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(世界を語る)経済成長、だれが担う 米中心、秩序変わらず  マサチューセッツ工科大名誉教授 レスター・サロー氏
 2008年に起きた金融危機の後の世界経済では、米国や日本の景気回復が力強さを欠く一方、中国がいち早く高い成長軌道に回帰している。この現象は世界の成長のけん引役が日米から中国に交代する兆しとの見方も出てきた。資本主義論で知られるレスター・サロー米マサチューセッツ工科大学(MIT名誉教授に見解を聞いた。
 ――金融危機の震源地となった米国の景気はいつごろ力強さを回復するでしょうか。
 「景気回復にはV字型とU字型がある。今回はU字型だ。2~3年間底をはってから回復する」
 「ただ、資本主義には景気後退がつきものだ。第2次世界大戦以降、景気後退は何回あったか。答えは12回。今回の不況は不動産取引が引き金だったが、何が次の不況を引き起こすかは不明だ。危機の主役となった金融機関にタガをはめる米国の金融規制改革法が成立した。だが、これで次の不況を防げるわけではない。(00年の)IT(情報技術)バブル崩壊後に生まれたITの様々な規制では、今回の不況は防げなかった」
 ――世界の当局者やエコノミストの間で「景気刺激策を続けるか、財政再建が先か」と議論が分かれています。
 「大恐慌の克服法は20世紀最高のエコノミストの一人、ジョン・メイナード・ケインズが教えてくれている。狂ったように紙幣を印刷し、狂ったように景気刺激策を打ち出すことだ。財政赤字を気にする必要はない。需要を創出しすぎることはあり得ない」
 「米造幣局に行くと10万ドル(約870万円)札が飾ってある。米地区連銀間でしか使えないから、盗む人はおらず、誰も警備しない。印刷代は10セント。たった10セントで何年も持つ。紙幣とはそういうものだ。デフレ局面だからインフレの心配は必要もない」
 「ケインズは米上院に『大恐慌を治すなら、国民の半分を雇ってケンタッキー州の陸軍基地の倉庫にある金塊を全土に埋めろ』と助言したことがある。彼らに時給5ドルを支払う。次に残る半分の国民も時給5ドルで雇い、その金を掘り起こさせる。見つけた人は金を自分のものにしていいなら、家には置いておかずにすべて使う。給与の5ドルも消費に回るという理屈だ」
 ――中国は元気です。いずれ米国を抜き、世界一の経済大国になるといわれます。
 「中国の経済成長は今年は年率10%だと言われている。これは怪しい。10%成長は都市部に限った話で、地方に住む9億人はゼロ成長だ。中国全土が10%成長するには、都市部の4億人が33%成長しなければけん引できない。地方を含めれば中国の成長率は3%程度だろう」
 「そのうえで米中経済を比較しよう。08年の中国の1人当たり国内総生産(GDP)は3400ドルだ。米国は4万7千ドル。中国の過去20年の平均成長率が続いても、追いつくには100年かかる。22世紀の話だから、72歳の私には関係ない。21世紀はおおむね今のままの秩序で推移する」
 「米国の成長率が英国を上回り始めたのは1830年。経済規模が英国を上回ったのは第1次大戦後の1919年のことだ。日本は明治維新以降、米国に追いつこうとしているが、いまだに成功していない。世界の経済秩序が変わるには時間がかかる」
 ――インドも急速に経済成長しています。
 「インドは90年代は年率3%、2000年代は年率8%で成長したという。私は信じない。3%が8%に上昇したなら、何かが飛躍的に改善しているはずだ。教育は改善していないし、海外からの直接投資は増えていない。規制緩和は進まず、インフラも良くなっていない。インドが中国に追いつくには2つの方法がある。一生懸命に成長するか、統計数字を変えるかだ」
 「私は米国のGDPの数字は信じる。数字を集計する人間に、大統領によって更迭されない独立性が担保されているからだ。彼をクビにできるのは議会だけ。GDPを集計する人間が大統領や首相に更迭される可能性がある国の統計数字を信じてはならない」
 ――日本の景気対策をどう見ていますか。
 「景気対策が世界で最も下手な国という賞があれば、日本は間違いなく受賞する。日本政府は『輸出が上向いている』というが、輸出依存が続くようなら失われた20年が失われた30年になるだけだ。経済は内需がけん引せねばならない。『失われた30年などあり得ない』という考え方は大きな間違いだ。エジプト経済は4000年間にわたり世界トップだったが、その後の2000年間は成長が止まっている」
 ――なぜ内需が広がらないのでしょうか。
 「イノベーション(技術革新)がないからだ。日本の消費者は米アップルの多機能情報端末『iPad(アイパッド)』のために徹夜で行列するが、ソニー製品のためには並ばない。わくわくするような楽しさがない。日本はまねが得意でここまで追い付いた。追い抜くにはイノベーションが欠かせない。全く新しい発想で未知の分野を切り開くアップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)のような人材が必要だ」
 「イノベーションを生むのは政府ではなく教育だ。大学で教授の言うことを黙って聞いているような学生は使い物にならない。教授の言葉に疑問を呈し、教授が知らないことを発見するような学生がイノベーションを生む」
 ――日本企業は人材を有効に生かしていますか。
 「無駄なことをしている社員が多すぎる。例えば、朝に銀座のデパートに行くと、社員全員が並んでお辞儀をしている。極めて非生産的ではないか。日本に必要なのは新しい企業だ。日本のほとんどの新興企業は、米占領下の第2次大戦直後に生まれた。2000年以降に誕生した企業をいくつ挙げられるか。米国では00年以降に誕生した企業が経済を下支えしている」
 ――お辞儀は日本文化のひとつです。
 「もちろん、どちらの文化が優れていると言っているわけではない。だが、米国文化の方が経済成長に適している。我々は産業主体の経済から知識主体の経済に移っている。ジョブズCEOや(マイクロソフト創業者の)ビル・ゲイツ氏、(ディズニー創業者の)ウォルト・ディズニー氏がつくり出すような知識だ。人々は楽しいものには金を払う。今の日本にあまり楽しいことがない」



