Google TVを米紙が酷評 「グーグルは複雑化に向かって進んでいる」

Google TVを米紙が酷評 「グーグルは複雑化に向かって進んでいる」
 家庭の大画面テレビで、ウェブサイト上のビデオやテレビ番組のコンテンツを楽しめる「グーグルTV(Google TV)」。この取り組みにはソニーなども参加しており、米国で対応機器の販売が始まったが、さっそく厳しい評価が出ている。
 例えば、米ウォールストリート・ジャーナルの記事見出しは「まだグーグルTVにチャンネルを合わせる必要はない」、米ニューヨーク・タイムズの記事は「グーグルTVには使いやすさは含まれない」。
 いずれも「リモコンやキーボードが使いづらい」「検索結果から目的のものを探すのが大変」、また「操作性に統一感がなく、これはハイテクマニアのもの、一般の人が便利な製品には仕上がっていない」と手厳しい。
 ニューヨーク・タイムズは「グーグルは複雑化という間違った道に進んでいるようだ」と伝えている。
アップルと異なるアプローチだが・・・
 グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド(Android)」とウェブブラウザー「グーグルクローム(Google Chrome)」を統合したソフトウエア基盤をハードウエアに組み込み、ウェブ上のビデオコンテンツと一般のテレビ番組を1台のテレビで楽しめるようにするというこの試みは、米アップルや米ロク(Roku)などが販売する専用通信端末(STB)とは異なるアプローチだ。
ソニーの「グーグルテレビ」対応液晶テレビ〔AFPBB News〕
 現在のところ米国人の選択肢には、600~1400ドルで販売されているソニーの対応テレビを購入するか、スイスのロジテックが発売している300ドルのSTB、あるいはソニーが販売している400ドルのブルーレイディスクプレーヤーを買ってテレビにつなぐという方法がある。
 これに対し、アップルのSTBは99ドル、ロクのSTBは60ドルと安い。
 グーグルTVは、映像コンテンツの有料ネット配信だけにとどまらず、ウェブ上のビデオコンテンツも一括して検索し、それをテレビで表示するというところが売りなのだが、その価値を消費者がどう見るかがカギになると言われていた。
「残念ながら最初の製品は的外れ」
 グーグルがソフトウエアを開発しているだけあって目玉機能は「検索」なのだが、批判の矛先はそのユーザーインターフェース(UI)にあるようだ。
 例えばニューヨーク・タイムズは「あまりにも煩雑で、なかなか目的のものを見つけられない」としている。
 検索を行うと、ある時はテレビ番組、ウェブビデオ、アプリのすべてを対象に検索結果が表示される。またある時はウェブブラウザーのアドレスバーが表示され、ある時はアプリの中だけで検索が行われる。これでは一般的なユーザーは混乱するとしている。
 ウォールストリート・ジャーナルも、「通常のテレビ番組のコンテンツを探そうとしたら、グーグル傘下の動画配信サービス『ユーチューブ(YouTube)』の動画が表示され、目的の番組は結局ウェブブラウザーの検索で探すことになった。
 しかしテレビ画面から3メートル離れたところで操作しているユーザーにとっては文字が小さすぎて読めない」としている。
 このほかグーグルTVには、ウェブブラウザーを使うことなく各サービスに直接アクセスできるアプリという仕組みが用意されているが、テレビ画面に最適化したウェブページを表示する「スポットライト」というメニューもあり、その違いが分からないという。
 さらに「ブックマーク」に似た機能がもう1つあったり、リモコンに「OK」ボタンが2つあったりと、ユーザーを混乱させると批判している。
 ウォールストリート・ジャーナルは「ネットビデオをシンプルな形でテレビに表示しようとする3社の取り組みは勇敢だ」としながらも、「残念ながらその最初の製品は的外れなものになった」と結論付けている。
 グーグルTVは今後ユーザーにとって使いやすい製品へと進化していくのだろうか。現時点では乗り越えなければならない課題が山積していると言えそうだ。



米ソニー、iPhone/Android向け電子書籍アプリ「Reader」を12月公開へ
 米Sonyは、電子書籍リーダーアプリをiPhoneおよびAndroid向けとして12月にリリースすることを発表した。同社のオンライン書店サービス「Reader Store」を、電子書籍端末「Reader」やPC以外からも利用できるようになる。
 Reader Storeで販売される電子書籍は、電子書籍端末ReaderやPC向け専用ソフトで購入、閲覧する必要があったが、iPhone/ Android用アプリの投入によって利用者が増加中のスマートフォンユーザー層へ訴求できるようになる。なお、米国など一部地域で提供されていたReaderは、日本や中国など各国に展開することが発表されている。今年12月に公開予定のiPhone/ Androidアプリが米国以外でも提供されるかは不明。



