第4世代携帯、日本はガラパゴス化回避

第4世代携帯、日本はガラパゴス化回避
 国連機関の国際電気通信連合(ITU、本部ジュネーブ)は10月21日、第4世代(4G)の携帯電話の国際規格に、欧州主導の「LTE」、米国の「WiMAX(ワイマックス)」の両方式の発展型を採用すると発表した。日本は独自基準を提案せず、両方式に二またをかけていた。戦いを事実上放棄することで、国際標準から取り残される「ガラパゴス化」を回避した格好だ。
 4G携帯の通信速度は最大で毎秒1ギガ(ギガは10億)ビットで、光ファイバー並みのスピードでデータ通信が可能になる。
 「6つの候補から4G携帯に求められているすべての基準に合致する2つの方式を選んだ」。ITUのプレスリリースはさらりと説明するが、実情はもっと複雑だ。6候補は欧州、米国のほか、中国、韓国、日本。1つ足りないのは日本が2候補も出しているためだ。
 世界標準を巡る争いに積極的に参加していると思いきや、1つは欧州の「LTE」発展型と、もう1つは米の「WiMAX」発展型とほぼ同じ。総務省は「両候補への支持を明確にするために提案した」と説明する。
 実は日本はすでに4Gに通信速度が近い携帯電話サービスに着手している。NTTドコモなど3社は現行の「LTE」規格によるサービスを準備。KDDI系のUQコミュニケーションズは現行の「WiMAX」規格によるサービスを展開中だ。スムーズに4Gに移行するには、両方式の発展型が国際標準となるのが都合がよいというわけだ。
 これまで独自に進化した日本の携帯電話は世界標準からかけ離れ、希少生物の多いガラパゴス島とやゆされた。このため4G携帯では独自規格を早々と断念し、欧米勢に従った。
 一方、中国が今回提出したのは「LTE」がベースだが、上り方向と下り方向で同じ周波数を使う「TD-LTE」という独自規格。結果として勝利は逃したものの、規格争いに果敢に打って出たことは間違いない。第5世代(5G)では、規格争いのメーンプレーヤーとなる可能性が高い。



「アイワ」を覚えていますか  「円高はどんどん進む。法人税も高い。政府は当社を日本から追い出しにかかっているとしか思えない。海外移転は資本の論理からして当然である」
 円相場が1ドル=79円75銭の最高値へと上昇基調をたどった1994~95年。こんな歯切れのよい発言で市場の注目を集めたのが音響機器メーカー、アイワの卯木肇社長だった。
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 行動と実績も伴った。海外生産比率は当時すでに80%超。アジア製の廉価なAV(音響・映像)機器を日本を含むアジア全域や中東に売りさばいた。円高のまっただ中の95年3月期、連結経常利益は131億円と1年前比33%増えた。
 経営者が変わっても戦略は引き継がれ、海外生産比率が90%に達した98年3月期の連結経常利益は179億円まで伸びた。
 円高対応の先駆者は転落も早かった。2000年3月期からはAV不況で赤字が3年続き、親会社のソニーが吸収。08年春にアイワブランド製品の販売停止が発表された。
 円相場の約15年半ぶりの高値更新も意識される今。10年4~9月期の決算発表は、円高対応への苦渋の声が木霊している。
 「技術やノウハウなど日本に残せるものはきちっと残したい。円高がさらに進めばもう一段の海外展開をせざるをえないが、それは絶対に避けたい」(日立製作所の三好崇司副社長)
 「下期に1ドル=82円の想定で利益を出すことが、日本でものづくりを死守する条件となる」(トヨタ自動車の小沢哲副社長)
 JPモルガン証券株式調査部の北野一チーフストラテジストは、そんな様子に「消えたアイワ」の影を見る。銀行で為替調査の経験も持つ北野氏は「円ドル相場は行き過ぎがつきもの」と知っている。
 円高に過剰に反応して海外展開を急ぎすぎれば、製品の付加価値を高める企業努力が後手に回りはしないか。北野氏の不安は、アイワ消滅の構造的な要因を言い当てている。
 01年にソニー専務からアイワ社長に転じた森本昌義氏は「デジタル家電の技術に通じた人材が数人しかいなかった」現実を前に、肝をつぶした。
 ミニコンポをはじめとするアナログ製品の海外生産にかけたアイワは、半導体やインターネットなど次世代技術を研究する動機に乏しかったのだ。ソニーは「グループ内の低価格ブランドとして生かせないか」と考えたが、技術の空洞化は想定を超えていた。
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 94年9月17日付本紙の「トップに聞く企業戦略」に、卯木社長の予言めいた発言を見つけた。企業を海外に追い出す政府はいずれ税収が不足して初めて事の重大性に気づく、と。
 そして締めくくる。「個人的には早くそうなればと切望している。それが経済人の提議できる現状へのアンチテーゼだからだ」
 海外展開で大成功し、次の一手を欠いたために消えたアイワ。その物語は懐かしさ以上の重みを持つ。