証券業界、ツイッターの口コミ効果に期待
 身の回りで起きたことをつぶやきのような140字以内の短文で投稿するインターネットの簡易投稿サイト「ツイッター」に、証券会社が注目している。「つぶやく」内容は、投資セミナーなどのイベント情報や難解なアナリスト分析を分かりやすくした情報が中心だ。
 最初にツイッターに注目したのは、ネット証券のカブドットコム証券。昨年9月から始め、その日のニュースに関連付けた株の銘柄を紹介することもある。狙いについて同社営業推進室の藤本誠之氏は「株を購入する上で“気づき”につながる情報を示したい」と説明する。ネット証券最大手のSBI証券も、ツイッターを「広告」と位置づけ、債券募集の告知やプレスリリースを提供。マネックス証券は7月26日、ツイッターを開設した。
 大手証券も負けていない。大和証券は4月から、東京、ニューヨーク、香港に駐在するアナリストが株式市場や経済動向の最新情報を紹介しており、閲覧者(フォローワー)は6千人を突破している。同社の田中稔介ダイレクト企画部長は「海外に拠点のある大和の特徴を生かした」と明かす。日興コーディアル証券も昨年9月からツイッターを開設した。
 各社が注目するのは、フォローワーが証券各社のツイッターで知った金融商品やイベント情報を、他のツイッターでつぶやくことによる口コミ効果だ。日本証券業協会によると、ツイッターなどインターネットを通じた情報提供は金融商品取引法上の「広告」に当たり、社内に審査担当者を置くなど自主ルールを定めている。
 ただ、ツイッターは普及が始まったばかりで、証券関係者は「複数のフォローワーを介在することで情報が誇大になりかねない」と指摘する。ツイッターは閲覧者との「情報をやりとりする場」であることがメリットだが、返信をしない会社も多い。「日常業務に支障がある」というのが理由だが、ツイッター本来のメリットをどう活用するのも課題となりそうだ。