韓国軍兵士1人が死亡、民間人も死傷…北砲撃
 【ソウル・仲川高志】韓国国防省などによると、北朝鮮軍は23日午後2時34分ごろ(日本時間同)、黄海上の南北軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)を越え、韓国北西部・延坪島(ヨンピョンド)に向けて50発余りの砲撃を行った。
 砲弾の一部は同島に着弾した。
 これに対し、韓国軍も北朝鮮側に向けて約80発を対抗射撃し、砲撃戦となった。韓国軍合同参謀本部によると、韓国軍兵士1人が死亡、KBSテレビは民間人を含め数十人の死傷者が出たと報じた。同島の住民には避難命令が出され、同テレビは同島で火災によるとみられる黒煙が上がる模様を伝えた。延坪島周辺では2002年6月、南北の艦艇が交戦するなど、これまでも衝突があったが、北朝鮮軍による韓国陸上部への攻撃は異例。



1兆円以上の財源を生む「周波数オークション」を業者への配慮で見送った「周波数官僚」
 国家予算の48%にあたる44兆3030億円が国債などの公債金によって賄われるという深刻な財政危機に伴い、消費税の引き上げまで取り沙汰される中で、「1兆円を超す」と見込まれる有望な財源の歳入化が見送られようとしている。
 その財源は、競争入札によって、携帯電話用の周波数を割り当てる「周波数オークション」だ。
 周波数オークションをきちんと財源として確立することが絶望視される背景に、「周波数官僚」による一部携帯電話会社に対するなんとも不思議な配慮と、周波数を利権とみなす発想が存在することは見逃せない。
 周波数オークションとは、文字通り、政府が、放送局や通信事業者に対して、周波数を割り当てる際に、オークション(競争入札)によって決定する方法である。
 これまで日本では、放送局や通信事業者が提出した事業計画書などをもとにして、事業の採算や将来性、安定性などを勘案して、周波数を割り当てる事業者を決める「ビューティ・コンテスト方式」が行われてきた。
 オークション方式は、ビューティ・コンテスト方式と異なり、経済情勢に応じて投機的な高値落札を招き、当該企業の経営やサービスが不安定になる懸念がある半面、周波数の割り当て手続きが透明化するほか、国庫への納付金が増えるメリットがあるとされてきた。
 興味深いのが、大阪大学の鬼木甫名誉教授が作成したレポート「海外における電波オークション落札価格と日本における落札価格の推定」に盛り込まれた内容だ。
 同教授はまず、オークションの普及状況を調査し、すでに米国、英国、イタリア、カナダ、韓国、ドイツ、フランスなど経済協力開発機構(OECD)加盟30ヵ国のうち24ヵ国がオークションを採用しているのに対して、未採用国はスペイン、フィンランド、日本などわずか6ヵ国にとどまると指摘する。
 そのうえで、日本でオークションを実施した場合の推定落札価格を試算している。それによると、大手携帯電話会社の事業者収入をベースに、第3、第4携帯電話向けに帯域幅60MHzの周波数を入札にかけると仮定した場合、推定で、その落札価格は最大約1.3兆円なると見込まれるという。
 だが、当の総務省は、周波数オークションの導入に慎重だ。
 同省の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」の「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ」が9月17日にまとめた「次期電波利用料の見直しに関する基本方針」は、オークションについて「電波の公平かつ能率的な利用、免許手続きの透明性確保等の観点から、市場原理を活用するオークション導入は十分検討に値するもの」ともちあげている。
 しかし、留意すべき点として「オークションの導入は免許人に新たな負担を課すことであり、十分な説明が必要」「先行事業者との間で競争政策上の問題が生じないよう対象を選定すべきだ」「オークションの導入について本格的な議論を行い、その必要性・合理性をオークション導入の目的・効果に照らして検証し、国民に示していくべき」などと課題を列挙して、時間をかける方針を掲げている、
 さらに、「周波数再編の費用負担(言わば、電波の立ち退き料)についても、できるだけ市場原理の活用ができないか検討を行うべきと、疑似的なオークションを実験的に先行させる構えも明らかにしている。その入札においては、落札額の上限を設け、一定の金額を超える部分は徴収せず切り捨てる案も有力という。
*** 「次の業者」や「次の次」まで決めている不可解 ***
 これに対して、専門家からは「立ち退き料限定とは言っても、この入札に勝てば、周波数を獲得できるのであれば、応札価格は高騰し、上限にいくつもの応札が張りつく可能性が出てくる」という。
 ところが、そうした場合、総務省は周波数割り当てをビューティ・コンテストでやり直すというのである。結局のところ、総務省は時間稼ぎをしているだけで、本格的にオークションをやる気などないようにみえる。
 こうした総務省の姿勢の裏にあるのは、すでにNTTドコモとau(KDDI)がビューティ・コンテスト方式で、次世代携帯電話(LTE、第3.9世代携帯電話)用の周波数を獲得しているのに、次(ソフトバンク)やその次(イー・モバイル)には、ビューティ・コンテストをやめて、多額の応札資金が必要になる可能性の高いオークションに切り替えるとは言いにくいという議論が根強い。
 しかし、本来、新たな携帯電話事業者の参入に尽力すべき立場の総務省の周波数官僚が、次はソフトバンクとか、次の次はイー・モバイルなどとこの時点から決めていることは、なんとも不可解な話と言わざるを得ない。
 加えて、前述の鬼木教授の試算で明らかになったように、周波数官僚は、周波数オークションが巨額の財源になる余地があるにもかかわらず、この財政危機の最中に導入することを歓迎していないという。
 国家全体で見れば、なんともちぐはぐな話と言わざるを得ないのが実情だ。
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5年後スマホはなくなる 「iモード」の仕掛け人 夏野 剛氏

