Y(゜Д゜)Y新聞

ドコモが使える日本通信「SIMカード」はこうして実現した
 山田隆持NTTドコモ社長の「全面対応宣言」以降、注目の的となっている携帯電話の「SIMロック解除」。NTTドコモは来春以降に発売する全機種を他の通信会社の回線でも使えるようにする方針だが、それを先取りして仮想移動体通信事業者(MVNO)大手の日本通信がSIMロック解除端末向けのSIMカードを7月30日に発売する。
 日本通信が7月23日に発表した「talkingSIM」は、データ通信と音声通話サービスを利用できるスマートフォン向けSIMカードだ。同社はこれまでもデータ通信のみのSIMカードを販売していたが、今回はそれに音声サービスを組み合わせてきた。
 日本通信はtalkingSIMの通信回線として音声、データ通信ともにNTTドコモのネットワークを使う。つまり、契約上は日本通信のサービスだが、実際はNTTドコモの強力な通信インフラをそのまま使えることになる。
 基本料金は月額3960円。これでデータ通信が使い放題(通信速度は上下300kbps程度の制限あり)となり、音声通話も1050円分まで無料で使える(超過分は30秒21円)。他社の同様のサービスが6000~7000円程度であることを考えると、かなり割安と言える。「スマートフォンユーザーは2台持ちの人が多い。2台目用のコスト負担が少ないサービスとして、talkingSIMを提供したい」と日本通信の福田尚久最高執行責任者(COO)は語る。
「iPhone」も利用可能
 このSIMカードを使うには、ユーザーは当然ながらSIMロック解除端末を自分で用意しなくてはならない。しかし、talkingSIMの仕様はNTTドコモのSIMカードと同一で、実質的には同じように使える。そのため、NTTドコモが販売している「Xperia(ソニー・エリクソン製)や「T-01A」(東芝製)などのスマートフォンでも利用可能だ。それらの中古品を安く手に入れれば、talkingSIMで使うことができる。
 しかし、最も需要が大きいのはアップルの「iPhone」シリーズだろう。香港などで売られているSIMロック解除版の「iPhone3GS」は、問題なく利用できることを日本通信自身が確認し、同社ホームページで動作確認端末の一覧として掲載している。ユーザーが香港などで購入してtalkingSIMを装着すれば、日本で電話もデータ通信も使えるようになるわけだ。
 現在は品薄状態が続いている最新機種の「iPhone4」は、通常のSIMカードより小さなmicroSIMカードを採用している。日本通信は「現状ではmicroSIMカードを使ったSIMロック解除端末が世の中に多く出回っていないため用意しなかった。しかし、今後流通するようであれば、積極的に対応してきたい」(福田COO)という。
 ちなみに、SIMロック解除版のiPhone4はすでにフランス、英国などでも普通に購入できるようだ。香港でも7月30日にiPhone4が発売される。日本でもSIMロックがかかっていないiPhone4の流通が徐々に始まることだろう。
番号ポータビリティーに対応
  今回のtalkingSIMで特に目を引くのは、番号ポータビリティー制度(MNP)に対応している点だ。現在は別の携帯電話会社を利用している人が電話番号をそのまま持ち運んでtalkingSIMに乗り換えられる。「MNP対応は各通信事業者との準備もあって苦労した部分。この調整に時間がかかってしまった」(福田COO)。
 また、talkingSIMは電話番号同士でメッセージを送るSMS(ショート・メッセージング・サービス)にも対応する。相手はNTTドコモユーザーに限られるが、それでも使用機会はかなり多いだろう。ほかにも、キャッチホン、留守番電話、転送サービス、国際電話サービスをカバーする。国際ローミングも「NTTドコモと同等の国・地域で使える」(福田COO)という(ただし、音声通話のみ。データ通信はローミング非対応)。
ドコモとの契約締結で実現
 日本通信はもともとNTTドコモのネットワークと相互接続をしており、2009年4月には音声通話に関して卸役務契約を結ぶことでも合意した。今回のサービスはこれらの契約関係のうえで実現している。日本通信は音声サービスの主軸をIP電話と捉えているが、現状でユーザーのニーズを満たすには、一般的な音声通話サービスを提供するのが不可欠と考え、今回のサービス提供に至ったという。
 ユーザーの立場からすれば、300kbpsという通信速度制限はあるにせよ、月額4000円弱でスマートフォンを所有できる魅力は大きい。しかも、いままで使っていた電話番号をそのまま引き継げるメリットもある。来年以降、SIMロック解除端末が増えてくれば、ユーザーの関心はさらに高まることだろう。
 300kbpsの通信制限について福田COOは、「当社には通信速度に制限がなく通信時間で課金するサービスもある。今後はそうしたサービスとの様々な組み合わせも検討していきたい」と語る。talkingSIMはあくまで第一弾商品であり、今後もユーザーのニーズに合わせて製品群を拡充することを検討しているようだ。
「ライバル」から「パートナー」へ
 日本通信とNTTドコモは、傍目には必ずしも友好関係にあるようにはみえない。つい最近も日本通信が「NTTドコモは法人向け取引で不当廉売している」との意見書を総務省に提出するなど、NTTドコモの「独占」を激しく追及している。しかし、福田COOは「talkingSIMの実現にあたり、NTTドコモにはいろいろと対応してもらった。むしろ我々の存在に理解があり、いい関係といえる」と明かす。
 実はNTTドコモにとって、MVNOはありがたい存在になりつつある。なにより、新規契約者数を稼いでくれるため、ソフトバンクモバイルやKDDIとの競争にプラスに働く。昨年以降、NTTドコモが契約者数でソフトバンクモバイルからトップを奪還する月があるが、それもNTTドコモから回線の提供を受けているウィルコムや日本通信が契約で貢献したからこそとも言われている。
 大手携帯電話会社のなかにも、かつては「MVNOはライバル」と語る幹部が見受けられたが、最近は「重要なパートナー」との認識が広がりつつある。NTTドコモの山田社長は「LTE(サービス名称は「クロッシィ」)でも、MVNOには回線を提供していく」と語っており、MVNOとのいい関係は今後も継続されていきそうだ。
 航空業界に大手と格安航空会社(ローコストキャリア)があるように、日本の携帯電話業界にも様々な選択肢が出てきた。スマートフォンの広がりとともに、SIMロック解除の機運がさらに高まれば、業界内に新たな競争が起こっていきそうだ。



