(ノ゜Д゜)八(゜Д゜)ノ新聞

守る大手出版、間隙突く中堅中小 「iPad革命」の裏側
国内出版業界の本音
 「電子書籍事業は、品ぞろえが重要」。アマゾン日本法人アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長は今年6月2日の記者会見で、Kindle Storeの日本での展開についてこう話した。アマゾンジャパンの関係者は「電子書籍事業に参入した07年以降、日本の出版各社とは継続的に話をしているが、時期を明確にできる段階には至っていない」と漏らす。
 ある出版社の社長は、こう話す。「31社の日本電子書籍出版社協会は、言ってみればアマゾンやアップルに対して抜け駆けするなよというようなもの。日本の出版業界は、取次会社のうしろに書店がある。電子書籍市場の立ち上がりで、取次会社も書店も不安を覚えており、そこへの配慮もしながら、慎重に事を進めたいということでは」
 特に国内の出版業界が慎重になっているのが、価格だという。再販制がある日本では出版物の価格を出版社側が決め、維持している。前出の社長は、こう言う。「出版社側が価格をコントロールできるのであれば、アマゾンやアップルへのコンテンツの提供は、やぶさかではない。しかし、アマゾンやアップルの都合で価格を決められるのは許容できない」
 Kindle Storeでは、定価27ドル程度(アマゾンの通販価格は20ドル程度)の単行本であれば、基本的には9.99ドルで販売することがルールとなっている。出版社は10ドル以上の値付けも選択できるが、その場合はアマゾンに支払う手数料が大幅に跳ね上がり、自らの利益を圧迫する羽目になる。
 一方、iBookstoreの価格はベストセラーを含む人気書籍の多くが、12.99ドルから14.99ドル。Kindle Storeよりも高いが、アマゾンの通販よりは安いという戦略的な設定だ。いずれにせよ、書店や取次会社から見れば「価格破壊」であることに違いはない。
 さらにアマゾンとアップルの流通チャネルでは、作家が出版社を「中抜き」して、直接作品を販売することができる。実際に米国では、人気作家のスティーヴン・キングなどが電子書籍向けの作品を書き下ろして販売している。一般に出版社が著者に支払う印税率は10%。アマゾンやアップルの販売チャンネルを利用すれば、それが70%程度に増えることになり、直販に触手を伸ばす作家が増える可能性がある。
 同じことを日本でもされてしまえば、そのインパクトは計り知れない。であれば自分たちのペースで電子書籍市場を築けるよう、独自の販路を準備しておきたいというのが国内出版業界の本音だろう。だから、日本の電子書籍をめぐる大手出版の動きは、電子書籍のプラットフォームまでを包含しているのだ。
官民一体で独自規格
 海の向こうで悠然とたたずむKindle Store、iBookstoreという「黒船」に対し、開国を拒んでいるかのように見える大手出版。「鎖国化」「ガラパゴス化」の動きは、さらに加速している。
 6月8日、総務省、経済産業省、文部科学省は、電子書籍の普及策を検討する懇談会の第2回会合を開催した。懇談会には作家や書店、携帯電話事業者のほか、電書協やシャープも参加した。電書協の電子文庫パブリは、シャープが開発した電子書籍用のファイル形式「XMDF」を採用している。一方、アマゾンやアップルは参加していない。
 ここで、「電子出版日本語フォーマット統一規格会議(仮称)」を立ち上げ、日本語環境に適した電子書籍の独自フォーマットを開発することが決まった。米国など英語圏ではデファクトスタンダードになりつつあり、アップルのiBookstoreも採用している「ePub」形式については、「日本語への対応状況を見極めつつ対応を検討する」としている。
 Kindle Storeが採用する独自形式「AZW」に関しては、ほとんど話題にも上っていない。
 官民が一体となって電子書籍の普及を進めようとしているのは事実だ。だが、見方を変えれば、官民が一体となって日本固有の仕様に基づく市場を作ろうといういつもの構図。その一方で、大手の動きと距離を置きながら虎視眈々と電子出版の環境を整える出版社もある。中堅出版のディスカヴァー・トゥエンティワン(21)もその一社だ。
 「アマゾンについては、英語版の電子書籍を出すつもり。日本語版はいつになるかわからないので様子を見ている。iPadとiPhoneに関しては、iBookstoreの日本版が始まらなくてもアプリで対応できるので、それはやる。グーグルのAndroidを搭載したスマートフォンも同じ」
 勝間和代氏を見出したことで知られるディスカヴァー21の干場弓子社長は、こう早口でまくし立てる。取次会社や書店との縦の関係、出版各社との横の関係をうかがう大手出版のトップは、電子出版の戦略やスケジュールをなかなか明確にはしない。だが干場社長は違う。
 「いちいちあちこちに合わせて作っているとお金がかかるので、一発でぴゅっといろいろなプラットフォームに流せるようなシステムをいま開発してもらっているところ。秋くらいには準備が整うので、当社から出す新刊本は基本的にぜんぶ電子書籍でも購入できるようにする。既刊本も需要がありそうなものはすべて、用意するつもりでいる」
