コンテンツやサービスの洗練された提供が重要になる。iコンシェルではGPSや非接触IC(おサイフケータイ)を用いて、そこに独自のアプローチをしている。これはAppleやGoogleのモバイル戦略と並んで、注目の取り組みだ。
iコンシェルはまだ発展途上であり、PC向けWebサービスとの連携の弱さや、オートGPS対応iコンシェルに対応したモデルが主力のSTYLEシリーズに少ないなど、課題も多く残されている。また後述するスマートフォン分野ではなく従来型の携帯電話向けサービスのため、「海外市場への発展性はあるのか。またもや日本固有のサービスでメーカー・コンテンツプロバイダーの負担になるのではないか」という不安や批判も生じるだろう。来年、ドコモはこれらの問題をいち早く解消し、iコンシェルの可能性を引き出す必要がある。
一方、スマートフォンについてもドコモは積極的だ。同社はiPhoneの販売権を逃して以降、この分野で後れを取っているが、国内初のAndroid端末である「HT-03A」や、「T-01A」を始めとする多数のWindows Phoneラインアップの投入、さらにはRIMの「BlackBerry Bold」を拡販するなど、今年はスマートフォン重視の姿勢をさらに強くした。またiPhone 3GSの好調ぶりに経営陣は神経をとがらせており、山田社長が会議で「なぜ、うち(ドコモ)のスマートフォンはiPhoneに負けるのか」と檄を飛ばすことが度々あったという。
このようにドコモはスマートフォンを重視してはいるものの、Appleとソフトバンクモバイルの「iPhoneタッグ」に結局は勝てなかった。その原因の1つは“iPhone並みに魅力的なスマートフォンを獲得できなかった”ことにあるが、一方でドコモが従来型の携帯電話ラインアップに配慮し、ソフトバンクモバイルがiPhoneに対して行ったほどの厚遇を、自社のスマートフォンに向けられなかったことも理由だろう。ドコモは2010年、ソニー・エリクソンの「XPERIA X10」を筆頭に、魅力的なスマートフォンを獲得できる可能性が高い。その際に、料金プランや販売施策において、iPhone並みの優遇や厚遇ができるか。ここがドコモにとって試金石になりそうだ。
一方で、ドコモの今後に不安があるとすると、長期的・大型の将来投資は充実している反面、短期的な店頭競争でのトレンド変化への対応力がやや弱いと感じるところだ。とりわけそれを強く感じるのがデータ通信端末での競争で、イー・モバイルの「Pocket WiFi」のような製品をいち早く出せなかったところに、ドコモのフットワークの悪さが垣間見える。非携帯電話のデータ通信端末市場は2010年にさらに広がる見込みであり、従来型の携帯電話のようなオーダーメイド型の製品だけでなく、既存の端末を組み合わせた形の商品やサービスも続々と出てくるだろう。ここでは店頭トレンドを先読みする力と、商品化に向けた決断と行動の速さが求められるのだが、それがドコモには乏しいのだ。
現実路線で建て直し――しかし課題も残るau
2009年、auの大きなテーマは「競争体制の建て直し」だった。
端末の共通プラットフォーム「KCP+」の導入でつまずき、ドコモ追随路線とソフトバンクモバイルの攻勢でキャリアとしての個性と競争優位性を損ない、市場流動性低下と端末販売不況によって旗下の端末メーカーが経営不振や撤退の憂き目にあう。2009年初めのauは、これまで好調だった要因がすべて裏目に出るという満身創痍の状況だった。しかし、この1年の努力で、その状況はずいぶんと改善した。
まず、懸案だった端末ラインアップだが、KCP+の成熟と不評だったUIの見直しが進み、ひと頃に比べるとかなりマシになった。特に2009年の冬モデル以降はUIの改善が進み、使いにくさはかなり解消されている。また他キャリアに比べてラインアップ数を絞ったことや、KCP+導入によるコスト削減効果も生まれて、流通在庫の圧縮や端末調達コストの低減に成功した。実際、この冬商戦では「最新モデルでもミドルクラス端末は新規契約で1万円以下」という価格を実現。新販売モデル以降、端末価格の割高感を覚えている消費者に、“新モデルの割安感”でアピールしている。
