ヾ(゜Д゜)ノ"新聞

「通話料定額でauを元気にする」KDDI小野寺社長インタビュー
 昨年度の携帯電話契約の純増数が4番手に落ち込んだKDDI。サービス・端末とも目立つものが少なく、かつての勢いは失われたかに見えた。そんななか、起死回生とばかりに今夏商戦に投入するのが、音声通話定額サービスだ。果たして導入にあたってはどのような背景や戦略があったのか。KDDIの小野寺正社長に話を聞いた。
■インパクトを優先した「通話定額」
 KDDI(au)の「指定通話定額」は、指定した3人までのauの通話先に24時間定額で通話できるというもの。携帯業界では、ソフトバンクモバイルが2007年に同じキャリア同士の1~21時までの音声通話を定額にする「ホワイトプラン」を導入し、ユーザーの獲得を進めてきた。にもかかわらず、KDDIが今まで通話定額制に踏み切らなかった理由の1つは「社内の緩みにあった」と小野寺社長は話す。
 「(2006年の)番号ポータビリティー制度開始からしばらくユーザーの獲得が順調だったため、いつしか社内的に『緩み』が出ていた。(料金プランでも)積極的にイノベーションを起こさなかったため、『通話料金は、なんとなくソフトバンクが安いようだ』というイメージが世間に定着してしまった」
 今夏商戦で、料金競争をまず仕掛けてきたのはNTTドコモだった。4月28日にデータ通信料のパケット定額プラン「パケ・ホーダイ ダブル」の下限を月額1029円から490円に引き下げると発表したのだ。NTTドコモの発表から24時間と空けずにソフトバンクモバイルも追随し、同様の「パケットし放題2(仮称)」を発表した。これに対してKDDIは5月25日、パケット定額制の下限を他社よりさらに低い390円にしたうえで、指定通話定額を発表した。夏商戦では料金の安さで頭一つ抜け出すことに成功したといえるだろう。
 「とにかくもう一度、auを元気にしたかった。単純にNTTドコモを後追いして値下げするだけでは意味がない。パケット定額プランの下限を390円にするだけでなく、通話定額も390円で行けと指示した。かなりのお客様にとってインパクトのある料金になるはずだ」
 通話定額プランはかなり前から準備が進んでいたようだが、他社の動向などを計った結果、今回のタイミングとなったようだ。こだわったのは「2つの390円」というわかりやすさ。まずはテレビCMで2つの390円を訴求し「料金のことを詳しく知ってもらうためにauショップに足を運んでもらいたい」(小野寺社長)という。
■“余剰設備”を逆手にとる
 KDDIの通話定額プラン発表に対し、いまのところNTTドコモとソフトバンクモバイルは追随していない。24時間の通話定額はウィルコムとイー・モバイルも導入しているが、両社ともユーザーが少なくネットワークに余裕があるからこそ実現できるものなのだ。5400万ユーザーを抱えるNTTドコモ、2000万ユーザーのソフトバンクモバイルが、24時間の通話定額を導入するとなると、ネットワークに負荷がかかり、電話がつながりにくくなるなどのリスクが大きい。
 ではなぜ、3000万以上のユーザーを持つKDDIは24時間定額が可能なのだろうか。その答えは「周波数の切り替え」にあった。
 「幸か不幸か、KDDIは現在、使用する周波数を旧800MHz帯から新800MHz帯へと切り替える作業を行っていて、新800MHzと2GHzのそれぞれの基地局を整備している。インフラとしては二重投資だが、ネットワークのキャパシティーがダブルになるので、定額制で音声通話が増えても当面品質に問題がない」
 「(2012年に)切り替えが終了したときは新たにインフラを整備する必要があるだろうが、ユーザー数を見極めてから判断すればいい。時間的な余裕は充分にあり、ユーザーに(通話やデータ通信の)トラフィックで迷惑をかけることはない」
 KDDIは旧800MHzから新800MHzへの切り替えで5000億円以上の設備投資を行う。直接収益を生まない投資となるところだったが、結果としてネットワークのキャパシティーに余裕が生じ、通話定額という新たな武器を産むことができたのだ。
 とはいえ、通話定額制は収入面では100億円単位のマイナス要因になると予想される。パケット定額の下限も含めた390円という金額は、他社を下回る数字でインパクトを出すのが狙いだが、当初の計画より低い価格設定だという。果たして採算面で勝算はあるのか。
 「通話定額の利用が増えれば、確かに減収になる。だが、魅力ある料金プランなら、新しいユーザーを獲得できる。そこで収入を増やすことができる。これまでは減収になる要素をネガティブにとらえていたが、増収につなげるためのインパクトを優先させた」
■KCP+初期ユーザーのために「特別なこと」やりたい
 08年2月から順次導入してきたau端末の共通プラットフォーム「KCP+」は、KDDIが新規契約獲得で不振に陥った原因の1つとも言われる。もともとプラットフォームの共通化で、各メーカーの開発コストを下げ、端末の調達費用を抑えることを狙っていた。しかし、プラットフォームの品質が低い段階で端末に搭載してしまったため、製品化された後で不具合が続出。操作に対する反応速度も遅く、ユーザーの不満を招いた。
 「確かにKCP+の初期端末は、それ以前の機種に比べてパフォーマンスが落ちていたのは事実。だが、この春モデルからはリカバリーしていると思う」
 筆者も最近のモデルはようやくまともに使えるようになったとの印象を持っている。夏モデルでは、microSDHCカードへの対応やタッチパネル搭載など、他社に比べて見劣りしていた機能も追いついてきた。KCP+についてはプラットフォームとしての完成度をさらに高めるとともに、既存ユーザーに対するフォローも必要と考えているようだ。
