(ノ゜Д゜)八(゜Д゜)ノ新聞

iPhone 4とルネサス、そしてSIMロック解除をつなぐ“糸”
相次ぐニュースが示す「乱世」の予感
 去る6月24日、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の最新機種である「iPhone 4」が、全世界で発売された。米アップルの発表によれば、発売開始後3日足らずで全世界合計170万台を出荷したという。端末販売の伸び悩む国内メーカーにしてみれば、垂涎ものの記録だろう。
 ところが現在、iPhone 4に関する話題の中心は、こうした華々しいセールスではない。iPhone 4の無線通信機能が低く、端末の持ち方によって通信状態が変わり、場合によっては通信が途切れるという症状が、米国を中心にあちこちで報告され始めているのだ。
 この問題、当初は精密機器にありがちな初期不良であり、行列をなしてまで手に入れたいアップルファンならばそんな懸念を気にすることなく買い求めるだろう、と筆者も考えていた。しかし症状の報告を知れば知るほど、これはそう簡単に改善できない構造欠陥である可能性が読み取れた。
 そしてそれを裏付けるように、米国では早くもアップルに対する集団訴訟が起こされた。さらにアップル側の対応の拙さも批判の対象としてやり玉にあげられ、とうとう日本でもアップルジャパンがiPhone 4の返品に応じることになった。どうやらこれまでの初期不良とは、状況が全く異なるようだ。
 一方、日本の半導体大手のルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)が、ノキアの通信用中核部品のワイヤレスモデム事業部門を買収することが発表された。買収金額は2億ドルで、買収内容には知的財産や評価試験装置、また同部門の技術者1100人の受け入れも含まれている。
 今回の対象となるワイヤレスモデムは、ケータイ端末のデータ信号を通信方式に合わせて変換する部品で、ケータイ端末の通信機能を司る「心臓」そのものである。従来はルネサスがノキアからライセンス供与を受け、モデムをシステムLSI(大規模集積回路)に搭載してきた。この買収を受けて、米クアルコムやスウェーデンのSTエリクソンなどが参戦する3GやLTEなどの「ガチンコ勝負」に、ルネサスが日本勢として正式に名乗りを上げることになる。
 この2つのニュースは、極めて対照的であるのと同時に、今後のケータイ産業のあり方を占ううえでも極めて重要な動きである。そしてその問題意識は、先日のNTTドコモの「全機種SIMロック解除宣言」ともつながっているように、筆者には思えるのである。
通信の苦手なケータイ?
 まずiPhone 4の不調について、おさらいしておこう。いくつかの症状が報告されているようだが、共通しているのは「端末の持ち方」によって通信状況が変わるということである。そしてこれに伴って、体感される通信状況も変化し、場合によっては通信が途切れることがあるようだ。
 これに対しアップルは公式発表として、
・iPhoneに限らず多くのケータイが持ち方によって受信状況が変わることがある・iPhoneの電波の強さ(電界強度)を表示するバーの計算式が間違っていた・このため電波の弱い地域でも電波が強く受信できるような表示になっていた
 として、この計算式を修正するソフトウエアアップデートを「近日中に提供する」と表明した。すなわちアップルの言い分としては、「あくまで表示の問題である」ということだ。
 一方で、この問題が発覚した直後、アップルのスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)は、ユーザーに端末の持ち方を変えるように指導するとともに、「『バンパー』と呼ばれるゴムとプラスチックでできた保護カバーを装着すれば状況が改善する」とコメントした。人間の身体は電気を通すので、その人間と端末を絶縁体(ゴムのように電気を通さない物質)によって電気的に切り離せばいいということだ。
 このジョブズCEOのコメント通りなのだとしたら、実は事態はかなり深刻であることになる。電気のやり取りで通信を行う無線機にとって、このように電気の流れを隔絶したり制御したりすることは、その性能の根幹に関わる問題だ。これが端末自身によって解決できず、絶縁体の装着を余儀なくされるということは、ケータイにとって最重要機能である無線機としての性能について、iPhone 4はそのままでは修復困難な構造欠陥を設計段階で有しているということになる。