一方、キャリアとしての競争力向上では、今年8月に導入した「指定通話定額(ガンガントーク)」と、11月から投入した「ガンガンメール」により、コミュニケーションの割安感を訴求。両者は主婦層や学生層の利用スタイルに合致した割引サービスとして、効果を発揮している。
このように端末と料金プランにおいて、auのテコ入れは“現実路線”で進んでおり、実際の効果も出はじめている。しかし、その一方で、auにはいまだ解消されていない弱点や課題も残されている。
その中でも代表的なものが、スマートフォン分野の出遅れだろう。KDDIでは2009年になっても「スマートフォンはまだ早い」(KDDIの小野寺正社長)という姿勢を貫いており、市場規模が拡大してから本格参入する方針だ。実際の販売台数で見れば、確かに国内スマートフォン市場はiPhone効果をプラスしても従来型の携帯電話よりも小さい。「ドコモみたいにムダ弾は撃てない。そんな余裕はない」(KDDI幹部)という堅実路線のKDDIにとって、手を出しにくい領域というのは理解できなくはない。しかし、昨年のiPhone 3G登場以降、スマートフォンは市場規模こそ小さいものの、モバイルでのコンテンツサービスや新ビジネスにおける影響力・存在感が急速に拡大している。iPhoneがないのはしかたないにしても、コンシューマー向けのスマートフォンがまったくないという現状は、auがモバイルインターネットの次世代トレンドに乗り遅れてしまうリスクになっている。auはいち早くコンシューマー向けのスマートフォンを市場投入し、それを積極的に後押しして育てる必要があるだろう。
iPhone効果とともに、問題も見え始めたソフトバンク
ソフトバンクモバイルにとって2009年は、「iPhoneの年」だったといってもいいだろう。さまざまなキャンペーンの効果もあり、2009年前半から販売が伸び始めたiPhoneは、夏のiPhone 3GS投入によって人気が一般層にまで波及。都市部では女性ユーザーも増え始め、スマートフォンとして初めて“一般ユーザーも使っている”モデルになった。
このブレイクは、iPhoneそのものの魅力が高く、さらにiPhoneのアプリやアクサリーの増加など、利用環境が整ってきた効果ももちろんあるが、ソフトバンクモバイルが料金プランや販売施策で異例ともいえる厚遇をしたからという理由も少なからず影響している。
しかし、その一方で、同社の「iPhone頼み」ともいえる現状は、通信インフラの負担増大や事業バランスの悪化というリスクにもつながっている。
とりわけ深刻なのが、iPhoneによるインフラ負担の増大だ。
周知のとおりiPhoneは従来型の携帯電話よりもデータ通信利用量が多く、PC向けデータ通信サービス並みにインフラに負担をかける。さらにiPhoneの販売は著しく都市部に偏在しており、実際の販売台数以上に局所的なインフラ負担の増大が起きるのだ。“通信インフラの利用量を平準化し、効率よく収益化する”という通信キャリアの常識からすると、今のiPhoneの売れ方は「時限爆弾を抱え込むようなもの。通信品質の維持からすると悪夢のような状態」(キャリアの設備担当関係者)なのだ。
ソフトバンクモバイルは今年、スマートフォンだけでなく従来型の携帯電話でも無線LAN(Wi-Fi)利用を促し、一方でユーザーの速度制限にも踏み込むなど、インフラ負担の軽減に腐心している。しかし、来年もiPhoneの勢いが止まらず、さらに販売数が伸びることが予想される中で、これらの施策は焼け石に水だろう。抜本的な対策は「3Gインフラの増強」しかない。それも通信品質を重視し、コストをかけて行う骨太のインフラ投資だ。
