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ドコモ版「iPhone」は本当に可能性があるのか? (COLUMN)
 昨年7月にソフトバンクから発売されたアップルの「iPhone 3G」。今年6月には後継モデルとなる「iPhone 3GS」も発売され、好調な売れ行きを示しているという。国内外の携帯電話市場に大きなインパクトを与えたiPhoneだが、ここに来て、国内市場において、NTTドコモが扱うのではないかといった声を耳にすることが増えてきた。ドコモ版「iPhone」は本当に登場する可能性はあるのだろうか。
■ 「iPhoneを諦めたわけではない」
 新販売方式の導入による市場の変化、世界的な景気後退の影響による出荷数の落ち込みなど、ここ数年、日本のケータイ市場は大きな変革の時期を迎えている。そんな中、携帯電話の新しいニーズとして注目され、ユーザーの関心を集めているのがスマートフォンであり、その中心的な位置に存在するのがアップルのiPhoneだ。
 今夏は7月30日に行なわれたNTTドコモの2010年3月期第1四半期決算説明会の席において、同社の山田持社長が「NDA契約があり、話すことができないが、iPhone導入を諦めたわけではない」と述べたこともあり、今まで以上にユーザーの期待する声が高まってきているようだ。ドコモ側の人物がこうした発言をすることは今回が初めてではないが、果たして、本当にドコモ版iPhoneは登場するのだろうか? 業界内で飛び交う情報や推測を整理しながら、その可能性について、探ってみよう。
■ 市場から見たドコモへの展開の可能性
 まず、今さら説明するまでもないが、iPhoneは米アップルが開発・製造し、全世界の携帯電話事業者や販売網を通じて、販売されており、国内ではソフトバンクのみが販売している。当初のGSM版iPhoneの時代は、一つの国と地域につき、一つの携帯電話事業者のみが販売していたが、iPhone 3Gの発売を機に、一つの国と地域で複数の携帯電話事業者がiPhoneを扱えるように方針を変更している。つまり、現在、ソフトバンクがiPhoneを扱っているからと言って、他事業者がまったく扱わない、扱えないという話ではない。他の携帯電話事業者もチャンスがあれば、ぜひ扱いたいと考えているはずだ。
 しかし、各携帯電話事業者にとって、iPhoneは扱いたい商品なのだろうか。国と地域によって、携帯電話の市場性はまったく異なるため、ここでは日本市場のことだけに注目して考えてみよう。
 まず、販売実績に注目したいところだが、残念ながら、アップルもソフトバンクも国内での販売台数については、正式にアナウンスをしていない。ただ、業界関係者や販売筋などからの情報を総合すると、ソフトバンクはiPhone 3Gを2008年7月の発売からiPhone 3GSが発売された2009年6月までに、おそらく100万台以上、販売したと推測される。もう少し細かく書くと、2008年末までで約50万台弱、2009年春までで約80万台強、そして、キャンペーンの効果もあり、iPhone 3GS発売前には、累計の販売台数が100万台を突破していたと見られる。
 つまり、iPhoneは約1年弱という期間で、100万台を販売したわけだが、日本の市場の規模や環境を考慮すると、いい結果とも言えるし、今ひとつ物足りないという見方もできる。新販売方式が始まる以前の市場では、ドコモのFOMA 90Xiシリーズがヒットすれば、1機種で100万台以上の販売を記録することは珍しくなかった。なかには1年で200万台近くまで、販売数を伸ばした機種もあるという。
 これを単純に比較してしまうと、やや物足りないという見方になるのだが、iPhoneがここ数年、ブレイクすると言われながら、なかなか本格的な普及には至っていないスマートフォンの一つであると考えると、かなり驚異的な売れ行きだったという解釈もできる。スマートフォンというジャンルの定義がちょっと微妙だが、国内で言えば、ウィルコムのW-ZERO3シリーズが歴代モデルで重ねてきた台数を確実に超えるヒットだったと言えるだろう。さらに、新販売方式の導入などにより、市場全体の出荷数が落ち込んでいることを考慮すれば、なおさら約1年間で100万台という結果は優秀だったと言えそうだ。
