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任天堂の新型機はゲーム業界を「死活問題」から救うか(Column)
 任天堂は15日、米ロサンゼルスで開催されたゲーム見本市「E3」の記者会見で、新型携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」をお披露目した。発売日や価格は発表されなかったが、過去のパターンから考えれば日本発売は今冬で、年末商戦の目玉になるのは間違いないだろう。専用眼鏡なしで3次元(3D)表示を実現するとは、ゲーム機作りに長けた任天堂らしいが、3DSにはほかにも注目すべき点がある。
 3DSの裸眼立体視機能はひと目でわかるインパクトがあり、E3でも話題をさらった。2画面を備えるのは現行機の「ニンテンドーDSi」と同じだが、上部の画面を3.02インチから3.5インチへと広げ、解像度を高めたうえで3D機能を付けた。外向きカメラを2個搭載し、3D写真を撮影することもできる。
「マリオの生みの親」のこだわり
 記者会見で、任天堂米国法人のレジー・フィサメイ社長が強調したのは、コストのかかる3D眼鏡を購入する必要がなく、どこにでも持ち運ぶことができるという点だった。
 立体視表示の度合いを調整する「3Dボリューム」というスイッチにも任天堂らしい工夫を感じる。これは、マリオの生みの親として知られる宮本茂専務・情報開発本部長がこだわったようだ。任天堂サイトでE3に合わせて公開された「社長が訊く」というインタビューでは、「自分で好きなセッティングができるのが理想的」という宮本氏が、メニュー画面で選択するような調整機能ではなく、直感的な「アナログスライド」を指定したと述べている。
 立体映像の見え方には個人差があるが、3Dボリュームを使えば、ゲームをしながらいつでも最適な位置に調整可能だ。子供同士や家族で遊ぶことも多いゲーム機ではユーザーインターフェースの簡便さが重要であり、こうした機能は現在販売されている3Dテレビにもない。
大きく進化した無線通信機能
 裸眼立体視ほど目立たないが、実は新たに追加される無線通信機能も大きな意味を持つ。
 3DSはユーザーが能動的に操作しなくても、スリープ状態で自動的に3DS同士でデータを交換したり、インターネットからデータを受信したりする機能を搭載する。これまでも、特定ソフトをセットした端末同士で自動的にデータをやりとりする「すれちがい通信」と呼ぶ機能はあったが、端末本体で通信を制御することで使い勝手を大幅に向上させた。
 家庭用ゲーム機はここ数年、ユーザー同士が交流するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)機能を強化してきた。最近は大手SNSと連携する「オープン化」にも乗り出し、任天堂も09年のE3では米SNS「Facebook」との連携を打ち出していた。
 しかし、Facebookはこの1年間でソーシャルゲームと呼ばれる交流機能を備えたゲームを増やし、ゲーム機メーカーにとってはライバルに変わろうとしている。任天堂は元々、他社ほどオープン化に積極的ではなかったが、今回の3DSの通信機能強化で任天堂独自の閉じたネットワークを追求していく戦略をますますはっきりさせたといえる。
 3DSの2つのカメラで撮影した3D写真は、当然ながら3DS上でしか立体で見ることができない。しかし、3DS同士では簡単にデータを交換できるので、ユーザー数が増えればコミュニティーは自然と大きくなる。任天堂はこの互換性のなさを逆手にとった交流サービスを次々と打ち出してくるはずだ。
深刻な「マジコン」問題
 3DSの無線通信機能は同時に、任天堂が抱える深刻な問題に対する解決案になりうる可能性がある。それは「マジコン」問題として知られる違法コピーの横行だ。
 コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が6月4日に発表した「違法複製ゲームソフトのダウンロードに関する使用実態調査」によると、DSシリーズとソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション・ポータブル(PSP)」シリーズ用ソフトの違法ダウンロードによる被害は世界で年間約6360億円にも上るという。この調査は、ファイル共有ソフトを通じた違法コピーの流通は含んでおらず、実際はその数倍に及ぶと推計される。