 ディスカヴァー21は、国内では珍しく、取次会社を通さずに全国4000の書店へ直接、書籍を卸している。そのため出版業界の横のつながりを持たず、当初は業界団体の日本書籍出版協会にも加盟していなかったアウトローだ。つまり「抜け駆け」しやすい立場にいる。だが、電子出版への積極的な姿勢は、それだけが理由ではない。
「プラットフォームは版元の仕事じゃない」
 ディスカヴァー21は創業20年と歴史は浅く、社員数も約40人の小規模な出版社だ。にもかかわらず、出版不況下でヒットを飛ばし続け、出版業界での存在感を年々増している。
 “勝間本”の火付け役『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』は20万部突破、婚活ブームを築いた『「婚活」時代』(山田昌弘・白河桃子著)は13万部突破、最近も『超訳 ニーチェの言葉』が3カ月で39万部を突破と、ヒットを挙げれば枚挙に暇がない。初版で終わる書籍が多いなか、ディスカヴァー21は年間80点の新刊本のおよそ75%で増刷を決めているという。つまり、コンテンツの企画力に自信がある。
 好調を維持するディスカヴァー21は昨年12月、独自の電子書籍販売サイト「ディスカヴァー デジタルブックストア」を立ち上げ、一部の新刊本から電子書籍の販売を開始した。配信先はパソコンとiPhoneで、双方ともに独自の閲覧用アプリを開発、自社専用のプラットフォームを構築した。しかし干場社長は「読者の利便性を考えたら、基本的にプラットフォームは版元がやる仕事じゃないと思っている」と語る。
 「日本で電子書籍配信プラットフォームのデファクトがある程度決まってきたら、当社もそれに合わせようと思っている。でもいまは、決まるのを待っていられない。日本語のePub形式だってどうなるかわからない。だから、プラットフォームやフォーマットはとりあえず置いておいて、見え方とか読み方とかの研究を今のうちにしておこうぐらいのつもりで独自のサイトを始めた」
本格システムを新たに立ち上げ
 今年4月には、『電子書籍の衝撃』(佐々木俊尚著)の電子書籍版を書店での発売前に自社サイトで先行発売して話題を呼んだ。1万部限定で「110円」というキャンペーン価格を打ち出したところ、サーバーがダウンするほどアクセスが集中し、ほぼ1万部を売り切った。その後は、電子版を1000円、紙版を1155円で販売している。
 こうした経験を踏まえ、ディスカヴァー21は今秋、本格的な電子出版のシステムを新たに立ち上げる。「どんなフォーマットでも、どんなプラットフォームへも簡単に対応できるよう、できるだけオープンな設計にした」というシステムは、アップルやグーグルが電子書籍配信に採用するePub形式をベースとしたものだ。
 直営店である自社サイトは維持し、自社サイトから購入した読者は、パソコンでもiPadでもiPhoneでもAndroidでも、独自のアプリを通じて自由に閲覧できるようにする。だが直営店は販路の1つ。iBookstoreの日本版が始まれば、「即座に対応する」と言い切る干場社長は、目指す理想像をこう説明する。
 「アパレルメーカーと同じように考えている。直営店でも売るし、デパートにも出店する。顧客はどこで買ってもいい。iBookというアップル製の電子書籍リーダーで読みたい人はiBookstoreで買えばいい。その代わり、iPadやiPhoneでしか読めない。一方、直営店ではiPadやiPhoneでも読めるアプリを提供するし、パソコンでも各種携帯電話でも読める。顧客はどれでも自由に選べる」
 ディスカヴァー21のような動きは、ほかの中堅・中小出版社にも広がりそうだ。
 折りしも官民の懇談会が開かれた6月8日、「これからの電子出版や電子書籍・雑誌に取り組むための団体」と冠がついた「電子書籍を考える出版社の会」が設立された。
 参加企業として名を連ねるのは、インプレスジャパン、技術評論社、翔泳社、ソフトバンク クリエイティブ、日刊工業新聞社、毎日コミュニケーションズなど、専門書や実用書を中心とする出版社。大手中心の電書協はもちろん、官民の懇談会にも参加していない中堅・中小ばかりである。
「来る者は拒まず」で協力しあう
 「電書協とはまだ話をしたことはないが、敵対する組織というわけでもない。ただ、電書協は電子文庫パブリを運営しているように、文庫・文芸書の出版社が集まっている。我々は専門書・実用書が中心で、大手出版とは事情が異なる部分も多い。最適なフォーマットは何なのか、アマゾンやアップルのプラットフォームはいつ始まるのか、情報がないなか、みんな暗中模索になっている。そうした出版社が集まって、情報交換をしましょうというところから始まった」
 代表幹事を務める毎日コミュニケーションズの滝口直樹取締役出版事業本部長は、設立の狙いをこう語る。あくまでも情報交換や意見交換をする任意団体であることを強調し、出版社はもちろん、出版に携わる制作会社や、電子書籍の開発を目指すIT関連企業など、「来る者は拒まず」の基本姿勢で参加社を募るという。さらに、プラットフォームを共同で開発したり、お互いを縛ったりするような組織ではないことも強調する。
 「iPad向けのアプリも、ePub形式の配信も、iBookstoreも、できることがあれば、どんどんやってください。そして、苦労したことや問題点を教えてください、みんなで協力しあって電子書籍市場を盛り上げましょう、というスタンスでいる」