それができなければ来年、iPhoneは一転してソフトバンクモバイルの重荷になることすら考えられる。またAppleにとっても、3Gインフラの逼迫問題・通信速度の低下がiPhoneのユーザビリティとブランドを損なう「ソフトバンク・リスク」になりかねない。繰り返しになるが、今年のiPhone好調を今後の追い風にできるかどうかの鍵は、3Gインフラの増強にかかっている。
ソフトバンクモバイルにとって2010年は、今年以上に舵取りの難しい1年になるだろう。iPhone獲得にいち早く動いたように、同社の次世代のトレンドをつかむ能力は高い。CM大量投入による空中戦や、家電量販店での店頭キャンペーン競争といった地上戦も巧みだ。しかし、来年ソフトバンクモバイルが直面する課題は、「インフラ増強がきちんとできるか」「地方でのエリア拡充とマーケティングがしっかりできるか」「中庸なユーザー向けのサービスやサポート体制を強化できるか」といった地道さが求められるものばかりである。2006年の携帯電話事業参入から3年あまり。ここまで急速に成長してきたソフトバンクモバイルにとって、2010年はキャリアとしての基礎体力とユーザーからの信頼が得られるかどうかが試される1年になりそうだ。
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ソニー再生、道半ば アップル、アマゾン追撃へ(COLUMN)
トヨタ、ホンダ、ソニー、東芝、日立…。2009年は日本を代表する大手メーカーで軒並みトップが交代した。従来路線の延長では未曾有の世界同時不況を打破できないとの危機感が背景にある。中でもソニーは中鉢良治社長が退き、ハワード・ストリンガー会長が社長を兼務する超異例の人事を断行。“双子の赤字”といわれる薄型テレビと家庭用ゲーム機事業の立て直しやハードとソフトの融合などを打ち出した。だが、数々のヒット商品を生み出した“輝き”を取り戻すまでには至っていない。ソニー再生は道半ばだ。
「社長を兼務してからの間、これまで以上の改革を達成した。縦型のサイロを崩し、4人の若くて有能な役員に運営を任せたことで、対話が生まれ、効率的になっている」
ストリンガー社長は、吉岡浩副社長ら4役員を“四銃士”と呼ぶ。
筆頭格の吉岡副社長は「やっと危機感を共有できる態勢になった」と手応えを口にする。
09年3月期に14年ぶりの989億円の最終赤字に転落。10年3月期も950億円の赤字を見込み、11年3月期の黒字転換を必達に掲げる。
まず手を付けたのが、コスト削減だ。生産拠点の集約や部品の共通化、調達の見直しで、今期中に3300億円を目標としているコスト削減は、9月中間期までに8割程度を達成した。
11月に開いた経営戦略発表会では、課題の薄型テレビと家庭用ゲーム機について、生産の外部委託などによる黒字化策を打ち出した。
ただ、薄型テレビは、安値合戦の激化が価格の下落が一段と加速している。ゲーム機のプレイステーション3も9月の値下げで、任天堂の「Wii(ウィー)」を猛追しているが、普及が一巡しており、大幅な販売増は期待しにくい。
さらに、市場では、双子の赤字の解消だけでは、再生に不十分との声が多い。「度重なるリストラで疲弊している。社内では士気の低下もみられる」(米銀行系証券アナリスト)との指摘もある。
再生には市場に対しても、社内に対しても、明確な成長戦略を示すことが欠かせない。
ソニーも懸命に成長ビジネスを模索している。その一つが、来春にもスタートさせる「ソニーオンラインサービス(仮称)」だ。音楽や映画、ゲーム、書籍などのデジタルコンテンツをネットで提供するサービスで、流通コストがかからず、利益率が高い。
あらゆるソニーの製品がネットワークにつながることで、製品の魅力も高まる。「ハード(機器)を売るためにはソフトが必要だし、ソフトが売れればハードも売れる」-。長年の課題だったハードとソフトの融合の実践だ。
