(*゜Д゜*)新聞

通信各社、iPadで回線争奪戦 料金下げや新型接続器
 28日に発売される米アップルの「iPad(アイパッド)」など多機能携帯端末を巡り、通信各社の回線争奪戦が激化している。NTTドコモとNTT東日本が新型モバイル無線LANルーター(ネット接続器)を6月に提供開始。イー・モバイルは「ポケットWiFi」の通信料を下げる。ソフトバンクがiPadやiPhone(アイフォーン)など携帯通信機能を搭載したアップル製携帯端末を事実上独占販売することに対抗する。
 NTTドコモは新型モバイルルーターを使ったデータ通信サービスを6月下旬から始める。ルーターはバッファローなどが開発し、家電量販店やドコモの販売店で販売する。ルーターはポケットやかばんに入れて持ち運びができ、屋外でドコモの携帯通信網や公衆無線LANにつないで、インターネットを楽しめる。
 ドコモはiPad向けに自社の携帯通信網を提供することを目指していた。しかしアップルは携帯通信型iPadの販売契約をソフトバンクとだけ結んだため、無線LAN接続型のiPad需要の取り込みに戦略を転換。急きょ無線ルーターの投入を決めた。通信各社の中で比較的良好といわれるドコモの通信網を武器に巻き返しを狙う。
 NTT東日本も光ファイバー回線「フレッツ光」の契約者向けに6月下旬からモバイルルーターのレンタルを月315円で始めるほか、公衆無線LANの利用料金を業界最安値の210円に引き下げると発表した。
 ルーターはドコモやソフトバンク、イー・モバイルなどの携帯通信網、公衆無線LAN、光回線などを自由に選んで使えるのが特徴。iPadだけでなくスマートフォンや携帯ゲーム機、モバイルパソコンなど複数の端末を同時に接続できる。光回線の契約拡大にもつながるとみて、既存の営業拠点網も活用する。
 イー・モバイルも同社の小型無線ルーター「ポケットWiFi」などのデータ通信端末を8月末までに新規に購入した顧客を対象に、月額基本料を最大13カ月間、1000円引きの3980円にすると発表した。



携帯各社、2台目需要に期待 料金競争過熱も
 携帯各社が無線LANルーターの販売に力を入れるのは、音声通話収入の減少をデータ通信収入の増加で補いたいとの狙いからだ。携帯各社の音声通話収入はソフトバンクの新規参入などによる料金競争激化で年々減少傾向にある。通話時間も若干ながら減少しており、今後も大幅な増加は見込めそうにない。
 代わりにデータ通信の利用を促して契約当たり月間平均収入(ARPU)の底上げを図る。好調なのはソフトバンク。データ通信の利用が多いiPhone(アイフォーン)の契約者を順調に伸ばし、2010年1~3月期のARPUはデータ通信が音声を上回った。孫正義社長は「おそらく世界で初めて」と胸を張る。iPadの国内販売権も獲得し、さらなる収益向上につなげる考え。
 一方でNTTドコモもスマートフォン(高機能携帯電話)や今回の無線LANルーター投入などでデータ通信の利用促進を急ぐ。ソフトバンクに続き、10年度中にデータ通信のARPUが音声を上回る計画だ。



「大相撲」が休刊
 読売新聞社は25日、隔月で発売していた月刊誌「大相撲」を8月24日発売の9月号で休刊すると発表した。同社によると、「大相撲」は1954年に「読売スポーツ」の臨時増刊号として創刊、58年から定期刊行されていた。スポーツとメディアの多様化が進む流れを受け休刊するという。
 



NECカシオ、携帯電話12年度に1200万台目標 北米市場開拓
 5月1日に発足したNECカシオモバイルコミュニケーションズは25日、携帯電話の世界出荷台数を2012年度までに09年度比1.6倍の1200万台に引き上げると発表した。旧カシオ日立モバイルコミュニケーションズが展開する北米市場を拡大するとともに、国内市場もテコ入れし「トップのシャープに挑む」(山崎耕司社長)。
 同社はNECの携帯電話部門とカシオ日立モバイルが統合して発足。09年度シェアを合算すると約15%で、首位のシャープを追撃する2位グループとなる。
 NEC出身の山崎社長は「12年度の1200万台のうち400万台は海外で稼ぎたい」と表明。旧カシオ日立は米携帯電話会社2強のうち、ベライゾンワイヤレスに端末を納入している。同事業を拡大すると同時に、2強の一角であるAT&Tにも納入ルートを築きたい考え。
 また国内では10年度中に高機能携帯(スマートフォン)を投入することも明らかにした。NECが得意とするクラウド(ネット経由での情報サービス利用)を活用し、携帯電話内の情報をネットに保存したり、パソコンからネット経由で携帯の中身を操作したりするなどの双方向サービスを提供する方針だ。
 来年以降の携帯電話新モデルでは「部品調達や開発基盤の統合を進め、原価と開発コストを引き下げて競争力をつける」(山崎社長)方針だ。