Android新版「Gingerbread」、11日登場のうわさ
 Androidの次期バージョン「Gingerbread」(バージョン3と言われているが、バージョン2.3との説もある)が11日に開発者向けにリリースされるといううわさが流れている。さらにOpen Handset Alliance(OHA)の関係者とされる人物が「開発者用Nexus Oneが、数日中にGingerbreadにアップグレードできるようになる」と7日にTwitterで告知している。これは11日リリースのうわさに合致している。
 Googleが10月後半にGingerbreadのマスコット像を本社に設置したことから、Gingerbreadリリースは近いと憶測されていた。同バージョンはテレビ電話機能やYouTubeのLeanbackサポートを備えると言われている。
 ただし一般ユーザーがGingerbreadを手にするのは、機種にもよるが来年になるとみられる。



ドコモ次世代携帯、14年に1500万回線めざす 来月開始を発表 海外再挑戦の試金石に
 NTTドコモは8日、現行の5~10倍の通信速度が可能な次世代携帯電話サービス「Xi(クロッシィ)」を12月24日から始めると発表した。「LTE」と呼ばれる次世代通信規格を国内でいち早く商用化し、2014年に契約者の4分の1に当たる1500万回線を目指す。ドコモはLTEで海外市場も狙うが、米欧の通信大手との厳しい競争が予想される。国内でどこまで利用者を増やせるかが、海外再挑戦の試金石になる。
 「Xi」はLTEと既存の携帯電話回線を併用できるサービス。通信速度は毎秒37.5メガ(メガは100万)~75メガビットと現行の7.2メガビットに比べて速度が向上。スマートフォン(高機能携帯電話)で、パソコン並みの高速通信が可能になる。
 新サービスへの移行を促したいドコモは、一定のデータ量まで月額料金を1000~6510円と、現行の1000~5985円から約1割高い水準に設定した。
 KDDIやソフトバンクグループがLTEサービスを始めるのは12年以降。ドコモの山田隆持社長は「今後は設備投資をLTEに集中する」とインフラ整備を急ぎ、先行の優位を生かして顧客を囲い込みたい考えだ。
 ただし、サービス利用地域は当初、東京・大阪・名古屋の市街地のみ。11年度に全国の県庁所在地級の都市に広げるが、全国の主要都市に行き渡るのは12年度だ。
 LTEに対応したスマートフォンが国内で発売されるのも11年末の見通しで、当面、利用者はデータ通信用端末をパソコンに差し込んで使うことになる。携帯電話の新規格として一般的に普及するにはまだ時間がかかる。インフラが不十分だと、利用者は既存サービスからの乗り換えをためらう傾向がある。KDDIグループが手掛け、LTE並みの通信速度が可能な高速無線「WiMAX(ワイマックス)」は、提供地域の狭さなどを背景に契約者獲得で苦戦している。
 これまで別々だった国内外の携帯電話の通信方式が事実上統一されるLTEは、ドコモにとっては「海外巻き返し」の契機にもなる。
 しかし海外の通信大手もLTEを使った「領土拡大」を狙っており、早い企業は09年末から一部地域で商用化に着手している。日本で先陣を切ったドコモも、世界では先頭を走っているわけではない。
 LTEは海外進出で失敗した国内の携帯電話機メーカーにとっても海外再挑戦の最後のチャンスになる。まずは先陣を切ってのサービスを開始したドコモが、国内でどこまで利用者を増やせるか。LTEには「日の丸ケイタイ」の浮沈がかかっている。



