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世界的ボードゲーム「カタン」に挑むAI技術(COLUMN)
 「カタンの開拓者たち(カタン)」は、1995年にドイツ年間ゲーム大賞を受賞し、今も高い人気を誇るボードゲームだ。世界20カ国語以上に翻訳され、累計売り上げは1500万パッケージ以上に上る。最近はビデオゲームへの移植も増えているが、コンピューター対戦用のゲームAI(人工知能)はまだ発展途上だ。
 ドイツの公式オンライン対戦サーバーでカタンを遊んでいるとき、「君の名前は日本風だけど、どこから接続しているんだい?」とチャットで聞かれたので、「日本」と返信した。すると、「私はオランダ人でね。中学の教師をしていて、もうすぐ定年退職なんだ」と答えがあり話が盛り上がった。
 驚いたのは、50~60代の人が普通にカタンを遊んでいるという事実だ。聞くと、たまに暇つぶしにアクセスするのだという。ドイツ版モノポリーともいうべきこのゲームは、世代を超えて親しまれている。
資源交換の交渉が勝負のポイント
 ドイツはボードゲーム大国として知られている。90年代後半から次々と新しいゲームが発売され、現在に至るまでこの分野で世界を引っ張っている。
 ドイツはビデオゲームの暴力表現への規制が比較的厳しく、他の欧米諸国ほどビデオゲームが広がっていない。また、ドイツや北欧圏ではボードゲームが学校での教育手段として根付いており、それも独特なボードゲーム文化圏を作り出している理由になっている。
 そのドイツを代表するゲームがカタンである。3~4人で対戦するこのゲームは、ある島に上陸した開拓者が町を作り、道を造り、成長させてポイントを稼ぐことを競う。サイコロの運の要素とともに、木材、粘土、羊毛、麦、鉄という5種類の資源を的確に運用できるかどうかが勝敗を左右する。特に、他のプレーヤーとの交渉を通じて自分に有利に資源を交換する駆け引きが重要で、敵ともうまくつきあわなければならない。
 ゲームバランスが絶妙で、一見負けているようでも最後の最後に逆転があり得る。だから、はまればはまるほど奥深さが見えてくる。
増えてきたビデオゲーム版
 ただ残念ながら、日本で遊ぼうと思っても対戦相手が少ない。1回のプレー時間は75分あまりとそれなりにかかる。3~4人のメンバーが集まり、ルールを覚えて面白さがわかるまで半日はかかる。そもそも日本のボードゲーム人口は少なく、数千パッケージ売れれば大成功という小さな市場だ。カタンほどの傑作でも、やってみないと面白さがわからないので、多くの人は手を出しにくい。
 それでも日本への紹介は比較的早かった。02年にはカプコンがボードゲームの日本語版を出したほか、03年にかけて「プレイステーション2」版やネットワーク対戦用のパソコン版もリリースされている。このときは盛り上がりに欠けたが、その後ドイツのボードゲームは、ビデオゲームに展開できる手つかずのコンテンツとして注目されるようになった。マイクロソフト「Xbox360」の「Live アーケード」用に移植されるようになったのを始め、各社が獲得合戦を繰り広げた。
 筆者もカタンの魅力を理解できるようになったのは、07年にLive アーケード向けがリリースされてからだ。08年には「プレイステーション3」版(ゲームリパブリック)のダウンロード販売が始まり、昨年はアップル「iPhone」版(独United Soft Media、日本語非対応)もリリースされた。
 ビデオゲーム版がいいのは、コンピューター相手なので気兼ねなくプレーできる点だ。コンピューターのおかげで、1回の対戦時間は30分以下と短くなる。ネット対戦では他のプレーヤーがイライラと待っていないかと常に気になるが、コンピューター相手だとそうした心配もない。
専門に取り組むAIの研究者も
 一方で、カタンのAIの設計は難しく、ビデオゲーム版の開発ではそこがハードルになっている。
 最も難しいのは、状況を抽象化して判断し、評価させる点だ。このゲームは、プレーヤーが家を建てたりする際に必要な資源が必ず不足する。それを他のユーザーと交渉して獲得しなければならない。人と人とのかかわりで決まる部分をコンピューターに判断させるのだから、一筋縄ではいかない。
 そのため、海外には強いカタンAIの設計に取り組むコンピューターサイエンスの研究者もいるほどだ。
 例えば、オランダ・マーストリヒト大学のイシュトバー・スジータ氏は、研究プロジェクトの1つにカタンAIを挙げている。人間と同じ条件でAIがプレーする場合、既存のチェスに使われている手法は十分に機能せず、新しいAIテクニックが必要という。これは近年登場したボードゲームの多くに当てはまるようで、昨年発表された論文「カタンでのモンテカルロ木探索」では、囲碁のAIのような乱数を利用したアルゴリズムをうまく使うと、強いカタンAIを作り出せると指摘している。
 とはいえ、AIの研究者が目指すような、AIが人間に常に勝てるレベルにはまだ至っていないようだ。
AIが一番強いゲームはどれ?