 もちろんこれは正確な検証を行ったわけではなく、いくばくかの物理学的知識に照らした筆者の推測に過ぎない。ただ、ここで記したほどには状況が深刻でないにせよ、通信の苦手なケータイ端末は、いわば炭酸の抜けたビールのようなもので、端的に言えば存在理由が薄れる。
 ましてスマートフォンは、ネットワークの先にあるクラウドコンピューティング環境にこそ、その価値の源泉がある。つまり通信機能は生命線そのものであり、それが失われると手も足も出ないばかりか、ただの大きな音楽再生端末に過ぎないということになる。
「らしからぬ事態」を招いた理由
 アップルは水をも漏らさぬサービスのデザインとその貫徹をいかに重視しているそのアップルをしてこうした「らしからぬ事態」を招いたことは、常に完璧な美意識を求めるアップルにしてみれば、失敗と評してもいいのではないだろうか。
 この理由には2つある、と筆者は考えている。1つは、急ピッチすぎた製品出荷タイミングの前倒しである。以前は筆者自身も矢継ぎ早の新製品投入と評したが、振り返ってみればやや動きが早すぎたようにも思える。実際、「iPad(アイパッド)」の投入と完全に被ってしまい、iPadの存在感が早くも霞んでいるようにさえ感じる。もしかすると、iPhone 4の詳細情報が事前に流出したことが影響しているのかもしれない・・・と邪推させるほどの拙速感である。
 もう1つの理由はより根深いのだが、そもそもアップルは無線通信機器の開発が得意でないということ。考えてみればそもそもアップルはパソコンメーカーであって、ケータイのようなタフな使用環境下での無線通信については、彼らに独自の技術やノウハウが蓄積されているというわけではない。
 そんな彼らにとって苦手なものである以上、無線通信機能については、設計段階での見落としや品質管理などチェック機能の低下が起こりうる。一方でハードウエア販売が彼らの売り上げの8割を占める限り、いかに端末を安く作るかがその利幅を決める。そのため、要素技術を有する中国や韓国の部品・組み立てメーカーを買い叩き、無線機としては「安かろう、悪かろう」な端末となる。仮にこうした方法で製品開発が行われているのだとすれば、むしろその品質が維持されるほうが不思議でさえある。
 実は、アップル製品の無線通信機能の欠陥は、今回に始まった話ではない。iPhoneがつながらない理由として、よく通信事業者側のインフラ品質が指摘されるが、実は同じ通信環境でiPhone以外の一般的なケータイと比較してみると、iPhoneの通信品質がことさらに低いことが分かる。すなわち通信事業者のせいというだけでなく、iPhoneそのものに問題がある可能性が拭えないということだ。
 加えてアップルは、今回の被害を自ら拡大してしまった。発売当日から3日間で170万台を出荷したと発表されたが、ということは170万台(以上)が初期ロットに該当するということである。
 今回はその170万台すべてがトラブルの対象となってしまい、米国で消費者からの集団訴訟を招いてしまった。スマートフォンのような精密機器であれば、市場がそれを許す限り、小規模出荷を頻繁に繰り返して、細かい修正に対応するというのがセオリーだが、消費者の期待に応えるべく一度に大量のリリースをしたことが、今回は裏目に出た格好である。
挑戦権を再度獲得したルネサス
 このように書くと、熱心なアップルファンからは「執拗なバッシングだ」と怒られるかもしれない。だからというわけではないが、こうした事態は、アップル以外のメーカーにとっても他人事ではない。もちろんアップルのケースはワールドワイドに展開する規模感に比例してハレーションも大きいのだが、製造業であれば誰しもが似たようなリスクを抱えている。
 特にケータイのように、あらゆる技術要素を高度に投合し、それをビジネスモデルを絡めて、安価で短期に大量の端末を市場投入するというスタイルは、このリスクを大きくさせる潜在的な要素を多く含んでいる。実際、日本のメーカーも歴史を紐解けば無傷には程遠く、それなりに深刻な機能欠陥やセキュリティ上の課題が散発してきた。
 アップルにせよそうでないにせよ、最終的には人間の所作である以上、このリスクを完全に回避することはできない。しかしリスクを低減することは可能だ。例えば通信機能に係る機能設計や部品調達を、自らの手元の近くで行うことは、その有力な手段となろう。極めて原理的・原始的なアプローチだが、自らに近いところで製品開発が行われていれば、距離が近い分だけ対応の柔軟性が増すのは当然のこと。
 その意味で、今回ルネサスがノキアのワイヤレスモデム部門を買収したというニュースは、このところ元気のない日本のケータイ産業が復活を果たすうえで、非常にポジティブかつ重要な動きである。
