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デジタル移行後の米放送業界が注目する新ビジネス NAB会議報告 <COLUMN1>
 NAB(全米放送事業者協会)年次総会が4月20~23日に米ラスベガスで開催された。ここ数年、同会議はアナログテレビ放送の停波問題で大きな注目を集めてきた。停波は6月に先送りされたとはいえ、今年いよいよ米国の放送業界はデジタル放送時代を迎える。地上波放送が転換期に入ったことを反映し、今回のNABでは3D放送や携帯テレビ放送などの新ビジネスが話題を集めた。
■ブームになるか、3Dテレビ放送
 アナログ停波への関心が薄れる一方、今年のNABは「デジタル時代の新ビジネス」が大きなテーマとなった。特に注目を集めたのが3D放送と携帯向けテレビ放送だ。
 日本ではほとんど話題になっていないが、米国では3D放送が注目を集めている。その下地を作っているのが、大型アニメ映画の3D化だろう。4月に公開されたドリームワークスの「Monsters vs. Aliens」は本格3Dアニメとして大きな人気を集めた。アニメ映画がいよいよ3D時代に入ったのに続き、テレビでもスポーツ番組などを中心に3D放送の実験が始まっている。
 今年2月には、3D番組制作会社のcinedigmとNBA(プロバスケットボール協会)、大手CATVチャンネルTurner Sportsの3社が、プロバスケットの特別番組「All Star Saturday Night Phoenix 2009」のライブ3D中継放送(特定の劇場配信のみ)に成功している。そのほかNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)が実験番組を制作するなど、スポーツイベント関連で3D放送は注目されている。
 NABの3D関連セッションでは、欧州で3D放送の実現に取り組んでいるBSkyBのディレクター、ゲリー・オサリバン氏が同社の事例を詳しく解説した。BSkyBは2008年5月に英国で行われたボクシングのRicky Hatton対Juan Lazcano戦を初めて3D放送し、その後も11月のサッカー・リバプール対マルセイユ戦など、スポーツイベントを中心に3D放送を行っている。
 オサリバン氏は「既存の放送設備、既存のテレビを使って3D番組を提供することがBSkyB の3D放送の基本」と述べた。同社の3D番組は偏向メガネを使うが、そのメガネは、BSkyBユーザー向けのニュースレターに同封して配布しているという。オサリバン氏は「現在のHD(ハイビジョン)テレビなら、メガネを掛けるだけで十分に3D番組を楽しめる」と強調し、「家電メーカーが3Dテレビを開発しているが、もう規格競争はやめてほしい。3D放送のために特別なテレビは必要ない」と家電業界に苦言を呈する場面もあった。
 しかし、NABの展示会場では、ソニー、パナソニックなど大手メーカーが3D関連の技術や機器を展示していた。中心は3D番組制作システムだが、各社とも独自技術の売り込みに力を入れている。機器メーカーは、HDテレビに続く商品として3Dテレビに高い関心を持っているが、テレビ局や消費者が新たな投資を納得できるだけの特徴と機能を提供することが大きな課題となりそうだ。
■動き出す携帯電話向けテレビ放送
 携帯向けのテレビ放送は日本ではすでに「ワンセグ」としておなじみだが、米国では今年から始まる。過去数年、米国の携帯向け放送「Mobile DTV」は、規格方式を巡って各社が激しく競争してきた。たとえば、昨年のNAB会議では、韓国LG電子などが「MPH方式」を提唱する一方、サムスン電子は「A-VSB方式」を、仏トムソンは「ATSC-M/H方式」を提案し、デジタルテレビの技術方式をまとめている米ATSC(Advanced Television Systems Committee)内では、3方式のいずれに規格を統一するかで議論が分かれていた。
 しかし今年は、アナログ停波を前にATSC-M/H方式にまとまり、ようやく具体的な放送サービス開始へと向かっている。携帯向け放送の振興組織であるOMVC(Open Mobile Video Coalition)によれば、今年からニューヨークやシカゴ、フィラデルフィア、サンフランシスコなど22都市でMobile DTVが始まる。約60局が予定しており、年末には全米世帯の35%をカバーする。
 ATSCのグレン・レイトメアー会長は「日本や韓国のような無料の携帯放送を米国は狙っている。無料放送で広く視聴者を獲得することが、成功には欠かせない」と述べ、欧州などで試みられている有料放送とは異なる事業モデルであることを強調した。
 ただ、米国ではクアルコム子会社のメディア・フローが、ベライゾン・ワイヤレスやAT&Tモビリティーと提携して、有料携帯テレビ放送の準備を進めている。今回のアナログ停波延期で開始が遅れているが、メディア・フローはアナログ停波後に全米約40都市でサービスを開始する予定だ。米国では秋口から無料のMobile DTVと有料のメディア・フローが競争を展開することになるだろう。