 これだけのインパクトを持つ商品であれば、おそらく、どの携帯電話事業者でも扱いたいはずだ。もちろん、それは国内No.1シェアを持つドコモで同じことだ。昨年、iPhone 3Gが登場したとき、「iPhoneを扱わないのか」という質問に対し、ドコモは「タッチ操作のケータイなら、我々には『PRADA Phone by LG』がある」と強がってみせたが、商品力という点で見れば、やはり、iPhoneをドコモのラインアップに加えたいはずだ。特に、山田社長は以前から「ドコモとしては、何としてもスマートフォンの市場を育てたい」と述べており、スマートフォンの中でも人気の高いiPhoneはぜひとも扱いたいと考えているだろう。
 「でも、ドコモにはAndroidもあるし、Windows Mobileもあるじゃないか」という声も聞こえてきそうだ。しかし、古くからドコモの立ち回り方を見ていると、基本的に「できるだけ、全方位で取り組みたい」という方針を採ることが多い。これはドコモに限らず、NTTグループらしい考え方なのかもしれないが、どの方式、どのプラットフォームが生き残ってもいいように、きちんとラインアップを取り揃えておきたいと考えているようだ。その意味からもiPhoneは本来、『ドコモとして、扱うべき商品。扱っておきたい商品』と考えているのかもしれない。
■ アップルとソフトバンクの関わり
 一方、開発元のアップルから見た場合はどうだろうか。現在、アップルは国内において、ソフトバンクに端末を供給している。従来は端末の販売がソフトバンクショップや量販店のみに限られていたが、今年に入って、アップルストアでも扱われるようになり、手厚いサポートで着実に支持を伸ばしている。当然、アップルとしてもより一層、iPhoneを拡販したいところだろう。
 この1年間、ソフトバンクは着実に売り上げを伸ばしてきたことは間違いないが、アップルとして、今以上に販売数を増やしていくことを考えれば、当然、他の携帯電話事業者への供給も視野に入ってくる。敢えて、ドライな言い方をすれば、2000万強の契約者数を持つソフトバンクに、約5000万強の契約者数を抱えるドコモが加われば、単純計算で2.5倍の市場が加わることになり、さらに販売数を伸ばせる可能性が拡がる。ソフトバンクとの関係は重要だが、やはり、ドコモの持つ契約者数やネットワークはアップルとしても魅力的なはずだ。
 ちなみに、アップルとソフトバンクの関係については、孫社長がiPhone 3GSの発売イベント直後の囲み取材で、「携帯電話市場への参入を決めた4~5年前、米アップルに出向き、スティーブ・ジョブスに『iPodと携帯電話を融合したものを作って欲しい』と話したところ、『そうか。おまえもそう来たか。実はオレもそう考えている』と答えられ、そのときからiPhoneの話を進めていた」というエピソードを明らかにしている。
 当時、ソフトバンクは1.7GHz帯での新規参入の計画を進めていた段階だと推察されるが、アップルがiPhoneを計画していることを早くから知り、ソフトバンクが積極的に関わろうとしてきたことがうかがえる。元々、アップルとソフトバンクはソフトウェア流通の時代から結び付きがあったが、iPhoneについてはそれ以上の深い結び付きを持っているのかもしれない。一部にはiPhoneの開発そのものに、ソフトバンクの開発者が関わっているのではないかと見る向きもあるくらいだ。ただ、プラットフォームの開発に人材が派遣されるという形は、Windowsの開発にPCメーカーやパーツメーカーの人材が関わっていることから考えると、それほど不自然でもないのだが……。
 とは言うものの、アップルとしてはシェア拡大を目指すなら、ドコモとの取引を考えても不思議ではないが、やはり、ソフトバンクとの関係を考えると、そう簡単には踏み切れないというのが本音だろう。