 この違法コピーは、任天堂ももちろんだが、世界でDSシリーズ向けにゲームを販売するソフト開発会社に被害を及ぼしている。任天堂もマジコンと呼ばれるツールを販売した会社を提訴するなど手は打っているが、抜本的な解決にはならず、焼け石に水の状態だった。
 しかし、3DSはスリープ状態でも、無線LANアクセスポイントなどを通じて、任天堂のサーバーと自動的にやりとりできる。これは、個々の端末を特定して区分できることを意味する。正規品でない違法コピーをインストールしている場合はなんらかの制限をかけることも不可能ではないだろう。
 OSのアップデートといったソフトウエアの更新も、より簡単になる。デジタル機器のセキュリティー対策とハッキングは「いたちごっこ」となりがちだ。子供から年配の人まで幅広いユーザーを抱える任天堂はこれまで、頻繁なOSのアップデートには慎重だったが、自動更新の仕組みができれば、対策も機動的に打てる。任天堂は、ユーザーに不便をかけずこの問題を解決するため、周到に計画しているように思える。
欧米は来春発売の可能性も
 今回のE3で任天堂は価格や発売日を明らかにしなかったが、過去2回ほどの新機種発売は、9月に日本で大きな記者発表会を開いて全体像を説明し、11月に国内発売というパターンだった。3DSも順当ならそうなるだろう。
 一方、欧米では、今年のクリスマス商戦に投入するかどうかはまだ不透明だ。欧米では、急ぐ必要がない理由がある。DSiを発売したのは昨年4月で、まだクリスマス商戦を一度しか迎えていないからだ。
 DSiの欧米での販売台数は今年3月末時点で1300万台で、これから「収穫期」に入る。また、画面が大きな「ニンテンドーDSiLL」(欧米での名称はDSiXL)も今年3月に発売したばかりだ。今年のクリスマス商戦は3DSの投入時期としては早すぎ、日本で話題を盛り上げた後、来春に発売しても少しもおかしくないだろう。
3D映像の魅力をどうアピールするか
 業界関係者やメディア関係者が中心のE3で、3DSは上々のデビューを果たした。しかし、一般の人に裸眼立体視のおもしろさを理解してもらい、任天堂の掲げる「ゲーム人口の拡大」につなげるには、少しでも多くの人に体験してもらう必要がある。
 任天堂は今回のE3で多くのスタッフを使って3DSをアピールしたが、日本でも体験イベントなどのプロモーション展開は欠かせない。3D製品は、テレビCMや写真では実際の立体感を伝えられない難しさがある。任天堂がこのハードルにどう挑むかも見どころの1つだ。



iPhone 4の品薄状態は長く続く見通し、秋にはCDMA2000対応モデル登場の可能性も
 6月24日に発売される「iPhone 4」が長期にわたって品薄状態となる見通しであることが明らかになった。
 また、アメリカの大手携帯電話会社Verizon(ベライゾン)やKDDIが採用している第3世代携帯電話の通信方式「CDMA2000」に対応したモデルのiPhone 4が登場する可能性があることが明かされており、こちらも品薄状態にさらに拍車をかけそうな要因となっている。
 Appleの新型携帯電話「iPhone 4」が当面供給不足に陥るであろうという見通しを、アメリカの投資銀行Rodman & RenshawのアナリストであるAshok Kumar氏が明かしたそうだ。
 これは「iPhone 4」に搭載される960×640ドットの3.5インチマルチタッチIPS液晶ディスプレイの供給が追いつかないことによるもので、1ヶ月あたりの生産台数は当初計画されていた400万台の半分にあたる200万台に落ち込むことから、需要に対して十分な供給が行われない状態が続くであろうとKumar氏は述べている。
 なお、「iPhone 4」は予約受付を開始した当日に全世界で過去最高となる60万台の事前予約を記録していましたが、この数は前モデルにあたるiPhone 3GSの10倍以上にあたるとされており、高い人気ぶりをうかがい知ることができる。
 ディスプレイの供給不足は8月ないし秋ごろまでに解決するのではないかとされていますが、以下のリンクによると、ODMやOEMを手がける台湾メーカーのPegatron TechnologyがCDMA2000に対応した「iPhone 4」を2010年第4四半期に中国・上海にある工場から出荷する見通しであることが市場関係者によって明らかにされているため、ディスプレイの供給状況次第では品薄状態が長引くことも考えられそうだ。