 政府やメーカーなどと組んで「オールジャパン」でデファクト争いに突入しようとしているかに見える大手出版。一方で、身軽な立場を利用して、フォーマットやプラットフォーム競争に左右されない戦略を敷く中堅中小。電子書籍市場は立ち上がったばかりで、その行方は混沌(こんとん)としている。戦略の優劣を判断できる段階ではない。だが、少なくとも読者は、電子書籍のフォーマットが乱立したり、ほしい電子書籍がなかったり、あるいはプラットフォームが分散するような「面倒」な状況を望んではいない。



NTTドコモ株主総会、スマートフォンなどの質問目立つ
 NTTドコモは18日、定時株主総会を開いた。総会では、スマートフォン(高機能携帯電話)に関する質問や、海外展開の強化を求める意見が目立った。スマートフォン利用者のすそ野を広げるために、同社の山田隆持社長は「(商品)ラインアップの拡充や、使いやすい料金にしていく。アプリケーションを取り込みやすいようにもしている」と答えた。
 低迷する株価の理由を問う質問に対しては、「(携帯電話が)成熟市場になってきたのではないか、競争が厳しいのではないかとの危惧がある」との認識を示した。そのうえで「成長戦略をいかに示すかが大切。データ通信料収入の拡大をなんとしても目指したい」と述べた。
 総会は約2時間で終了。2491人(昨年は2189人)が出席し、議案はすべて可決された。役員報酬に関する質問は出なかった。



ソニー株主総会、ストリンガー会長「3Dでテレビ復活」
 ソニーは18日、都内で定時株主総会を開いた。ハワード・ストリンガー会長は、「3次元(3D)テレビがソニーのテレビ復活のきっかけとなり、今後は競争力のある製品を出していける」と株主らに訴えた。3D関連ではテレビやコンテンツに加え、業務用のカメラや映写機なども展開しており、同会長は「3Dは主要施策で、ソニーは幅広い分野で技術に優位性がある。3Dではあらゆる資産をもっている」と強調した。
 総会では、株主から家電やゲームなど主力事業で営業赤字が続いていることを指摘する声が出た。これに対し、大根田伸行副社長兼最高財務責任者(CFO)は「11年3月期は(10年3月期の業績改善に寄与した)金融事業ではなく、家電、ゲームが全体の収益改善のコントリビューター(けん引役)となる」と説明した。
 米グーグルと映像・情報端末の開発で提携したことについては、ストリンガー会長が「ソニーがハードとコンテンツの両方を持っているため提携先として選ばれ、世界に先駆けてインターネットテレビを展開できることになった」と語った。
 議案は取締役の選任と、ストック・オプション付与のための新株予約権の発行の2案だった。株主から「株主に基本情報が与えられていない」との指摘が出たため、ソニーは10年3月期の個別の役員報酬額を開示し、ストリンガー会長に総額4億1000万円を支払うことを明らかにした。
 株主総会は午前10時に始まり、12時18分に終了した。7827人(前年は8329人)が出席し、議案はすべて原案通り可決した。



改正貸金業法の施行知って 副大臣らティッシュ配りPR
 個人向けローンの規制を大幅に厳しくした改正貸金業法が18日、完全施行された。金融庁は同日朝、改正法の周知を目的に大塚耕平金融担当副大臣ら30人ほどがJR新橋駅前で「貸金業法が大きく変わります」と書かれた広報用のティッシュを配布した。
18日午前、街頭でティッシュを配る大塚副大臣 (東京都港区)
 改正貸金業法では、利用者の借入総額を年収の3分の1までに制限する一方、上限金利も29.2%から20%に引き下げた。借金を繰り返して返済に行き詰まる多重債務問題の解消を目指すが、個人の資金繰りなどへの影響も予想される。
 ティッシュ配りに参加した大塚副大臣は「完全施行でどのような状況になるか見極めて、対応すべきことがあれば迅速に対応する」と述べた。通勤途中の会社員(40)からは「若いころはよくローンを利用したが、今後はあまり世話にならない人生を送りたい」との声が聞かれた。



三浦惺NTT社長「高速通信普及へ新組織」
ブロードバンド化、無線もライバルに
 「世界ICT(情報通信技術)サミット2010」(日本経済新聞社・総務省主催)に参加したICT業界の首脳たちにインターネットやモバイル産業の将来像を聞いた。初回の三浦惺NTT社長は「ブロードバンド(高速大容量)サービス普及のために社長直轄組織を立ち上げる」ことを明らかにした。
 ――政府はブロードバンド推進政策を掲げるが現状はどうか。
 「ブロードバンドの利用・活用にはパブリック(公的利用)とプライベート(個人利用)の両方がある。遅れているのは前者だ。電子政府や教育、医療の分野で規制緩和や仕様の統一を進め、ブロードバンド利用の壁を取り払うべきだ」
 ――光ファイバー通信回線の伸びは鈍っている。NTTとしてできることは。
 「NTTグループをあげて光回線の普及を推進するため、社長直轄のブロードバンド推進本部を6月24日に設置することにした。NTT東西地域会社、NTTドコモ、NTTデータ、NTTコミュニケーションズの各グループ5社の副社長クラスをメンバーに加える」