 現在、ビデオゲーム版カタンには様々なバージョンがあり、それぞれのゲームAIに個性があって面白い。
 主なタイトルのうち、一番難しいのがXbox360版だ。難易度が高い「難しい」を選ぶと、まるで歯が立たない。ゲームが後半になると、資源交換の交渉に応じないようにプログラムが作られており、運まかせの状況になってくる。一方、一番簡単なのはiPhone版で、これで勝利が確定するというタイミングでも交渉に応じてしまう。遊びながら、AIの頭の悪さにつっこみを入れたい気分になる。
 カタンAIはまだ、強い人間のプレーヤー3人と対決して勝つのも容易ではないと思われる。囲碁や将棋、チェスのようにAI同士を対戦させるような大会もない。他のプレーヤーとの交渉を伴うカタンのようなボードゲームにゲームAIが本格進出するのは、もうしばらく先のことだ。ただ、いずれゲームAIの発展史に大きな影響を与えることになるだろう。



記者の目◇ソニー株、ユーロ急落で漂う憂うつ
 頭が痛いな――。ソニーの最高財務責任者(CFO)の大根田伸行副社長はユーロの動きに神経をとがらせているに違いない。ユーロに対して1円の円高が進むと年間で約75億円の連結営業利益が吹き飛ぶソニー。7日のソニー株はユーロ安を嫌気して約4カ月ぶりに一時、3000円台を割り込んだ。2011年3月期は「反転攻勢」に転じる年に位置づけていただけに、株価もユーロに神経質な地合いが続きそうだ。
 「1ユーロ=115円を前提にすると業績見通しを変更せざるを得ない」(野村証券の片山栄一アナリスト)。片山氏は1ユーロ=120円を前提に11年3月期に2000億円の営業利益を予想。「1ユーロ=115円になるとソニーはお手上げだろう」。
 実際、ソニーにとってユーロ相場の影響は大きい。09年10~12月期の欧州での売上高(外部顧客を所在国別に分類)は5925億円と、米国と日本を上回る最大の地域だ。ユーロ建ての売り上げが大きい割に部品などコストのユーロ建てが少ないのが特徴。液晶パネルの仕入れがドル建てでできることもあって対ドルでは1円の円高による影響額は10億円と限定的だが、ユーロの場合、対応が進んでいないのが実情だ。
 ソニーの10年3月期実績レートは1ユーロ=約130円だった模様。仮に今期、同115円で推移すれば、単純計算で前期比1125億円もの減益要因となる計算だ。ソニーは3月下旬時点で1ユーロ=120円台半ばで想定していたとみられ、足元のユーロの動きが今期のソニーの回復シナリオに影響するのは必至だろう。
 今期は液晶テレビで1000万台増の販売計画を掲げるなど攻めに転じたソニー。今期の連結営業利益のアナリスト予想平均は2050億円と、前期の会社計画である300億円の赤字から大きく改善することが期待されている。しかし、13日に控えた決算発表で市場予想の範囲内の業績見通しを出せるか微妙な情勢だ。
 では、株価はユーロ相場の動向をどの程度まで織り込んでいるのか。東京市場で一時、1ユーロ=112円台までユーロが急落した7日、ソニーの株価は終値で前日比3.2%安の3060円。キヤノン(3.9%安)、シャープ(6.4%安)に比べ限定的な下げにとどまった。ソニーは今年に入り日本株買いの中心銘柄として上値を切り上げ、3月下旬には年初から35%高い3645円まで上昇。その後、利食い売りに押され、早めに調整局面に入っていた。ユーロ安をきっかけにさらに売りがかさみ、「これで年初から買い上げてきた投資家からの売りは峠を越えた」(外資系証券)の見方もある。