 ちなみに日本のKDDIが採用しているCDMA2000は、第2世代携帯電話サービスで利用していた周波数と互換性を持たせるために、800MHz帯を利用した通信は上りと下りの周波数が逆転している(2GHz帯では海外と同じ周波数割り当て)ことから、仮にCDMA2000対応のiPhone 4が登場しても、すぐさまKDDIで利用できるようになるというわけではない。



記者の目◇富士通・東芝、高揚感なき携帯統合 
 富士通と東芝は17日、携帯電話事業の統合で基本合意したと発表した。国内市場が縮小する中、安定的に収益を稼ぐ基盤を確立し国内シェアトップを目指す。携帯業界では昨年9月のNEC、日立製作所、カシオ計算機の事業統合発表以来のビッグニュースだが、市場の反応はどちらかといえば冷めた印象だ。海外戦略やスマートフォン(高機能携帯端末)分野などでの成長余地を市場は冷静に見極めようとしている。
 「今回の携帯統合がもたらす東芝と富士通の業績への影響は限定的。成長戦略も不透明でインパクトに欠ける」(大和証券キャピタル・マーケッツの佐藤雅晴アナリスト)。富士通・東芝の携帯電話事業の株式市場関係者の反応を要約するとこんなところに落ちつく。
 実際、両社の携帯電話事業の統合を日本経済新聞が報じた11日、東芝の株価は前の日比2%高と日経平均株価(2%高)並みの上昇、富士通は1%高にとどまった。積極的な買い手掛かりにはならなかった。17日の午後1時に携帯統合で基本合意と正式発表した直後も、両社の株価に目立った反応はなかった。
 背景にあるのが統合新会社に対する先行き不安。「国内市場はじり貧。海外でも新会社がどう成長できるかイメージできない」(いちよし投資顧問の秋野充成運用部長)との声がある。両社の事業統合により国内シェアは単純合算で19%(09年度MM総研調べ)とシャープに次ぐ2位に上昇する。だが、国内市場そのものは2010年に3700万台とピークの07年に比べ約3割減まで落ち込む見通し(メリルリンチ日本証券調べ)。両社の携帯電話事業のメーンターゲットは国内。統合で生産と販売の効率化は期待できるものの、成長シナリオは描きにくい。
 海外でも新興国向けなどの普及モデルでは韓国・サムスン電子やLG電子が優位性を保つ一方、高機能のスマートフォン分野では米アップルのiPhone(アイフォーン)が勢いを増している。世界シェアトップのフィランドのノキアでさえ、16日にスマートフォンでの苦戦などを背景に10年4~6月期に携帯電話端末・サービス部門の売上高が従来予想の下限か、やや下回る水準になるとの見通しを発表、米預託証券(ADR)は10%安と急落した。
 合算しても世界シェア1%以下で、海外の携帯端末市場におけるブランド力が限られる富士通・東芝連合がどこまで食い込む余地があるのか。海外展開の拡大はリスクですらある。
 では、東芝・富士通の本体にとって携帯電話事業を統合するメリットは何なのか。東芝にとっては、赤字続きの携帯事業は懸案事項だった。富士通が新会社株式の過半を握れば、東芝にとって携帯事業が連結子会社でなくなる公算が大きい。過去にも複数の国内携帯電話会社と統合交渉を進めてきたが条件が折り合わず破談を繰り返してきただけに、ようやく課題案件が片付くといったところだろう。
 一方、富士通の携帯電話事業は「らくらくホン」のヒットに支えられ安定的に利益を出している。統合する東芝の携帯事業が赤字状態というリスクはあるものの、効率化のメリットのほか、主力のNTTドコモ以外の需要を取り込める可能性がある。
 いずれにせよ、東芝はフラッシュメモリーと原発、富士通は情報システム・サービスを中核事業に位置づけ、世界市場での勝ち残りに向け正念場を迎えている。両社にとってコモディティ商品の携帯端末はもはや非中核的な事業で、できるだけ経営資源をかけたくないのが本音だろう。その意味で今回の携帯統合は両社にとって成長戦略ではなく、携帯事業のリスク低減といった側面が大きい。
 伸びない国内市場、そして世界で勝てる展望が開けない国内の携帯電話事業の苦悩が透けてみえるかのような今回の携帯再編。市場が投げかける冷めた目線の背景にはこんな事情がある。



記者の目◇カシオが計算する「一等地」の生かし方
 カシオ計算機の腕時計事業が再び存在感を高めている。連結売上高に占める比率は2005年3月期に12%まで下がったが、11年3月期は23%まで回復する。売上規模ではデジタルカメラ、携帯電話機事業に次ぐ第3の事業だったが、携帯事業が今期から持ち分法適用となるため「第2の事業」という位置づけになる。時計事業にかかる期待は大きく、樫尾和雄社長も新たな時計ビジネスに向けて動き出そうとしている。
