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3D普及のカギ握る「360度ソリューション」(COLUMN)
 米ラスベガスで7~10日、家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)2010」が開催された。私は開幕2日前の5日午前、全米家電協会(CEA)会長のゲリー・シャピロ氏のオフィスを訪ね、今年のCESでの注目点は何かと尋ねた。
 「3D(3次元)テレビの登場が最大の注目ポイントです」とシャピロ氏は言った。「すでに米国では映画館で3D作品が大ヒットしています。家庭に必ず入ると思います。ただ問題点が1つある。それがメガネです。10年前に登場したHD(ハイビジョン)テレビは大画面、高画質で、だれでも見ただけですぐ、その素晴らしさを実感できました。3Dはメガネを掛けないと、効果がわかりません。でも掛けて見れば素晴らしい。米国人は映画、スポーツが大好きですから、3D市場は大きく立ち上がると見ています。ゲームも有望です」
■コンテンツ・流通・デバイス
 7日、CESが始まり、展示会場ではパナソニック、ソニー、韓国サムスン電子、LG電子などが大々的に3Dを展示した。昨年のCESでも展示はあったが、今回は昨年を遙かに圧倒する規模だった。3D表示のハードが溢れていたということだけでなく、その背後で、新しい動き――日本のハードメーカーがこれまで無縁だったビジネスモデル――が進行していることに、私は気付いた。
 それが「360度ソリューション」だ。この言葉は、08年のCES開幕前に主催者のCEAがジャーナリストを対象に開いた恒例のメディアブリーフィング「State of the Industry」で初めて提案された概念だ。コンテンツ、サービス・ディストリビューション(流通)、デバイスの3つがちょうどトライアングルのように互いに密接な関係を持つことで、新規分野を立ち上げるという意味である。
 3Dはまさに360度ソリューションでないと立ち上がらない典型分野だ。だから、戦略はそれを指向する。その代表例がソニーだ。ソニーがCESで発表した事項は多いが、360度ソリューションの観点で仕分けしてみると、次のようになる。
(1)コンテンツでは、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(第一弾は「くもりときどきミートボール」)、ソニー・ミュージックエンタテインメント(第一弾は「ウッドストック」)が3D作品をリリースする。
(2)サービス・ディストリビューションでは、米ディカバリー・コミュニケーションズ、カナダIMAXと共同で3D映像を放送するテレビネットワークを立ち上げる。スポーツ局のESPNと共同で3D番組をプロデュースする。
(3)デバイスでは3D対応の液晶テレビ「ブラビア」、ブルーレイ・ディスク(BD)プレーヤーを今夏から順次発売する。
 ソニーの3D戦略全般を統括する3D&BDプロジェクトマネジメント部門部門長の島津彰氏はこう語る。
 「3Dエンターテインメントを立ち上げるには、様々なコンテンツを家庭や映画館に届ける仕組みをつくらなければなりません。コンテンツ、サービス・ディストリビューション、デバイスをどう緊密に連携して開拓するか、それらがどうハーモニーするかが極めて重要です。だから私はいつも頭の中に、映画、ゲーム、スポーツ・コンサートというコンテンツ分野を縦軸に、コンテンツ、サービス・ディストリビューション、デバイスを横軸に書いた図を描き、仕事を進めています」
 この3つの要素を整理すると次のようになる。
 (1)のコンテンツは、3D映画、3Dゲーム、3Dコンサートや3Dスポーツ中継など。(2)のサービス・ディストリビューションは3Dシネマ、3D放送、3D・BDソフトなど。(3)のデバイスはディスプレーとしての3D映画館や家庭用3Dテレビである。
 実際には、これらが入り組んで、複雑だが効果的な「360度ソリューション」となる。日本メーカーが「コンテンツ→ディストリビューション→ディスプレー」というトータルな流れを、ここまでプロデュースした例は初めてだろう。
■「鶏と卵」の関係をどう解いていくか
 360度ソリューションがなぜ強いのかといえば、3つがマトリックスのように縦横で複合的な効果を発揮するからだ。
 映画スタジオの立場からこの流れを見ると、「3D映画→3Dデジタルシネマ→3D映画館」という映画館ビジネスが基本となる。さらに、そこで制作された3D映画は「3D映画→3D・BDソフト→3Dテレビ」というパッケージメディアのチャンネルで家庭に流れる。
 「3D・BDソフト→3Dテレビ」の道には3Dゲームも流れる。また、3Dコンサートや3Dスポーツ中継は「3Dデジタルシネマ→3D映画館」というかたちでも公開されるが、家庭にはパッケージによる「3D・BDソフト→3Dテレビ」と、放送による「3D放送→3Dテレビ」の2つの流れで届く。
 ただし、これらは非常に緊密な「鶏と卵」である。家庭での3Dの普及を牽引・加速させるには、コンテンツ整備、ディストリビューション整備が絶対に必要である。まず上流で、3D中継の撮影ノウハウを確立しなければ、消費者が満足する作品をつくれない。ソニーはそのために、疲れない3D映像をどうやってつくるかを研究、実践する3D映像開発拠点「ソニー3Dテクノロジーセンター」をソニー・ピクチャーズ内に設立した。
 3Dの発想はもともとBDソフトの市場をいかに伸ばすかという目的から生まれたわけだが、当初はタイトルが非常に少ない。「だから放送は普及にとって極めて重要です。放送で3Dが楽しめる環境をできるだけ早くつくる。そのために放送局との提携を積極的に進めています」とソニーの島津氏は語る。