 「私がリーダーシップをとり、新たなサービスの開発や普及策を立案し実行する。電子政府の実現や、地方公共団体の利用促進にも積極的に協力していきたい」
◇   ◇   ◇
 ――ブロードバンド推進本部にはドコモも含まれるのか。
 「当然だ。固定だけではブロードバンドのすべては担えない。どういう形でブロードバンドを普及させるのか、固定通信のユーザーだけでなく携帯の利用者の要望も吸い上げなければならない」
 「NTTは映像サービスや、ベンチャー企業と協力しながらサービス開発に取り組んできた。光回線を使ったテレビ(IPTV)はようやく100万件を超えた。公的利用についても、政府任せにするつもりはない」
 ――司令塔をつくる狙いは。
 「従来はドコモや東西会社が同じような製品をそれぞれ出すケースもあったが、今後は知恵を結集して固定通信と移動通信の融合の時代に備えなければならない」
 「ブロードバンド化は、電話回線から光回線という1つの選択肢だけでなく、電話線から無線へという方向もある。固定回線はいらないという若い世代も増えてきている。利用者ニーズの変化を読み取りながら柔軟な政策を打ち出すべきだ」
 ――公的利用の促進にどう貢献していくのか。
 「教育はブロードバンドの恩恵を最も受ける分野だが、その3分の1はブロードバンドが提供されていない。光回線のような超高速なブロードバンドでなくてもまかなえる部分がある。まずそこから手を付けなければならない」
 「ブロードバンドの普及を広くとらえると、単なる回線の普及だけではない。使う側のITリテラシーの向上も重要なテーマだ。教育の現場や、IT特区に専門家を派遣して、リテラシー向上の相談に乗る取り組みも進める」
 ――光回線シェアは7割を超えるが、競争状況をどうみているか。
 「NTTは赤字を覚悟で光回線の敷設につとめてきた。海外投資家からは『クレイジー』と言われてきたが、人後に落ちない努力と情熱を傾けてきた。従来、CATV会社や電力系通信事業者と競争してきたが、KDDIがCATV最大手のジュピターテレコムに資本参加したことで手ごわい勢力が誕生する」
 「固定回線だけでなく、無線も有力なライバルだ。従来の無線LANや高速無線通信『WiMAX』に加え、年末からは最大スピードが光回線並みになる次世代携帯電話サービス『LTE』も始まる。利用者によりよいサービスを提供するための設備・サービスを含めた競争の土壌は整っている」
 ――政府ではNTTの光回線インフラを分離すべきだとの議論もある。
 「NTTの組織を見直すことがブロードバンドの普及にプラスになるとは思わない。組織を分けることはいろいろな意味でイノベーションを阻害することになると考えている」



緊急特集
消費税10%、市場の見方(10/6/18)
 菅直人首相が消費税率について「自民党が提案している10%を一つの参考にさせていただく」と発言し、株式市場でもにわかに将来の消費税増税への関心が高まってきた。「消費税10%」は自民党が提案しているもので、参院選の結果にかかわらず議論は続く可能性がありそう。市場関係者の見方をまとめた。質問は
(1)消費税増税の可能性・時期
(2)景気・株式相場への影響
(3)個別銘柄や業種への影響
「消費活性化で経済にプラス」
神山直樹・ドイツ証券チーフエクイティストラテジスト
 (1)消費税の増税の実現性はかなり高くなっている。民主党も自民党も増税に前向きになっているうえ、世論調査でも増税に対する支持が高くなっている。ここまで条件がそろったことは過去ほとんど例がなく、実現性は相当高まっている。ただ正式に決まるにはかなり時間がかかる。まず税制調査会等で詳細を固めるのは非常に時間がかかる。さらに景気への悪影響を避けるため、国内総生産(GDP)など数値目標を立てて、景気が回復したときに増税するというような決め方もできるため、タイミングはかなり先ということしかわからない。
 (2)増税は日本の経済成長にとってプラスだ。今は将来増税になるかもしれないという不安心理が強く、日本人は貯金を増やし、消費を手控えたりしている。増税が社会保障の持続性の高まりにつながると国民が考えれば、かえって個人消費の活性化につながる可能性がある。一方、短期的な景気については悪影響を与える可能性もあるが、そのときの景気の状況次第だ。株式相場にとっても同様にポジティブだ。社会保障に対する信頼感が増せば、消費面で好影響を与える。
 (3)短期的には住宅や耐久消費財など高額品に対する駆け込み需要が強まり、その後冷え込むという形で需要の波が大きくなる。今後の設計次第で業種や個別銘柄への影響は変わる。例えば、福祉目的税のような特定目的税になった場合、福祉や医療関連銘柄にプラス。また衣料品や生活必需品が減免税率となった場合、低廉品にプラスで、高級品にマイナスになるだろう。(聞き手は土居倫之)
「企業間格差につながる可能性」
瀬川剛・みずほ証券エクイティストラテジスト
 (1)以前は消費税の増税に反対する人が多かったが、今年春の各種の世論調査によると6割程度の回答者が増税を容認する姿勢を示した。国の長期債務は国内総生産(GDP)の1.6倍に膨らんでおり、今後5年間で倍になるという試算もあり、(増税は)やむを得ないと考えたのではないか。菅直人首相は最短で2012年秋にも消費税を引き上げると言っているが、ずれ込むのではないか。参議院選の結果次第では総選挙にもつれ込む可能性もあり、最低でも半年程度は遅れそうだ。