<エコカー補助>9月終了 景気回復に影響も メーカー各社減産検討
 政府は30日、新車購入時の「エコカー補助金」制度を、予定通り9月末に終了することを明らかにした。経済危機後の日本の景気回復はこれらの政策に支えられており、打ち切りを見越した大手自動車メーカーが減産の方針を決めるなど、少なからず景気に影響を及ぼす恐れがある。最近では好調だったアジア向けの輸出の伸びも鈍化する中で、政策に頼らない自律的な回復軌道に向けた試練の時を迎えている。
 「9月から更に何らかの対策が必要な状況ではない」。直嶋正行経済産業相は30日の会見で、エコカー補助金の打ち切りを明らかにした。閣内には景気への配慮から延長を求める声も出ていたが、経産省幹部は「自動車工場の稼働率が5割を切った異常事態を受けた制度」と、経済危機への緊急対応だったことを強調する。
 制度は08年秋のリーマン・ショック後の急激な景気の落ち込みを受けて、当時の麻生政権が昨年4月に策定した経済対策に需要喚起策として盛り込まれた。一定の燃費基準を満たした新車の購入者に最大で25万円を支給。今年3月末に期限を迎えたが、9月末まで延長された。1年半の補助金交付の予算額は5837億円に上り「財政が厳しい中、いつまでも税金を投入するわけにはいかない」(経産省幹部)というのが打ち切りの理由だ。
 国内の新車販売台数は、昨年2月に前年同月比で7割を切る水準まで落ち込んだが、4月からの補助金に加え、エコカー減税の効果もあって同年夏以降は前年を上回る水準に戻った。外需の回復にも後押しされ、30日に発表された10年上半期(1~6月)の国内生産台数は前年同期比45・8%増と、上半期としては過去最大の伸び率を記録した。
 しかし、今回の制度打ち切りを見越して自動車メーカーは秋以降の販売減を予測。トヨタ自動車は10月の1日当たりの生産台数を、9月の計画より2割減らす方針だ。日産自動車も状況次第で減産を検討する方向で「(制度を打ち切った)各国の状況を見ると大きなインパクトがある」(田川丈二執行役員)とみている。
 同じく需要喚起策として効果を発揮してきたエコカー減税や、家電のエコポイント制度は今後も続くが「既に1年以上たって効果が一巡している」(証券アナリスト)と指摘される。欧州の財政危機の影響などで、景気回復をけん引してきたアジア向け輸出の伸びが鈍化した影響もあり、6月の鉱工業生産指数は4カ月ぶりに低下した。失業率は高止まりを続け、デフレも長期化の様相を示す中で、政策頼みからの脱却を図れるか、日本経済の実力が問われそうだ。
 ◇終了前に補助使うには? 9月30日までに車両登録必要
 補助金は乗用車の場合、一定の燃費基準を満たした新車を購入すれば5万~25万円が支給される。
 例えば、登録から13年以上使用した車を廃車にしてトヨタ自動車のハイブリッド車(HV)「プリウス」の最廉価モデルを購入する場合、車両価格(205万円)に諸費用などを加えた金額から25万円の補助金を差し引いた188万円程度で購入できる。補助金が打ち切られると約213万円になる。自動車購入の際に上乗せされる自動車重量税と自動車取得税計約11万円は、12年春まで継続するエコカー減税により全額免除される。
 エコカー補助金を受け取るには、申請手続きが必要。申請には新車の車検証のコピーなどが求められるため、補助金の終了期限である9月30日までに車両登録を済ませなければならない。登録した上で申請書を日本自動車販売協会連合会(自販連)などに10月29日までに届ける。
 現在でも2カ月半程度の納車待ちが続くプリウスは、今から購入しても登録の前提となる納車が9月末までに「間に合わない」(東京都内の販売店)ため、補助金を受けるのは困難だ。
 また、申請期限までに乗用車向けの政府の予算額約5837億円を超えることが明らかになれば期間内でも申請の受け付けを終える。7月28日時点での申請受付金額は約8割の4721億円に達している。



「ヤフーでググる」新時代へ 検索どう変わる
 「日本のヤフー、グーグルの検索採用」というニュースに「え、どういうこと?」と首をひねった人も多いのではないか。ミニブログ「ツイッター」上では「これからは『ヤフーでググる』って言っていいの?」という困惑気味の書き込みも見られた。そもそも検索エンジンの切り替えとは、ユーザーから見てどういう意味があるのだろうか。