 放送局に制作機器を使ってもらい、制作ノウハウを与え、コンテンツを豊富に作ってもらい、放送網を通じて家庭まで流してもらうことで、3Dをテレビで楽しむ世界を早急につくる作戦である。放送が豊富にないと消費者は3Dテレビを買ってくれないから、放送会社とのアライアンス、3Dのプロモーションも大切だ。その放送を成り立たせるためには下流の3Dテレビを普及させなければならない。これらは確かに「鶏と卵」だが、360度ソリューションを徹底した時、3Dは爆発的に普及する。
 米20世紀フォックスによると、3D映画「アバター」の出口調査で、7割の人がDVDではなく3D・BDソフトを買いたい、借りたいと答えたという。ハイビジョンに比べて3Dは「消費者がそれが何であるかを知っているため、普及速度はかなり速い」と、米ソニー・エレクトロニクスでAV機器ビジネスを統括する河野弘・ホームディビジョン・シニアバイスプレジデントは語る。
 冒頭のゲリー・シャピロ氏は「CEAの調査では13年に販売されるテレビの26%が3Dになる見ています」と言った。360度ソリューションによる3Dだからこそ、期待を持てるのである。



【ウォールストリートジャーナル社説】ギリシャとユーロの関係は正念場
 歴史を紐解くと2600年前、硬貨を世界で最初に作ったのはギリシャのリディア王国だ。それ以来現在に至るまで、紙幣の発行を担う者は貨幣価値の切り下げへの誘惑に抗いきれずにきた。いま、そのギリシャは貨幣の使途についての教訓をはからずも世界に示すことになった。
 ギリシャ国債保証コストは過去最高に達したが、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は14日、ギリシャのユーロ圏脱退の可能性を否定した。ギリシャのほかにポルトガルやアイルランドなどでも財政危機が相次ぐなかで、16カ国から成るユーロ圏の崩壊や参加国再編の可能性が取りざたされている。ギリシャの財政破綻懸念から、ギリシャ国債の対ドイツ国債スプレッドは2.77%ポイントに拡大した。加盟国間の国債スプレッドがこれほど拡大したことは11年のユーロの歴史で前例がない。ドイツではメルケル首相が「ユーロの前途は多難」であると憂慮している。
 ギリシャが窮地に陥っていることは疑う余地がない。公表されている財政赤字の国内総生産(GDP)比は12.7%と高いが、欧州連合(EU)は実際の数値はもっと高いとみている。ギリシャの経済政策はECBの管理下にあり、昨年米国や英国が行ったような事実上の「財政マネタイズ」(中央銀行が財政赤字を国債引き受けなどでファイナンスする)を実施できる立場にはない。
 だがギリシャは本当に独立して国の運営ができるのだろうか。1980年代を通してギリシャのインフレ率は年20%前後で、金利もそれに見合って高かった。それに比べるとギリシャ国債利回りの6%はそれほど高いとはいえないかもしれない。ユーロに加盟していなかったら、自発的であろうとなかろうと、ギリシャが通貨切り下げを行っていたことはほぼ確実だろう。
 切り下げをしていれば、ギリシャ政府の財政負担は軽減されたかもしれない。だがその過程で国全体が貧困化し、金利はユーロ導入以前の水準に迫る急騰が見込まれる。つまりユーロはギリシャの財政難の元凶ではなく、ギリシャの政権がそれを招いたのだ。
 昨日、ギリシャのパパンドレウ首相は財政赤字のGDP比を2012年までに3%以下にすると約束した。だがこれはそう簡単に実現できるものではない。首相率いる社会主義政権はまず、今後切り捨てるとした公務員労組を説得せねばならないだろう。
 だがギリシャに残された他の選択肢はさらに悪い。それは結局、ドラクマかユーロかを選ぶことだ。ユーロがギリシャ政府の足かせになっているという見方は間違いではない。だがギリシャ政府がユーロ導入前にいかに無謀な経済政策を行っていたかを忘れてはならない。ドラクマの歴史はインフレと切り下げにまみれていたが、ユーロが導入された現在のギリシャはそうした歴史からは解放されている。
 そもそもユーロはヨーロッパの経済問題の一切を解決するものでは決してなかった。ユーロはいくつかの例外を除き、恒常的な財政赤字を抱える国に為替の安定と通貨価値の維持を可能にするという実績を残している。
 これまで自国の経済統計を改ざんしてきたギリシャには、統一通貨に参加することに伴う義務を要求してしかるべきだ。ギリシャの公的債務はGDP比100%を優に超え、今後も増え続けるとみられる。これはユーロ加盟国の基準である60%をはるかに上回る数字だ。これは2001年にギリシャがユーロ圏に参加した時から分かっていたが、正常化に向かっているとの前提で容赦されていた。だがそれも間違っていたということだ。
 2008年の金融危機でほぼすべてのヨーロッパの国々は財政赤字のGDP比が急増した。だがギリシャは金融危機発生時の状況が他国よりすでに悪かった。しかも経済統計が改ざんされていたため、実態はもっと悪かったといえる。
 20世紀の各国政府は、放漫財政のツケもあり、不換紙幣への依存度を高めた。ユーロの矛盾は、理論上、大半の国の不換紙幣より脆弱な基盤の上に成り立っていることだ。だが実際は、リラやペセタ、ドラクマより利便性が高い。
 現在のギリシャにとって、これまで繰り返されてきた貨幣価値の低下を避け、ユーロ圏に残るという選択も可能だ。だがクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)や金利スプレッドの状況は、ギリシャ政府に合理的な財政運営能力があることの証明を求めている。
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