YouTube、投稿ビデオの長さを15分に延長――著作権技術の向上で可能に
 米Google傘下のYouTubeは7月29日(現地時間)、一般ユーザーによる投稿動画の長さ制限の上限を10分から15分に延長したと発表した。動画再生時間の延長は、ユーザーからの最も多いリクエストだったという。
 YouTubeは立ち上げ時には動画の長さに制限を設けていなかったが、10分以上の動画には著作権を持つ映画やテレビ番組などの違法な投稿が多かったことから、2006年に1本の動画の長さを10分間に制限した。
 今回10分から15分に延長したのは、同社が著作権保有者に提供している「Content ID」をはじめとするコンテンツ管理ツールの性能が向上し、採用するパートナー企業も増えたためにコンテンツの保護が可能になったからとしている。Content IDは、投稿された動画を著作権保有動画のデータベースと照合し、著作権を侵害しているかどうかを自動判定するツール。違法と判定した場合は著作権を保有するパートナー企業に通知する。通知を受けた企業は、対象となった動画を削除するか、その動画に広告を掲載することで収益を上げることもできる。現在、米国の主要な映画会社と音楽レーベル、世界の1000以上の著作権保有企業がContent IDを利用しているという。
 YouTubeはメディア大手Viacomから、ユーザーによるコンテンツの無断アップロードを容認しているとして起訴されていたが、この6月に勝訴している。
 YouTubeは制限時間延長を記念して、「15 minutes of fame」(アンディ・ウォーホルの「誰でも15分で有名になれるだろう」という言葉にちなんでいる)というキャンペーンをスタートした。8月4日までに「yt15minutes」というタグを付けて15分間の動画をすると、YouTubeが優秀作品を特設コーナーに掲載する。
 この秋にはテレビでインターネットのコンテンツを視聴できるプラットフォーム「Google TV」対応テレビが発売される予定だ。今回の制限時間延長は、7月12日に発表された4K2Kビデオのサポート同様に、Google TV普及に向けたコンテンツの充実を狙ったものとみられる。



「ぴあ関西版」10月休刊へ
 エンターテインメント情報誌「ぴあ関西版」(隔週刊)が10月7日発売号を最後に休刊することが30日、分かった。
 同誌は、発行元のぴあによると、1986年創刊。94年には約25万部を発行していたが、最近は4万部程度に低下していた。年内にチケット情報などを掲載する新メディアをつくるという。 



au、800MHz再編で回線交換のデータ通信を終了
 KDDI、沖縄セルラーは、auにおける回線交換方式のデータ通信サービスを終了すると発表した。800MHz帯の周波数再編に伴うもので、同周波数帯の再編完了までに終了する。
 auにおける回線交換方式のデータ通信サービスは、1999年のCDMA方式導入当初から提供が開始された。CDMA 1X、CDMA 1X WIN EVDO、CDMA 1X WIN EVDO Rev.Aの各方式におけるパケットデータ通信サービスの提供に伴って、2005年秋モデルから順次、回線交換方式のデータ通信サービスには非対応となっていた。
 今回のサービス終了は800MHz帯の周波数再編に伴うもので、再編が完了すると回線交換方式のデータ通信サービスは利用できなくなる。KDDIでは、具体的な日時は今後発表する予定、再編完了までにサービスを終了すると案内している。
 なお、KDDIによると、回線交換方式のデータ通信サービスに対応した端末の加入者数は2010年6月末時点で1400件。このうち多くは法人契約のユーザーになるという。



「モバツイ」の想創社、取締役にペパボ家入氏や金剛地武志氏ら
 携帯電話向けTwitterクライアントサービス「モバツイ」を運営する株式会社想創社は、9月1日に社名を「株式会社マインドスコープ」に変更するとともに、取締役に株式会社paperboy&co.の創業者である家入一真氏ら3人を迎え入れることを明らかにした。
 代表取締役社長兼CTOには引き続き藤川真一氏が務め、今後は携帯電話向けのモバツイ拡充と、バナー広告売り上げの拡大に向けて開発陣頭指揮を執るという。マインドスコープという社名は、「ネット上の人々を覗くための入り口」という意味。
 取締役には、藤川氏のかつての上司でもあるという家入氏に加えて、「シーマン」の開発者としても知られるゲームクリエイターの斎藤由多加氏、タレントの金剛地武志氏の3人が就任する。
 家入氏は宣伝戦略およびコーポレートデザイン、インターフェイスを含むトータルデザイン、斎藤はスマートフォン向けインターフェイスやコンテンツなど、金剛地氏はモバツイのエンターテインメント性向上の象徴および広報担当役員として活躍してもらう考え。
 想創社は、モバツイを開発した藤川氏が2010年1月に創業。2010年7月には、「モバツイランド」という名称でコンテンツ配信を実験的に開始した。モバツイの登録会員は86万人以上、バナー広告の導入実績は30社以上という。
 今回の組織変更の背景について藤川氏は、「モバツイをもっともっとおもしろくしたい」という希望があったと説明。新任取締役が持つノウハウやアイデア、開発物を取り入れることで、「劇的におもしろくて使いやすいサービスを実現したい」としている。
 想創社では、モバツイのユーザーからの意見を聞き、将来のモバツイの仕様を決めるという「モバツイ2.0キャンペーン」を開催する。8月には特設サイトを開設し、藤川氏自らも意見を交換していくという。
 9月にはTwitterアカウントを含む連絡先を検索できる「モバツイ電話帳(仮)」を開始する。藤川氏によれば「ネット上の104番号案内を目指した」サービスで、開始時点でモバツイに登録されているTwitterユーザー情報が「モバツイ電話帳」移行される。検索時に表示される情報は、本人が設定できる。