 検索サービスの仕組みは大きく分けて、ウェブサイトを巡回して情報を整理・蓄積するデータベースの部分、大量のデータの中から意味のある検索結果を抽出するための辞書やフィルタリングといった中間処理の部分、そして結果をどのようにユーザーに届けるかというサービス部分の3つから構成される。日本のヤフーが7月27日、米ヤフーのエンジンから乗り換えると発表したのは、この基盤のデータベース部分だ。
 日々増え続ける情報量に対応できる巨大データベースの構築・維持には膨大なコストがかかる。ヤフーはこの部分をグーグルにアウトソーシング(外部委託)し、自らはユーザーに近いサービス部分に専念するというわけだ。
 同じ検索エンジンを使っても、ユーザーから見た検索結果はその中間処理の方法によってずいぶん違ってくる。ヤフーはもともと米ヤフーのエンジンの上に、日本のユーザー向けに検索結果にニュースや画像、地図なども含めて表示するといった中間部分の処理プログラムを作り込んでいる。「goo」や「BIGLOBE」などのポータルサイトもグーグルのエンジンを採用しているが、同じキーワードで検索しても出てくるサイトの種類や順位は微妙に異なっている。
同じエンジンでも「乗り心地」は異なる
 ヤフーがエンジン部分をグーグルに切り替えても「使い勝手は基本的に変わらない」と強調しているのは、この中間部分の多くを移植する方針だからだ。検索結果の順位も「グーグルと同じになるとは限らない」(ヤフー広報)という。これは、同じエンジンの供給を受けた自動車でもメーカーによって乗り心地や品質が異なることと似ているかもしれない。
 しかし、いくらサービスの見せ方を工夫できるとはいえ、データベース部分を自社で持たないことのリスクは残る。
 グーグルは独自の基準で検索結果から排除するサイトを決めているが、グーグルのデータベースで遮断されたページにはヤフーのユーザーも実質的にアクセスできなくなる。また、開発者の間には「検索技術を他人任せにすれば、日本が強みを持っていた情報家電や携帯電話向けなどのサービス開発がさらに停滞しかねない」との危機感も漂う。
 実際、日本の検索技術が足踏みするなかで、グーグルはテレビ番組まで検索結果として表示する「グーグルTV」構想を発表して、ソニーをパートナー企業に引き込んだ。携帯電話の世界では今年、NTTドコモの携帯サイト検索がグーグルからgooに切り替わるという逆転劇があったが、スマートフォンの台頭で携帯サイトそのものの影が薄くなりつつある。
 ただ一方で、グーグルやヤフーの検索を使わずに、必要な情報を入手する手段も増えている。最近では、関心あるテーマの最新情報をチェックするツールとしてツイッターが人気だ。飲食店情報サイトの「ぐるなび」や価格比較サイトの「価格.com」のように特定分野に強いサービスを、目的に応じて使い分けるといったスタイルも定着しつつある。
 データベース工学の専門家で検索エンジン関連の技術に詳しい東京大学生産技術研究所の喜連川優教授は、「日本のヤフーとグーグルの提携はある意味で自然な流れ。競争の舞台はすでに次世代の検索技術に移っている」と語る。
大切なのは次世代検索 日本の独自技術に期待
 喜連川優・東京大学生産技術研究所教授の話 パソコンのブラウザーを対象とした従来型の検索技術の進化は行き着くところまで行き着いた。むしろ今後はソーシャルメディアやツイッターのようなリアルタイム情報をどう整理して見せるかといった新たな領域での競争が重要になっている。ヤフーが検索エンジン部分を外部に任せてオークションや知恵袋といった特徴あるサービスに注力すると判断したことは自然なことだろう。
 検索市場を一社が独占してしまうことはリスクがあるが、それほど問題視すべきものでもない。次世代の検索技術は「答えが知りたい」というユーザーの欲求に応えるものになるはずで、いまの検索とはずいぶん違ったかたちになるからだ。日本でも、現実空間でのユーザーの行動を予測して最適な情報を送り届ける技術や、日本語の特性に合わせた意味解析など独自の技術が育っており、実用化に期待している。