 特に、このタイミングでこのディールが成立したということの意味は極めて大きい、と筆者は考えている。本連載でもこれまで触れてきているように、先進国ではLTE、新興国ではW-CDMAに、技術の収束が見えてきた。技術が定まればそれをチップに集約して生産性を向上させるのはビジネスの王道である。つまりセミコンレベルでの部品開発が、大規模かつ長期間に本格化する時期をいよいよ迎えているのである。
 もちろん、どこまで知的財産が獲得できているのか、といったディールの詳細が分からない以上、安易な楽観視は禁物である。なにしろ昨秋、ノキアはアップルを、またアップルもノキアを、いずれもケータイ関連の特許侵害で、それぞれ訴訟を起こしている。今回ルネサスが買収した部門はその矢面のはずであり、これに限らず知財を巡る攻防はあちこちで火を噴いているはずだ。買収しただけでコトがスムーズに運ぶとは限らない。
 それでも、ノキアというグローバルプレーヤーが担ってきた部品開発の役割を、この環境下で日本の手元に置けるということは、極めて重要である。セミコンの領域で世界への挑戦権を再度獲得したことで日本発の新たなケータイ端末を提案できるとなれば、コンテンツ産業も含めて、アップサイドの大きな可能性を描けることになる。その意味で、率直に応援すべき動きと言えるだろう。
資源を大食いする「厄介な存在」
 一方で今回のiPhone 4の騒動は、通信インフラ、端末、サービス、アプリケーション、コンテンツのすべてが揃ったところではじめてエコシステム(生態系)が形成されるという、ケータイビジネスの基本構造を改めて認識させた。そのどれかが欠けてもダメだし、それらの要素をつなぐ機能が低下しただけで存在理由を失う。
 かのように脆弱な構造とも言えるケータイ産業が、日本ではなぜここまで大きく育ったのか。これも複合要因ではあるが、通信事業者が中央に立ってエコシステムのデザインとメンテナンスを続けてきたというのは、やはり大きい要因だろう。
 例えば、日本のケータイ市場は、全国で1億契約を超える規模を擁している。普通に考えれば、面的にも量的にも相当なトラフィックが発生していることになるが、ここまで回線容量の逼迫などで大きな課題はなかった。その一因は、端末やサービスの設計とインフラの状況が、通信キャリアによってある程度は裁定され、また最適化されていたからだと筆者は考えている。すなわち、従来の端末の上で成立する小規模のコンテンツが、結果としてインフラや端末の性能に「優しい」ものだった、ということだ。
 しかし、資源をやたらと大食いしつつ、通信事業者からはコントロールしきれない、そんなスマートフォンという「厄介な存在」の台頭を無秩序に許したら、一体何が起きるか。それは既にソフトバンクモバイル(以下、SBM)に対するiPhone利用者からのクレームを見れば一目瞭然である。そしてこうした事態は何も日本固有の話ではなく、およそスマートフォンの導入に積極的な市場であれば、大なり小なりどこでも起きている問題なのである。
 もちろん、スマートフォンがアプリケーション開発に新たな地平を切り開いたこと、そしてクラウドコンピューティングの概念を定着させて情報処理の概念を前に推し進めていることは評価すべき事実である。そしてスマートフォンを駆逐することはもはや現実的ではないし、一度その楽しさを知ってしまえば、なかなか後戻りはできない。
 ただ、通信事業者の視点に立てば、インフラの大規模な更改が迫る中、その設計や投資計画にスマートフォンが与える影響の大きさと、その割にスマートフォンがまだまだマイノリティであるということに、矛盾が生じている。そして今後は一般的なケータイ端末、スマートフォン、あるいはセンサー、M2M(マシン・トゥ・マシン)システム、白物家電などのような組込系の端末も登場するだろう。
 世の中のすべてがスマートフォンになっていくと考えるのは一部のマニアだけで、実際はより多様で複雑な用途が広がっていく。こう考えた時、インフラ更改とスマートフォンをどう位置づけ、関係づけるかは、極めて悩ましい問題と言える。
NTTドコモが投げかける問いかけ
 そんな混沌とする中、国内ではNTTドコモが先陣をきってSIMロック解除に大きく舵を切った。同社の発表によれば、2011年4月以降に出荷するすべての端末で、SIMロック解除の機能を搭載するという。総務省でSIMロック解除の検討が始まった今春から、頑なに反対するSBMに対して、NTTドコモは意外なほど容認姿勢を示していたが、ここまで全面的に対応するというのは、業界でも大きな衝撃をもって受け止められている。