 (2)1989年の消費税3%の導入や97年に5%に引き上げた際、その前年に高額商品の駆け込み需要が多くなった。一方で、反動による消費の落ち込みも大きかった。極端に減少した際のケアをどうするのかが重要だと思う。今回は5%から10%と大幅な引き上げになり、かつてとは比べられない駆け込み需要が出そうだ。未経験の反動減にも備えなければいけない。(消費税の引き上げ分)商品の価格が上昇するため、費用対効果を考えて、消費者はより質や中身を厳選するようになる。そうなれば、(業績や株価で)企業間の格差を広げることになるだろう。
 (3)高額品の駆け込み需要の増加を考えると、住宅や住設、自動車、家電などの銘柄が注目だ。
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モバイルに軸足移すスカイプ 市場争奪戦に名乗り
 シンガポールでアジア最大級の通信関連イベント「CommunicASIA」が6月15~18日の日程で開催されている。日本からはNTTドコモが参加し、メーカーでは韓国サムスン電子や中国の華為技術(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE)が様々な端末を展示している。だが、会場で最も存在感を示していたのは、インターネット電話サービスの「Skype(スカイプ)」だった。
 基調講演ではスカイプ・テクノロジーズのジョシ・シルバーマン最高経営責任者(CEO)がスカイプの現状や今後の戦略を語った。
 2003年にサービスを開始したスカイプは現在、世界で5億6000万ユーザーを抱える。通信業界への影響度は年々高まり、国際電話の世界シェアは約12%、そのうち34%はビデオ通話によるものという。
 スカイプは、ユーザー同士の音声通話やビデオ通話を無料で提供することでユーザーを増やしてきた。収益源はパソコンから一般の固定電話や携帯電話向けに発信する格安の有料通話で、09年の売上高は7億1600万ドルに上る。
モバイル重視をアピール
 とはいえパソコン向けサービスだけでは、いずれ頭打ちになるのは目に見えている。米アップルやグーグルが携帯電話業界に進出してきたように、「スカイプもこの市場にターゲットを絞り始めた」とシルバーマンCEOは強調した。
 実際、CommunicASIAの会場でも「Skype is Mobile」というキャッチコピーを掲げてモバイル重視をアピールし、記者向け説明会などでも携帯市場での事業展開について詳しく説明した。
 スカイプは昨年からアップルのスマートフォン「iPhone」や音楽プレーヤー「iPod touch」向けにスカイプアプリを提供し、すでにiPhone、iPod touchユーザーの約15%がダウンロードしたという。ただ、これまでのiPhoneはシングルタスク処理で同時には1つのアプリしか動作しないため、スカイプアプリを常に起動させておかない限り確実に着信できず、快適とはほど遠かった。
 しかし、6月24日に発売される新機種「iPhone4」に合わせてOSのバージョンが「iOS4」へと上がることで、「iPhone3GS」や第3世代のiPod touchでもマルチタスクが可能になる。他のアプリを使っている間もスカイプアプリを起動させておけば、いつでも着信可能で電話と同じように使えるようになる。
 スカイプはiPhoneだけでなく「シンビアンOS」への対応も進めており、英ソニー・エリクソンが海外で販売している端末に採用している。さらに今年度中にはグーグルの「Android(アンドロイド)」やカナダRIMの「BlackBerry」といったプラットフォームに進出する計画もあるという。
通信事業者と組む動きも
 無料・格安通話が売り物のスカイプは、通信事業者から見れば目障りな存在だ。実際、日本でも、パソコン向けの定額データ通信ではスカイプで通話できないように設定している通信事業者もある。
 だが一方では、スカイプを積極的に取り込もうとする事業者も出てきた。いち早くスカイプと組んだ英国の「3」という携帯電話事業者の場合、スカイプを契約者増に結びつけ、スカイプ利用者の62%は新規契約という成果を得た。
 しかも、スカイプ利用者は一般的なユーザーに比べて20%近くARPU(1人あたり月額利用料)が高いという。無料通話のスカイプ目当てで加入したが、実際はスカイプ以外の有料通話も一般ユーザーより17%も多く使っている。スカイプユーザーは携帯電話サービスを積極的に使う優良顧客でもあるのだ。
 「3」の成功を見て、今年2月には米ベライゾン・ワイヤレスもスカイプと提携した。「3」やベライゾンに続く携帯電話事業者が日本からも出てくるか、今後に注目したい。
ビデオ通話ではアップルと競合
 スカイプが急成長を期待するもう一つの市場がビデオ通話だ。5年後の15年には市場規模が現在の約30倍に拡大するとスカイプでは予想している。
 携帯電話ではノキア(フィンランド)の「N900」がスカイプのビデオ通話に対応。テレビではパナソニックと提携して、薄型テレビ「VIERA」の一部機種でビデオ通話を楽しめるようにした。パソコン、モバイル、テレビと、デバイスの種類を問わずにビデオ通話は広がり出している。