 「初期端末のユーザーにとってKCP+はイメージがよくないと思うので、特別なことをやっていきたい。例えば、次の機種にグレードアップしやすいような施策を考えている」
 小野寺社長は「特別なこと」の詳細は明らかにしなかったが、何らかの施策を用意してくるとみられる。
■LTE導入は「頭が痛い」
  KDDIがかつて絶好調だったころは、他社に先駆けてパケット定額制を導入し、着うたなどのコンテンツでも業界をリードした。その原動力となったのが、「CDMA2000」をベースとした通信規格だ。日本ではKDDIを除く各社が第3世代サービスへの移行で「W-CDMA」を選択するなか、KDDIはCDMA2000というデータ通信に強いインフラを採用したからこそ、料金やサービスで差異化できた。
 一方、W-CDMAが世界的に普及すると、今度は国際的に端末を調達しやすいNTTドコモやソフトバンクモバイルが有利になっていく。差異化戦略が苦戦を招いているともいえるのだ。
 2012年以降、KDDIは次世代の通信規格として他社と同じ「LTE」を導入する。世界的に普及すると見られる技術を用いることでコスト面や端末調達力での不利は解消されるが、ネットワークでは差異化できず、「KDDIらしさ」が失われる恐れもある。
 LTE時代にどう存在感を打ち出していくかはKDDIの大きなテーマ。小野寺社長は「その点は、頭が痛いところ」と認め、サービスの開発や端末の多様化が重要になると話す。
 「4、5年前、携帯電話の市場は利便性だけで伸びていた。ユーザーは端末の選択肢が少なくても買ってくれた。昔の腕時計は正確に時刻を刻むだけでよかったが、今は様々なデザインやブランドがあり値段も数千円から数百万円まである。携帯電話も同じでニーズが多様化している。特定のターゲット層にあわせてバラエティーよく出すしかない。(08年1月にサービスを開始した)au Smart Sportはすでに100万契約を突破した。こういったところをさらに開拓していくつもりだ」
 「CDMA2000を使っていたとか次はLTEとかいう話は、ユーザーには関係のないこと。今までもKDDIがCDMA2000で、NTTドコモとソフトバンクモバイルがW-CDMAだと知っている人はあまりいない。方式がどうこうというのは事業者サイドからは重要だし、専門家からみればおもしろいと思うが。今後、LTEが入ってきたときに何をやるのか。ここが重要で、われわれも真剣に検討している」
 KDDIは12年までは現在のEV-DO Rev.Aをマルチキャリア化することで、通信速度を高速化させていき、12年にLTEを導入する計画を立てている。NTTドコモは10年にもLTEのサービスを開始する予定で、数年遅れての導入となる。小野寺社長は、この12年という時期には「2つの意味がある」と解説する。
 「1つは周波数の再編で、現在の800MHz帯では15MHz幅あるうち5MHzしか使えない。しかし、12年7月に再編が一段落すると800MHz帯で10MHz幅の連続した周波数が空き、KDDIがそれを有効活用できるメリットがある」
 もう1つの理由は端末。LTEは、12年ごろまではパソコン向けのデータ端末が中心で、携帯電話本体にLTEを安価に内蔵できるチップセットが開発されるのは難しいと見ているのだ。
 「幸いなことにKDDIグループにはモバイルWiMAXのUQコミュニケーションズがいるので、データ端末市場はUQに戦ってもらう。KDDI本体はLTEを携帯電話でどれだけ使ってもらえるかを重視したい」
■設備投資は携帯電話会社の生命線
 世界同時不況で多くの企業が業績悪化に苦しむなか、携帯各社は軒並み好決算を維持した。総務省は端末の販売制度を見直すことにより、メーカーの独自性や競争力を高めようと試みたが、結果は市場が縮小し端末メーカーが悲鳴を上げている状態だ。疲弊するメーカーと体力をつけるキャリアとの関係を小野寺社長はどう見ているのか。
 「なにもメーカーをいじめているつもりはない。携帯電話事業者はデータ通信量が増えたり、音声通話が増えたりすると、常に設備投資がいる。この設備投資ができなくなると携帯電話の進歩がなくなる。進歩をするための設備投資の余力がないと、事業者として失格だと思っている」
 かつて、KDDIも2兆2000億円の借金を抱え、返済を優先するために設備投資を絞った時期があった。しかし利用者の増加により通話中に頻繁に切れるようになったり、データ通信速度が遅くなったりする「ユーザーに迷惑のかかる投資抑制はやらなかった」と振り返る。
 「設備投資は重要。通信は固定も含めて、国民生活の重要インフラであり、ユーザーに迷惑をかけてはいけない。『お客様満足度』を上げないと、KDDIのイメージは悪くなる。それに対する設備投資は続けていく」

 小野寺社長がインタビュー中に繰り返し強調したのは「ユーザーのイメージ」だ。料金体系やサービス、端末の性能で劣っているつもりはなかったが「他社にイメージ戦略で完敗していた。1年半前から実感してきた」と漏らす。
 今後は、価格の安さや端末の先進性、ネットワーク品質の高さなどを「総合的に訴求をしていく」という。小野寺社長は「言葉は悪いが、イメージだけよくするやり方はいくらでもある。実質が伴わないといけない」と語る。料金オプランや端末開発でようやく守勢を脱してきたことで、イメージ戦略でも攻めに出る時期にきたようだ。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:moblog

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

(/Д\)キャ新聞( ´゜д゜`)新聞 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。