神戸社説
「サンヨー」廃止/挑戦の遺伝子は失わずに 
 「私は大きい名前がええと思う。太平洋、大西洋、インド洋に売りまくろう。“三洋”はどうや」。三洋電機の創業者、故井植歳男氏は戦後間もない大阪で、こんなふうに新社名を決めたという。
 家庭電化時代を切り開いた伝統あるブランド「SANYO(サンヨー)」が廃止されることになった。パナソニックがグループ会社の三洋電機とパナソニック電工を、2011年4月までに100%の株を持つ完全子会社にすることを決めたためだ。
 12年1月には3社間で事業を部門別に組み替える。「サンヨー」ブランドを廃止し、原則として「パナソニック」のブランドに一本化する方針だ。
 サンヨーといえば、家電ブームを巻き起こした国内初の噴流式洗濯機をはじめ、伝説となった製品がたくさんある。兵庫との関係も深い。井植氏は淡路出身で、最初の生産拠点を置いたのは加西市だ。生産や研究の拠点、関連施設も県内にそろう。
 それだけに、親しんだブランドの消滅を寂しく受け止める人は多い。しかし、グローバル競争は熾(し)烈(れつ)だ。中でも韓国勢の市場への食い込みは激しい。
 3社とも日本経済をけん引する電機企業である。とりわけ成長する太陽電池などエネルギー分野で競争を勝ち抜くには、ブランド統一で一体感を強め、選択と集中を進めることが不可欠と判断したのだろう。
 「世界の同業他社は、目標を定めると100メートル競走のスピードでチャレンジする。われわれは中距離競走の感覚だ」。パナソニックの大坪文雄社長の言葉には、経営のスピードを速めなければ敗れ去ってしまうという危機感がにじむ。
 今後、グループ内でリストラが進むのは間違いない。これまでは三洋に配慮して再編をゆっくり進める印象だったが、これからはそうはいかない。白物家電など重複する分野で、事業の統廃合は避けられない。完全子会社化によって、意思決定のスピードは格段に速まるだろう。
 ただ、いずれの企業も独自の歴史と文化を持ってやってきた。留意してほしいのは、子会社の社員の士気を下げないことだ。事業再編を進める際には、雇用の維持に最大限、配慮すべきである。
 三洋の伝統は、創業者仕込みの独創性と技術力にある。同じ関西の松下(パナソニック)には負けないという気概もあったという。そのDNAを受け継ぎ、日本のものづくりの優位性を示してもらいたい。
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ジワリ衰退 危機感薄く 世界での存在感低下
 この20年、日本は「緩慢なる衰退」を続けている。バブル崩壊後の不良債権処理を長引かせた末、いまだにデフレから抜け出せない。政治は混迷し、改革は先送りされたままだ。金融危機に見舞われた米欧は長期停滞を避けようと日本の失敗に学ぼうとしている。世界経済の歴史的転換のなかで日本は「失われた20年」から脱却できるか。戦後最大の岐路を迎えている。
 戦後世界を驚嘆させた経済大国は何を間違えたか。成功のおごりか。痛みを先送りする「根拠なき楽観」か。最大の問題は日本人の多くがこの危機に危機感を覚えなくなっているところにある。
 冷戦終結でグローバル経済が大転換した時代に日本国内では不良債権処理がもつれにもつれていた。1992年8月、宮沢喜一首相が打ち出した公的資金投入は経済界、旧大蔵省、メディアに反対され、あっさりお蔵入りになる。
 それを最初のつまずきとすれば、住宅金融専門会社(住専)の処理は第2のつまずきだ。大蔵省銀行局長として批判の矢面に立った西村吉正早大教授は「もっとうまく収拾していたら、その後の公的資金注入もスムーズだったかもしれないが、住専問題は1度は受けなければならない洗礼だった」と述懐する。
 98年10月、柳沢伯夫金融再生担当相は就任していきなり、日本長期信用銀行の破綻に直面する。「宮沢蔵相をはじめ、大銀行の破綻は避けたいとの声は強かったのだが」と漏らす。金融危機の収拾を巡って、政府内は対立する。
 柳沢氏は「やってもやっても、もっと不良債権処理を、もっと公的資金注入をといわれた」と語る。金融不安の増幅を警戒する柳沢氏に対し金融担当を兼務することになる竹中平蔵経済財政相は厳しい検査に基づく大胆な不良債権処理と公的資金注入を求めた。
 その竹中氏が金融危機回避の瀬戸際で取ったのは現実主義だった。2003年5月、厳格な会計処理で資本不足があらわになった、りそなに対し、株主責任を問わずに公的資金を注入する。「大きすぎてつぶせないというルールに沿った」と竹中氏は述懐する。りそな救済を機に株価は反転し、好循環が始まる。
 それにしても不良債権処理には13年もかかった。日本がもたつく間にグローバル経済は回転速度を上げていた。
税制改革は先送り
 「なぜ日本は冷戦終結、グローバル化という大転換を強く意識できなかったか。それは冷戦時代に緊張感がなかったからではないか」と行天豊雄国際通貨研究所理事長(元大蔵省財務官)は分析する。
 改革の遅れはそれを示す。竹中氏は「小泉改革の後の政権で改革が続かずに中断された。危機が去ったと思って、政府も民間も改革マインドが緩んだ」と指摘する。
 マクロ政策の失敗も大きかった。バブルの発生から崩壊、デフレ進行下で金融政策は揺らぐ。失敗を取り返そうとして次の失敗を生んだ。「緩めすぎ、締めすぎ、緩め遅れ」と行天氏はいう。速水優日銀総裁の時代はゼロ金利解除を焦り、結局、未踏の量的緩和に足を踏み入れた。デフレ脱却に「非伝統的手段」は当然だが、金利機能が働かない金融政策が日本経済の構造改善を遅らせたのも事実だ。
 税財政政策の失敗は超高齢社会に向かう日本経済に負の遺産を残した。企業がバランスシート調整を急ぎ、「合成の誤謬(ごびゅう)」が生じるなかでは財政の下支えが必要だが、繰り返される財政頼みは先進国最悪の長期債務残高として積み上げられた。
 何より本格的な税制改革を実行できなかったことが経済の活力と財政の健全性を損なった。先進国最低クラスの消費税率(5%)と最高水準の法人税率(40%)は何を物語るか。「政治の怠慢の一言につきる」と与謝野馨たちあがれ日本共同代表は反省する。
 政治の混迷は「失われた20年」と深くからむ。永田町の権力闘争と理念なき野合、20年で14人という「首相の生産性の高さ」は日本の国際的な信認を失墜させた。
 リーマン・ショックを経てグローバル経済の歴史的転換が本格化している。米欧からアジアへのパワーシフトは鮮明だ。サマーズ米国家経済会議委員長はこの大転換を「冷戦終結が小さくみえるほど歴史的だ」と考える。日本は改革でアジアの時代に好機を見いだすか。それとも内向きに傾斜して「緩慢なる衰退」から大停滞への道をたどるか。重大な選択を迫られている。