 カシオの今期連結業績は売上高が前期比12%減の3750億円、営業損益は150億円の黒字(前期は293億円の赤字)に転換する見通し。前期にそれぞれ340億円、50億円の赤字を計上した携帯事業と中小型液晶事業が他社との資本提携により持ち分法適用対象となるため、営業損益は大幅に改善する。110億円の赤字だったデジカメ事業も数億円の黒字に転換する見通しだが、損益改善のスピードは遅い。
 厳しい状況のなかで抜群の安定感を示すのが腕時計事業だ。11年3月期の売上高は10%増の860億円、営業利益は5%増の163億円を見込む。連結営業利益(消去前)の約6割を時計の利益が占め、利益面では圧倒的な存在感を示す。「Gショック」ブランドの世界的な浸透に加え、利益率が高い電波ソーラー時計の比率が06年3月期の40%から64%まで高まり、ここ4年は営業利益率が20%前後と好採算を維持している。大きく伸びはしないが安定してキャッシュを稼ぐ「金のなる木」だ。
 経営の下支え役としては申し分がなさそうだが、樫尾社長は安定収益源という時計事業の位置付けに不満を示す。「腕時計は2000億円の売上高を上げられるポテンシャルを持っている」というのが樫尾社長の持論。「人間の体の部位では、即座に見ることができる手首が『一等地』にあたる」との信念があるからだ。「一等地」に装着される腕時計の売り上げ規模はまだまだ伸びる余地があるという。なのに、ここ数年の売上高は800億円前後を行ったり来たり。安定しているが売り上げ規模の拡大に結びつかない状況にじくじたる思いを募らせている。
 時間のすべてを正確に表示するというデジタル機器メーカーならではの発想で、初代デジタル時計「カシオトロン」を発売したのが74年。耐衝撃性が売りでファッション性もまとった「Gショック」を発売したのが83年。歴史あるカシオの時計事業は多くのヒット商品を生み出してきた。安定しているとはいえ、時計事業の売上高は「Gショック」ブームにわいた98年3月期の1642億円のおよそ半分の水準にとどまる。
 もうひとつの柱であるデジカメが激しい販売競争と価格下落に苦しむ一方、腕時計は基本的に単価下落がない希有(けう)な商品。売上高が伸びればそれなりの利益が計算できるだけに、時計事業の再成長にかける期待は大きい。
 樫尾社長は「手首の位置を時刻の表示だけに使うのはもったいない。電池の問題さえクリアすればすぐにでも出せる新製品がある」と、「腕時計+α」の新製品の存在を示唆する。「一等地」を有効活用して売上高2000億円へ――。時計という成熟市場に風穴を開けられるか。新市場を創出するという樫尾社長の真骨頂が見られるかもしれない。



記者の目◇凸版印刷、黒船をきっかけに変われるか
 2010年は「電子書籍元年」とも言われる。電子書籍が普及すれば、従来の書籍印刷の需要は減るとの連想が働きやすく、印刷業界にとっては逆風ともみられがちだ。米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」の日本発売を「黒船来襲」と例える向きもあるが、印刷会社自身はどのように受け止めているのだろうか。
 「中長期的には2000億円ぐらいは覚悟しなければならないのではないか」――。凸版印刷で次期社長に就く金子真吾副社長は決算説明会で、紙媒体関連事業の売上高が減少する可能性を示唆した。印刷事業を含む情報・ネットワーク系の10年3月期連結売上高は9055億円。予想が当たれば、このうち2割強が減少することになる。
 5月以降、印刷や出版、書店などの企業に取材に行って電子書籍が話題にならないことはない。金子副社長のように、既存の事業に対する各社の危機感がうかがえる言葉が多く聞かれる。出版不況による市場縮小と相まって、連日報道される「iPad」の勢いは各社を弱気にさせているようだ。
 しかし、同時に電子書籍の登場を変革の機ととらえる企業も少なくない。凸版も減ると考えているのは、あくまで「紙媒体に関する印刷事業の売上高」に過ぎない。当然のことだが、長期的には成長戦略を模索している。
 例えば、ソニーなどと記者会見を行った電子書籍関連ビジネス。4社が出資するベンチャー会社が国内での電子書籍配信のプラットフォームを整備する予定。凸版は出版社との取引やデータの電子化などのノウハウがあるほか、エコポイントの運営事務局事業などプラットフォームの運営でも実績がある。業績への寄与度はまだ小さいと見られるが、電子書籍普及は凸版にとって単なるダメージというわけではないようだ。
