……(゜Д゜;)新聞

不況下で高成長、「次世代」にも布石 韓国ゲーム産業の今(COLUMN1)
 ゲーム産業は不況に強い――。よく言われる言葉だが、日本のことではない。10月7~9日に、韓国ソウルで開催された「韓国ゲームカンファレンス」のために現地を訪れた。そこで話を聞いたゲーム業界関係者が、異口同音に発した言葉だ。1年前は停滞感が漂っていた韓国ゲーム産業だが、リーマンショック後の不況やウォン安を逆手にとるかたちで勢いを取り戻していた。
 筆者の今回の取材の印象をまとめると以下のようになる。
・世界経済危機が韓国ゲーム産業に与えた影響は小さく、むしろウォン安が輸出の好調をもたらしている。
・中国市場の存在感が増し、どの企業も意識しているが、実際に進出するのは以前より困難になっている。
・大規模オンラインRPGの分野を中心に、予算規模で勝負する大作ゲームの開発競争が広がってきた。
・近く韓国でも発売になるアップル「iPhone」へのゲーム開発者や政府機関の関心は極めて高く、すでに参入の用意をしている企業も少なくない。
■09年の国内市場は40%増見込む
 韓国のゲームは、基本料金が無料で、ゲーム内で使うキャラクターの服装やアイテムの販売で収益を得る「アイテム課金」モデルが大半になっている。アイテム課金はユーザーがゲーム自体を遊ぶための初期コストが小さくて済む。また、仮にアイテムを購入したとしても、1カ月にせいぜい数百円から1000円程度で十分遊べるため、不況下では手ごろなレジャーとして強みを発揮できる。
 韓国文化観光部が9月に発表した「2009大韓民国ゲーム白書」によると、パソコン向けオンラインゲームの韓国国内の市場規模は、07年の2兆2403億ウォン(約1568億円)から、08年は2兆6922億ウォン(約1965億円)へと約20%拡大した。09年は3兆4999億ウォン(約2555億円)とかなり高めの伸びを予想しているが、取材した企業は「おおむね前年度並みの好調が続いている」と述べていた。
■主要な輸出産業の1つに
 それ以上に好調なのが輸出だ。07年の7810億ウォン(約570億円)が08年には1兆93億ウォン(約800億円)へと40%も急拡大した。背景には、リーマンショック以後の急激なウォン安がある。ゲーム産業は韓国の主要な輸出産業の1つになろうとしている。
 輸出先を見ると、日本が伸び悩む一方、台湾や東南アジアなどが好調で、世界全体にまんべんなく輸出する体制が整いつつある。
 パソコン向けオンラインゲームが家庭用ゲーム機向けソフトと比較して有利なのは、コンテンツそのものを現地企業にライセンス供与したり、自社で進出したりと、収益化する方法の選択肢が多い点だ。各国・地域によって、普及しているパソコンの性能やインターネット環境に違いがあるが、これを逆に活用して1つのゲームを時間差を付けて様々な国・地域に販売して、長期間に渡って収益化できる利点もある。パッケージゲームでは、こうした選択肢はない。
 韓国経済そのものは失業率が高止まりするなど決して堅調とはいえないだけに、ゲーム業界の好調ぶりは一段と際立っている。韓国の新興企業向け市場「KOSDAQ」でも、相場自体が軟調ななかでオンラインゲーム会社の株価は上昇傾向にある。
■「グローバルゲームハブセンター」の狙い
 その韓国で、政府による新たなゲーム産業の支援事業がスタートした。今年6月にソウル郊外の新興地域である城南市(ソンナムシ)のITビルに開設した「グローバルゲームハブセンター」だ。
 このセンターは、昨年5月のイ・ミョンバク大統領とマイクロソフトのビル・ゲイツ氏との会談を契機に、マイクロソフトの資金的な支援を受けながら提携して設立作業を進めたという経緯を持つ。次世代のゲーム開発と世界市場に進出できるゲーム会社の育成を目標とし、年間予算は約70億ウォン(約5億円)。運営は文化観光部のコンテンツ関連の支援事業を行う韓国コンテンツ振興院(KOCCA)が担当している。
 ゲームのコンテンツ自体に直接投資するわけではないが、現在は選定された約17社のゲーム会社がほぼ無料に近い賃料でビルに入居している。進出した企業の顔ぶれを見ると、既存のゲーム会社から独立した起業組、すでに開発プロジェクトを持つ企業、携帯電話向けや家庭用ゲーム機向けのゲーム会社など様々だ。ただ、社長は30代が中心で、業界が誕生して約10年という若さをそのまま反映している印象を受けた。
 その1社であるToppingは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の要素を持つオンラインゲームを開発している。家族で一緒に遊べるというコンセプトでカジュアル性の高さが売りという。社員数は50人余りで、センターのスタートと同時に全社で移転した。
 Toppingのリー・ドンキュCEOは移転の理由として、コストの安さに代表されるセンターの利便性を挙げる。ゲーム会社の風景は、世界中どこでもそれほど違わないが、ここでは開発者一人あたりのスペースが日本のゲーム会社よりも広く、開発はしやすそうに感じられた。
■「次世代」のターゲットは手探り
 この事業では、次世代のゲーム開発を目標の1つに掲げている。ここでいう「次世代」とは何を指すのか。同センターのエグゼクティブディレクターであるセオ・ビョンダエ氏は、「オンラインゲームだけが目標では必ずしもない」と言う。
 具体的には、SNS向けゲーム、IPTV向けゲーム、ミドルウエア、iPhoneなどのスマートフォン向けゲームなど、今後登場するとみられる新市場をターゲットにしている。また、アップルの「AppStore」のような新しいビジネスモデルを構築できる企業の育成も視野に入れているという。
