((((;゜Д゜)))新聞

なぜ本は売れないのか(COLUMN)
 「先月ここに返本されてきたのは、約340万冊です」
 フォークリフトがせわしく走り回る巨大施設の一角に、返本された書籍がうずたかく積み上げられている。昭和図書美女木物流センター(埼玉県戸田市)の山田貴芳所長(51)によると、新しく刊行された本が書店から戻ってくる返本率は40%に達しているという。
 小学館や集英社など一ツ橋グループの出版社の書籍と文庫は、同センターから出版取次会社を通じて各書店に届けられる。売れ残った本は逆のルートで少しずつ出戻りする。店頭に並べられた様子もなく、Uターンしてくる本も少なくない。保管するのが商売とはいえ、「なんとも寂しい気分になる」と山田所長。
 カバーを変えるなど改装して再出荷される本もあるが、保管しておいても将来的に売れないと出版社が判断すれば、返本の山は廃棄され、書籍としての役目を終える。年間約2千万冊を古紙原料としてリサイクル業者に買い取ってもらっているが、1キロ当たり十数円が現在の相場だという。
 廃棄処分を示す赤いテープを巻かれた本の束を追って、同県三芳町のリサイクル会社「富澤」を訪ねた。カバーや表紙、袋とじなどは手作業で取り去り、裁断機で本の背をザクザクと切り落とす。圧縮機から出てくる巨大な立方体には、もはや本という印象はない。製紙会社向けに出荷されていく。「書籍はリサイクルの優等生。ほぼ100%再生できるんですよ」と同社の冨澤進一専務はにこやかに語ってくれた。
新刊増え過ぎ
 出版ニュース社が発行する「出版年鑑2009」によると、書籍の総発行部数は平成9年の15億7354万冊がピークだった。当時の新刊点数は約6万2千点。以後、発行部数は退潮傾向で昨年は14億703万冊にとどまった。一方、新刊点数は増加し続けてきた。この2年ほどは微減となっているものの、約8万点に達している。
 編集者出身で、出版界の動向に詳しい評論家の野上暁さんは「新刊点数が増え過ぎた。既刊本が店頭に滞留する期間が圧倒的に短くなっている。出版社も書店も本来はスローなメディアだったはずの本の価値を忘れてしまって、ベストセラー至上主義に走っている」と指摘する。
 新刊点数が増えて、総発行部数は頭打ち、つまり1点当たりの発行部数は減る一方。返本率の高止まりは、悪循環の象徴といっていい。
 ある出版関係者は「出版各社による『平積み』の取り合いです。いい本悪い本ではなくて、スペースを確保するために点数を増やすような状況になっている」と明かす。もはや、本が店頭でホコリをかぶるヒマもない。
 「着いたその日に返本というケースもあるようで、せっかく出版されたのに、誰にも知られずに消えていく本がいかに多いことか」
 そう嘆くのは、東京・神保町で出版社を経営する朔北社の宮本功社長だ。現行の流通システムそのものの問題を指摘する。
 「取次会社は、書店を売り上げや売り場面積などによってランク付けして新刊の配本数を機械的に決めているだけ。これだと発行部数の少ない本は小さな書店には届かない。書店が配本に頼らず、自分たちの判断で欲しい本を仕入れて売るやり方に変えていったほうがいい」
 ≪新しいシステム≫
 書店の棚は、各出版社が次々に刊行する新刊で飽和状態になっている。そのサイクルは早くなる一方で、じつに4割もの書籍が、誰の手にも渡らずに返本されている。明らかな異常事態が常態化してしまっている出版界だが、返本率を引き下げるための試みも動き始めている。
 「責任販売制」という新しいシステムがそのひとつだ。書店は取次会社を経て出版社から本を仕入れているが、従来の「委託販売制」では、出版社と取次会社が“配本”の主導権を握る代わりに、売れなかった本は仕入れ値と同額で返本できた。