 さらに金子副社長は「広告需要はパーソナルメディアに移りつつある。当社も電子メディアに眠る需要を掘り起こしたい」と意欲を示す。凸版が運営する電子チラシサイト「Shufoo!(シュフー)」は全国のスーパーや家電量販店など約2万店のチラシ広告を掲載している。広い取引先から別の需要を開拓する狙いもある。
 近年、凸版など印刷大手では、電子部材などのエレクトロニクス部門の動向に注目が集まりがちという。確かに同部門は収益の変動率が大きく、今期も収益回復のカギとなる。ただ、本業である印刷事業は依然として収益に占める比率が大きく、凸版にとってどう現状を乗り越えるかは死活問題。将来振り返ったときに、電子書籍という黒船は凸版の変革を促したきっかけとして位置付けられるのか――。新たな時代の成長シナリオが問われる。
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動画配信サイトが躍進 “革命”でテレビ脅かす  「ユーチューブ」や「ユーストリーム」といったインターネットの動画配信サイトの勢いが止まらない。世界中の誰もが映像を投稿してテレビ局になれるという“革命”に加え、動画サイトに手軽に接続できる米アップルの「iPad(アイパッド)」の登場で、視聴者を既存のテレビ局から奪っている。敵対してきたテレビ局も動画サイトと手を組む動きが広がっており、新たなメディアの勃興(ぼつこう)が加速している。
小林麻耶もビックリ
 「ツイッターと組み合わせて面白い番組ができることを期待している」
 ソフトバンクの孫正義社長が、テレビ局を巻き込んだ新たな野望に燃えている。孫社長が仕掛けたのは、TBS系列で5月30日から始まった新番組「革命×テレビ」だ。
 番組では、ソフトバンクが今年1月に約18億円を出資した米ユーストリームの技術を活用。世界各地に飛んだリポーターが現地から映像を送り生中継する。
 ユーストリームは、携帯電話がつながる場所ならば、米アップルの携帯端末「iPhone(アイフォーン)」でも生中継を行える。テレビ中継のように、衛星通信などの機材はいっさい不要だ。
 「これまで知らなかったけど、本当に革命的」。番組の司会を担当するアナウンサーの小林麻耶さんも驚きを隠さない。
 ユーストリームのジョン・ハムCEO(最高経営責任者)は「米国ではCNNなどのテレビ局とウィン・ウィンの関係を築いた。その成功例を日本にも広げたい」と意気込む。
 調査会社ネットレイティングスによると、ユーストリームの国内アクセスは4月に99万2千人に上り、前年同月に比べ約11倍にも急増した。
 ソフトバンクは、孫社長の対談や携帯電話の新モデル発表会をユーストリームで中継するなど多用しており、自ら情報を発信するメディア企業への飛躍をもくろむ。
広告出稿も流出
 動画サイトには、視聴者だけではく、広告も流出している。ドワンゴグループが運営する「ニコニコ動画」は、今年1~3月期に四半期ベースで初めて黒字化を達成した。
 人気コンテンツの「ニコニコ生放送」の4月のアクセス数が138万3千人と前年の約3・3倍に増えるなど、好調な“視聴率”を背景に、広告出稿を伸ばしたことが主因だ。
 ニコニコ動画を担当するのは、かつてNTTドコモでiモードを成功させた辣腕(らつわん)で知られる夏野剛ドワンゴ取締役(慶大教授)。「おそらくネット動画サイトが黒字化した例は世界中でも初めてだろう」と胸を張る。
 動画サイトで絶大な影響力を誇る米グーグル傘下のユーチューブは、5月に1日当たりの視聴回数が20億回を突破した。「プライムタイム」と呼ばれる視聴率の最も高い夜の時間帯に、米三大テレビを視聴する人の倍近くに上る規模だ。創業からわずか5年で偉業を達成した。
iPad追い風
 これまでユーチューブには、テレビ番組や映画などをコピーした著作権を侵害する違法コンテンツが氾濫(はんらん)。既存メディアから目の敵にされてきた。しかし、違法コンテンツの排除に積極的に取り組み、最近はテレビ局や映画会社などとのパートナーシップを深めている。
 日本でもNHKや民放キー局と友好関係を結び、グーグルの徳生裕人シニアプロダクトマネージャーは「さらに提携パートナーを増やしたい」と勢力拡大に余念がない。
 動画サイトを後押しするのが、iPadの存在だ。すでに全世界で200万台超を販売。ユーザーからは「好きな映像を探し出して楽しめるiPadを使う時間が増え、テレビを見る時間が減った」(30代男性)との声が上がる。