“リアル”との連携を強化、ハンゲームが新たに提案する「リアゲー」とは?
 「NAVER」「Livedoor」などのネットサービスを運営するNHN Japanは7月26日、同社のゲームポータルサイト「ハンゲーム」の新戦略を発表した。その中で同社は、新しいゲームの形となる「リアゲー」というスタイルを提案している。リアゲーとは一体どのようなもので、ゲームの形をどのように変えていこうとしているのだろうか?
現在地や天気、時間などをゲームに反映
 最近、ポータルサイトの「Livedoor」を買収したことで話題となったNHN Japan。だが、同社の事業の中心は、実はゲームポータルサイト「ハンゲーム」の運営である。ハンゲームは特にPCで高い人気を誇るサービスで、日本に上陸してから今年で10周年を迎える。
 そこで今回、報道関係者向けに「Hangame ex 2010」というイベントを開催、ハンゲームに関する同社の今後の戦略が説明された。その中で、社長である森川亮氏が最初に取り上げたのが「リアゲー」である。
 現在、TwitterやUstreamに代表されるリアルタイム性を重視したネットサービスが人気を博してきており、同社もこのリアルタイム性を重視する方針を打ち出している。だが森川氏は、ハンゲームにおいて「PCではチャットなどでリアルタイム性を提供してきたが、携帯電話向けに関しては悩んできた」と話し、その回答として示したたのが“リアゲー”になるという。
 リアゲーとは、文字通り“リアルタイムゲーム”の略で、ゲームに“今”を反映させているのが大きな特徴だ。つまり、GPSによる位置情報や現在の時刻、その場所の天気などによって、ゲームのイベントが変化したり、手に入るアイテムが変化したりするのだ。「コロプラ」「ケータイ国盗り合戦」など携帯電話の位置情報を利用したゲームはいくつか存在するが、リアゲーはこれをさらに進めた形になる。
 例えば、ハンゲーム内で提供されている「不思議な生き物 ねんどん」の場合、リアゲーに対応することで、遊んでいる場所で雨が降っていると、キャラクターが成長するという仕組みが取り入れられている。またPC側とケータイ側が勇者軍、魔王軍にそれぞれ分かれて戦う、9月リリース予定のRPG「トライフルストーリー」においては、昼間は勇者軍が、夜は魔王軍が有利になるなど時間によって優劣が変化するほか、場所によってその地域限定のモンスターが現れるなどの仕組みを用意するという。
ゲームで割引クーポンを入手、リアル店舗とも連携
 リアゲーによるリアルタイム性をさらに生かす要素として、もう1つ新たに提供されるのが「イマコレ」だ。イマコレとは、利用する場所や時間、 天気に応じてゲームのミッションが指示され、それをクリアするとカードが手に入るというもの。
 このカードには、アイテムやモンスター、美少女などゲームと連動したものが用意されており、コレクションとして楽しむことができる。だがカードには単に集めるだけでなく、別の仕組みも用意されている。
 実はカードには、裏側に提携する店舗で利用可能なクーポンが用意されている場合があり、これを利用することで商品の割引など特定のサービスを受けたりできるようになるのだ。例えば宅配ピザの「PIZZA-LA」とのタイアップにおいては、カードを集めることで割引クーポンを獲得できるキャンペーンなどが提供されるという。
 携帯電話でメールマガジン会員に登録すると割引クーポンが手に入るというサービスは、現在多くの飲食店で実施されている。だがイマコレでは、それにゲームによる楽しさを結びつけることで、ゲームをリアル店舗のプロモーションや販売促進に広く活用しようとしているのだ。ゲーム内だけにとどまらないリアル社会との結び付きの強化がイマコレの大きなポイントになっているといえる。
スマートフォン対応やプラットフォームのオープン化も
 ハンゲームの新しい戦略は、リアゲー以外にもいくつか挙げられている。1つはスマートフォンへの展開だ。発表会同日の27日、XperiaなどのAndroid端末に向けたハンゲームがサービスを開始。いくつかのカジュアルゲームや、「イマコレ」などのサービスが利用できるようになっている。またiPhone版についても、審査の関係でやや時間がかかるものの、近日中に提供するとしている。
 そしてもう1つは、ハンゲームのプラットフォームのオープン化だ。アプリケーションプラットフォームのオープン化は、mixiやモバゲータウン、グリーなどのSNSが先行しており、その上で多数の“ソーシャルゲーム”と呼ばれるゲームが流通、100万単位の会員を集めるゲームが多く誕生するなど高い人気を博している。オンラインゲーム&コミュニティサービスの元祖ともいうべきハンゲームもこの流れにのり、プラットフォームのオープン化を進めてきたようだ。
 オープンプラットフォームとしては後発となるものの、ハンゲームのメリットして、PC・携帯電話・スマートフォンを1つのIDで利用できるという点、ハンゲームだけでなくLivedoorでもサービスを提供することによる集客力の高さ、そして開発者に向けた環境が整っていることを挙げている。
 リアル社会と密接に連動したゲームが、プラットフォームのオープン化によって、さまざまなデバイスに向けて多数提供されること。この流れは、従来のゲームのあり方や楽しみ方を大きく変えていくというだけでなく、実際の店舗や商品を持つ企業のプロモーション手段として活用されるなど、ゲームの娯楽にとどまらない可能性も示している、ともいえそうだ。