携帯出荷、スマートフォン効果などで2ケタ増 4~9月
3年ぶりプラスに
 電子情報技術産業協会(JEITA)が9日発表した2010年4~9月の携帯電話端末の国内出荷台数は、前年同期比11.3%増の1731万4000台と3年ぶりに前年実績を上回った。防水機能や高解像度カメラなどを備えた機種の品ぞろえ増加や、スマートフォン(高機能携帯電話)の人気が後押しした。
 内訳は携帯電話が11%増の1676万7000台、PHSが20.9%増の54万7000台。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」など一部海外メーカーの端末は含んでいない。JEITAでは今後について「下げ止まり感が出てきたが、年末商戦に向けての動向を注視する必要がある」としている。
 9月単月では前年同月比34.7%増の326万3000台と、3カ月連続のプラスだった。



ロッテ日本一 「下克上」で頂点を極めた(11月9日付・読売社説)
 リーグ3位から勝ち上がっての日本一という初の快挙である。
 プロ野球の日本シリーズは、ロッテが中日を4勝2敗1分けで下し、5年ぶり4度目の頂点に立った。
 7試合のうち3試合が延長にもつれ込んだ。第6戦は延長十五回、日本シリーズ最長の5時間43分に及ぶ熱戦だった。球史に残るシリーズだったといえよう。
 第7戦のテレビの瞬間最高視聴率は、関東地区で34・1%を記録した。改めて、野球の面白さを実感した人も多いのではないか。
 ロッテは、シーズン最終3連戦を全勝して3位に滑り込んだ。その勢いをクライマックスシリーズ(CS)に持ち込んで勝ち上がり、「下克上」と言われた。
 日本シリーズでも随所に勝負強さを見せた。際立ったスター選手はいなくても、安打を連ね、投手陣も踏ん張った。
 西村徳文監督が掲げたスローガンは「和」だ。それを象徴するように、ナインが一つにまとまった結束力が、日本一を呼び寄せたといえる。
 今季はセ・パ両リーグとも、最終盤まで優勝争いから目が離せない展開だった。上位3チームの力が拮抗(きっこう)しており、CSでは白熱した試合が多かった。
 2007年に両リーグでCSが導入されて以来、そのプラスの面が最も引き出されたシーズンだったのは間違いない。
 CSの導入で、3位以内に入るかどうかに、大きな関心が集まるようになった。優勝の可能性がなくなった後の消化試合が減り、最後までファンの興味を引きつけられることは、球界にとっても大きなメリットだ。
 だが、一方で、リーグ3位のチームが日本一になることに、釈然としない思いのファンもいることだろう。リーグ優勝の価値が下がり、日本シリーズの権威が揺らぐという声も根強い。
 3位に入りさえすれば、優勝チームと大差がついたり、勝率が5割に満たなかったりしてもCSに出られる現行の制度のままでいいのかという問題もあるだろう。
 球界を取り巻く状況は厳しい。ドル箱と言われた日本シリーズは今年、3試合でテレビの地上波による全国中継がなかった。成績不振が続く横浜球団の売却交渉は、破談となった。スター選手の米大リーグへの移籍も止まらない。
 ファンに支持され、球界が発展していくためには、どのような制度が最良なのか、模索していくことが必要だ。