 「電子書籍が注目されているが、まずは動画サイトのポータル(玄関)として普及する」(メディアアナリスト)との指摘は多い。
 テレビ局側も「緊張すべき状況を迎えた。メディア間の競争が熱を帯びる中、テレビの優位を失わないようにしたい」(広瀬道貞日本民間放送連盟会長)と危機感をあらわにする。
 動画サイトがさらに躍進するには、「テレビ局が持つマス(大衆)向けコンテンツを拡充していけるかがカギになる」(ネットレイティングスの鈴木成典シニアアナリスト)。
 主導権を握るのは、「メディアの王様」を自負するテレビ局か、それとも新興勢力の動画サイトか。メディア攻防が幕を開けた。



食品、国内工場を集約 コカ・コーラ、関東で削減 森永製菓は半分に
 食品大手による国内工場の集約が広がってきた。清涼飲料大手の米コカ・コーラグループは関東で工場合理化に3年で500億円前後を投じ、11カ所ある拠点の一部を閉鎖する方針。森永製菓は菓子工場を数年で3~4カ所に半減させる。少子高齢化と人口減で食品の内需が縮む中、キリンホールディングスなども国内拠点を再編する一方で海外事業強化を急いでいる。国内外で生き残りをかけた選択と集中が加速しそうだ。
 コカ・コーラセントラルジャパン、東京コカ・コーラボトリング、利根コカ・コーラボトリング、三国コカ・コーラボトリングの関東4社が共同で生産体制を見直す。11工場を持つ4社はコカ・コーラグループの国内販売量の4割強を担う。
 全工場に順次、殺菌や瓶詰めなど主要工程に最新設備を導入。4社合わせた生産能力は現行に比べて横ばい、または減る見通し。複数の工場を閉鎖して拠点を集約する方向で検討に入った。一連の合理化で年100億円のコストを削減する。
 同グループは日本に、米本社から原液を仕入れて生産販売する会社が4社を含め12社ある。国内グループの年間売上高は約1兆2000億円。炭酸飲料「コカ・コーラ」や缶コーヒー「ジョージア」を抱え、清涼飲料市場で約3割のシェアを握る最大手。だが内需は2009年まで2年連続の減少に転じており、他のグループ会社にも集約の動きが広がりそうだ。
 食品大手は競争力のある定番品に経営資源を集中しつつある。全国に6工場を抱える菓子4位の森永製菓も来夏、群馬県高崎市に新鋭工場を稼働させて定番のビスケットなどを増産する。これを機に、新工場を含めて3~4工場に集約する。



元高誘導の再開示唆 中国、切り上げ圧力回避狙い?
 【上海=河崎真澄】中国国営新華社通信は19日、中国人民銀行(中央銀行)が同日、「人民元の為替制度改革を一歩進め、相場変動の弾力性を高める」との声明を発表したと報じた。声明は人民銀が相場の決定権を握る現行の「管理型変動相場制」に従って調整を行うとしている。週明けの21日以降、2年前に凍結した年10%程度の緩やかな元高誘導の再開を示唆したものとみられる。
 金融危機を理由に中国は2008年夏ごろから1ドル=6・82元前後にほぼ固定する通貨政策をとり続け、割安な人民元の相場を武器に輸出攻勢を強めている。人民銀が毎日決める基準値から上下に0・3%(07年5月から同0・5%に拡大)までは変動を認める管理型の相場制度で、05年から08年まで約20%、元相場が上昇した経緯もある。
 19日の声明には、凍結状態にあるこの制度を再開することで自主的な元高誘導の姿勢をアピールし、26日からカナダで開かれる20カ国・地域(G20)の首脳会議(金融サミット)で人民元切り上げの圧力をかわす狙いがあるもようだ。
 国内の輸出企業支援のため1ドル=6・82元前後で推移していることに対し、米議会などは中国製品が不当に安く輸入されていると非難し、早期切り上げを求めていた。米政府も今月18日、財務省が先送りしていた「外国為替報告書」を金融サミット後に議会に提出すると表明。金融サミットまでに改革を実行しなければ「為替操作国」認定もあり得るとの警告姿勢を示した。今回の措置について中国は「自主的政策判断」としているが、対米配慮が働いたのは間違いない。これに関連し、ガイトナー米財務長官は19日、「精力的に実行することで力強くバランスのとれた世界経済の成長に大きく貢献する」と述べた。
 ただ、欧米各国は「対中貿易赤字の元凶」と指摘する現在の元相場について、人民元を金融当局の管理下からドルや円などと同じように市場の需給に応じて変動する制度に変更するよう求めている。G20では、中国の通貨制度改革も重大なテーマになりそうだ。



「新幹線」計画に影響も ベトナム国会、決議案を否決