5年後スマホはなくなる 「iモード」の仕掛け人 夏野 剛氏
■スマートフォンよりも高機能な“ガラケー”
 「まず言っておきたいのは、巷で言われているようなスマートフォンVSガラケーという対立構造になっているわけではなく、現時点でスマートフォンは“ガラケー”よりもまだまだ機能面で劣っているということ。実際に台数ベースで見てもいまだに“ガラケー”のほうが売れていますよね」
 そう切り出した夏野氏はケータイ・インターネットの代名詞となった「iモード」の仕掛け人として知られる人物。その開発で当時世界の標準技術であったJava、Flash、HTMLといったオープンな新規格を携帯電話に採用。インターネットとモバイルの融合をいち早く実現し、世界の注目を集めた。それだけにこのAndroid OSにも大きな期待を寄せている。「そもそも数年前までスマートフォンといえば、海外では日本のフィーチャーフォンのことを指していました。今でも世界中が日本のモバイル市場に注目しているし、GoogleのAndroid開発チームも熱心に研究しています。それほど日本の“ガラケー”は優れている。だったら“ガラケー”にAndroid OSを積んでしまえばいいんです」
 既に、おサイフケータイやワンセグといった、フィーチャーフォンのケータイの先進的な機能やサービスは、簡単にAndroid端末に搭載できることが証明されている。「5年後にはモバイル端末はすべて融合され、スマートフォンという言葉もなくなっていますよ」
 と、夏野氏は予測する。「これから主導権を握るのは間違いなく、Androidでしょう。Androidというモバイル用OSは、ご存じのように無償でしかも自由に開発でき、オープンな形で提供されています。開発者も世界中で育っていますし、Androidマーケットのようなアプリを販売する仕組みも用意されているので、世界一になるのは時間の問題。日本のメーカーやキャリアは独自規格に固執せず、Android端末の開発に本腰を入れて取り組んでいかないと取り残されていくでしょう」
■この先、スマートフォンに求められる4つの機能
 変革が必要なのはユーザー側も同じ。今のところ、Androidに注目しているのは一部のユーザーだけで、店頭価格が安いという理由だけで、Android端末を購入しているユーザーも少なくない。「ニーズが変化していくのは、これからです。スマートフォンは、過去にケータイでヒットしなかったタッチ操作のGUIと大画面液晶を定着させました。Androidも今後、テレビや電子書籍端末などにも搭載されて対応機器のバリエーションが増えていけば、急速に認知される可能性があります。
 この先、スマートフォンに求められる進化のポイントは4つあります。1つめがドコモの『iコンシェル』をもっと進化させたようなAI(人工知能)。2つめがバーチャルキーボードやディスプレイ。3つめが指紋や虹彩などの生態認証技術。そして4つめが買ったら壊れるまで充電不要のバッテリー、これらが実現されたら最強ですね。
 SFや映画の中にあるようなアイデアであってもいずれ技術が追いつきます。日本の企業は新しい技術や発想をうまく取り入れていいものを作る力がありますから、Androidが主流となった市場で本領を発揮してくれると期待しています」