ノキアの「N900」はスカイプのビデオ通話に対応している
 ビデオ通話といえば、アップルがiOS4向けに「FaceTime」というサービスを発表したばかりだ。モバイル市場への本格展開を狙うスカイプにとってアップルは脅威となりはしないのだろうか。
 スカイプのバイスプレジデントであるRuss Shaw氏は「FaceTimeは素晴らしい。しかし、iOS4はこれから出回るところであり、使える場所も無線LANエリアに限られ、ユーザー数は当分少ないはず。その点、スカイプはユーザーも多く、無線LANだけでなく3G(第3世代携帯電話)でも使える。優位性は充分にある」と語る。
 従来の携帯電話は通信事業者がサービスやコンテンツを主導してきたが、iPhoneをはじめとするスマートフォンでは代わってアプリが力を持つようになった。スカイプが音声通話やビデオ通話といった通信サービスにまでアプリの勢力を広げようとすることで、携帯電話市場の勢力争いは一段と混沌としそうだ。



再編「スマートフォン」照準
富士通・東芝が携帯事業統合発表
通信会社から「自立」探る
 富士通と東芝は17日、携帯電話機事業の統合で基本合意したと正式に発表した。10月1日をめどに新会社を設立して東芝の携帯電話事業を移管、富士通が7~8割出資するとみられる。統合でスマートフォン)などの開発を強化する。1日にはNECなどの統合新社も発足した。相次ぐ再編でメーカーは通信会社主導の開発から「自立」を模索、世界市場を目指す。
 新会社には東芝の携帯電話部門の約360人が移る。両社の製品ブランドは当面残す。両社が事業統合で開発を強化するのはスマートフォンだ。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」人気などで拡大する市場に布石を打つ。
 東芝は国内のほか欧州でスマートフォンを展開。富士通も開発を進めている。さらに東芝の液晶と富士通のIT(情報技術)、小型化技術を持ち寄り、新型のスマートフォンの開発にも取り組む。部品の調達や生産体制の共通化で製造コスト削減にもつなげ、世界市場で販売する計画だ。
 また、富士通の携帯電話供給先はNTTドコモだけ。東芝はau(KDDI)が主力だが、統合によりソフトバンクモバイルも含め各社に供給する道が開ける。
 国内では1機種100億円ともいわれる携帯電話の開発費の一部を通信会社が援助し、全量を買い取る。このため携帯電話は通信会社の製品となっている。通信会社の事情に合わせてメーカーは多様な機能を追加。商品構成や開発スケジュールにまで通信会社の意向が働いてきた。
 だが、アイフォーンなどの登場で携帯端末自体に魅力があれば、通信会社の意向にかかわりなく市場に受け入れられることが明らかになった。
 「販売奨励金」を通信各社が抑制した結果、見かけ上の端末価格が上昇。2009年度の携帯電話出荷はピーク時の4割減となる約3100万台まで縮小。メーカーの事業環境は悪化した。通信会社丸抱えの開発構造は転換を迫られている。
 日本市場は世界の約3%の市場にとどまっており、UBS証券の乾牧夫アナリストは「再編は遅すぎたくらいだ」と指摘する。
 総務省は携帯電話端末を一つの通信会社でしか使えないようにする「SIMロック」を11年以降解除する方針。消費者の選択肢が増し、端末開発で独自性を発揮できるチャンスはある。
 ただ、両社の総出荷数は年約700万台。2億台以上を世界で販売するフィンランドのノキアや韓国のサムスン電子とコスト競争力で肩を並べるのは容易ではない。



富士通 成長分野に力 東芝 「選択」を加速
 「成長のタネ」を求めた富士通、「選択」を進めた東芝――。両社が携帯電話機事業の統合に動いた理由をまとめると、こうなる。
 東芝は西田厚聡会長の社長時代から「選択と集中」を掲げ、社会インフラと半導体を2本柱とする方針を鮮明にしてきた。米ウエスチングハウス買収による原子力事業の強化、NAND型フラッシュメモリーの積極投資はその代表例だ。
 一方で音楽など非中核事業は売却。収益構造は改善されつつあったが、2008年秋以降の世界同時不況で09年3月期は最終赤字。これで選択と集中をさらに加速する必要に迫られた。その1つが携帯電話事業だ。
 09年5月に国内生産から撤退、海外企業への生産委託を決めたが、これだけでは再建は困難。国内メーカー各社に内々に打診を続け、手を挙げたのが富士通だ。
 「今後は成長と利益の両面を追う、ポジティブな構造改革を進める」。富士通の山本正已社長はこう話す。ネットワーク経由でソフトを提供する「クラウドコンピューティング」を今後の成長事業とする富士通にとって、携帯電話機は重要なキーデバイス。万人が持つ情報端末で、あらゆる情報・データの「出入り口」となるためだ。
 同社は09年に、ハードディスク駆動装置(HDD)事業を東芝に譲渡、先端半導体の生産を台湾企業に委託するなど不採算事業の改革を進めてきた。懸案事業の整理に一定のめどがついたことから、攻めの経営に転換するタネを求めており、東芝の選択のタイミングと一致した。
 携帯電話によって消費者との接点を広げることが、企業や消費者を結ぶクラウドサービスで攻勢をかけるうえで不可欠と富士通は見ている。