東電が「公衆電源」事業開始へ
 屋外でパソコンや携帯電話をつないで充電する「公衆電源サービス」の事業化について東京電力が早ければ平成22年度中にも乗り出すことが分かった。どの程度の需要があるかの調査を始めており、今後、具体的な事業内容を詰める方向だ。
 東電は、電源供給用スタンド「espot(エスポット)」を東京・日比谷の公共スペース「日比谷パティオ」の休憩所内に4機設置。三井不動産の協力を得て、4月28日から試験的に電源供給サービスを進めている。本体のQRコードを読み取り、携帯電話端末から利用を申し込めば、無料で手持ちの携帯やパソコンに充電できる仕組みだ。
 電源には自然エネルギーを使用し、これまで企業しか購入できなかった「グリーン電力」を個人でも使えるようになっている。
 東電が事業化の検討に入ったのはノートパソコンなどの屋外利用の増加に伴って、予備のバッテリーを持ち歩くなど不便を感じる人が多いためだ。
 バッテリー切れのパソコンを利用するため、飲食店での無断充電問題も浮上しているほか、将来の電動アシスト自転車の普及や電動スクーターの利用者増も視野に入れている。
 千葉県柏市のつくばエクスプレス・柏の葉キャンパス駅周辺にもエスポットを設置、郊外での実験も着手している。利用時間による料金や方法、設置個所や台数を検討したうえで、有料の公共電源スポットがお目見えしそうだ。



1000万台市場が突如出現、「iPad」に沸き立つディスプレイ業界
 ディスプレイ産業の閉塞感を打破する新しい“成長ドライバ”として,にわかに大きな期待を集めている市場がタブレット端末だ。ディスプレイ関連最大の国際会議「SID 2010」の2日目に開催された「Business Conference」では,タブレット端末に関するセッションが開かれ,米DisplaySearch社がその市場予測を発表した。
 タブレット端末に対するディスプレイ業界の関心は,米Apple社の「iPad」の登場によって一変した。これまでにも,1990年ごろから様々なタブレット端末が製品化されてきたが,ディスプレイ市場に大きな影響を与えるまでに至ることはなかった。2000年代に入り,専用OS「Windows XP Tablet PC Edition」の発売などタブレット・パソコン(PC)市場を活性化させる出来事もあったが,その市場はわずか100万~200万台の規模で推移している。
 ところが,2010年4月に発売されたiPadが状況をがらりと変えた。「当初,iPadが最初の1カ月で100万台の市場規模になると考える人はほとんどいなかった」と,米DisplaySearch社のDirector, Notebook Market ResearchのJohn Jacobs氏はBusiness Conferenceのタブレット端末セッションで語った。しかし,「実際には最初の1カ月で100万台市場となり,2010年内に1000万台市場となる見通しだ」(同氏)と言う。
 さらに,2010年下期以降には,Apple社以外の複数の会社から「Slate PC」(Slateとは,昔,子どもがノートの代わりに使用していた石板のこと)と呼ばれるタブレット端末が次々に製品化される予定であるという。DisplaySearch社はSlate PCの市場規模について,「2011年には1000万台に迫り,2013年には1200万台を超える」と予測している。ただ,iPadやSlate PCの台頭により,「既存の小型ノートPCや電子書籍端末,携帯型ゲーム機の市場成長がいくらか影響を受ける可能性がある」と,Jacobs氏は指摘した。



漫画家1421人、出版社10社“反対” 都の青少年健全育成条例案
 子供を性的対象にした過激な漫画やアニメなどを規制する東京都の青少年健全育成条例の改正案で、改正案に反対する漫画家1421人と出版社10社が25日、連名で反対声明を出した。漫画家には、藤子不二雄Aさんやちばてつやさん、萩尾望都さんなど多くの著名漫画家が名を連ねた。
 声明は改正案を「表現の自由を損ね、漫画文化の衰退をもたらす」と非難。改正案で服装や背景などから18歳未満と判断できるキャラクターを非実在青少年との造語で規定することにも「定義が明確でなく恣意的な判断を残し、(表現の)萎縮的効果をもたらす」とした。