 韓国のオンラインゲーム業界は、アイテム課金のビジネスモデルを作り上げたことで大きく成長した。セオ氏は、冗談交じりに「世界中で特許を取っておけばよかった」と述べていたが、このアイテム課金はそもそもユーザーがネット上でアイテムを取引する「リアル・マネー・トレード(RMT)」という行為から派生する形で生まれたモデルだ。
 韓国では、RMTが03年ころに社会問題化しはじめ、特に07年に多くのインターネット賭博が出現したことで社会的な批判がピークに達した。現在はRMT市場の規模が相対的に縮小する一方でアイテム課金が主流になったが、同じように従来にないビジネスモデルが創出されることを期待している。
 ただ、それ以上の具体的なイメージは今のところまだないようだ。KOCCAは世界の市場動向や政府の支援事業のあり方などについて調査を進めているが、セオ氏も「このセンターの成功とは何かを、今の段階で決めることは難しい」と率直に述べていた。
 とはいえ、韓国にはオンラインゲームで培った海外事業のノウハウや販売力がある。KOCCAの別の部署にはそうした販売を専門に請け負うチームがあるといい、セオ氏も「その点は有利だろう」と指摘している。
 韓国は既存のオンラインゲーム産業の好調を背景に、さらに新しい分野に手を広げようとしている。そのリスクの一部は政府系組織が負担する。こうしたゲーム会社を育成する戦略的な政策は、日本ではゼロに等しく、その差には愕然とせざるを得ない部分がある。
 来週は、韓国のゲーム会社が現在、どのような戦略で事業展開しているかを報告する。



シャープの大型液晶工場が稼働、巨大な供給をどう埋めるのか(COLUMN2)
 創業以来最大のプロジェクト――。10月1日、シャープの液晶パネル堺工場がついに始動した。その規模は従来の亀山工場の約4倍、127万平方メートルに及ぶ広大な敷地に同工場のほか、液晶部品企業の工場が集積する。進出企業も含めた総投資額は約1兆円に上る。
 主に製造するのは40~60型台の大型液晶テレビ用パネル。これを中国、東欧などのシャープの組立工場、さらに社外のテレビメーカー向けにも販売する。当面は月間3万6000枚分の生産能力だが、1年後をメドに能力を2倍に増強、最終的に7万2000枚にまで引き上げる。
外販先2社確保だが…
 堺工場では世界初の「第10世代」と呼ばれる畳5枚分の超大型ガラス基板を生産する。液晶事業に詳しい中田行彦・立命館アジア太平洋大学教授は「ガラス基板サイズは最重要の競争要因」と話す。大型化で、同じ1枚のガラス基板から多くの液晶パネルが取り出せ、生産性が高まる。そのため液晶各社の大型化競争は激化の一途。だがI山幹雄社長は「競合企業がこのサイズに追従しても、当分はコスト優位性を保てる」と強調する。
 予定する増強分も含め、シャープの堺工場への投資額は4200億円に上り、投資回収リスクは小さくない。フル稼働時には40型テレビ換算で年間約1500万台分もの供給能力となるが、シャープが世界で販売した40インチ以上のテレビは100万台程度(2008年度)と推測される。11月に「LEDアクオス」を発売するなど大型製品を強化するが、「自社のテレビ向けのみでは充足できず、安定的な供給先確保が焦点」(電機アナリスト)となっている。
 シャープが目標に掲げる外販比率は5割以上、つまり40インチ換算ベースで年約800万台。供給先としてすでに東芝とソニーが決まっている。
 07年末、東芝はシャープと液晶事業で提携。10年度をメドにシャープからの液晶パネル購入比率を現状の12%から4割程度にまで引き上げる計画だ。だが同社の液晶テレビ年間販売数は600万~700万台程度で、仮に4割に引き上げてもシャープにとってはまだ十分とはいえない。
 ソニーは液晶テレビで世界シェア2位、1520万台(08年度)を販売する。堺工場の運営会社にも出資しており、大口供給先として期待は大きい。だがソニーが堺工場から購入するパネル量は、合弁への出資比率に応じて購入する契約。当初の出資比率はわずか7%で、11年4月までに段階的に34%への引き上げを表明しているが、追加出資が行われるかは不透明だ。圧倒的な供給能力を使いこなせるのか、業界では疑問視する声もある。
海外販売へ異例の試み
 そうした中、新たなパネル供給先としてささやかれているのが、オランダの電機大手フィリップスだ。同社は欧州で強いブランド力を持ち、08年は830万台の液晶テレビを販売した。
 さらに複数の業界関係者によれば、シャープは海外でフィリップスの液晶テレビのブランドライセンス生産を検討しているという。これはフィリップスのブランド名をそのままに、生産、販売を丸ごと請け負う生産方式だ。すでに船井電機が同契約の下、北米地域でフィリップスブランドの液晶テレビを生産・販売している。シャープが同様の契約を結べば、他社にパネル販売するだけでなく、相手先のテレビ製造にまで踏み込むことになる。これは他に例を見ない新たな試みとなる。
 シャープは国内では液晶テレビ市場で4割強と断トツのシェアを誇るが、世界市場では9%にとどまる。だがフィリップスのブランド名を冠せば、課題視されてきた海外市場の販路も広がる。
 「堺工場の稼働に向け、びっくりするぐらい世界中から注文をとっている」。片山社長は以前こう胸を張っていた。その言葉どおり、最新鋭工場をフル稼働に持っていけるのか。巨額投資回収に向けた動きに注目が集まる。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。