ゲーム介した友人づくり 日本から世界へ 守安功・DeNA取締役
 米アップルの「iPhone(アイフォーン)」などスマートフォン向けのアプリ開発に参入する動きが相次いでいる。開発講座が人気を集め、家電向けの組み込みソフトを開発していた企業がアプリ開発へと転身を図る。
 アイデアひとつで誰もが平等に世界に飛び出せる「ソーシャル」の時代。初心者でもダウンロードランキング1位に輝くことができる。
 加速するアプリ開発競争を受けて、今、ネットの世界では優良ソフト技術の囲い込み競争が激しさを増している。
 
 瞬時に情報を共有できるソーシャルメディアの世界。ゲームなどのコンテンツが人と人とのつながりを支える磁力のような存在になり始めている。新たなネット空間の普及に合わせてゲームなどのコンテンツはどう変わるのか。携帯電話向けSNS(交流サイト)「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の守安功取締役に聞いた。
 ――ソーシャルメディアの普及はゲームなどのコンテンツにどんな影響を及ぼすのか。
 「人がたくさん集まっているからこそ会話が生まれ、新しいサービスが生まれる。ソーシャルが加わることでインターネットのサービスも変わる。そうした空間を作り上げるために、人と人が交流するソーシャルゲームという新しいジャンルが生まれた」
 ――既存の家庭用ゲーム市場への影響は。
 「ゲーム産業も変革期を迎えている。これまでは家庭用ゲーム機向けのパッケージ型ゲームとゲーム好きを対象にしたパソコン向けのゲームがあった。その二つの中間に登場したのが、簡単に遊べるカジュアルなソーシャルゲームだ」
 「利用料が無料でアイテムを購入して自分好みのキャラクターを作っていくことを友人と競い合うといった手法が、ゲームを今までしなかった層に受け入れられた。当社でも会員数が2000万人規模になっている」
 ――無料ゲームをベースにどう収益モデルを築いているのか。
 「例えば月100万人利用するゲームの場合、その内の10%がアイテムを平均で月1000円購入すれば1億円の売り上げになる」
 ――ゲームを利用する層に変化があるのか。
 「モバゲーの利用者は10代、20代が多く40代以上は少ない。若年層が多いのは国内ではソーシャルゲームは携帯電話での利用が多いためだろう」
 「だが、(サービス開始から3年以上たった)米フェースブックでは、ソーシャルゲームの利用者が40代が主流になっている。日本でも今後、パソコンなど様々なデバイスに広がることで、ソーシャルゲームを利用する年齢層も高まっていくだろう」
 ――開発の手法に変化はあるのか。
 「従来は5000円、6000円程度のパッケージを売り切るモデル。だが、ソーシャルゲームの利用料は無料。ユーザーを飽きさせないために、絶えずゲームのクオリティーやリピート率を高めなければならない」
 「そのため、開発のスピードを高めることが必要だ。今までのように数年かけているのではなく、数カ月で制作しなければならない。例えば、当社の宝物探しゲーム『怪盗ロワイヤル』は2人で制作した」
 ――ゲーム業界に必要な人材も変わるのか。
 「今までのゲーム業界は企画、グラフィックなど分業していたが、我々はそれだけでなくマーケティング、販売も含め総合的な視野をもった人材が必要だと考えている」
 ――フェースブックなど様々なSNSと競合することになるのか
 「フェースブックや国内のミクシィは実名で友人と交流することが主体。我々はアバター(ネット上の分身)を活用したバーチャルな交流が中心だ。つまりゲーム内で知り合った友人。こういったソーシャル性は海外ではなく、日本の特有のものだ。海外でも新しいソーシャルの形として海外でも勝負していける要素だと考える」



ツタヤのネット宅配、会員100万人突破 2年で倍増
 映像音楽ソフトのレンタル事業「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブは30日、ネット宅配レンタルサービス「ツタヤディスカス」の会員が100万人を突破したと発表した。昨年10月に携帯電話からの会員登録を可能にしたことで大幅に伸びた。
 ツタヤディスカスは、ネットを通じて指定したソフトを送料無料で自宅に取り寄せ、郵便ポストから返却できるサービスで、2002年にスタート。ほぼ全国で翌日配送される利便性などから、08年に会員数50万人を達成した。
 現在、携帯電話からの入会申し込みが全体の約3割を占めるという。携帯電話での料金の支払いもできるなど、さらに便利になったことから、約2年で会員数を倍増させた。