任天堂「Wii」は依然ライバル製品に対抗できる=岩田社長
 [ロサンゼルス 16日 ロイター] 任天堂は、据置型ゲーム機「Wii(ウィー)」について、ライバル企業の米マイクロソフトやソニーに依然として対抗できると確信しており、刷新の必要はないとの見解を示した。
 岩田聡社長が、当地で開催中の世界最大規模のゲーム見本市「E3」で語った。
 同社長は、販売の伸びは減速しているものの、Wiiにはまだ寿命があり、「メトロイド」や「ドンキーコング」、「ウィーパーティー」などの人気ソフトの最新版がWiiの販売を支えるとの見方を示した。
 ただ同社は、15日に発表した3D(3次元)対応の新型携帯ゲーム機「ニンテンドーDS3」の場合と同様に、第三者のゲーム開発者を早期に引き入れる重要性についても強く認識している。
 岩田社長は、通訳を通じて、Wiiコンソールをすぐに刷新する必要はないとの考えを示した。その上で、当然、今後ある時点で必要になるだろうと加えた。
 いつ必要になるかに関しては現時点では分からないとした。
 同社長はまた、自社株買い戻しを検討していることを明らかにしたが、特に必要性が生じた場合に限り実施する方針を示した。



長引く収縮、けん引役不在
 あなたのキャッシング枠を60万円から40万円に引き下げます――。金沢市に住む30代の男性会社員は最近、大手クレジットカード会社から一通のはがきを受け取った。すでにキャッシング残高は55万円ある。超過分をすぐに返済する必要はないが、新たな融資はしないという“通告”だった。
借り入れ把握
 改正貸金業法の段階的な施行のなかで、個人の借り入れ状況を総合的に把握する信用情報機関制度が先行導入された。カード会社は情報機関を通じて、この男性が複数の貸金業者からかなりの金額のお金を借りているのを把握し、キャッシング枠を狭めることにした。18日の改正法の全面実施で個人の借入可能額が「年収の3分の1」までに抑制されるのを先取りして手を打った。
 カード会社にとって、年率十数%の金利収入があがるキャッシング事業は収益の柱だった。キャッシング枠を甘く設定して、顧客に積極利用を促してきたが、法改正で本業のショッピング事業への回帰を迫られている。
 収縮がより顕著なのは、消費者金融専業の武富士など。武富士の貸付残高は最盛期の2001年度には1兆7000億円にのぼったが、直近では6000億円に縮小。5月の新規顧客の借り入れの申し込みに応えた割合(成約率)はわずか9%だった。同社は月間の貸出実行額を2億円に絞る方針で事実上、新規貸し出しを停止した状態に近い。
銀行に期待も
 改正法による規制強化で貸し出しを増やしにくくなる以前に「過払い金」の返還問題が重荷になっていたことから、貸し出し原資の調達が厳しくなっている。顧客から回収した資金を返済に回し“自己防衛”を優先している。武富士の清川昭社長は「顧客の借り入れニーズはあるが、今年は貸し出しがほとんどできない」と話す。
 クレジットカード・信販会社の09年度のキャッシング取扱高は4兆円弱と前年度比21%減った。武富士、アコム、プロミス、アイフルの大手4社の09年度の貸付残高は前年度比20%減の3兆円弱、直近のピークの02年度比では半減した。収縮はまだ続くとみられている。
 消費者金融の金利帯別残高を見ると、年率20%前後に集中しているのがわかる。貸し過ぎと批判された貸金業者の姿勢を是正し、高すぎる金利のローンを減らすのは法改正の狙いでもある。
 ただ、適切な金利で必要な資金を借りられる個人の無担保ローン市場がなぜ育たなかったのか。金融庁の検討部会は4月「銀行・信用金庫などが消費者向け貸し付けに必ずしも十分に取り組んでいない」と、けん引役の不在を指摘した。
 銀行部門の個人向け無担保ローンの残高は4兆円と融資総額の1%に満たない。住宅ローンを除けば、銀行は個人向け融資に取り組んでこなかったのが実情だ。04年に三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループは消費者金融大手と資本提携。ノウハウ吸収を狙ったが、貸金業者の業績悪化でむしろ経営支援に追われている。
 三菱東京UFJ銀行の柳井隆博・執行役員リテール企画部長は「個人向けローン市場は安定的に需要がある分野で、しぼむことはない」と語る。そのニーズにどれだけ応えられるか。銀行の役割も試される。



鬼門の消費税 歴代内閣 苦戦の歴史
 消費税が政治テーマとして初めてクローズアップされたのは「一般消費税」の導入問題だ。石油ショックによる景気低迷で赤字国債を発行、財政危機が深刻化したため、自民党は1978年12月、一般消費税を「80年度中に実現できるよう準備を進める」と税制改正大綱に明記した。世論の反発で大平正芳首相は軌道修正を試みたが、直後の衆院選で過半数割れの大敗を喫した。
 86年の衆参同日選では300議席の地滑り的大勝を収めた中曽根康弘内閣が税率5%の間接税導入を盛り込んだ売上税法案を提出。ただ、中曽根首相が選挙戦で「大型間接税をやる考えはない」と掲げていたため「公約違反」との批判があがり、結局、売上税法案は廃案となった。