ライバルの米アップルが、アイフォーンなどの携帯端末で構築したビジネスモデルで、出遅れ感はある。しかし、映画などの豊富なコンテンツと多様なデジタル家電のラインアップで、一気に差を詰めたい考えだ。
さらに米国で販売している電子書籍端末の国内投入に向けた出版社との交渉にも着手。米アマゾン・ドット・コムの「キンドル」の日本侵入を阻止する構えだ。
09年はソニー・ブランドを不動の地位に押し上げた「ウォークマン」の発売30周年だった。音楽をいつも持ち歩けるようになり、人々のライフスタイルを大きく変えたウォークマンのような製品やサービスを世に送り出すことができるのか。10年はまさにソニー再生の正念場だ。
中国、外資導入はハイテクに重点 産業構造の転換狙う
【北京=高橋哲史】中国国務院(政府)は30日、温家宝首相の主宰で基本政策を話し合う常務会議を開き、今後の外資導入についてハイテク産業やサービス業などの分野に重点を置く方針を決めた。これまで中国に進出する外国企業は安い労働力を当て込んだ労働集約型の産業が多かったが、より付加価値の高い業種を呼び込み、産業構造の転換を目指す。
会議は「外資の利用は我が国の対外開放政策の重要な部分だ」と指摘し、今後も積極的に外資を導入する考えを表明。重点分野として最先端の製造業、ハイテク産業、サービス業、新エネルギー・環境産業を挙げた。
沿海部に比べて発展が遅れている中西部地域に、外国企業が投資を増やすよう促す方針も表明。投資の形式に関しても、従来のような単なる工場建設だけでなく、企業の合併や買収などを通じて外資を国内産業の再編に絡ませる必要があるとの認識を打ち出した。
海外から中国への直接投資額(実行ベース)は今年1~11月に前年同期比9.9%減の778億9000万ドル(約7兆2000億円)だった。
中国、石炭化学の設備増強を3年間凍結 過剰生産抑制に本腰
【北京=高橋哲史】中国のマクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会は30日の記者会見で、生産能力の過剰が深刻な石炭化学産業について、生産設備の増強を3年間は認めない方針を明らかにした。景気の回復傾向が鮮明な中国では過剰生産が大きなリスク要因に浮上しており、政府は無駄な設備投資の抑制に本腰を入れる。
対象となるのはコークスやカーバイド、メチルアルコールなど石炭化学製品の生産設備。今後3年間は「新工場の建設や生産能力の単純な拡大を認めない」とした。
北朝鮮、外貨使用禁止は1月1日から 中国メディア報道
【北京=尾崎実】中国中央テレビは30日、北朝鮮人民保安省が来年1月1日から、国内でドルやユーロなど外貨の使用、流通を禁止する公告を発表したと報じた。外国人にも外貨を北朝鮮の通貨に交換して使用するよう求めている。
公告は「関係機関が措置を実施し、厳格な国家通貨流通秩序を構築する」と明記。実施後は空港やホテルでも外貨を使えなくなるという。中国国営新華社電によると、北朝鮮は通貨ウォンのデノミネーション(通貨呼称単位の変更)を11月30日から実施しており、通貨統制を強める狙いがありそうだ。
違反した企業や社会団体、個人に対しては、政府が営業停止や解散を命じ、取引した資金や物品は没収する。外貨による売買や高利での貸し付け行為などは法に基づいて厳正に処分するという。
09年時価総額、日産が2.5倍に 自動車・資源関連が復調
2009年は日経平均株価が3年ぶりに上昇した。東京証券取引所第1部の時価総額をみると、新興国需要を取り込んだ自動車や資源関連株が増加する一方、需要低迷で市場縮小に直面する通信、電力など内需関連株の目減りが目立った。主要国の政策協調と金融緩和を支えに投資マネーは株式回帰の動きを見せたものの、銘柄を選別する傾向も鮮明だった。