ソニー、部品売買を一括管理 LEDなど安定調達へ新組織
 ソニーは製品に使用する電子部品の売買業務を一括管理する専門部署を設立した。液晶テレビなど売れ筋商品向け部品の需給が世界的に逼迫(ひっぱく)しており、部品不足で製品生産が滞る事態も起きている。大量購入で調達を安定させ、製品生産を委託する外部の受託製造サービス(EMS)会社などにまとめて優先的に供給する体制を整える。
 このほど設立したのは「グローバルバイ&セルセンター」。まず液晶パネルなどテレビ用の部品から始める。将来はデジカメなどテレビ以外の製品や、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が手掛けるゲーム関連用部品にも拡大する。
 これまで部品の売買は、自社工場やEMSなどと部品会社が直接取引したり、専門商社や現地代理店が仲介したりするなど複雑だった。コスト削減を目的に製品間で部品の共有化も進んでいるため、ある部品の需給が引き締まると社内で同じ部品の需要が急増して売れ筋製品が作れなくなる懸念も出ていた。
 調達した部品をEMSに販売する際、一定の利ざやを取る仕組みも設ける。大量発注するためソニーの購入単価がEMSの単価より安いケースもある。そうした時には一定の価格を上乗せしてEMSに販売し、全体の製造原価引き下げにつなげる。同じEMSが複数のソニー製品を手掛ける場合、製品ごとに分かれていた部品の物流業務をまとめてコストを下げる。
 足元では世界的な液晶テレビの需要拡大で、LED(発光ダイオード)素子や導光板など幅広い部材の需給が逼迫している。このため、ソニーやパナソニックなどが、バックライトにLEDを使用する液晶テレビの新製品発売を遅らせた。



インテル・グーグルなど米IT大手が雇用拡大、研究開発など拡充
 【シリコンバレー=奥平和行】米国のIT(情報技術)大手がグローバルに雇用を拡大し始めた。半導体最大手のインテルは2010年に最大2000人を新規雇用する計画。インターネット検索最大手のグーグルは今年3月までの半年間で約1000人増員した。アジアにおけるIT製品の需要拡大などを追い風に、世界各地で研究開発や販売を担う人材を厚くして将来の成長につなげる。
 インテルは業績の落ち込みに対応して06年から人員削減を実施。09年末には06年初めより2割強少ない8万人弱まで絞り込んだ。業績回復を追い風に10年からは採用増に転じ、世界各地の研究開発や生産部門などに配置する。
 グーグルは新たに雇用した人材を技術部門と営業部門に配置した。同社も09年9月までの9カ月間で約500人の従業員を減らしたが、「当社は多くの新たな事業計画を抱えており、技術者の増強に引き続き取り組む」(パトリック・ピシェット最高財務責任者)として雇用拡大に転じる。
 ネットワーク機器最大手のシスコシステムズは4月までの3カ月間に約1000人を新規採用したほか、今後数四半期の間に1000~2000人を新規採用する計画だ。新たに採用した人材は主に販売部門に配置して新興国市場などにおける事業強化につなげる。
 各社が雇用拡大にかじを切る背景にはアジアにおけるIT製品の需要拡大や国内市場の回復で、業績が持ち直していることがある。マイクロソフトやインテルなどIT大手8社の1~3月期の純利益(合計)は前年同期比69%増え、金融危機前の水準を上回った。先行きについても強気な見方が相次いでいる。