 新システムでは、書店に仕入れの裁量権が委ねられる。返本となった場合、出版社は定価の3~4割でしか引き取らない。その代わりに、書店の受け取るマージンは委託の約1・5倍にあたる35%に上がる。
 現在、一部の商品に限られるものの小学館、講談社など10社がこのシステムを導入している。小学館は7月に刊行した児童向け書籍「くらべる図鑑」の初版7万部のうち5万6000部を責任販売とした。すぐに完売し、1週間後に増刷となった4万部も大半を責任販売にあてた。
 どちらのシステムを選択するかは書店の判断によるが、小学館マーケティング局の市川洋一ゼネラルマネジャーは「書店は売る努力をするし、出版社も企画力を磨くはず。出版界の意識革命につながってほしい」と話す。同社では11月末に発売する「世界大地図」も、初版3万部のうち2万5000部を責任販売にする予定だ。
 ≪大型化か淘汰か≫
 出版不況のなか、書店の数は年々減ってきた。しかし、意外にも書店のフロア面積は増えている。出版社「アルメディア」の調査によると、平成19年5月に約1万7098店あった書店は今年5月の時点で1万5765店に減少した。だが売り場面積は137万坪から142万坪へ広がった。大型化と淘汰(とうた)が同時に進んでいる状況だ。小さな書店は徐々に消費者のニーズに応えるのが難しくなり、書店がスーパーマーケット化しているといえる。
 そんななかで、ネット書店も急成長している。アマゾン・ジャパン書籍統括事業本部の渡部高士企画・編集本部長は「2000年11月のサービス開始以来、書籍の売り上げ推移は右肩上がりの2ケタ成長を続けている」と話す。
 「1000万種類を超える品揃(ぞろ)え」を豪語するアマゾンは、千葉県の市川市と八千代市にある物流センターに加えて、8月には大阪府堺市にも新物流センターを開設した。
 渡部本部長によると、ネット書店の長所は(1)店舗面積に制約がないため在庫に厚みがある(2)検索機能で読みたい本を即座に見つけ出せる(3)予約ができて発売と同時に入手できる(4)24時間営業-など。同書店のホームページには月間約1400万人が訪れるという。
 パソコン画面という“無限大の売り場”を持つネット書店も、本の洪水の前で立ちつくす消費者への、回答のひとつであることは間違いない。
  ランキングの罠
 詩人でエッセイストの木坂涼さんは言う。
 「書店にいってもこれはという本が手に入ることはめったにない。私の場合は、はやっているものを読みたいという読書ではないので最近は本を求めるのはもっぱら古本屋さん。そこでいい本がみつかると、それが私にとっての新刊です」
 自身の価値観がはっきりしているからこその言葉だろう。
 本が売れない。その理由にはさまざまな見方がある。趣味の多様化、ネットの普及、新古書店の成長、書棚を置けない住宅事情…。少ないパイを奪い合うように加速する“新刊洪水”現象のなかで、読み手の選択眼の低下を懸念する声もある。
 三省堂書店神保町本店次長の岸本憲幸さんは「全体の売り上げが落ちてもベストセラーが生まれるのは、テレビなど他のメディアの影響がとても大きい。昔は、自分の見識で読みたい本を選ぶ人が多かったと思うのですが、いまは何を読んだらいいかわからない人が増えてきている」と話す。
 出版ニュース社の清田義昭代表も「いまはベストセラーのランキングをみて本を買う人が多い。消費者が惑わされてしまっている部分がある」と指摘する。ランキングは数量を示しているだけで、内容を保証するものではないのだが、「売れている」という言葉には「買っても安心」といったニュアンスがつきまとう。
 そして「ふだん本をほとんど読まない人が、どれだけ買いに走るか」がベストセラーを決める。個人的体験であるはずの読書に、ベストセラーであるかどうかは無関係なのだが…。
  「本を見る目」養う
 「一面の棚だけ見れば本屋さん。みなさん入ってから驚かれます」