 「3000円を割ったら押し目買いが入ってもおかしくない」と話すのはバークレイズ・キャピタル証券の藤森裕司アナリスト。ユーロ安によるある程度の影響は避けられないが、デジタルカメラなど競争力のある商品は欧州で値上げが可能とみている。さらに米国での消費回復が想定以上になる可能性が出てくるなどプラス要因もここにきて浮上している。単純にユーロ安によるマイナス影響だけでは株価水準を語れないとし、目標株価(3400円)を今のところ変更していない。
 先行き不安を抱えるものの、構造改革が進んだソニーの業績回復基調は基本的に変わらない。しかし、ユーロ安が定着すると、ソニーに対する先行き期待も揺らぎかねない。ソニーに対する市場の見方を集約するとざっとこんな感じだ。
 最近まで株式市場ではソニーについて年初来高値の3645円が上値抵抗線と意識されていたが、今回のユーロ急落で目先は3000円の下値抵抗線がより意識される局面になった。投資家が業績の着実な改善を実感し、期待を持てる先行き見通しを示すことができるのか。13日の決算発表ではユーロリスクを上回るポジティブな要素を示されるかどうかが注目される。



財源なき夢物語 現実直視か放漫加速か
 約束は守るもの、果たすもの。無理なだけの約束は禍根を残す。民主党政権8カ月。マニフェスト(政権公約)に、設計と見通しの甘さがにじむ。夏の参院選への公約づくりは、現実を見つめ直す好機となる。
 ――我が家の借金総額はもうすぐ1千万円になる。今年の収入が46万円から37万円に減った一方で、借金は33万円から44万円に膨らんだ。みんなの人気をとろうとしたのか、父が「小遣いを4年間で17万円増やす」と宣言した。
 家族の不安をよそに「1割くらいすぐ節約できる」と皮算用。「来年も小遣いが増えるぞ」と無邪気な父をみて、誰ともなく「稼ぎより借金が多いなんて。先のこと、考えてるのか……」との声が出る。
甘い帳尻合わせ
 借金してまで小遣いを増やす家計などあり得ない。だが「万」を「兆」に変えれば日本の現実だ。
 「国民の生活が第一」。そんな看板を掲げた民主党。マニフェストは実施する政策と時期、財源を明示して政権選択をしやすくする手法。民主党が取り入れたやり方は新鮮だった。
 しかしつまずいた。一因は実現困難な設計にある。公約は4年間で「16.8兆円」の新規政策を約束している。2011年度は子ども手当倍増や農家への所得補償など5.5兆円の政策を実行に移すという。野党時代に広げたままの大風呂敷が、財源不足という現実から遊離しているのだ。
 当時、政調会長だった直嶋正行経済産業相は「箱の中のリンゴをすべて外に出して新鮮なリンゴを入れる」と話した。従来の予算を削り新たな政策の財源に充てるという意味だ。ところが10年度予算で約束通り削ったのは公共事業だけ。
 事業仕分け第1弾で生み出した財源は1回限りの返納金を含めて2兆円弱。一方で与党議員らは族議員と化して予算獲得に走り、人件費や補助金は削るどころか膨らんだ。古いリンゴはそのまま、箱は前より大きくなった。「予算の組み替えで巨額の財源を生み出すというのは夢物語だった」。公約の担当者が言う。
 政権が描いた甘い帳尻合わせ。高齢化で社会保障費は放っておいても膨らむ。特別会計の埋蔵金は使えばなくなる。11年度予算では少なく見積もっても10兆円の新たな財源が要る。
 かつて年金財源へ消費税3%上げを掲げた民主党。06年、代表に就いた小沢一郎現幹事長は「財源なんてなんぼでもある」とし、07年参院選で増税論にフタをした。以来、年金制度にも財源の説明が付かない。