エコカー補助金、9月末終了を決定 直嶋経産相「対策必要ない」
 直嶋正行経済産業相は30日午前の閣議後の記者会見で、環境対応車への買い替え・購入に対するエコカー補助金制度について、当初の予定どおり9月末で終了することを正式決定したと明らかにした。
 直嶋経産相は、景気動向を注視する必要があるとして、延長の可能性に含みをもたせてきた。打ち切りについて、「9月からさらに引き続いて何らかの対策が必要という状況ではない」と説明した。
 これに合わせ、経産省は同日、エコカー補助金の申請期限を10月29日とすると発表した。
 エコカー補助金をめぐっては、小沢鋭仁環境相が「経済状況から延長は必要」と発言していたほか、日本自動車工業会の志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)も、延長に期待を示していた。



記者の目◇ソニーが決算短信に込めたメッセージ
 ソニーが29日発表した2010年4~6月期の連結決算は、営業損益が670億円の黒字(前年同期は257億円の赤字)だった。期初の会社予想(200億~300億円の営業赤字)や直近の市場予想の平均(ゼロ~100億円の営業黒字)から考えれば、想定以上の好決算。リーマン・ショック前の、今より円安だった08年4~6月期(営業利益734億円)に近い水準に回復し、評価の声が聞かれる。そして、今回の決算におけるもう一つのサプライズが11年3月期通期の見通しを上方修正したことだ。
 「先行きにはアップサイドもあればリスク要因も考えなければいけないが、この勢いを伸ばしていこうというのが我々の考え方だ」。通期の見通しを上方修正した理由について、この日が記者会見デビューとなった加藤優・最高財務責任者(CFO)は強調した。
 新しい通期の営業利益見通しは前期比5.7倍の1800億円。好調だった4~6月期を反映させたうえで、7月以降の対ユーロの想定レートを円高に変更したことによる目減り分を差し引いた。上方修正額はわずか200億円。従来予想からの上乗せは修正ルールで定められた3割に達せず、世界景気の動向が不透明な中であえて予想を変える必要はない。そもそもソニーは大半の営業利益を10~12月期に稼ぐ。まだ4~6月期が終わっただけで、先行きを見通すのは簡単でない。それでも上方修正したのは、成長を再び取り戻そうというソニーのメッセージだ。
 4~6月期の営業損益が計画より約900億円上ぶれしたうち、最も貢献したのはエレクトロニクス分野だ。液晶テレビやイメージセンサーのほか、ゲーム機、パソコンが好調だった。長く不振が続いていた液晶テレビ、ゲーム、携帯電話の3事業はいずれも営業黒字に転換。ゲームは3四半期連続で、携帯電話は2四半期連続で営業黒字となり、ようやく安定してきた。
 最大の課題だった液晶テレビ事業も大幅に改善した。05年3月期から6年連続で営業赤字を計上していたが、4~6月期は30億円の営業黒字(前年同期は80億円の営業赤字)に浮上。第1四半期の営業黒字は8年ぶりだ。販売台数が6割増の510万台とLG電子に並ぶ水準となり、懸念されていた年間の販売計画(前期比6割増の2500万台)の達成も不可能ではなくなってきた。昨年は世界シェアが9.6%と大きく落としたが、約2割のシェアを持つサムスン電子にもう一度挑戦する余地が出てきた。
 前期は3300億円のコスト削減や5000億円弱の材料費削減など構造改革に取り組んできたが、商品の競争激化や価格下落、円高でその効果が吹き飛んでしまった。対して今回の四半期決算では、加藤CFOからは多くの前向きな言葉が発せられた。「今期はテレビなどで良い商品がそろってきた」「エレクトロニクス分野の4~6月期の売上高は新興国で40%伸びている」「これからは成長に向けて投資をしたい」――。
 もっとも、懸念材料は数多い。液晶テレビは高付加価値商品向けの液晶パネルやLED(発光ダイオード)の調達が十分でなく、一部で機会損失が出ている。テレビ事業の営業黒字は販売促進費の抑制や期ずれの影響もあり、手放しでは喜べない。ゲームは市場で減損リスクを懸念する声がなお根強い。携帯電話は平均単価を上げるのに成功したが、販売台数シェアは4%にまで低下した。「構造改革はまだ続けるべきだ」(外資系証券)との声も聞かれる。米アップルなどは次々と競争力のある商品やサービスを投入しており、競争条件がどんどん変わっている。
 ソニーの株価は3月に年初来高値(3645円)を付けたが、その後約3割下落。PBR(株価純資産倍率)は1倍割れの指定席に戻ってしまった。市場では「過去に何度も業績を下方修正したことで、ソニー神話のプレミアムがはげ落ちた」「最近はインデックス投資の投資家が中心で、じっくり個別材料や投資尺度をみて売買する投資家が少なくなった」との声も聞かれる。
 決算短信で示した業績予想の上方修正に込めたメッセージを具現化し、投資家のソニーに対する関心を呼び戻すことができるのか。4~6月期の好調を一過性に終わらせず、持続できるだけの経営力が問われている。
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電波割り当て競売浮上 次世代通信など対象
 総務省は電波の割り当てを巡り、オークション(競売)方式を解禁する検討に入る。30日に同省で開く電波利用料に関する調査会で方向性を示す。次世代の高速通信など新サービス導入時を念頭に置いており、公開入札で最高額を提示した事業者に免許を与える。国の裁量で電波を割り当てる現状を改め、透明性を高めるのが狙いだ。
 現状は有限資源である電波について国が管理し、利用を希望する事業者を総務省が審査。これを通った事業者に同省が無償で割り当てている。同省はこれまで競売方式だと落札額が高騰し、利用者に負担が及びかねないとして消極的だったが、調査会では「選択肢から排除しない」などとして事実上、方針を転換する姿勢を示す見通しだ。
 背景にあるのが政権交代。民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で同方式導入の方針を掲げた。原口一博総務相もかねて「限りある電波を有効利用し、国民にしっかりと還元していく責任は重い」と述べてきた。競売方式にすれば国が収入を得られることもあり、財政面からも後押しする声がある。
 競売の対象とする電波など詳細については今後議論する。将来、新しい無線通信サービスなどを導入する際に競売を採用する案などが出ている。
 現行の携帯電話の周波数を広げる場合では、割り当て方式で獲得した既存業者と競売方式で参入する業者との間の不公平が表面化しかねないと判断。当面は競売方式の対象にしない方針だ。
 同方式の本格実施には電波法改正も必要。衆参ねじれ国会の下では実現は困難との見方もある。自民党政権時代は競売方式は実現しなかった。
 競売方式に対しては「経営資本が潤沢でない企業の新規参入の障壁となる」(ソフトバンクモバイル)などの声もある。海外ではIT(情報技術)バブルなどと軌を一にして落札額が急騰、負担に耐えられずに事業を断念した例もあった。
 経済協力開発機構(OECD)加盟国では3分の2以上がオークションを導入済み。米国では1994年の開始から2009年3月までに携帯電話などで70回以上を実施、合計落札額は8兆4千億円に達した。