 以前の連載でも触れたが、通信事業者中心による垂直統合というエコシステムの実現に、SIMロックが果たしてきた役割は極めて大きい。この仕組みを、従来は垂直統合の守護者としてそびえ立っていたNTTドコモが自ら率先して放棄するということは、LTEをはじめとした今後の通信インフラのデザインや、ひいてはその根拠の1つとなる周波数行政などに、極めて大きな問いを投げかけたことになる。
 詳細は明らかにされていないが、伝え聞くところによれば、どうやら本件はNTTドコモがiPhoneやiPadを取りに行くべくSBMにプレッシャーをかけているという程度の単純な話ではないらしい。また背景はさておき、全面的にSIMロック解除を打ち出すということは、相当の準備と覚悟を持って臨んでいると考えるべきだろう。
 iPhone 4の根本的な問題と、その裏返しとして技術の中核を押さえたルネサスによる買収劇、そして今回のNTTドコモのSIMロック解除。この3つの動きを並べてみると、もはやアップルでさえも勝ち組とは言い切れない「乱世」に、世界中のケータイ業界が入っていることが、改めてお分かりいただけるのではないだろうか。



【産経主張】参院選あす投票 日本の迷走正す選択を 見極めたい国民の安全と繁栄
 日本が危機的な状況を乗り越えることができるかどうかの岐路に立っている。あす11日に投票日を迎える参院選が持つ極めて重要な意味合いをこう指摘したい。
 鳩山由紀夫、菅直人の首相2代にわたる民主党主導政権による迷走と失政を是正するか、それとも継続を認めるかが問われているからである。
 有権者に直視してもらいたいのは、日本の生存と繁栄が危うさの中にあることだ。北朝鮮の攻撃による韓国の哨戒艦撃沈事件は、日本周辺の安全保障環境がいかに悪化しているかを示している。
 それなのに、鳩山前首相により米軍普天間飛行場移設問題は「解決不能」ともいえる状況に追い込まれてしまった。日米同盟が機能しないことは日本の安全が維持されないことを意味する。
 ◆議論から逃げた首相
 子ども手当や農家への戸別所得補償に代表されるばらまき政策は一部修正されたものの、基本的な考え方は変わっていない。
 菅首相が提唱した消費税増税も「腰だめ」のような発言が続いたことで信頼を大きく損なってしまっている。これ以上の政治の混乱や暴走は国を危うくしかねない。選挙結果が持つ意味を深くかみしめ、大切な一票を投じる眼力を持ちたい。
 迷走を一段と深刻化させているのは、首相の消費税増税をめぐる発言の軽さである。選挙戦直前に消費税増税に向けた議論の必要性を提起し、自民党が掲げる「当面10%」を「参考にする」と具体的な税率にも言及した。
 だが、与党や国民の間に増税論への反発が広がると「与野党協議を提案するところまでが公約だ」とトーンダウンし、低所得者対策の還付制度をめぐり200万円から400万円まで異なる所得水準を挙げた。
 発言の揺れを批判されると「1ミリたりともぶれていない」などと反論したが、終盤戦では反発を恐れて演説で消費税に触れない場面もあった。こうした姿勢が消費税増税をかえって遠ざける結果になるとすれば、きわめて残念だ。
 不可思議なのは民主党内で消費税上げに対する意見が割れ、いずれが党の見解なのかわからないことだ。小沢一郎前幹事長が首相の増税方針に強い異論を唱えていることである。
 小沢氏は鳩山前首相とともに政治とカネの問題で国民の信を失わせた張本人だ。しかし、菅首相は両氏とも辞任によって「一定のけじめがついた」と不問にした。中途半端な姿勢ではなかったか。
 首相が掲げる「第三の道」は、増税したとしても医療・介護などの成長分野に支出し、税収増で財政を再建できるというものだが、机上の計算を日本経済で実験するやり方は無責任だ。
 ◆「ねじれ」を恐れるな
 焦点の普天間問題も、首相は8月末に日米合意に基づき移設先の位置や工法を決定しなければならないが、その後、いかに沖縄側と協議していくのか。事態の解決に向けて動こうとしていない。
 選挙戦のさなか、ロシア軍が日本固有の領土である北方四島の択捉島で軍事演習を行ったほか、中国海軍のミサイル駆逐艦とフリゲート艦が沖縄本島西南西の公海上を東シナ海から太平洋に向け航行した。これらは日本の対処能力を見透かしたような行動と受け取れよう。だが、各党とも積極的に取り上げようとしないのは問題である。国家主権や安全保障への確固たる姿勢を示してもらいたい。