ドコモのスマートフォン、独自サービスで分かる本気度

ドコモのスマートフォン、独自サービスで分かる本気度
 NTTドコモは11月8日、2010年冬~11年春モデルの携帯電話の新製品28機種を発表した。このうちスマートフォンは4機種で、併せて10年12月24日に開始する次世代携帯通信(LTE)サービス「Xi(クロッシィ)」の料金体系なども発表した。「スマートフォン、iモード、LTEでドコモはネクストステージに向かう」。発表会見でNTTドコモの山田隆持社長はこう宣言した。
 話題のスマートフォンでは、3D(3次元)液晶ディスプレーを搭載するシャープ製の「LYNX 3D SH-03C」、防水仕様の東芝製「REGZA Phone T-01C」、フルキーボードを備える韓国LG電子製「Optimus chat L-04C」、さらにリサーチ・イン・モーション(カナダ)の「BlackBerry(ブラックベリー)」シリーズの廉価版「BlackBerry Curve 9300」をそろえてきた。山田社長はこれまで「年度末までに7機種を投入する」と語っている。すでに10月に発表した韓国サムスン電子製の2機種と今回の4機種のほかに、残る1機種としてタブレット型端末を今年度内に発売する予定だ。
 LGの新機種は、普通の携帯電話端末を使っていたユーザーでも違和感なく使えるように、「ドコモメニュー」と呼ぶユーザーインターフェースを搭載している。ソフトバンクモバイルの孫正義社長は「スマートフォンの作り込みはナンセンス」と携帯電話会社によるカスタマイズの意義を一蹴したが、NTTドコモは初心者向けに使いやすさを重視した。
 3D液晶のスマートフォンは、ソフトバンクモバイルが一足早く発表している。防水対応スマートフォンもKDDIが発表済みだ。3社ではNTTドコモの製品発表が一番最後になったためではあるが、他社にないスマートフォンはLG製とブラックベリーの2機種しかなく、驚きはそれほどなかった。
「エバーノート」で独自色を出したが・・・
 そんななか、NTTドコモが独自色を打ち出したのが、ネット経由のクラウドサービス「エバーノート」だ。
 スマートフォンやパソコンにあるデータをクラウド上で一元的に管理し、どこからでもデータを引き出せる。ちょっとしたアイデアや写真で残しておきたいものをすべて保存しておけば、いつでもどこでもデータをチェックできるとあってスマートフォンユーザーを中心に利用者が増えている。
 NTTドコモは、傘下のドコモキャピタルが米エバーノートに出資していることもあり、アンドロイド搭載のスマートフォンにあらかじめインストールすることにした。エバーノート自体はすでにアップルの「iPhone」でも人気のサービスとなっており、他社のアンドロイド端末でも利用が可能だ。そのためNTTドコモは、機能が豊富な有料のプレミアム版(月額5ドル)を1年間無料にする。将来は「iモード」対応の従来型の携帯電話端末にもアプリを載せる計画だ。
 スマートフォンは、メーカーが複数の携帯電話会社に製品を供給するマルチキャリア展開に向いており、携帯電話会社は端末で他社と違いを出しにくい状況にある。KDDIがインターネット電話の「Skype(スカイプ)」、ソフトバンクモバイルが電子書籍などのコンテンツを目玉にするなか、NTTドコモはエバーノートで独自の味付けをしてきた。
 確かに、エバーノートは便利なサービスだ。実際に使ってみると、後で必要になりそうなデータをとりあえずクラウドに上げておけば、いざという時に困らない。ただ、これは使っていると実感できる便利さで、初めてスマートフォンを購入するようなユーザーにどれだけ魅力的に映るかは微妙なところだ。日本でのエバーノートの認知度は一般にはまだ低く、キラーサービスというには物足りない。
iモードサービスをなぜ早く移植しないのか
 今回の発表を見て気になったのは、NTTドコモらしいスマートフォンサービスが何も準備できていなかったということだ。NTTドコモがスマートフォンという舞台で何をやりたいのか、ユーザーにどんなメリットをもたらしたいと考えているのかがさっぱり見えてこない。
 その点、ソフトバンクモバイルであれば、iPhoneで培ったコンテンツのノウハウをアンドロイドでも生かそうとしているし、KDDIもスカイプへの取り組みや既存の携帯電話向けの音楽配信サービスや銀行サービスをいち早く移植しようとしたところなどに努力の跡が見える。そういった意味で、NTTドコモには物足りなさを感じてしまうのだ。
 NTTドコモにはiモードという5000万弱の契約者数を抱える巨大なコンテンツサービスがある。これらをもっと早くスマートフォン向けに移植する必要があるのではないか。
 iモード端末向けに提供している「iコンシェル」という情報配信サービスでは、今冬モデルからユーザーのメモや手帳代わりとして利用できる機能を追加する。こういったサービスこそスマートフォンでも求められ、他社への競争力につながるだろう。iコンシェルとエバーノートが連携すると一気にユーザーの利便性は増すはずだ。
開発体制が分離、典型は「ドコモマーケット」
 もちろん、NTTドコモもスマートフォン向けサービスの準備は進めているだろうが、山田社長は「2013年ごろに新規販売分においてiモードとスマートフォンが逆転する。11~12年にサービス開発の軸足をスマートフォンに移していきたい」と語っている。現在のところ、スマートフォンに本腰を入れた開発体制には移っていない。
 NTTドコモの組織体系を見る限りでは、スマートフォン向けとiモード向けのコンテンツ開発は分離してしまっている。その典型といえるのが「ドコモマーケット」だ。
 すでにスマートフォン向けにドコモマーケットというサービスが提供されているが、ここではアプリや動画、スマートフォンで閲覧するのに最適なサイトなどを紹介している。
 一方、12月6日にスタートするiモード向けのドコモマーケットでは、iモード用アプリの配信や音楽配信、電子書籍サービスなどiモードでノウハウを培ったサービスやコンテンツが集結している。同じドコモマーケットという名称でありながら、中身は全く別のものになっている。iモード向けで準備している電子書籍などのコンテンツをスマートフォンの冬モデルにも提供できていれば、もっとドコモらしい独自性を出せたはずだ。
 NTTドコモは、スマートフォンや8日発表したシャープ製の電子書籍専用端末「SH-07C」向けには、大日本印刷との協業の電子書籍配信サービスをメーンに提供しようと考えている(シャープの専用端末は同社の配信サービス「GALAPAGOS」も利用可能)。ソフトバンクモバイルのように既存の携帯電話向けサービスを転用すれば、NTTドコモならスマートフォン向けに一気に数十万種類以上のコンテンツを用意することも可能だっただろう。
 KDDIやソフトバンクモバイルがスマートフォンに本気で取り組む一方で、NTTドコモはまだどこか動きが鈍いようにも感じる。巨人ドコモがアンドロイド向けサービスに全力で取りかかるようになったとき、日本のスマートフォン時代は本当に始まるのかもしれない。