孫正義社長の後継者求む! ソフトバンクアカデミアが開講
 7月28日午後6時、東京・汐留のソフトバンク本社で、孫正義社長の後継者発掘・育成を目的にした「ソフトバンクアカデミア」の第1回講義が開かれた。
 現在52歳の孫社長は60代のうちに後継者に社長の座を譲ることを明言している。今回の講座は来るべき10数年後に備え、その候補を選抜、育成するためのものだ。この日集まったのは、グループ会社を含め社内から志願した約1000名。20~30代の若手社員が半数を占めた。
 「皆さんにこれから20~30年間伝授していくことを1ページで表すとこの25字になる」。自ら教壇に立った孫社長は「我こそは」と野心と熱意でぎらつく聴衆に向け、まずこの日のテーマを掲げた。
 道天地将法
 頂情略七闘
 一流攻守群
 智信仁勇厳
 風林火山海
 これは、孫社長がかねてより「孫の二乗の法則」と呼んでいる経営哲学。古代中国の思想家、孫子の兵法に自身の独自の解釈を付け加えたものだ。
 「この25字を片時も忘れたことはない。新しい事業をやるとき、試練にぶつかったとき、新しいビジョンを立てるとき、つねにこの25字にマッチしているかを自問自答しながらやってきた」。いわば、孫社長の経営思想のエッセンスが凝縮された25字だ。約2時間半にわたる講義では、この1字1字について、自身の解釈をかみくだいて解説してみせた。
 ここでは、そのなかから一部をかいつまんで紹介しよう。
 この日、孫社長が再三にわたって強調したのが、撤退する勇気の重要性だ。孫社長は「七」の項で、事業進出は七割方成功するという公算が立ったタイミングですべしという持論を展開した。3割以上のリスクを冒さない、また進出後も3割以上組織を痛めないうちに撤退するという考えだ。
 「五分五分の勝率で勝負を仕掛けるのはバカがやることだ。武田勝頼になる。『このまま行くと負けるぞ』という状況で、突っ込んで負けてしまう。退却ができないヤツとは、クルマで言えば、ブレーキのできないクルマ。私が勝頼の状況なら、恥も外聞もなく逃げる。勝頼は3割失った時点で、『これで退いたらもったいない。取り戻さないと』と、意地になってしまったのだろう。これはバカの典型だ。意地で会社をやると、会社をつぶすことになる。株式投資でもそう。失敗するのは撤退の時機を見きわめられなかったときだ」
 孫社長は「退却は10倍の勇気がいる」とも強調した。
 「僕は過去おびただしい数の退却をしてきた。(退くとなったら)僕は早いよ。メディアにめちゃくちゃに書かれます。恥ずかしい思いをする。これに耐える勇気を身に付けないと、リーダーにはなれない。うまく行っているときはいい。皆が割れ先にと、飛び出していくから。だが、退却の決断はトップしかできない」
 「流」の項では、避けなくてはならない失敗のパターンについて触れた。それは流れに逆らった経営のあり方だ。斜陽産業に自ら進出することは決してしてはいけないと孫社長は言う。次の流れを読んで、仕掛けて待つ。これが経営の本流だという。
 「かつて富士通がパソコンのOS(基本ソフト)にマイクロソフトを選ばず、(80年前半までのパソコン黎明期に主流だった)CP/Mを選んだことがあった。そのとき僕は役員にバカだと言いました。そうしたら、『孫さん、あなた技術のことはわからないだろうけど、CP/Mはここがこう優れていてね……』と枝葉末節のことを説明する。しかし、そんなものはすぐに追いつかれる。事業家は、時代の流れの王道を進まければ失格だ。通信方式でも同じ。CDMA2000を選んだ事業者(au)がいる。悲しいばかりの失敗。(高速通信で)一時的に先行する、成功する……ただそれだけのために、最後までメインになれないところを選んだ。沈みゆくもの、枝葉になるものを選んではいけない」
 ハイテンションの孫社長は2時間半の講義中、立ちっぱなし。毎週水曜日に開催していくこのアカデミアでは、今後入校生各自にプレゼンテーションを行わせ、互いの採点をさせる予定だ。
 最初の課題は「社長在任の10年で、どうやって時価総額を5倍にするか」に決まった。どの事業領域で、どんな方法で、資金調達をどう工面して……これらを具体的に論じさせる。下位10%を半年ごとに入れ替える形で選考を進め、10数年後までに後継者を選ぶ壮大な計画だ。年商3兆円近い企業の社長候補を半ば公開の形で選考していくという、ソフトバンクの新たな試み。最終的にどんな人物が選ばれることになるのか。今から楽しみだ。