上場企業の4~6月、経常益5倍 新興国需要の回復で
リーマン・ショック前の9割に
 上場企業の収益が急回復している。2010年4~6月期決算は全産業の経常利益が前年同期の5倍に増加。新興国需要とコスト削減を支えに自動車や電機など製造業の回復が鮮明となった。経常利益は08年のリーマン・ショック前の9割の水準で、最初の四半期を終えた時点での通期予想に対する進ちょく率は29%に達した。だが円高や先進国の景気動向など懸念材料は多く、下期業績については慎重に見る企業が目立つ。

 30日までに決算を発表した3月期決算企業(金融・新興3市場を除く)559社を対象に日本経済新聞社が集計した。社数で全体の36%、株式の時価総額で62%を占める。

 全産業の売上高は14%増えた。リーマン以降の世界不況に直面し、企業はコスト削減を推進。収益構造がスリム化したところに新興国需要の拡大などで売上高が増え、事業や財務活動で稼いだ利益を示す経常利益は3兆8300億円と1年前の5倍に膨らんだ。1~3月期と比べると46%増。リーマン前の08年4~6月期との比較では、売上高が86%、経常利益が93%の水準まで回復した。

 経常利益の改善額3兆700億円のうち60%を電機と自動車が占めた。パナソニックは税引き前損益が1300億円強改善。薄型テレビなどのデジタル家電や白物家電など「全部門で売り上げが好調に推移した」(上野山実常務)。中国向けの売上高は75%の増加となった。ソニーは薄型テレビやパソコンなど「新興国向けが40%伸びた」(加藤優・最高財務責任者=CFO)。
 自動車・部品も経常損益が7000億円近く改善し黒字になった。日産自動車は世界販売台数が3割増加。小型車「ティーダ」などの好調で中国で7割近く販売台数を増やした。コマツは中国で建設機械の売り上げが8割近く増えた。

 固定費削減や原価低減など前期までのリストラの効果も大きい。東芝は前期に人件費や研究開発費などコストを4300億円削減した。売上高は08年の水準を下回ったが営業利益は4~6月期として最高になった。

 非製造業では、資源高で商社の利益が2.3倍となり、海運はコンテナ船事業が好調で黒字転換した。ただ、小売りや不動産は国内の不振が響き減益になった。



新キンドルは日本語対応 電子書籍端末の競争激化へ
 米インターネット小売り大手アマゾン・コムが8月下旬に出荷を始める電子書籍端末キンドルの新型が、日本語に対応していることが分かった。同社が31日までに発表した。日本ではソニーやシャープも電子書籍端末の投入を予定。競争激化が予想され、日本語対応のキンドルがどこまで受け入れられるか注目される。
 アマゾンによると新型キンドルは韓国語、中国語にも対応する。無線LANと第3世代携帯電話(3G)の高速データ通信に対応したモデルは189ドル(約1万6千円)、無線LANのみに対応した最廉価版は139ドル。米アマゾンのサイトで予約を受け付けており、日本からも注文できる。



グンゼ、携帯向けタッチパネルフィルム参入
 グンゼは携帯電話や携帯ゲーム機向けのタッチパネル用フィルム事業に参入する。年内にも3.5インチ型の試作品を作り、受注活動を開始。2010~11年に量産を始める。同社は10インチ型など中大型のパネルが主力だったが、スマートフォン(高機能携帯電話)向けなどの需要が急拡大しているのに対応する。早期に5億円程度の売り上げを目指す。
 同社は台湾工場(台南県)で、タッチパネル用のITO(酸化インジウムすず)フィルムを生産しており、新たに携帯向けの量産体制を整える。韓国のサムスン電子やLG電子など、主に海外の端末メーカー向けの供給を想定している。
 これまでグンゼはフィルムの製造からタッチパネルの組み立てまで一貫生産をしてきた。ただ、海外の端末メーカーは自社のグループ内でタッチパネルの組み立てを始めるようになってきたことから、フィルムでの供給を拡大する。
 調査会社のシード・プランニング(東京・台東)によると、タッチパネルの世界市場は15年には09年比3.6倍の約1兆2600億円に急拡大する見通し。スマートフォンが需要増をけん引する。これまでパソコンや電子看板など中・大型向けに特化していたグンゼも事業戦略を見直し、成長市場の需要取り込みを図る。