東証1部全体の時価総額は9%増の306兆円。8年連続首位のトヨタ自動車は13兆円で前年末に比べて3兆3600億円増えた。自動車メーカーは日米欧の販売急減で大きな打撃を受けたが、アジアなど新興国需要が持ち直し、株価も反転。中国で販売台数を伸ばす日産自動車は30日も年初来高値を更新し、時価総額は一年で2.5倍に膨らんだ。日経平均の採用銘柄の年間上昇率でもトップだった。
年を越すお札、9年ぶり減少 デフレも影響
日銀は30日、家計や企業、金融機関の金庫などで年を越すお札(日銀券)の合計が前年末より0.6%少ない80兆9542億円になると発表した。減少は9年ぶり。景気低迷を背景に個人消費などが伸び悩んでおり、年末年始に向けたお札の需要が膨らまなかったとみられる。大手企業のボーナス支給額が減るなど、デフレの進行で経済活動が萎縮していることも映しているといえそうだ。
9年前に減少した2000年12月末は、コンピューターの「西暦2000年問題」で当時として過去最高に膨らんだ1999年末の反動との面が強かった。こうした特殊要因なしに減少に転じたのは、経済の縮み志向を反映したものといえる。
<日航>国際線撤退案が浮上 全日空に統合 国交省は反対
日本航空と全日本空輸の2社体制となっている国内航空会社の国際線を全日空に統合する国際線1社体制案が30日、政府内で浮上した。日航の再建策を検討する同日の関係閣僚などの会談で、1社体制と2社体制の比較が議論された模様だ。
同案は法的整理を前提にしたもので、企業再生支援機構が日航を支援する場合、3年以内の再生見込みが条件となるため、経営の重荷となっている国際線を切り離す案。ただ、国土交通省などは2社体制の維持を強く主張している。支援機構は1月中旬をめどに日航の支援策を詰める予定だが、支援対象となるには「3年以内に事業再生が見込まれること」が要件となっている。
日航は不採算の国内外約50路線を廃止するほか、グループ全体で1万人以上の人員削減を行う方針だが、「昨年の金融危機以降、急激に収益が悪化した国際線のリストラは不十分」との指摘は根強く、「国際線を切り離して国内線に特化すれば、いい会社になると思う」(日航幹部)との見方は以前からあった。
日経社説 成長には競争と投資促す改革が必要だ(12/31)
鳩山政権が新しい経済成長戦略の基本方針を閣議で決めた。2020年までに環境、健康、観光の3分野で100兆円を超す新たな需要を掘り起こし、年平均で名目3%、実質2%を上回る経済成長を目指す。
政権公約に盛り込んだ個々の政策へのこだわりが強く、経済政策全体を見るマクロの司令塔機能が不在だった鳩山内閣が、中長期の経済運営の見取り図を示したのは初めてだ。経済のパイを広げる視点を欠いていた政権が重点分野と目標を明示したのは、とりあえず前進といえる。
日本はデフレと低成長に悩み、財政悪化と少子高齢化による制約も大きい。持続的な成長と雇用創出の原動力となるのは民間の投資である。来年6月に正式な「工程表」を示すというが、それまでに予算や税制、規制改革といった政策の肉付けを徹底し、民間の投資を導き出す環境を整えなければならない。
基本方針は環境・エネルギー、健康、アジア、観光・地域活性化、科学・技術、雇用・人材の6つを戦略分野とした。環境で50兆円超の市場と140万人の雇用、医療や介護などで45兆円の市場と280万人の雇用を新たに生むという目標だ。
具体的な政策としては、風力や太陽光などによる電力を固定価格で買う制度の拡充や、インターネットを利用して電力利用を効率的にするスマートグリッドの構築に触れた。先端医療の実用化や高齢者用住宅の改修支援、民間資金も使った大都市圏の交通基盤の整備も掲げている。
幼稚園と保育園の一体化で育児の環境を向上させ、一定区域での自由な活動を認める「特区」で地域振興を狙うといった、規制の緩和・改革に言及したのも評価できる。