東芝の日野工場閉鎖、市が影響を調査 商業も含め対策検討
 富士通との携帯電話事業の統合に伴い、東芝が日野工場(東京都日野市)を来年3月末に閉鎖すると発表したことで、日野市は対応策の検討を始めた。今後、取引のある地元の中小企業への影響を調査する。関係会社を含めると従業員1100人の転勤が必要になるとあって、商業も含めた対策を検討する。工場跡地の利用方法など東芝との交渉も必要になる。
 東芝日野工場は1964年に設立。携帯電話機の開発や設計、品質保証、アフターサービスなどを手がけている。従業員の一部は富士通と東芝が共同出資する新会社(川崎市)をはじめ富士通グループへ出向、転籍する。残りは東芝の他の事業所に異動となる。
 日野市にとって大規模な工場の閉鎖は、86年に自動車部品メーカー、千代田自動車工業(現ソーシン)が埼玉県入間市に移転して以来。日野市によると、移転する人は千代田自動車工業の場合、数百人程度だったが、今回はけた違いに多い。日野市在住者は東芝本体だけで140人おり、日野市外からの通勤者も含め、地元商業に与える影響は大きい。
 工場周辺で日野工場と取引している中小企業は数社あり、日野市は今後こうした企業の売り上げへの影響などを調べる。
 ただ、日野工場からの法人税収は2009年度に300万円で、市財政へ影響は軽微にとどまる見通しだ。
 今後は約9万7580平方メートルという広大な敷地の活用が焦点となるが、東芝は「売却するか再利用するか、まだ何も決めていない」(広報室)としている。



楽天、生保に本格参入 アイリオ生命への出資引き上げ
 楽天はアイリオ生命保険と資本・業務提携を結び、生保事業に参入する。30日に発表する。楽天がアイリオの筆頭株主のエキスパートグループホールディングス(東京・中央)から保有株式の一部を取得。出資比率を33.89%に引き上げ、役員も派遣する。楽天の生保事業参入で、ネットを通じた生保販売が広がる可能性がある。
 アイリオは生保に近い共済事業から2008年に生保会社に移行して発足。医療保険や生活習慣病保険などを取り扱っている。資本提携を受けて、両社はインターネットで簡単に契約手続きができるネット専用の生命保険を開発し、ホームページを通じて販売する。
 また、楽天が傘下の金融事業などの顧客にアイリオの保険商品を紹介。契約を希望する顧客をアイリオの販売代理店約7700店に紹介するなどの相乗効果も見込む。
 株式の譲渡価格は20億円前後とみられる。楽天は子会社が運営するファンドを通じてアイリオにすでに20億円を出資。発行済み株式の16.95%を保有している。出資比率の引き上げに伴い、楽天はアイリオに2人の役員を派遣し、経営に関与する。エキスパートグループは50%超の出資比率を維持する。




「iPad、iPhoneの最強アプリ」と孫社長 ソフトバンクとZynga合弁、年内にサービス開始
 「Zyngaのゲームは、iPhoneとiPadの最強アプリになるのでは」――ソフトバンクの孫正義社長は7月29日の決算会見で、ソーシャルゲーム大手・米Zynga Game Networkと合弁新会社を設立することに触れ、期待を述べた。
 新会社は「ジンガジャパン」という名称。日本のソーシャルゲームプラットフォーム向けに、PC/携帯電話向けゲームを年内に投入する計画だ。プラットフォームが対応次第、iPhone/iPadゲームも提供したい考えだ。
 Zyngaは2007年の創業以来、急成長を続け、世界最大級のソーシャルアプリプロバイダー(SAP)となっている。Facebook(世界5億ユーザー)向けアプリで人気上位を独占。月間アクティブユーザー数は2億3000万人に上り、一番人気の農場ゲーム「FarmVille」は6200万ユーザーが利用しているという。
 ソフトバンクはZyngaに1億5000万ドル(約137億円)を出資。ジンガジャパンは、両社の折半出資となる。新会社のCEOには、Zyngaのロバート・ゴールドバーグ氏が就任する予定だ。
 年内に、国内の複数のソーシャルアプリプラットフォームにソーシャルゲームを投入するとしており、mixiやGREE、モバゲータウン(Yahoo!モバゲー)などに、PC/携帯電話向けゲームを提供していくとみられる。「iPhone/iPadにも対応していきたい」としており、プラットフォームの対応にあわせてiPhone/iPadゲームを投入していきたい考えだ。
 ソフトバンクは米国のソーシャルゲーム大手RockYouにも出資。RockYouと合弁で昨年2月、日本法人ロックユーアジアを設立し、日本や韓国、中国向けにソーシャルゲームを提供している。