米アップル、携帯用ソフトを改良 iPadも対応
 【シリコンバレー=岡田信行】米アップルは22日、携帯電話用の基本ソフト(OS)を改良し、最新版「iOS4.2」の無料配布を始めた。高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」だけでなく、新たに多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」にも対応。iPadにマルチタスク機能やメール管理の一元化など100以上の新機能を加え、年末商戦で販売攻勢をかける。
 iOS4.2は、iPadやiPhoneなどを最新のコンテンツ(情報の内容)管理ソフト「iTunes(アイチューンズ)10.1」と同期し、OSを載せ替えて使う。複数のソフトを同時に動かすマルチタスク機能や、複数のメールアカウントを一元管理・表示する機能など、これまでiPhone4に採用されてきた機能をiPadにも追加した。
 iPadから音楽や動画、写真を接続機器「アップルTV」に無線送信して大画面テレビにそのまま表示する機能や、ワイヤレス対応プリンター経由で文書印刷する機能も加えた。
 アップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は声明で「iOS4.2でiPadは新しい製品に生まれ変わった」としたうえで、「年末商戦にちょうど間に合った」と強調。競合他社が相次いで多機能携帯端末を売り出すなか、iPadの機能強化で攻勢をかける。



日産、ロシア最大手に出資 ルノーと実質経営権
共同生産、12年から30万台
 日産自動車はロシア政府系の自動車最大手アフトワズに10%前後出資する方針を固めた。日本の自動車メーカーがロシアの同業大手に出資するのは初めて。アフトワズにすでに25%強出資する仏ルノーと合わせ、3分の1超を出資する筆頭株主として実質的に経営権を握る。日産・ルノー連合とアフトワズは2012年から小型車を共同生産する計画。資本面での関係を深め、成長するロシア市場で攻勢をかける。
 メドベージェフ大統領の北方領土訪問以降、日ロの経済協力は足元では冷え込む懸念が出ている。ただロシアの自動車市場は金融危機後の需要減から回復、15年には過去最大の350万台を更新するとの予測もある。日産・ルノーは長期的な視点で現地に生産の足場を築き、アフトワズを含めた3社で同国での販売シェア4割を目指す。
 アフトワズはシェア3割弱を握るが、金融危機後に業績が悪化。08年にルノーから10億ドルの出資を受け入れた。現在の出資比率は25%プラス1株で、このほかにロシアの国策会社ロステクノロジー、投資銀行トロイカ・ディアローグがほぼ同率を出資している。日産はこれら大株主2社から計10%前後を買い取る。
 現地の株式市場に上場するアフトワズの時価総額は約17億ドル。10%の出資は単純計算で約140億円になる。日産は今後、買い取り額について詰めの交渉に入る。
 アフトワズの経営再建を巡っては、ロシアのプーチン首相が日産のカルロス・ゴーン社長(ルノー会長を兼務)に追加出資を要請していた。将来は日産・ルノーが出資比率を5割に高める可能性もある。
 アフトワズと日産・ルノーは12年からロシアで小型乗用車を共同生産する計画。車台(プラットホーム)を3社で共通化し、ロシア中部にあるアフトワズの工場で年30万台生産し、それぞれのブランドで販売する。
 日産は09年6月にロシア西部サンクトペテルブルクで新工場を稼働させ、中型セダン「ティアナ」や多目的スポーツ車(SUV)「エクストレイル」を生産している。自社工場では比較的大型の車を生産、小型車ではアフトワズの工場を活用することで生産効率を高める考えだ。今後は3社で開発や部品調達などでも広範に協力を探る。



米テレビ局、番組値上げ巡りCATVと対立
 米複合メディア各社は有力コンテンツを持つ強みを生かして収益拡大を急ぐが、思わぬ摩擦も生んでいる。一部テレビ局がCATVなど配信事業者テレビ番組の供給価格の引き上げを求め、応じなければ番組供給を中止するなどの動きを加速、収益拡大のために人気番組を“人質”にとるメディア側の姿勢を懸念する声も上がっている。
 ニューヨーク市の一部と近郊の約300万世帯で10月、大リーグのワールドシリーズ開幕戦が視聴できなくなる事態が起きた。試合を中継した「FOX」など複数のチャンネルを傘下に抱えるニューズ・コーポレーションが要求した値上げを、同地域でCATV事業を営む大手のケーブルビジョン・システムズが拒否。ニューズ側が番組供給を打ち切った。
 テレビ画面が真っ暗になる「ブラックアウト」は約2週間後、両社の合意が成立した後に解除された。ウォルト・ディズニーなど他の大手メディアも今年に入り、安定した収益を上げるCATVなどに強気の値上げを要求。このため一部の下院議員が米連邦通信委員会(FCC)に規制を求める動きも出ている。