 東京・羽田空港内に今年2月にオープンした土産物店「Tokyo’s Tokyo(トーキョーズ・トーキョー)」。店員の三浦聖未(さとみ)さんによると、土産物や旅行グッズとともに売られている本は100点をゆうに超える。
 ユニークなのは品ぞろえだ。こういう場所にありがちな旅行ガイド本は見あたらない。ベストセラーのランキングとも無縁。旅先の雰囲気や商品のイメージから連想される小説やエッセー、写真集が、雑貨や旅用品のそばにさりげなく置かれている。
 同店の本選びを担当したのはブックディレクターで「BACH」代表の幅允孝(はば・よしたか)さんだ。「今は新刊点数が増えすぎて、読者はどれを手に取ればいいかわからない状態。紹介の仕方を工夫して本の見え方を変えることで、埋もれてしまいがちなものにも光を当てたい」と話す。
 読み手がそれぞれに「本を見る目」を養い、冒頭の木坂さんのように言い切れる人が増えたとき、新しい出版流通システムのかたちもまた見えてくるはずだ。



川端文科相、マンガ・ゲーム通だった! 昨年、麻生太郎氏と夕刊フジで対談
 川端達夫文部科学相は昨年8月、マンガ通として知られる麻生太郎前首相と本紙発行の「夕刊フジ」で、「日本のマンガ、アニメ、ゲーム大いに語る」と題して対談していた。川端氏は週刊誌のゴルフマンガを愛読していることを告白し、「最近のマンガは質が高い」「かかわっている人たちの生活が気になる」などと思い入れを吐露。ゲームの「信長の野望」ファンであることも明らかにされている。麻生氏と渡り合う「サブカル通」文科相の登場で、今後のサブカル行政に光が…見える?
 対談で川端氏は、麻生氏から「マンガ読むの?」と振られ、「読みますよ。麻生先生ほどマニアックじゃないけど。私が大学生だった1960年ごろは、権力をやっつける反体制マンガがはやった。白土三平の『サスケ』とかね」と応じた。
 また、「毎週月曜日に欠かさず『週刊現代』を見ている。『担ぎ屋どおも』を読むためにね」と連載中のゴルフマンガを持ち出し、「プロでも知らないようなことが山盛り描いているので、非常に参考になる。だけど単なるハウツー・マンガでもない」と絶賛している。
 アニメなどのコンテンツ産業については、「アニメ番組のビジネスは本当にひどい。スポンサーは5000万円出しているのに、最後の元請けプロダクションは800万円で制作している。これでは産業は絶対に育たない」と、現状を厳しく批判。「安い労働力でコストは下がるが、品質はどんどん悪くなる。劣化を起こすことが最初から分かっているビジネス。この構造を変えなければいけない」とたたみかけ、麻生氏が「それはひどいな」「たしかに、その部分を真剣に考えないと」と、気押される展開となっている。
 対談の後半では、ゲーム通の本領を発揮し、「ニンテンドーDSは『脳トレ』などのソフトを出してオジサンをゲームに引き込み、世代間コミュニケーションに役立っている」と持論を展開。続けて行った脳年齢の測定では、50代の麻生氏に対し30代と差を見せつけ、「自己ベストは27歳ですけど」とわざわざアピールした。
 「信長の野望」に絡んでは、「武将といえば、やっぱり豊臣秀吉だよね」。「天下取り」に話題が及ぶと、「おれみたいな性格は、平時より有事、非常時向き」と話す麻生氏に対し、「それなら野党になって頑張っていただきますか」と切り返し、麻生氏から「うまいこと言うね」と評されている。
 この対談の後、麻生氏は未曾有(みぞう)の経済危機という「非常時」に首相となり、今は川端氏の“予言”通り、野党に転落。川端氏は文科相就任後、国立メディア芸術総合センター(通称「アニメの殿堂」)の事業中止も示唆しているが、果たしてその文化行政の手腕やいかに…。
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