統合や買収遅れる日本勢、収益力強化急ぐ
 電機業界で再編が止まらない。パナソニックや日立製作所は戦略子会社の完全子会社化に動き、経営資源を中核事業に集め始めた。携帯電話機や半導体でもライバル同士が事業統合に踏み切る。日本の電機産業が国際競争力を失い始めて十数年。過剰なプレーヤーの解消など、失地回復に向けた基盤固めは待ったなしだ。
 再編の一つの潮流がグループ企業の完全子会社化だ。ちょうど1年前、日立製作所は「脱・総合電機」を掲げ、日立プラントテクノロジーなど上場5社の完全子会社化を決定。2557億円を投じて日立本体に取り込み、中核事業の社会インフラや情報通信分野などを強化した。
 富士通と東芝は29日、携帯電話事業を10月に統合することで最終合意した。新会社は国内出荷シェアでシャープに次ぐ2位に浮上、海外市場開拓も狙う。世界3位の半導体メーカーとして4月に発足したルネサスエレクトロニクスは同日、従業員4000人の削減を発表した。収益力強化に向け構造改革を急ぐ。いずれもグローバルな競争を視野に入れた取り組みだ。
 海外では、選択と集中による経営体質の強化で先行してきた欧米、アジアの企業が立ちはだかる。
 欧州を代表する電機メーカー、独シーメンスは発電システムや医療機器などを主力にするが「過去10年間、非中核事業の売却と中核事業の買収を年間50件ペースで繰り返し収益力を強化」(ATカーニーの竹村文伯氏)してきた。09年度の最終損益は、シーメンスが約2800億円の黒字。これに対し、日立は1069億円、東芝も197億円のそれぞれ赤字だった。
 ただ、ここ数年のリストラ効果で国内各社の資金余力は高まっており、M&A(合併・買収)をテコに巻き返しを狙う環境は整いつつある。半導体から重電まで幅広い事業領域で、グローバル競争に耐えうる経営基盤をつくる――そんな再編を模索する経営者が確実に増えている。



経営トーク◇ソニー決算会見速報、加藤優CFO「業績改善のトレンド変わらず」
 ソニーが29日発表した2010年4~6月期の連結決算(米国会計基準)は最終損益が257億円の黒字(前年同期は370億円の赤字)だった。加藤優・最高財務責任者(CFO)は記者会見で、「液晶テレビが国内外で販売が好調だったうえ、事業構造改革の成果も利益を押し上げた。業績改善トレンドは変わっていない」と強調。同時に11年3月期の連結純利益が600億円になる見通しだと発表した。従来見通しを100億円上回る。主なやり取りは以下の通り。
 ――欧州経済の見通しは。
 「ギリシャ危機の発生後、経済が停滞するのではないかという見方が多い。ソニーの売上高のうち25%程度を欧州が占めるが、4~6月期は商品によっては想定を上回る販売となった。足元では(欧州は)不安材料ではない。ただ、先行きは予断を許さない状況ではある。強い商品を出すことが重要で、そうすればマーケットのなかで勝ち残れると思う」
 ――通期の設備投資額は2300億円と100億円上乗せしました。
 「主にデジカメの心臓部分のイメージセンサーの需要が増えており、半導体分野で追加投資をする。外販もしており、引き合いが強い」
 ――パナソニックが三洋電機とパナソニック電工を完全子会社化します。ライバルの動きをどう見ますか。
 「他社の動きについての言及ははばかられる。業界は変化が激しい。ソニーは映画、音楽、エレクトロニクス、金融など多様な事業を持つ。お互いが連携を取りながら事業を進める。(企業や事業を)売り買いするのは選択としてあるが、内部で連携を取りながら事業を展開する」
 ――通期見通しを上方修正した理由は。
 「4~6月期は(想定より)上振れした。通期では連結営業利益が従来予想を200億円上回り1800億円になる見通し。先行きは慎重に見ているが、強い商品力でがんばるしかない。為替の影響を除くと(液晶テレビなど)コンスーマー・プロフェッショナル&デバイス分野が上振れするかという感じだ。プレイステーションも堅調で、ネットワークプロダクツ&サービス分野も堅調だ」
 ――第1四半期の結果と通期の上方修正幅を考慮すると、第2四半期以降は当初見込みより業績が悪くなるという想定になります。
 「為替の影響が大きい。ドルの想定レートは変えていないが、ユーロは従来の1ユーロ=125円から110円と円高に修正した。1ユーロ1円動くと、損益に約70億円の影響が出る。大まかにいって、年間通して為替の影響は約900億円程度と見ている。第2四半期から第4四半期は(為替で)800億円強影響を受けると見ている。4~6月期は想定より(営業利益で)900億円の業績上振れがあるのにもかかわらず、年間で200億円にとどまるのは、大半は為替の影響だ。為替の影響を除くと、(環境は)だいたいは想定通り」
 ――テレビ好調の理由は。
 「良い商品を出している。昨年は少し他社に後れを取った。今年はデザインも変え、発光ダイオード(LED)バックライトを使った商品や3D(3次元)テレビも投入した。材料費や固定費の削減など継続したコスト対策の効果が出ている。4~6月期はテレビの供給の方が逼迫(ひっぱく)していた。パネルの供給がタイトになった面もある。販売面では日本は増加、北米は見通しより下回った。それ以外の地域は予定通りだった」
 ――テレビは年間で2500万台を計画していますが上方修正の可能性は。エレキ分野の業績も回復の兆しがありますが、エレキの拡大策は。
 「2500万台は昨年(の販売台数)1500万台と比較すると6割を超えるアグレッシブな目標だ。2500万台を掲げたのは、失ったシェアをもとのレベルまで盛り返すためだ。まずはこの目標をきっちり達成する。そのためテレビのラインアップをそろえた。年末商戦をすぎると、来年には新モデルが出てくる。そこで手応えを確かめたい。目標を上げる見通しは今のところはない」
 「成長投資に関しては、リーマン・ショックもあり過去数年は収益に結びつかない時期があった。まずは赤字部門を黒字に転換することだ。テレビ、ゲーム関連を黒字化する。昨年後半から良い商品も投入してきており、(業績拡大への)モメンタムを作ってきた。前期は資金・財務面で緊張感のある時期だった。キャッシュフローも改善しており、少し余裕が生まれ、攻めに入れるようになった。これからは成長に向けて投資をしたい。経営方針説明会で説明したように、3D関連を幅広に展開したい。テレビやカメラ、ゲーム、劇場用ディスプレーなどを持っており、3Dの収益源だ。ネット社会に応じたハードやソフト、サービスを拡充し投資も進めたい」
 ――電子書籍端末の需要拡大をどうみますか。
 「電子書籍はiPad(アイパッド)が発売されて、マーケットが広がっている。競争をどう勝ち抜くか。いろいろな見方があるが、多機能な携帯タブレットが伸びるのではないか。読みやすい端末やコンテンツの豊富さなどニーズは多様。読みやすさに関しては、(ソニーは)使いやすさなど特徴のある商品を出せるのではないか。ニュースを素早く見るのと、読み物をじっくり読むのとでは状況が違う。ニーズに合わせて商品やサービスを出していく」
 ――今期も資産売却を続けるとのことでした。方向性や業績への影響は。
 「工場の数は1年前は57程度あったが、現在は42まで減らす意向を示している。今後も売却する方向だが、これまでと同じペースというわけにはいかない。どことは具体的には言えない」
 ――年末にエコポイントが終わります。来年には地デジが始まります。この影響をどう見ますか。
 「液晶テレビの販売は、北米が2割弱、欧州が3割半ば、日本その他が約5割を占める。日本の市場は4~6月は想定より若干上にいっている。エコポイントがなくなると影響は出てくるだろうが、補って余るだけの良い商品を出す」
 ――リチウムイオン電池で、自動車事業への参入計画は。
 「検討中だ。車載バッテリーは遅れているという指摘もあるが、新しい産業領域の立ち上がりの時期にある。それなりに特徴のある技術や商品をそろえたい。来年など短期ではなく、5年、10年でソニーらしいマーケットの入り方を検討している」
 ――エレキ分野は新興国でどのくらい伸びていますか。
 「エレクトロニクス分野では新興国で前年同期比40%伸びている」
 ――ソフトとハードの融合を打ち出しています。その戦略が業績に反映されていますか。
 「今後の戦略として、ハードやコンテンツをつなげて魅力的な商品やサービスを出すことだ。まだ道半ば。たとえば、コンテンツを1回買えば、家のテレビだけでなく携帯端末でも楽しめるなどの仕組みを作るというのが目標だ。個別の商品はあるが、全体としてはできあがっていない。ネットワークサービス関連はここ数年、売り上げが上がってきている。前期はこうしたネットワーク関連の売上高は400億円弱までになっている。毎年成長を続けている。今期は倍になると見ている。ただ、収益に大きく貢献しているとはいえず、来期以降に成果が出てくると見ている」