◇ ◇ ◇
 日本に先駆けて、米国のテレビ業界は今年、デジタル放送へ移行する。本来なら、ニュービジネスに期待がふくらむところだが、現実は厳しい。不況が深刻化するなか、テレビ・ラジオ局は広告収入の減少に直面し「新規ビジネスどころではない」というのが本音だろう。今年のNAB会議では広告・マーケティング関係の会議も併設されていたが、そこでも「大手広告主がテレビ放送からインターネット放送に続々と移っている」といった報告が相次いでいた。
 CATVにIPTVそしてインターネット放送と、米国の地上波テレビ業界は厳しい競争相手に取り囲まれている。そうした環境のなか、NABを支えてきた地方テレビ・ラジオ局は、否応なしに新たな挑戦を求められている。



トヨタが転げて図らずも国内最高益
NTT陣営が恐れる“儲け過ぎ批判”(COLUMN2)
 日本に株式を上場している企業は数あるが、利益の多さで注目を浴びることをホンネでは望んでいない人たちがいる。通信業界の巨人NTTグループである。
5月13日、NTT(持ち株会社)が発表したNTTグループの2009年3月期連結決算は、売上高が前期比2.5%減の10兆4163億円、営業利益は14.9%減の1兆1097億円、純利益は15.2%減の5386億円の減収減益となった。
それだけなら世間の人は関心を持たないかもしれない。だが、昨年秋以降の世界的な景気後退の影響により、トヨタ自動車を筆頭とした国内の自動車産業が“総崩れ”になったことで、事情が一変した。図らずも6年ぶりに「NTT」(グループ全体)が、国内上場企業の営業利益で首位に返り咲き、「NTTドコモ」(携帯電話事業)が2位になる可能性が濃厚になってきたのである。
 NTTの司令塔である持ち株会社の三浦惺社長は、3カ月前の第3四半期決算に引き続き、今回も「相対的にこういう状況になった」と強調せざるをえなかった。ちっとも、嬉しそうではないのである。
NTTは、2010年中に議論が再開されることになっている「NTT再々編問題」を目前にした時期に、「国内最高益の一位と二位を独占」などと妙な目立ち方をしたくない。そして、グループの純利益で約70%以上を稼ぐドコモは、2010年以後の通信業界で鍵を握る“虎の子”なので、なるべく傷をつけたくない。
しかも、NTT(グループ全体)の営業利益(1兆1097億円)にはドコモの営業利益(8309億円)が含まれているにもかかわらず、「新聞記事などで両社を併記されると、本体とドコモを合わせて約1兆9000億万円以上儲かっている企業のように見えてしまう」(持ち株会社の幹部)という悩みもある。
なにしろ、沈滞ムードが蔓延する国民生活を刺激して、消費者から「ドコモは儲け過ぎだ」と批判の声が高まると、そのまま「料金を下げろ」という圧力につながりかねない。さらに、その声が激しくなれば、監督官庁の総務省が新たな大義名分を掲げて規制の強化に乗り出してくることが想定される。
 当のドコモは、NTT(持ち株会社)に先立ち、4月28日に2009年3月期の連結決算を発表した。売上高が前期比5.6%減の4兆4479億円、営業利益が2.8%増の8309億円、純利益は3.9%減の4718億円の減収増益だった。加えて、2010年3月期の営業利益予測は、0.1%減の8300億円と慎重なものだった。
ドコモは、今年1月の第3四半期決算で、自らの好業績を支えてくれた国内の端末メーカーが苦境に陥った状況を打開するとして、約100億円の開発費を負担することを申し出た。そして今回、顧客満足度向上のための施策として、2009年度中に新たに約400億円の大金を投じる方針を表明した。
現在、ドコモは、2010年の顧客満足度No.1と2012年の営業利益9000億円の達成を目指すという“中期ビジョン”を掲げている。山田隆持社長は、今回の約400億円は「その中期ビジョンを達成するため」と胸を張る。続けて、「そのための“弾込め”(施策の実施)にも、(約400億円とは別に)200~300億円を(すでに)注ぎ込んでいる」と明かした。
今や、NTTグループ最大の稼ぎ頭のドコモにとって、5800万人の顧客満足度を向上させる施策と、自らに矛先が向かう“儲け過ぎ批判”を避けるための施策が、見事に表裏一体の関係にあるのである。
 それにしても、これらの大盤振る舞いをしたうえで、なおドコモは今期8300億円という営業利益を見込む。国内企業の多くが爪に火を灯すようなコスト削減で赤字から逃れたり、減益幅を抑えたりするなかで、前期、今期と顧客満足度向上のために100億円単位のカネをポンポン計上しつつも軽々と増益を確保するあたり、ドコモにはまだまだ余力があるように見える。
その一方で、“儲け過ぎ批判”を避けつつ、業績は順調に推移するイメージを植え付けたい山田社長は、記者団に対して「8300億円については、ぜひ“微減”と書かずに、“横ばい”と書いていただきたい。よろしくお願いします」とまで言ってのけた。
このあたりに、奇妙な宿命を課された経営者の微妙な心の内が見て取れる。
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