それでも成長戦略としては力不足だ。日本経済が今の実力をすべて発揮して達成できる潜在成長率は0.5%程度に下がっている。実質2%成長には需要の発掘に加え、産業構造を変えて競争を促し、生産性を高める努力が欠かせない。
電力の自由化や雇用・医療の規制緩和、農業を含む貿易自由化など、抵抗の強い改革に踏み込む覚悟がいる。製造業の派遣労働の原則禁止など経済効率を低下させるような政策に傾くべきではない。福祉充実とともに競争を促して高成長を実現したスウェーデンに学ぶべきだ。
年平均3%以上の名目成長を目指すが、その始まりとなる10年度の政府見通しは0.4%にとどまる。デフレ克服が当面の最優先課題だ。政府・日銀が連携し、早くデフレを止める政策対応が必要である。
トヨタ、ホンダ、ソニー、東芝、日立…。2009年は日本を代表する大手メーカーで軒並みトップが交代した。従来路線の延長では未曾有の世界同時不況を打破できないとの危機感が背景にある。中でもソニーは中鉢良治社長が退き、ハワード・ストリンガー会長が社長を兼務する超異例の人事を断行。“双子の赤字”といわれる薄型テレビと家庭用ゲーム機事業の立て直しやハードとソフトの融合などを打ち出した。だが、数々のヒット商品を生み出した“輝き”を取り戻すまでには至っていない。ソニー再生は道半ばだ。
「社長を兼務してからの間、これまで以上の改革を達成した。縦型のサイロを崩し、4人の若くて有能な役員に運営を任せたことで、対話が生まれ、効率的になっている」
ストリンガー社長は、吉岡浩副社長ら4役員を“四銃士”と呼ぶ。
筆頭格の吉岡副社長は「やっと危機感を共有できる態勢になった」と手応えを口にする。
09年3月期に14年ぶりの989億円の最終赤字に転落。10年3月期も950億円の赤字を見込み、11年3月期の黒字転換を必達に掲げる。
まず手を付けたのが、コスト削減だ。生産拠点の集約や部品の共通化、調達の見直しで、今期中に3300億円を目標としているコスト削減は、9月中間期までに8割程度を達成した。
11月に開いた経営戦略発表会では、課題の薄型テレビと家庭用ゲーム機について、生産の外部委託などによる黒字化策を打ち出した。
ただ、薄型テレビは、安値合戦の激化が価格の下落が一段と加速している。ゲーム機のプレイステーション3も9月の値下げで、任天堂の「Wii(ウィー)」を猛追しているが、普及が一巡しており、大幅な販売増は期待しにくい。
さらに、市場では、双子の赤字の解消だけでは、再生に不十分との声が多い。「度重なるリストラで疲弊している。社内では士気の低下もみられる」(米銀行系証券アナリスト)との指摘もある。
再生には市場に対しても、社内に対しても、明確な成長戦略を示すことが欠かせない。
ソニーも懸命に成長ビジネスを模索している。その一つが、来春にもスタートさせる「ソニーオンラインサービス(仮称)」だ。音楽や映画、ゲーム、書籍などのデジタルコンテンツをネットで提供するサービスで、流通コストがかからず、利益率が高い。
あらゆるソニーの製品がネットワークにつながることで、製品の魅力も高まる。「ハード(機器)を売るためにはソフトが必要だし、ソフトが売れればハードも売れる」-。長年の課題だったハードとソフトの融合の実践だ。
ライバルの米アップルが、アイフォーンなどの携帯端末で構築したビジネスモデルで、出遅れ感はある。しかし、映画などの豊富なコンテンツと多様なデジタル家電のラインアップで、一気に差を詰めたい考えだ。
さらに米国で販売している電子書籍端末の国内投入に向けた出版社との交渉にも着手。米アマゾン・ドット・コムの「キンドル」の日本侵入を阻止する構えだ。
09年はソニー・ブランドを不動の地位に押し上げた「ウォークマン」の発売30周年だった。音楽をいつも持ち歩けるようになり、人々のライフスタイルを大きく変えたウォークマンのような製品やサービスを世に送り出すことができるのか。10年はまさにソニー再生の正念場だ。