 首相は選挙中に「サミットに出る首相が毎年代わっていいのか」と訴え、政権が安定しなければ国際的信用を失い、国民生活も守れないと説明した。参院で与党が過半数割れすれば衆参両院の「ねじれ」が生じ、政権運営が困難になることを訴えたいのだろう。
 だが、「ねじれ」は政権の迷走と失政に歯止めをかけることでもある。国民が不利益を被ると決めつけるのは説得力に乏しい。
 自民党など野党は、参院で与党を過半数割れに追い込むことで「民主党政治にブレーキをかける」と訴えている。選挙後、現状の政治の是正にどのような姿勢で取り組もうとしているのかも明確にしてほしい。
 各党公約には、民主党が外国人参政権に言及していない問題などもある。投票前にきちんと読み返し、書かれていることの評価と、書かれていないことへの洞察が必要だ。日本の危機を克服することができる政党と政治家の真贋(しんがん)を見極めることが求められている。
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クラウド、世界で連携 富士通とマイクロソフト
拠点、サービス共同で 年内にも
 富士通と米マイクロソフト(MS)はインターネット経由で利用者にソフトウエアや情報システムを提供する「クラウドコンピューティング」事業を共同展開する。両社が各国で運営するデータセンターを共同利用、MSのソフト開発力と富士通の顧客支援体制を組み合わせ、企業への提案力を高める。連携により両社はクラウド事業の世界市場開拓に弾みをつけ、先行する米セールスフォース・ドットコムや米グーグルに対抗する。
 富士通は世界16カ国、約90カ所でデータセンターを運営する。年内にも群馬県館林市のデータセンターでMSとの協業サービスを開始。米国や英国、シンガポールなどに広げる計画で、これらのデータセンターに、協業に必要な専用設備を配備する。富士通は自社サービスだけではクラウド需要の海外市場の開拓に限界があると判断し、MSとの協業に踏み切った。
 MSは昨年、米シカゴとアイルランドに巨大データセンターを建設するなど世界各地でクラウド事業展開を急いでいるが、アフターサービスなど顧客支援体制で手薄なため、富士通の協力を得ていく。また、富士通と組めばグローバル展開する日本企業との契約がしやすくなると判断した。
 両社で投資してデータセンターを増強することも検討している。データセンター建設には1棟あたり数百億円かかるため、共同利用で投資を効率化できる。
 MSは今年1月にクラウド専用サービスとして「ウィンドウズ・アジュール」の販売を始めた。アジュールはウィンドウズを利用している企業がこれまで使っていた自前の顧客管理、会計処理などの機能をそのまま使える特長がある。富士通は協業により海外のウィンドウズの利用企業を囲い込んでいく。
 クラウド専業のセールスフォースは世界で約7万7000社の顧客企業を持ち、日本でも経済産業省や損害保険ジャパンにサービスを提供している。グーグルは2006~09年に計7000億円規模を投じてデータセンターなどを整備しており、日本ではTOTOなどと契約している。
 米欧のクラウド事業で実績を持つセールスフォースやグーグルが日本市場で攻勢をかけ、日本のIT(情報技術)大手にとって脅威になっている。米調査会社のIDCによると、09年に160億ドルだった世界のクラウド市場は14年に555億ドルに拡大する見通し。



富士通、海外で競争力強化 大型M&Aも視野に
 富士通が海外戦略を加速する。米マイクロソフト(MS)と、ネットワーク経由でソフトウエアや情報システムを提供する「クラウドコンピューティング」事業で提携。海外で大型M&A(合併・買収)の検討にも着手した。クラウド分野では米国勢が大きく先行し、日本市場でも攻勢を強めている。富士通は提携やM&Aをテコに海外での競争力を強化、生き残りを目指す。
 「グローバルでサービスを提供するには、もはや自社のリソース(資産)だけではまかなえない」。9日の富士通の経営方針説明会で、山本正已社長はこう強調した。
 説明会では言及しなかった今回のMSとの提携も、技術・サービス力の補完が狙いだ。富士通は1990年代に英ICLと米アムダールのコンピューター大手2社を買収。両社をサービス会社に衣替えして、一定の顧客を獲得してきたが、海外で確実に売れるクラウドサービスは持っていなかった。今回、富士通はMSが持つソフト技術力を自社サービスに取り込み、クラウド事業の世界展開を本格化する。