 格付け会社フィッチ・レーティングスはリポートで「日本国債の信用が中期的に低下するリスクがある」と警告した。市場は問う。日本に財源を増やす政策はあるのか。財政は持続可能なのか。奔放に支出を膨らませたギリシャは、戦略も青写真もない強制的な増税に追い込まれる。
小沢氏がクギ
 フランスのミッテラン元大統領は就任後、企業の国有化や社会保障の拡充などの政策に着手した。財政赤字とインフレを受け翌年には政策を転換。経済は安定し、14年間政権を担った。マニフェスト発祥国の英国にも、実態をみつめながら修正を重ねる伝統がある。
 公約と財源問題。一部の与党議員が議員会館の一室に集まったのは4月半ば。「恒久財源がないのに子ども手当の満額支給なんてムリだ」「埋蔵金だってあてにできない」。ほころびは明らかだ。「正直に国民に説明し、謝るしかない」。ただし一体、いつ、誰が。
 同じころ、小沢幹事長は参院選公約を担当する細野豪志副幹事長らにくぎを刺した。「マニフェストは変えちゃダメだからな」。一徹ぶりが信頼を呼ぶとは限らない。直すべきは直し、国の未来を描いてほしい。



深海原油流出 安全策伴った海底資源開発を(5月9日付・読売社説)
 米南部ルイジアナ州沖のメキシコ湾で原油流出事故が起きた。
 九州の1・5倍近くに当たる広大な海域に原油が漂う。今も流出は続き終息のめどは立っていない。
 現場は、英石油大手BP社が開発中の深海油田だ。
 このメキシコ湾をはじめ、水深1000メートル超の深海での油田開発は、アフリカ沖から北極海まで各海域で活気づいている。海の環境を守る安全策は十分だろうか。
 メキシコ湾では、魚介類が豊富に採れる。米国内で消費される海産物の4分の1が、ここから供給されていると言われる。
 鳥などの野生生物や豊かな湿地帯が、流出した原油で大きな被害を受けないか、心配だ。
 ルイジアナなど4州が非常事態を宣言し、オイルフェンスを設置して拡散を防ぐ対応を急いでいるが、追いつかない。
 BP社が原油を海上で燃やしたり、軍が飛行機で油の分解剤を散布したりしているが、それによる環境被害も懸念されている。
 事故は、現地時間で先月20日夜に発生した。深さ約1500メートルの海底を掘削していた海上施設が突然爆発した。施設は沈没し、作業員11人が行方不明になった。
 原因は判明していないが、掘削穴をしっかり閉じなかったためガスが漏れて引火したらしい。
 BP社は、流出個所のパイプに巨大な容器をかぶせて、原油を海上の船に吸い上げる作戦に乗り出した。一刻も早く、流出を食い止めることが求められる。
 こうした施設では、本来、重大な事故を回避できる安全策を備えておくことが必須だ。ガスが漏れても爆発しない仕組みや、流出を止める複数の弁などを設けておくべきではなかったか。
 米国では、BP社の安全策や連邦政府の安全規制が甘かった、との批判が噴出している。
 もともと、深海油田開発による事故と、その環境への影響を懸念する声は国際的に出ていた。油田開発はより沖合へ、より深海へと広がっている。国連などを中心に安全策の検討も必要だろう。
 日本も、今回の事故を「対岸の火事」と構えてはいられない。
 近海ではタンカーなどによる油流出事故が繰り返されている。大量の油が押し寄せ、漁業や観光に壊滅的被害が出たこともある。北海道に近いサハリン沖では、大規模な石油ガス田の開発も進む。
 大事故に備え、同じ海域にある中国、ロシア、韓国との情報交換や連携も強化しておきたい。
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