中国、外資導入はハイテクに重点 産業構造の転換狙う
【北京=高橋哲史】中国国務院(政府)は30日、温家宝首相の主宰で基本政策を話し合う常務会議を開き、今後の外資導入についてハイテク産業やサービス業などの分野に重点を置く方針を決めた。これまで中国に進出する外国企業は安い労働力を当て込んだ労働集約型の産業が多かったが、より付加価値の高い業種を呼び込み、産業構造の転換を目指す。
会議は「外資の利用は我が国の対外開放政策の重要な部分だ」と指摘し、今後も積極的に外資を導入する考えを表明。重点分野として最先端の製造業、ハイテク産業、サービス業、新エネルギー・環境産業を挙げた。
沿海部に比べて発展が遅れている中西部地域に、外国企業が投資を増やすよう促す方針も表明。投資の形式に関しても、従来のような単なる工場建設だけでなく、企業の合併や買収などを通じて外資を国内産業の再編に絡ませる必要があるとの認識を打ち出した。
海外から中国への直接投資額(実行ベース)は今年1~11月に前年同期比9.9%減の778億9000万ドル(約7兆2000億円)だった。
中国、石炭化学の設備増強を3年間凍結 過剰生産抑制に本腰
【北京=高橋哲史】中国のマクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会は30日の記者会見で、生産能力の過剰が深刻な石炭化学産業について、生産設備の増強を3年間は認めない方針を明らかにした。景気の回復傾向が鮮明な中国では過剰生産が大きなリスク要因に浮上しており、政府は無駄な設備投資の抑制に本腰を入れる。
対象となるのはコークスやカーバイド、メチルアルコールなど石炭化学製品の生産設備。今後3年間は「新工場の建設や生産能力の単純な拡大を認めない」とした。
北朝鮮、外貨使用禁止は1月1日から 中国メディア報道
【北京=尾崎実】中国中央テレビは30日、北朝鮮人民保安省が来年1月1日から、国内でドルやユーロなど外貨の使用、流通を禁止する公告を発表したと報じた。外国人にも外貨を北朝鮮の通貨に交換して使用するよう求めている。
公告は「関係機関が措置を実施し、厳格な国家通貨流通秩序を構築する」と明記。実施後は空港やホテルでも外貨を使えなくなるという。中国国営新華社電によると、北朝鮮は通貨ウォンのデノミネーション(通貨呼称単位の変更)を11月30日から実施しており、通貨統制を強める狙いがありそうだ。
違反した企業や社会団体、個人に対しては、政府が営業停止や解散を命じ、取引した資金や物品は没収する。外貨による売買や高利での貸し付け行為などは法に基づいて厳正に処分するという。
09年時価総額、日産が2.5倍に 自動車・資源関連が復調
2009年は日経平均株価が3年ぶりに上昇した。東京証券取引所第1部の時価総額をみると、新興国需要を取り込んだ自動車や資源関連株が増加する一方、需要低迷で市場縮小に直面する通信、電力など内需関連株の目減りが目立った。主要国の政策協調と金融緩和を支えに投資マネーは株式回帰の動きを見せたものの、銘柄を選別する傾向も鮮明だった。
東証1部全体の時価総額は9%増の306兆円。8年連続首位のトヨタ自動車は13兆円で前年末に比べて3兆3600億円増えた。自動車メーカーは日米欧の販売急減で大きな打撃を受けたが、アジアなど新興国需要が持ち直し、株価も反転。中国で販売台数を伸ばす日産自動車は30日も年初来高値を更新し、時価総額は一年で2.5倍に膨らんだ。日経平均の採用銘柄の年間上昇率でもトップだった。
年を越すお札、9年ぶり減少 デフレも影響
日銀は30日、家計や企業、金融機関の金庫などで年を越すお札(日銀券)の合計が前年末より0.6%少ない80兆9542億円になると発表した。減少は9年ぶり。景気低迷を背景に個人消費などが伸び悩んでおり、年末年始に向けたお札の需要が膨らまなかったとみられる。大手企業のボーナス支給額が減るなど、デフレの進行で経済活動が萎縮していることも映しているといえそうだ。