日本シリーズ、20%超えは最終戦のみ BSへの移行加速か プロ野球中継
 ロッテの5年ぶりの日本一で幕を閉じた今年のプロ野球日本シリーズ。7試合のうち第1、2、5戦がテレビ地上波で全国中継されない初の事態となり、視聴率も20%超は最終戦のみ。破談となった横浜の売却問題と合わせ、プロ野球人気の低下を暗示する。地上波からBSへのさらなる移行など、来季の中継のあり方にも影響を与えそうだ。
 「日本の野球は、リトルリーグからプロ野球まで層が厚い。大事にしたいし、工夫して放送したいが、非常に厳しくなっている」
 テレビ東京の島田昌幸社長は、10月末の会見でこう語った。同局が中継した11月3日夜の第4戦は、平均世帯視聴率が9・7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)で、同日午後の東京六大学野球早慶優勝決定戦(NHK総合)の12・1%をも下回った。
 2日に第3戦を中継し、6・8%にとどまったテレビ朝日の早河洋社長も「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)など国際レベルの試合は数字が高いが、レギュラーシーズンは低調で、日本シリーズも同傾向が5、6年続いている」と危機感を募らせる。
 かつて花形だった巨人戦も、平成12年以降はナイター中継の年平均が20%を割り、今年は8・4%で過去最低を更新。関係が深い日本テレビでさえ「かつてのような視聴率が取れず、(日本シリーズの中継を)ためらう部分もある」(舛方勝宏副社長)と明かす。
 日テレ系は今季、地上波中継が25試合だったのに対し、BS日テレは56試合、CSの「日テレG+」は72試合。各局とも地上波を減らし、系列のBSやCS中継を増やす傾向にある。
 日本シリーズの地上波全国中継が欠けたことについて舛方副社長は「BS普及によいのではないか。試合開始から中継を見られ、団塊世代を中心に受け入れられている。決して悲観的な形ではない」と投げかける。
 視聴率が20%前後だった6、7戦を中継したフジテレビの豊田皓(こう)社長は「プロ野球の人気はトータルではそんなに下がっていない。3波で中継のあり方を考えたい」とし、その上で「中日だと名古屋で大人気。ローカル中継に流れていく可能性もある」と話す。