 この後の竹下登首相が消費税法案を提出し、野党側の反対を押し切り、88年12月に消費税法は成立。89年4月に税率3%で消費税が導入された。ただ竹下首相の退陣後、後任の宇野宗佑首相は自身のスキャンダルや、消費税導入のあおりを受けた。89年の参院選で自民党は惨敗し参院で単独過半数を割り込んだ。
 非自民連立政権として誕生した細川護熙首相は94年2月に突如、消費税を税率7%の国民福祉税に衣替えする構想を表明。ただ政権内から反対の大合唱が起こり、直後に撤回。細川首相の退陣後、村山富市首相率いる社会党が自民党と組んで、消費税率5%への引き上げで合意し、94年に関連法を成立させた。ただ、社会党は社民党として臨んだ96年10月の衆院選で議席が半減。税率引き上げを実施した橋本龍太郎首相も98年の参院選で大敗し、退陣した。



日経社説
首相の消費税発言を機に論争を深めよ
 7月の参院選に向けた各党のマニフェスト(政権公約)がほぼ出そろった。日本の閉そく感をいかに打破するかが課題となるなか、成長戦略と財政再建の兼ね合いなどが争点となる。将来への責任から逃げない活発な政策論争に期待したい。
 菅直人首相(民主党代表)は17日、公約発表の記者会見で消費税の見直しに触れ「2010年度内に、あるべき税率や(低所得者ほど負担感が重い)逆進性対策を含む改革案を取りまとめたい」と語った。
将来の責任から逃げず
 超党派での協議を重視する一方、合意に至らなければ民主党の責任で結論を得る考えも表明した。増税前に次期衆院選で有権者に信を問う意向も示し、税率に関しては自民党が提案している当面10%への引き上げを参考にする考えを明らかにした。
 消費税を含めた税制の抜本改革は自民党政権が先送りを続けてきた難しい課題である。参院選の前に増税への基本的な考え方を表明した首相の決断を歓迎したい。
 ただ首相が目安とした税率10%の根拠は不明確である。これをきっかけに税制や、年金、医療など社会保障制度の将来像をめぐる与野党の議論が加速することを期待する。
 民主党は今回のマニフェストで、首相が掲げる「強い経済、強い財政、強い社会保障」を柱に据えた。財源の制約を考えて、子ども手当の満額現金支給方針を見直すなど、実現可能性や政策の実効性に重点を置いているのは評価できよう。
 しかし様々な公約から、実施の時期や規模に関する数値目標が消えたのは残念であり、迫力を欠く印象はぬぐえない。
 法人税実効税率の軽減や規制改革、規制や税制の特例措置を適用する総合特区の活用にも言及した。医療や介護、農業、環境など成長分野を伸ばし、今後10年間の平均で名目3%成長を目指す。日銀との協力によるデフレ克服にも意欲を示した。
 これまで民主党の弱点とされてきた経済活性化策を重視した点は評価できる。財政や社会保障の安定には何より着実な経済成長が大前提となる。ただ、法人税実効税率引き下げの幅や実施時期、規制緩和の対象などには具体的に言及していない。
 「新規政策の財源は既存予算の削減または収入増でまかなう」という原則を打ち出した点は前進だ。国債費を除く歳出と国債発行分以外の歳入とのバランスを示す基礎的財政収支に関しては「20年度までに黒字化を達成する」とし、長期債務の膨張に歯止めをかける考えを示した。
 税制改革についてマニフェストは「早期に結論を得ることを目指して、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始する」と書くのにとどめた。首相は消費税増税案を今年度中に出すと一歩、踏み込んだが、増収分を何にどう使うのかなどはまだ明らかではない。
 社会保障予算の膨張に対して消費税による財源の確保が避けられない情勢だが、民主党の社会保障改革の方向は見えてこない。最低保障年金の導入など同党が提唱してきた年金制度の改革は鳩山前政権の下で具体化の作業が進まなかった。
 「強い社会保障」は給付の積み上げではなく、持続可能な制度とすることに重点をおくべきだ。少子高齢化が進むため社会保障関係費は年1兆円ずつ増える。ここを抑制しない限り、年金の持続性も財政の健全化もおぼつかない。
税制は超党派で協議を
 一方、自民党も17日に参院選のマニフェストを公表し、消費税率引き上げの方向を示したうえで「超党派による円卓会議等を設置し、国民的な合意形成を図る」と明記した。また法人税の実効税率を今の約40%から20%台に下げる方針を示した。
 消費税率の引き上げやその前提となる社会保障改革、法人税の軽減は、いずれにせよ実施せざるえない政策だ。また政権が再び代わっても簡単には変えられないものであり、超党派での協議は欠かせない。
 各党の公約を見ると、国会関連などの経費節減も一つの争点となっている。民主党は「参院定数の40削減、衆院の比例代表の定数の80削減」を掲げた。自民党は国会議員の定数について「3年後に1割、6年後に3割削減」と打ち出した。新党改革、みんなの党も大幅な定数削減をうたっている。
 公明党は社会保障の充実や雇用の保障などによる「新しい福祉」を提唱。このほか共産党、社民党、国民新党、たちあがれ日本なども独自色のある政策を打ち出している。
 参院選は7月11日の投票日に向けた長丁場となる。総花的な公約ではなく優先順位や財源の手当てを明確にした実のある論争に期待したい。
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