 ベトナム国会は会期最終日の19日、南北高速鉄道の建設計画に関する決議を反対多数で否決した。政府は日本の新幹線方式の採用方針を決めていたが、影響が出る可能性もある。建設計画は今国会で承認され、日本の協力による事業化調査に進む見通しだった。
 南北高速鉄道はグエン・タン・ズン首相肝いりのプロジェクトで、日本の産業界にとっても大きな商機となる。しかし、総額560億ドル(約5兆円)とされる巨額の事業費調達や採算性への懸念などから、国会審議で反対論や慎重意見が相次いだ。
 政府計画では高速鉄道は首都ハノイと南部の商都ホーチミン(約1570キロ)を最短5時間半で接続。2014年に着工し、ハノイ-中部ビンと、南部のニャチャン-ホーチミンの2区間を20年までに部分開業、35年までの全線開業を目指していた。



スト独自報道を制限 中国当局
 中国各地の工場でストライキが続発していることを受け、中国当局は19日までに国内メディアに対し、ストの独自報道を控えるように指示した。中国紙関係者が明らかにした。ストが拡大し、社会の安定が損なわれることを警戒した措置とみられる。
 中国メディアは5月以降、ホンダの部品工場で起きたストなどを大きく報道していたが、同関係者によると、数日前に当局からの指示を受け、各地で起きたストについて独自の報道を控えるようになった。
 トヨタ自動車が中国・天津市にある完成車工場の操業を、部品メーカーのストの影響で18日に停止したことも、主要メディアは報道していない。一部の中国紙は伝えたものの、ストという言葉を使わずに部品メーカーの「操業停止」が原因だと伝えている。(共同)



オバマ米大統領、クリントン国務長官を副大統領に起用? 2016年大統領選にらみ急浮上
 【ワシントン=佐々木類】オバマ米大統領が、11月の中間選挙後、クリントン国務長官を副大統領に起用する可能性が取りざたされている。代わりに外交に意欲を示すバイデン副大統領を国務長官にすえる“超大型人事”で、クリントン氏が副大統領になれば、2016年の大統領選を狙う絶好のポストになる。
 18日付の米紙ワシントン・ポストによると、バイデン、クリントン両氏の交代説は、両氏がそれぞれ互いのポストに意欲を示していることが背景にある。
 クリントン氏は国務長官就任以降、米外交の顔として、「予想以上の働きをみせている」(同紙)という評価が定着。副大統領への起用に関し、オバマ大統領周辺でくすぶっていた反対論も今ではすっかり下火になっているという。
 2016年の大統領選に立候補したとしても、現在62歳のクリントン氏はまだ60代後半。70歳で就任式に臨んだレーガン大統領や、2年前に72歳で大統領候補となった共和党のマケイン上院議員よりも若い。
 16年の大統領選には、全米的な人気を誇る共和党のペイリン元アラスカ州知事の出馬が取りざたされている。この際、減税や財政規律を求めて影響力を強めている保守派運動「ティー・パーティー」が同氏を支持する可能性がある。ただ、「ペイリン氏に勝てるのは、実績のあるクリントン氏だけだ」(米政府関係者)ともいわれており、こうした見方もクリントン氏の副大統領起用説がささやかれる背景にありそうだ。



早まる危機循環 余剰マネー 制御難しく
 「スペインの銀行や企業の多くが金融市場から締め出されている」。14日、同国第2位の大手銀行BBVAのゴンザレス会長が嘆いた。
 そのBBVAがドルの調達に行き詰まったという憶測が流れたのは5月26日。4月中旬は0.3%程度だったロンドン銀行間取引金利(LIBOR)ドル3カ月物がじわじわと上がり、0.54%に迫る。市場関係者は「見えない恐怖に血の気が引いた」と振り返る。
 ユーロ不安がくすぶる市場で、次の「標的」がささやかれる。愚か者(STUPID)――。スペイン、ポルトガル、イタリアのユーロ圏3カ国に、トルコと英国、ドバイ首長国を加えた頭文字。バブルを謳歌(おうか)してきた国こそがリスクを抱える。
金融資産200兆ドル
 危機のサイクルは確実に早まっている。2008年のリーマン・ショックから2年足らずで起きたユーロ不安。市場にあふれるマネーが世界経済を揺さぶるからだ。
 各国は危機のたびに大量の資金供給で乗り切った。マッキンゼー・グローバル・インスティチュートによると、1990年に48兆ドル(約4400兆円)だった世界の金融資産は今や200兆ドルに迫る。国内総生産(GDP)が約2.7倍に増える間、金融資産は約4倍に膨らんだ。
 リーマン・ショックで市場は16兆ドルを失ったが、米国のGDPに匹敵する14兆ドルの危機対応が穴を埋めた。民間の損失は国家が背負い、標的は国債に、通貨に変わる。