(日経社説)「100メートル走の経営」に挑むパナソニック
 パナソニックが、三洋電機とパナソニック電工を完全子会社にする。「SANYO」ブランドは原則なくなり、「Panasonic」に一本化される。3社合計で売上高が9兆円近くにのぼるだけに、経営展開は日本の産業を占う試金石になる。
 完全子会社化の狙いは2つだ。ひとつは意思決定のスピードを上げ、設備投資などで韓国や中国のメーカーに負けない体制をつくること。「世界の同業他社は100メートル競走の速さで変革している。我々は中距離走のスピードだったのではないか」(大坪文雄パナソニック社長)との危機感が背景にある。
 もうひとつは消費者の要望にまるごと応えられる製品やサービスのラインアップ作りだ。同社はそれを「家まるごと」戦略と呼ぶ。
 例えば、各社のテレビ、音響機器や照明を単品で売れば、厳しい価格競争に陥る。だが設計や施工、保守点検をまとめて売り込めば、消費者にとっても便利だし、グループ全体の相乗効果も高まる。
 「家やオフィスビルの内部を一括して引き受ける、一種のソリューション(問題解決型)事業」を進めるには、意思決定をひとつにする必要があったわけだ。「2018年に電機業界で売り上げ世界一になる」との目標を達成できるかどうかは、内外で相乗効果を発揮できるかどうかにかかってくる。
 日本は市場規模の割に家電や自動車などの社数が多く、メーカーは国内勢同士の競争で体力を消耗しているといわれてきた。この点で、パナソニック以外の電機メーカーも、生き残りを懸け事業の選択と集中に取り組みだしたことが注目される。
 日立製作所は三菱重工業と水力発電機で提携、東芝は原子力発電と半導体に投資を集中し、ソニーは映画や音楽などのコンテンツ事業に独自性を打ち出そうとしている。
 そうした経営の変革を通じ、世界の標準になるような製品やサービスを次々と生み出していくことが重要だ。最近の電機の成長分野はスマートフォンや電子書籍、インターネット経由でソフト機能を提供するクラウドコンピューティングなどだが、日本にはそうした領域で世界の主役企業がない。
 原子力発電、リチウムイオン電池、太陽光パネルなど、日本にも先端分野はある。問題は世界でどう稼ぐかの経営モデルだ。大きな見取り図を描き、大胆な意思決定で新技術を生かし、新興市場を切り開く。どのメーカーもそんな気概を持ち、企業変革に取り組んでほしい。
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