 山本社長は9日の説明会でM&Aにも言及。「フリーキャッシュフロー(純現金収支)は今後毎年1500億円程度の黒字が見込め、資金の使い道としてM&Aは重要な手段だ」と述べた。買収相手としては海外のソフト開発会社や情報システム会社を想定しており、1000億円規模の買収も視野に入れている。同社はここ数年の構造改革で財務が大幅に改善しており、攻めの経営に転じて海外展開を加速する。2009年度に37%だった海外売上高比率を、11年度に40%に引き上げる方針だ。



KDDIが企業用スマートフォン、ヤマト運輸に5万台
 KDDI(au)は企業向けスマートフォン(高機能携帯電話)の開発・販売に乗り出す。基本ソフト(OS)に米マイクロソフトの「ウィンドウズモバイル」を採用し、ビジネス用に使い勝手を高めた新機種を東芝と開発。まず10月、ヤマト運輸の宅配便配達員向けに5万3000台納入する。金融機関や製薬会社などにも拡販を目指す。
 ヤマト運輸に導入するスマートフォンは無線で他の機器や情報端末と接続できる。モバイル決済端末から無線で決済情報を受信し、クレジット決済センターに送信したり、業務サーバーに15分ごとに集荷配送情報を自動送信したりする。
 インターネットを経由して新しい機能を入手したり、利用を制限したりするなど「クラウドコンピューティング」も可能にした。指紋による個人認証や紛失時には遠隔操作でデータを消去できる。防水・防じんで、大容量電池を搭載。屋外での業務や外回りの営業などで長時間外出していても電池切れせず、壊れにくい設計にした。
 個人向けスマートフォン市場では米アップルの「iPhone(アイフォーン)」やグーグルの「アンドロイド」が先行し、ウィンドウズモバイルは普及が遅れている。ただ企業で使われるパソコンと親和性が高く、業務システムと連携しやすいと判断、採用を決めた。これにKDDIの独自の画面操作ノウハウを組み合わせ、通話やメール、インターネット閲覧、カメラなどの使い方が一目で分かるようにするなど使い勝手を高めた。
 KDDIは製薬会社の薬品管理や銀行員や保険販売員の営業などでも需要が見込めるとみている。ヤマト運輸向けの端末をベースに、企業ニーズに応じた製品を設計し、導入を働き掛ける。



ファストリ、研究開発を中国に移管 工場との連携素早く
 カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、商品開発などを手掛ける中核機能を中国へ移管する。生産拠点などとの連携を強化し、海外市場での競争力を引き上げる。海外シフトを強める同社は幹部人材の育成などでも国際化を急いでいる。他のアパレルや玩具など内需型企業でも国外での成長力を確保すべく、日本中心の組織や人事を改める動きが相次ぐ。
 ファストリが移管するのは、ユニクロの商品のデザインなどを担う「R&D」部門と、生産管理を担当する「生産部」。両部門の大半の人員を移す考えで、規模や移転先などを詰めている。
 現在、ユニクロ商品の約85%は中国の委託工場が生産している。人民元の切り上げリスクなどを考慮して中国国外での生産を増やす方針だが、それでも7割近くの生産は中国に残る見通し。機能移転で開発過程での商品サンプルのチェックなど、生産現場との連携を緊密化し、商品の完成度を高める狙いがある。
 ユニクロの海外売上高比率は現在約1割だが、5年後に海外の販売額を国内と逆転させる目標。海外の店舗網が拡大すれば生産量の管理の精度が一段と重要になる。本部機能の中国移転によって、売れ筋商品の増産など「生産管理の面でも工場と距離が近いメリットが出る」(同社)という。
 ファストリは「海外出店の加速には人材の採用と育成が必要」(柳井正会長兼社長)と、人材のグローバル化も急速に進める。2011年の新卒採用は全体約600人の半分を外国人とする方針だ。これとは別に、取引先工場への技術指導を担う熟練技術者「匠(たくみ)」制度でも、日本人100%だった従来の方針を改めて、近く中国人などの登用を始める。
 さらに12年をメドに、社内の会議や文書を原則として英語を共通語にする。「会議は参加者のうち1人でも母国語が異なる場合は英語とし、文書では世界に流すものは英語に一本化する」(同社)というルールも決めた。コミュニケーションの円滑化に加え、社内に迎えた外国人が日本人と比べ処遇面で不公平を感じないようにする配慮でもある。



中国、グーグルの業務許可証更新
 米インターネット検索大手グーグルは9日、中国政府から中国でのネット業務に必要な許可証の更新を受けたと発表した。グーグルと中国政府はネット検閲をめぐり対立してきたが、中国側が業務許可証を更新したことで決定的な事態は回避した。