 ソフトバンクから見ると、どうだろうか。国内では現時点で、ソフトバンクが事実上、独占的にiPhoneを扱っているわけだが、他社にも供給されるとなれば、黙ってはいられないだろう。
■ ドコモ版iPhone実現を妨げる要因
 ここまで、ドコモ版iPhoneは十分に実現する可能性があることを述べてきたが、逆に実現の障害になる要因もかなりあるようだ。ネックになりそうなのがiPhoneで展開されているアプリケーションサービス「App Store」の存在だ。現在、iPhoneではApple IDを使い、アプリケーションや楽曲をiTunes Storeから購入している。これらの内、楽曲については収録曲数も圧倒的に多く、代わりのサービスを提供することが難しいため、そのまま使える可能性が高いが、アプリケーションについては少し違ったアプローチも取られるかもしれない。
 これはドコモがスマートフォン市場をどう捉えているのかも関係していそうだが、ドコモとしては、より多くのユーザーに安心してスマートフォンを使ってもらうため、自前のアプリケーションストアを用意することを検討している。ある程度、慣れたユーザーなら、どのプラットフォームであれ、通信経由でダウンロードしたり、パソコンでダウンロードしたりして、端末にアプリケーションをインストールすることができる。しかし、パソコンでのアプリケーションのインストールにも慣れておらず、ケータイも基本的にはプリインストールのiアプリか、一部の公式メニュー内にあるiアプリ程度しかダウンロードしたことがないユーザーにとって、スマートフォンのアプリケーションのインストールはやや敷居が高い印象がある。そこで、自前のアプリケーションストアを用意し、わかりやすい形でアプリケーションを提供しようという考えだ。
 こうした考えが生まれてきた背景には、もう一つ決済の問題が絡んでいるようだ。現在、iPhoneではApp Storeを利用すると、有料のアプリケーションの支払いはApple IDによって、決済される。クレジットカードを登録していれば、クレジットカードから引き落とされ、iTunes Cardが登録されていれば、チャージされた金額から引き落とされるしくみだ。これは決済手段として、非常に便利なのだが、ドコモとしては自社でクレジットカードサービス「DCMX」をはじめ、支払いサービスの「ドコモ ケータイ払い」など、決済サービスを提供しているのだから、当然、そちらを利用したいはず。
 もちろん、そこには決済による手数料収入も関係してくるだろう。App Storeは売り上げの30%をアップルが手数料として、受け取っているが、仮にドコモが独自のアプリケーションストアを提供した場合、この手数料をどのように扱うのかが問題になってきそうだ。ちなみに、現在のApp Storeは国別にメニューが提供されており、日本と海外では別のApp Storeのメニューが表示されるが、これを発展させ、事業者別にメニューが表示されるようになれば、「ドコモ版App Store」を実現できるかもしれない。
■ ドコモ版iPhoneは実現するのか?
 ここでは噂されているドコモ版iPhoneの可能性について、いくつかの角度から検証してみた。読者のみなさんはここまで読んでみて、どうお考えだろうか。
 ここで取り上げた内容は、すでに明らかになっている情報に加え、筆者が独自に得た情報や筆者自身による推測も交えているため、必ずしも正しい結果を導き出しているわけではないが、総合的に見て、ドコモ版iPhoneが実現する可能性は五分五分といった印象だ。「NDA契約があるため、話すことができない」とコメントしていることから、おそらく交渉は進めているのだろうが、ここで取り上げた『FOMAプラスエリア対応』『独自のアプリケーションストア』などの問題をクリアしなければ、実現は難しそうだ。最後に、敢えて勝手な推測をもうひとつ付け加えるなら、実現できるかどうかの目安は来年の春頃ではないかと予測している。さて、ドコモのロゴが入ったiPhoneを目にする日は来るのだろうか。
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