中国で大型鉄鋼再編 鞍本など3社統合、世界2位に
原料の価格交渉力強化
 【北京=多部田俊輔】中国鉄鋼4位で世界6位の鞍本鋼鉄集団(遼寧省)が中国中堅2社と経営統合する。2009年の粗鋼生産量は4500万トン規模となり、世界最大手のアルセロール・ミタル(ルクセンブルク)に次ぐ世界2位に躍り出る。粗鋼生産量で新日本製鉄を6割以上上回る鉄鋼会社が中国に3社できることになり、中国勢は世界資源大手との原料価格交渉での発言力向上を狙う。
 鞍本鋼鉄集団の中核上場会社、鞍鋼が25日、中国の国有企業を統括する国務院国有資産監督管理委員会から四川省の鉄鋼中堅、攀鋼集団(四川省)との経営統合の認可を取得したと発表した。また、北台鋼鉄集団(遼寧省)ともこのほど合併することで基本合意した。
 鞍本鋼鉄は鞍山鋼鉄集団と本渓鋼鉄集団が05年に経営統合して発足した。09年の粗鋼生産量は2930万トンで、年産能力は4300万トン。鞍山鋼鉄は戦前に南満州鉄道の出資で設立した鞍山製鉄所が母体で、独フォルクスワーゲンの中国工場に鋼板を供給するなど技術に定評がある。
 鞍本鋼鉄が経営統合で規模拡大を急ぐのは、ブラジルのヴァーレなど世界資源大手との鉄鉱石交渉で劣勢に回っているためだ。09年の鉄鉱石交渉は妥結できずに、日本と資源大手が合意した価格を暫定的に用いた。10年の交渉でも09年比で2倍近い価格の提示を受けて、交渉が難航している。
 「資源会社に比べ鉄鋼会社の数は多すぎる。合従連衡を進めて大規模メーカーをつくりだし、対外的な発言力を高めていきたい」。中国の経済政策のかじ取りをする国家発展改革委員会幹部は説明する。中国鉄鋼大手幹部も「現在の鉄鉱石交渉は劣勢で屈辱的。規模拡大で巻き返したい」と力を込める。
 中国には鉄鋼メーカーが約500社乱立しており、中国政府は年産5000万トン級の大手6~7社をつくり出す構想だ。経営統合を契機に温暖化ガスの排出量が多い旧型設備を廃棄して新鋭設備の建設を認める方針を示し、メーカー間の合従連衡を促している。







ものづくり進化論
これから先、日本で何をつくるか
 日産自動車の新型「マーチ」は、量産拠点の新興国への移管を象徴する製品かもしれない。量産拠点を先進国から新興国に全面的に移管し、そこから全世界に供給する体制に切り替えた。具体的には、2010年3月にタイ工場で新型マーチの量産を開始。インド、中国、メキシコの各工場でも量産の準備が着々と進む。これまで量産を手掛けてきた国内工場(神奈川県の追浜工場)と英国工場では、もう造らない。日本市場向けモデルは、タイで造り、そこから日本に送る。
 新型マーチは現地で調達しやすいように、あえてグレードを抑えた材料を使うなど、低コスト化を図っている。新興国を含めた全世界向けに、小型車としての最適な品質を最適なコストで実現する試みとみられる。日本市場向けの製品は、特別な品質検査ラインを通し、国内であらためて検査するという。
 日本のメーカーが国内から海外に量産拠点を移す動きが頻繁に見られる。日本で量産した製品を海外に輸出して利益を得る、という従来のやり方が通用しなくなりつつあるためだ。しかし、「何もかも海外に出ていったのでは、日本は根なし草になってしまう」(韓国サムスン電子の元常務で、東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センター特任研究員の吉川良三氏)。
 国内工場は、海外工場とどのようにすみ分けるべきか。吉川氏は「新興国向けの製品は、現地で部品を調達して現地で造るべきだが、設計開発から試作までは必ず日本が担うべきだ」と、1つの針路を示す。
 言いかえれば、“もの”ではなく“価値”(「日経ものづくり」2010年5月号特集「日本でつくる」から)。顧客が求めているのはものに込められた機能であり、ものづくりとは顧客が要求する価値を創造し、価値を実現する機能を開発し、機能をものに盛り込む方法を確立することなどから成り立っている。研究開発によるイノベーションの実現、先行開発と試作による製品としての具現化、量産試作による生産技術の確立――。こうした工程にこれまで以上に貢献することが、国内工場の存在意義になる。
 価値の基となるのは社会的ニーズと文化的ニーズだ。そして、これらの両方が存在する点で日本以上に有利な国はほとんど見当たらない。幸か不幸か日本は「課題先進国」である。日本はもともと資源が乏しく、農産物の自給率も低い。高齢化を世界に先駆けて迎え、人口減少まで始まってしまった。これらの問題を解決する案は、いずれ全世界で必要とされるはずだ。
日本独自の価値を製品に盛り込むことで差異化を実現する
 例えば、資源の乏しい国だったからこそ発展した省エネルギー機能。以前なら他国では過剰品質だったかもしれないが、環境意識の高まりや、石油などの資源価格の高騰によって、日本以外でも省エネ機能を求める機運が強まっている。日本メーカーが強いハイブリッド車などは、その代表格といえるだろう。超高齢化社会を目前に控え、新たな医療機器のニーズが生まれ始めている。「日本で成功する製品は、世界でも必ず成功する」(米ゼネラル・エレクトリックのヘルスケア部門の日本法人であるGEヘルスケア・ジャパン取締役副社長の川上潤氏)という声すらある。
 一方、日本独特の文化的ニーズから生まれた製品の例としては、温水洗浄便座がある。過剰品質になりかねないほど利便性を追求する文化もうまく方向付ければ価値作りの有力な武器になる。
 ここで気になるのが、日本独特の価値にこだわりすぎる結果、世界から浮き上がったものをつくってしまう「ガラパゴス化」だ。代表例の携帯電話は日本の規格にこだわったため世界で出遅れた。新興国向けの製品に不必要に高度な機能を詰め込んだ「過剰品質」も、ガラパゴス化の一種と説明されることが多い。しかし、ガラパゴス化からの脱却を目指そうとするあまりに、他国と同じようなものばかりを造っていては、高品質なものづくりをこなすという日本が特色とすべき強みがなくなってしまう恐れがある。
 東大の吉川氏によれば、新興国の市場などで強みを誇る韓国メーカーが傾注しているのは比較的所得の低い消費者層であり、その上にあたる中間所得層に対する食い込みはやや弱いという。ボリュームゾーンでは低価格な製品でなければ売れず、基本的機能以外の部分に価値を認めてもらえないが、中間所得層では文化的な価値をある程度認めてもらえるだろう。ここに日本が生き残る余地がある。
 中間所得層の市場を取ったときに、売り上げや利益の規模では低所得者層での勝者となる企業に及ばない可能性はある。それでも、中間所得層も低所得者層もどちらも失うよりはましだろう。問題は低所得者層で勝てる確率と、中間所得層で勝てる確率のどちらを取るかにかかってくる。それはとりもなおさず、海外メーカーと同じ土俵で勝負するのか、日本独特のニーズを背景にした土俵で勝負するのかの比較でもある。
 この議論は、何も新しいものではない。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は今から100年以上前の1895年4月、「日本が品物の安いことのみに頼るなんて、そんな理由はどこにもないじゃないか。わたしなんかの考えでは、日本という国は、むしろ、技術と趣味のすぐれている点、そこを足がかりにした方が無難だと思うね」(ラフカディオ・ハーン著、平井呈一訳、岩波文庫「心―日本の内面生活の暗示と影響」)と書き残した。
 日本独特のニーズで勝負するか、海外と同化して勝負するかの試行錯誤の始まりは、日本が開国を迫られた時期にまでさかのぼる。日本で何をつくるべきかを探ることは、長期的に見ていく必要があるのではないだろうか。