個人マネーの奔流 投資過熱、世界揺らす
 アジアに巨大な経済圏が生まれた。台頭する中間層のマネーが消費や投資を引き上げ、高成長を見込んだ世界の企業もアジアを目指す。アジアは米欧依存から抜け出し自らの手で成長を作り出す道を探り始めた。力を増すアジアとのかかわりが日本の将来も左右する。
「株民」1億人
 タイで「キムチ」が人気だ。キムチは韓国債券に投資するファンドの愛称。「銀行預金の代わりに購入した。キムチは利回りが高く魅力的だね」(バンコク在住の30代男性)。タイの韓国への債券投資は2008年に本格化し、瞬く間に国・地域別の首位になった。債券の保有高は10月末時点で15兆ウォン(約1兆1千億円)強に上る。
 タイと韓国は1997年、資金の流出からともにアジア通貨危機に陥った間柄だ。09年にかけて韓国は再び資金の流出危機に直面したが、豊かになったタイの中間層から資金が流れ込み、危機が和らいだ。銀行大手のクレディ・スイスによると、アジア(日本を除く)の個人資産は10年間で3倍の約41兆ドル(約3400兆円)に増加した。
 なかでも伸長著しいのが中国だ。「股民(株民)」と呼ばれる個人投資家が約1億人もおり、成長企業の株を買い続ける。7月、中国農業銀行が新規株式公開(IPO)したが、調達額(上海と香港の合計)は221億ドルと世界の記録を塗り替えた。「資本増強で3年は融資を拡大できる」(農業銀)といい、農村の産業振興に資金を振り向ける。世界の株式時価総額でトップを争う中国石油天然気(ペトロチャイナ)も上海に上場し、油田開発を急ぐ。中国(香港を含む)の上場株式の時価総額は約500兆円強で日本を上回る。
 かつてマネー不足に苦しんだアジアは成長資金を米欧に頼り、米欧の資金が域外に流出すると経済が凍りついた。中間層の成長で成長資金を自前で調達し、域内で融通し合えるようにもなった。
 だが皮肉にも今度はアジアはマネーの「過剰」に悩み始めた。積み上がったアジアの個人マネーに加え、米国の超低金利政策の副作用で先進国マネーもアジアに流入。制御の難しくなったマネーが世界を揺るがし始めた。
 11月12日、上海株は金利引き上げのうわさから前日比5.2%安と急落、欧米の株式相場も連れ安した。翌週に上海株が反発すると、日米欧も再び上昇。「売買高の半分を占める1億人の株民の動向に欧米市場が振り回され、日本がその後をついていく」(証券会社)
 あふれかえるアジアの個人マネーは思いがけない所にも現れる。「水資源の獲得が狙いなのか……」。北海道倶知安(くっちゃん)町など日本各地で相次ぐ中国人の山林投資。「荒れ地まで買いあさった日本のバブル時のようだ」(上海の日系不動産関係者)。インドでも送金規制をすり抜けた不法な海外投資が後を絶たない。累計の不正送金額が4620億ドルに膨らんだとの推計もある。
暴走どう防ぐ
 「株は購入すべきでない」。バングラデシュのダッカ証券取引所のシャキル・リズビ理事長は株式市場のまとめ役らしからぬ警告を発した。株価は年初から8割強上昇。個人投資家は270万人と1年で倍増した。バブルの発生を恐れるアジア各国はマネーの呼び込みから締め出しに方向転換。韓国は外国人による債券投資の非課税措置を廃止する。インドネシアも外国人が投資対象とする3カ月物の中央銀行債券の発行を停止した。
 アジアの金融市場は発展途上であり、マネーの行く先は株式や不動産に限られている。投資対象の少なさが株式や不動産の過熱を招く。みずほ総研の鈴木貴元・上席主任研究員は「アジアは余剰資金の受け皿として長期債など債券市場の整備が必要」と話す。個人マネーの暴走を防ぎ、次の成長につなげる仕組みづくりが急務になっている。
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