 グーグルは3月に中国本土での中国語のネット検索サービスから撤退。中国本土向けサイトの利用者には香港のサイトへ自動転送する形でサービスを提供していたが、6月末で中国での業務許可が期限を迎えたため新たなサイトで香港のサイトにリンクさせる方式に変更。新サイトの許可を中国側に申請していた。
 9日に新サイトを見ると、許可証の番号が記されている。グーグルは「中国政府が許可証を更新し、中国のユーザーにネット検索などのサービスを提供し続けられることを喜んでいる」との談話を出した。



政党CM、テレビ離れ 「費用対効果が…」
 今回の参院選で、各政党のテレビコマーシャル(CM)離れが進んでいる。昨年の衆院選ではインターネットの政党CMが話題を呼び、各党はさほど費用をかけず“ヒット作”次第で注目される「ネットCM」へシフトしている。一方、テレビCMには「多額な金をかけるなら演説など他のことに使う」と冷淡で、中には経費削減策でとりやめる党も現れた。
 「テレビはとにかく金がかかる。財政難もあり、今後は減らさざるを得ない」
 自民党広報戦略局はこう明かす。自民は今回、谷垣禎一総裁が出演するテレビCMに加え、小泉進次郎衆院議員(29)出演のCMを数億円の広告料を支払って放映しようとした。しかし日本民間放送連盟(民放連)の「政党CMは党首の出演が原則」との基準などから、各局が断った。
 小泉氏のCMはもともとネット用に制作しネット上で公開中。広報戦略局は「今後は低コストでも有権者の心をつかむネットの利用法を模索したい」と話す。
 平成13年の参院選からテレビCMを続けてきた共産党は、「費用対効果が疑問」(広報部)として今回は中止。幸福実現党は昨年の衆院選で放映したが、今回は新聞広告に絞った。
 民主党と公明党は今回も放映中だが、国民新党は広告効果を考え、亀井静香代表がピッチャーにふんし元野球選手の候補を応援する形のCMを関西のローカル局で放映した。
 選挙プランナーの松田馨さん(30)は「国民の9千万人がネットを利用する現在、マスメディアの情報をミニブログのツイッターで議論するなどすでに活用は広がっている。今後は政党側もテレビCMから携帯電話の政党ホームページへ誘導するなど、既存メディアとネットを組み合わせた手法が進む」とみる。



米為替政策報告書、中国の動向注視
 【ワシントン=岡田章裕】米財務省は8日、主要な貿易相手国・地域の為替政策に関する為替政策報告書を公表し、人民元相場の弾力化方針を評価した上で、中国の為替操作国への認定は見送った。
 ただ、「注意深く定期的に人民元の切り上げを監視していく」とし、引き続き、中国の為替政策を注視する考えを示した。 今回の報告書では人民元は「過小評価されている」と指摘したものの、厳しい表現は盛り込まなかった。オバマ大統領は6月の記者会見で、「過小評価された人民元により、中国は貿易上、著しく有利になっている」と厳しく批判したが、報告書では「対中圧力」の“さじ加減”に配慮して中国の反発を避けることで、切り上げの成果を得る狙いがあると見られる。
 米中両国の人民元切り上げを巡る駆け引きは、複雑さを増している。強い圧力には中国が反発し、切り上げが遠のく一方、圧力をかけないと動かないことが明確になってきたためだ。
 米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は9日、ガイトナー米財務長官が今年4月、「人民元を切り上げなければ為替操作国に認定する」と中国側にひそかに圧力をかけていた、と報じた。米財務省は、4月に予定されていた報告書の公表を6月下旬の主要20か国・地域(G20)サミット(首脳会議)後に延期した。米国は中国の出方をうかがう姿勢に転じたとの見方が強まる一方で、水面下では圧力もしっかりとかけていたことになる。
 オバマ大統領はその後、切り上げの機運が乏しいとみるや、6月中旬にG20首脳に書簡を送り、人民元問題をサミットの主要議題として取り上げるよう働きかけ、人民元相場の弾力化方針を引き出した経緯がある。
 オバマ大統領はG20サミット後の記者会見で、中国の切り上げ姿勢は、「3か月ではっきり分かる」として、期限を明示した上で中国側に対応を迫った。10月の次回の報告書発表までの人民元相場の動きを見定めた上で、切り上げペースが不十分なら、為替操作国に認定することも辞さない構えとみられる。
 為替操作国に認定すれば、正式な2国間協議に移ることになるが、協議は難航が必至だ。硬軟を使い分けながら切り上げを迫る米国に、中国がどう対応するのか。両国の駆け引きはますます激化しそうだ。



日本車、米市場で販売奨励金膨らむ 6月1台21万6000円