ビデオ流出告発 危機感をもって真相の解明を(11月9日付・読売社説)
 真相解明の手段は「調査」から「捜査」に移った。相次ぐ情報流出で、国の情報管理能力が問われている。検察当局は危機感をもって捜査にあたらねばならない。
 尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を撮影したビデオ映像がインターネット上に流出した問題を巡り、海上保安庁が検察と警察に、被疑者不詳のまま、国家公務員法違反などの容疑で刑事告発した。
 流出映像は石垣海上保安部が編集したものとほぼ特定された。海保と検察の双方に保管されていたが、現時点で検察側から流出した形跡はなく、海保側から流れた疑いが強いという。
 誰がどんな手段で流出させたのか、何らかの政治的意図があったのか。重要なのは、真相の徹底解明である。
 そのためには、海保による任意の内部調査では限界があろう。告発により検察当局に捜査を委ねたのは当然だ。
 インターネット上では情報が瞬時に拡散する。パソコンへのアクセス状況を調べ、犯人を特定するには専門的な知識が必要だ。
 検察当局は流出ルートを調べるため、問題のビデオ映像が投稿されたサイトを運営する検索大手の「グーグル」に対し、投稿者の情報提供を求めた。
 それでも自宅のパソコンではなく、匿名性の高いネットカフェなどから投稿した場合には、投稿者の特定は極めて難しいという。
 警察にはサイバー犯罪に関する捜査ノウハウの蓄積がある。検察当局は警察と連携して、迅速に解明を進めてもらいたい。
 流出映像は、事件発生直後、石垣海保が内部の説明用に作成したものだという。石垣海保の共用パソコンに保存されたほか、複数の記憶媒体に複製された。
 捜査担当以外の職員も比較的自由にパソコンを閲覧したり、情報をコピーしたりすることが可能な状態だった。馬淵国土交通相の指示で管理が強化される先月中旬までは、記憶媒体の金庫での保管も徹底されていなかった。
 捜査機関として極めてずさんな情報管理にあきれるほかない。
 警視庁の国際テロ情報流出問題が明るみに出たばかりである。すべての捜査機関は、情報管理態勢を早急に見直し、再発防止に取り組まねばならない。
 今回の情報流出は、ビデオ映像の一般公開を避け続けた政府にも責任の一端がある。改めて国民に対するビデオの全面公開を検討する必要があろう。

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