携帯制限解除 囲い込み商法からの転換を(5月26日付・読売社説)
 1台の携帯電話の端末で、複数の通信会社を自由に乗り換えられるようにしてほしい――。利用者のこんな希望がかなう見通しになった。
 現状では、契約する通信会社を変更する場合、携帯電話機も変える必要があるが、総務省がそうした制限を解消させる方針を示している。6月中にも具体的な指針をまとめるという。
 制限を解除した場合、海外の携帯電話機メーカーとの激しい競争にさらされようが、魅力的な端末の開発や通信料の値下げを実現するきっかけとすべきである。
 携帯電話の端末には、電話番号などの契約者情報が記録されたSIM(シム)カードが埋め込まれている。通信会社は、これに「SIMロック」と呼ばれる制限をかけ、他社の通信サービスが利用できないように設定している。
 総務省が検討しているのは、欧米のように契約から一定の期間が過ぎれば、カードを差し替えて、どの端末でも自由に利用できるようにする仕組みだ。
 現行モデルでは、解除に踏み切っても、大手3社で相互に使えるようになるのは、NTTドコモとソフトバンクだけで、それもメールなどには対応できない。
 こうしたことから、制限解除は消費者のメリットにつながらないとする慎重論もある。
 しかし、より多くの情報を高速度で伝える次世代型の端末に移行する数年後には、自由な乗り換えが可能になるだろう。今からそれに対応しておく必要がある。
 制限解除は、通信会社とメーカーが一体となって端末からサービスまで囲い込んできた日本のケータイ商法を、大きく転換させる可能性をはらんでいる。
 通信会社は、東芝やシャープなどの電機メーカーが製造した端末を買い上げ、販売店に奨励金を支払うことで端末を安く販売し、その分を通信料に上乗せしてきた。乗り換え制限がなくなれば、こうした手法は使えない。
 成熟期に入った携帯市場に向ける消費者の目は一段と肥えている。スマートフォンと呼ばれる高機能端末が人気を集めていることが、それを裏付けている。
 日本の携帯業界は、優れた商品を開発しながら、海外市場に背を向け、「ガラパゴス化」と指摘されてきた。
 メーカーは開発力を磨いて海外に販路を広げ、通信会社はサービス内容を競う。制限解除を足がかりに、官民双方で携帯ビジネスの総合戦略を練るべきである。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:moblog

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。