 米国市場でホンダなど日本車メーカーの販売促進費用が膨らんでいる。販売店での値下げ原資となる販売奨励金は6月、3社平均で1台当たり2439ドル(約21万6000円)と2カ月連続で上昇。リコールなどの影響で販促を強化し過去最高水準だった3月(2542ドル)に迫った。米景気の減速懸念が広がる中、販売維持のために積み増しを余儀なくされている状況だ。高水準が続くようだと2011年3月期の収益が圧迫される可能性がある。
 米調査会社オートデータの集計によると、6月の3社平均の米販売奨励金は金融危機の影響が出ていた前年同月より15%増えた。ゼネラル・モーターズ(GM)など米ビッグスリー平均も3513ドルと5カ月連続で増えたが、米ビッグスリーは金融危機時の08年9月比で1割減少。逆に日本勢は5割増え、差が縮まっている。
 特にホンダの6月の奨励金は2135ドル(5月比では4ドル増)と過去最高水準だった。ガソリン価格下落でホンダの品ぞろえが少ない大型車に需要が流れているうえ、中・小型車分野で韓国・現代自動車との競争も激化。主力の「アコード」などで膨らんだ。トヨタ自動車も5月比60ドル増の1983ドルと3月に次ぐ高さ。日産自動車を含め3社がそろって前月よりも増えた。
 6月の全体の米新車販売台数は前年同月比では増えたものの、2カ月ぶりの100万台割れとなった。個人消費回復にブレーキがかかっており、足元の販売増は高水準の奨励金に支えられている面もある。
 7月以降も今の水準が続くようだと、北米事業の収益が悪化する懸念がある。例えば、ホンダは今期の奨励金を前期比横ばいの1台当たり1400ドルと想定しているが、4~6月平均は2100ドル弱と想定を上回るペースで推移している。前年同期との比較でもトヨタの4~6月は2割強、日産も同4%増えている。
 また「奨励金頼みでしか車が売れない状況が続くと中古車の価値も下がりかねない」(外資系証券)。前期まで北米事業の収益を支えてきた金融事業で、リース車両の価値低下に伴う思わぬ評価損が発生するリスクも増す。



(日経社説)世界の電池市場で日本の技術を生かせ
 温暖化対策で太陽電池や蓄電池の需要が拡大している。技術のある日本企業にとって大きな商機だ。
 ただし電池には海外企業も力を入れ、急速に日本勢を追い上げている。液晶パネルのように価格競争に陥っては、せっかくの成長分野を生かせない。企業は技術を利益に結びつける工夫をし、巻き返してほしい。
 太陽電池の世界需要は2020年に、08年の5倍の10兆円になるという試算がある。蓄電池は電気を効率的に使う次世代送電網用だけで、向こう20年間に日米欧で約70兆円の需要が生まれるといわれている。
 こうした有望市場に海外企業も次々に進出している。太陽電池は世界の生産量(発電能力の合計)に占める日本企業のシェアが05年は5割近かったが、中国や欧米勢に押され現在は1割ほどとみられる。韓国のサムスン電子や現代重工業は今後、積極的に設備投資する計画だ。
 蓄電池の代表格であるリチウムイオン電池も韓国や中国企業が技術を高め、世界の生産量シェアの6割をもつ日本企業の強敵になっている。
 量産効果でコストを下げ、安さで勝負するのが海外企業の戦略だ。太陽電池は日本製の半値以下の輸入品も出てきた。日本勢は海外生産拡大などコスト削減を急ぐ必要がある。
 だが、価格競争に陥っては利益があがりにくい。三洋電機や三菱電機は太陽電池で世界最高の発電効率を競い、日本企業は電池技術で優位にある。技術力を生かす知恵がいる。
 重要なのは電池だけでなく、送配電設備などを含めたインフラとして提案し、付加価値を高めることだ。
 インド西部のグジャラート州では日立製作所、京セラ、東京電力などが、太陽電池、蓄電池、送配電網を合わせた電力システムや水処理設備などを一体で建設する計画だ。電池単体の価格競争と一線を画せる。
 電力設備の需要は海外が旺盛だ。国内では、家庭や企業が太陽電池などで起こした自然エネルギーを電力会社が買い取る制度が11年度にも本格導入される。電池の需要が増えるが、電池メーカーは電力会社などと組み海外受注にも注力すべきだ。
 家庭で電気を自給自足できるよう、大和ハウス工業は来年、太陽電池と蓄電装置を組み合わせたシステムを販売する。これも電池の付加価値を高める例だ。
 蓄電池や送電網などを制御する日本の技術を国際標準にする努力も必要だ。実現すれば電池や制御機器が世界で売りやすくなる。国際標準をとるために、経済産業省は世界各国への働きかけを強めてもらいたい。
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