 危機を封じ込める資金供給の処方せん。それがいつしか毒を帯び、新たな危機の発火点となる。
 5日、米国の債券運用大手ピムコが世界各地の運用担当者にメッセージを送った。「資金はより安全な国債に流れる。遅れてはならない」
 マネーの行く手に先回りして稼ぐピムコ。4月、米国やカナダの国債を大量に仕込み、ギリシャなどは残らず売った。運用統括のビル・グロス氏は言う。「市場が国家を選ぶ時代が来た」
 「安全」を求めて米国債や日本国債に逃げ込んだ投資マネー。だが本当に安全な逃避先なのか。
 米国債に不気味なシグナルが点滅している。2年債の利回りが金融危機前の2%台から1%以下に低下するなか、30年債の利回りが4%台で動かない。「5年後には、準備通貨としてのドルに疑問符が付く」(ハーバード大学のファーガソン教授)との見方を裏付けているようにも見える。
 日本国債にも死角がある。BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「90年代初めから国債のバブルが続いている」と言う。92~08年に土地の時価総額は約840兆円減ったが、代わって国債など政府債務が約640兆円増えた。不動産バブルを生んだ、気まぐれなマネーが国債消化を左右する。
行き場探す資金
 余剰マネーのもう一つの行き先は新興国だ。
 家を買うので離婚します――。中国では不動産投資を狙った「偽装離婚」が話題を集める。
 4月導入の住宅ローン規制。不動産バブルを抑えるために2軒目の住宅を購入する際の融資条件を厳しく変えた。ところが形だけの離婚で世帯を分けて住宅を買うケースが後を絶たない。
 「熱銭」の制御に四苦八苦する中国。19日夜、中国人民銀行は人民元相場の「弾力性を高める」方針を表明。余剰マネー流入とインフレの抑制に動き始めた。
 危機と対策、過熱と崩壊、そして次の危機――。実体経済に比べて極端にマネーが膨らんだ世界経済。この状態が修正されないかぎり、危機の種はいつか芽をつける。



【産経主張】オランダ戦惜敗 1次突破へ敢闘精神貫け
 サッカーの熱気が、地球をぐるっと回って日本列島を覆い尽くしているかのようだ。
 ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会1次リーグE組第2戦で、日本は優勝候補の一角を占めるオランダと対戦し、0-1と惜敗した。しかしカメルーンに勝った初戦と同様、強豪と堂々と渡り合った試合ぶりは称賛に値する。日の丸を背負った選手たちの奮闘にはサッカーファンならずとも元気をもらったはずだ。
 日本には25日(日本時間)のデンマーク戦の結果しだいで決勝トーナメント進出の可能性が十分ある。試合後、キャプテンの長谷部誠選手は「次にすべてを懸ける」と意気込みを語った。最後まで全力で戦ってほしい。
 オランダ戦では日本らしいサッカーが展開された。相手に走り負けしない豊富な運動量で、最後まで集中力は途切れなかった。国際サッカー連盟(FIFA)の世界ランキングでオランダは現在4位、日本は45位だが、その差を感じさせない戦いぶりだった。
 今回のW杯は、日本が大会前の国際親善試合で4連敗するなど戦力・戦術面での不安材料が多く、日本国内では事前の盛り上がりを欠いていた。開催地南アフリカの治安の悪さもあって、恒例化している日本代表サポーターの応援ツアーの出足も低調だった。
 ところが、14日のカメルーン戦に日本が勝つと様相が一変し、旅行会社には観戦ツアーの追加申し込みが相次いだ。公式ユニホームのレプリカなど応援グッズの売れ行きも急上昇した。経済面でのW杯効果にも注目したい。
 それにしても、金融危機以来、意気消沈していた人々に元気を与えてくれたW杯は、やはりサッカーを超えたイベントである。日本人の心を一つにするという意味では、次のデンマーク戦も東京五輪(1964年)の女子バレーボール決勝戦に匹敵するといえるかもしれない。
 今回のW杯1次リーグでは優勝候補のスペインや、前回大会準優勝のフランス、さらにドイツなど強豪チームが思わぬ敗北を喫するなど波乱含みの展開だ。それがまた、観客も一体となって民族の誇りをぶつけ合う、W杯という名の祝祭の醍醐味(だいごみ)でもある。
 日韓大会以来2大会ぶりの決勝トーナメント進出へ、誇りと感動を共有しながら、日本代表選手を応援したい。
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