9年前に減少した2000年12月末は、コンピューターの「西暦2000年問題」で当時として過去最高に膨らんだ1999年末の反動との面が強かった。こうした特殊要因なしに減少に転じたのは、経済の縮み志向を反映したものといえる。
<日航>国際線撤退案が浮上 全日空に統合 国交省は反対
日本航空と全日本空輸の2社体制となっている国内航空会社の国際線を全日空に統合する国際線1社体制案が30日、政府内で浮上した。日航の再建策を検討する同日の関係閣僚などの会談で、1社体制と2社体制の比較が議論された模様だ。
同案は法的整理を前提にしたもので、企業再生支援機構が日航を支援する場合、3年以内の再生見込みが条件となるため、経営の重荷となっている国際線を切り離す案。ただ、国土交通省などは2社体制の維持を強く主張している。支援機構は1月中旬をめどに日航の支援策を詰める予定だが、支援対象となるには「3年以内に事業再生が見込まれること」が要件となっている。
日航は不採算の国内外約50路線を廃止するほか、グループ全体で1万人以上の人員削減を行う方針だが、「昨年の金融危機以降、急激に収益が悪化した国際線のリストラは不十分」との指摘は根強く、「国際線を切り離して国内線に特化すれば、いい会社になると思う」(日航幹部)との見方は以前からあった。
日経社説 成長には競争と投資促す改革が必要だ(12/31)
鳩山政権が新しい経済成長戦略の基本方針を閣議で決めた。2020年までに環境、健康、観光の3分野で100兆円を超す新たな需要を掘り起こし、年平均で名目3%、実質2%を上回る経済成長を目指す。
政権公約に盛り込んだ個々の政策へのこだわりが強く、経済政策全体を見るマクロの司令塔機能が不在だった鳩山内閣が、中長期の経済運営の見取り図を示したのは初めてだ。経済のパイを広げる視点を欠いていた政権が重点分野と目標を明示したのは、とりあえず前進といえる。
日本はデフレと低成長に悩み、財政悪化と少子高齢化による制約も大きい。持続的な成長と雇用創出の原動力となるのは民間の投資である。来年6月に正式な「工程表」を示すというが、それまでに予算や税制、規制改革といった政策の肉付けを徹底し、民間の投資を導き出す環境を整えなければならない。
基本方針は環境・エネルギー、健康、アジア、観光・地域活性化、科学・技術、雇用・人材の6つを戦略分野とした。環境で50兆円超の市場と140万人の雇用、医療や介護などで45兆円の市場と280万人の雇用を新たに生むという目標だ。
具体的な政策としては、風力や太陽光などによる電力を固定価格で買う制度の拡充や、インターネットを利用して電力利用を効率的にするスマートグリッドの構築に触れた。先端医療の実用化や高齢者用住宅の改修支援、民間資金も使った大都市圏の交通基盤の整備も掲げている。
幼稚園と保育園の一体化で育児の環境を向上させ、一定区域での自由な活動を認める「特区」で地域振興を狙うといった、規制の緩和・改革に言及したのも評価できる。
それでも成長戦略としては力不足だ。日本経済が今の実力をすべて発揮して達成できる潜在成長率は0.5%程度に下がっている。実質2%成長には需要の発掘に加え、産業構造を変えて競争を促し、生産性を高める努力が欠かせない。
電力の自由化や雇用・医療の規制緩和、農業を含む貿易自由化など、抵抗の強い改革に踏み込む覚悟がいる。製造業の派遣労働の原則禁止など経済効率を低下させるような政策に傾くべきではない。福祉充実とともに競争を促して高成長を実現したスウェーデンに学ぶべきだ。
年平均3%以上の名目成長を目指すが、その始まりとなる10年度の政府見通しは0.4%にとどまる。デフレ克服が当面の最優先課題だ。政府・日銀が連携し、早くデフレを止める政策対応が必要である。