子ども手当「上乗せ断念」 来年も1万3千円、追加財源確保は困難
 政府は31日、平成23年度予算編成の焦点である「子ども手当」の支給額について、現在の月額1万3千円からの上乗せを断念する方向で検討に入った。「今年度限りの暫定措置」と説明していた地方自治体や企業による財源負担も継続する。国の財政が厳しく、追加財源確保が困難と判断した。「23年度以降は月額2万6千円」としていた昨年夏の政権公約(マニフェスト)の度重なる方針転換には批判が必至で、今後の調整は難航が予想される。
 政府が支給額を月1万3千円にとどめる検討に入ったのは、今年度2兆2554億円もかかった支給総額が、一時的な子供の数の増加で、来年度は約2・7兆円に膨らむこともある。
 子ども手当を上積みするには、月額1千円アップするごとに約2千億円の財源が必要。厚生労働省の予算全体が大幅増の見込みの中、子ども手当の予算をさらに獲得することは極めて難しいと判断している。
 民主党の参院選マニフェストでは、子ども手当について「地域の実情に応じて、現物サービスにも代えられる」として待機児童の解消などに活用する考えを打ち出した。政府としてはこうした保育サービスを拡充させることで、国民の理解を求めたい考えだ。



台湾の通販サイト、日本語で買い物 楽天、国際展開へ布石
 楽天は主力のインターネット通販サービスで国際取引を本格的に始める。年内に台湾のネット通販サイトに出店する企業が日本向けに商品を販売できたり、台湾の消費者が日本の商品を容易に買えたりする仕組みをつくる。楽天は欧米とアジアの合計6カ国・地域への進出を決定済み。将来は世界各国の通販サイトであらゆる商品を互いに売買できる体制を目指す。

 台湾で展開する仮想商店街「楽天市場台湾」の出店企業が日本向けに商品を販売しやすくする。年末までに75店舗のサイトの日本語化や日本語での顧客サポートを支援する。果物やファッション関連商品など200点以上を日本向けに販売する。日本の消費者は「楽天市場」から「楽天市場台湾」内の日本語サイトに簡単に移動して商品を購入できる。日本で使うクレジットカードで決済できる。楽天市場台湾には約1400店が出店しており、対象を今後拡大する。

 9月までには、日本の「楽天市場」に出店する7800店・1600万以上の商品を、台湾の同社のサイトから検索機能を使って購入できるようにする。

 楽天は中国ネット大手の百度(バイドゥ)と組んで今秋に中国でネット通販サイトの運営も始める予定。日本、台湾、中国サイトの連携を進めて、各国間で売買できる体制を整える。ネット通販では、日本のヤフーが中国アリババグループの淘宝網(タオバオ)と組んで、中国―日本間の商品売買を始めている。



職員全員がツイッターで受発信 佐賀県武雄市、全国初
 佐賀県武雄市は9月1日から全職員425人にミニブログ「ツイッター」のアカウントを持たせ、イベントや福祉などの情報を発信したり、市民から行政への要望を受け付けたりする。同市によると、職員全員がツイッターのアカウントを持って業務にあたるのは全国初という。

 ツイッターは140字以内で文章を“つぶやく”ミニブログ。同市の樋渡啓祐市長が5月からツイッターを本格的に始め、難病の患者から行政サービスへの苦情を受け、迅速に対応。これをきっかけに全職員にツイッターのアカウントを登録させ、業務に有効活用させることにした。

 職員はイベントの込み具合の情報をリアルタイムで書き込んだり、大雨など災害時に現場の状況を迅速に発信し避難などに役立てたりしてもらう。市民から市の行政サービスへの要望もツイッターで受けられるようにする。

 市役所内でも市長が就業前にツイッターで職員への指示を出し、職員がツイッターで回答するケースなどを想定。樋渡市長は「字数が限られているので要点を簡潔に伝えてもらえる。ブログに比べて使いやすい」と利便性を説く。

 自治体が市町村単位でツイッターのアカウントを持ったり、首長がツイッターを活用したりしている例は少なくないが、職員全員がアカウントを持つのは初の試みだ。



日経社説
米景気の減速に日本は警戒を怠るな
 米経済の減速傾向がはっきりしてきた。個人消費が盛り上がりを欠き、望ましくない物価下落も心配されだした。日本にはとくに円高・ドル安という形で影響が及ぶだけに、警戒が怠れない。
 先週末発表された4~6月期の米実質成長率は前期比年率2.4%に鈍化した。気になるのは中身である。国内総生産(GDP)の7割を占める消費がさえない。企業が雇用拡大になお慎重なため、家計が先行き不安から財布のひもを緩めない。
 米政府が住宅取得減税を4月末に打ち切り、住宅市場が息切れしたことの影響もある。政策の下支えがなくなると、景気が失速する。その姿は、バブル崩壊後の日本を想起させる。設備投資の拡大は好材料だが、所得に比べて過大な借金を抱えた米家計の足取りが重いなか、持続的な成長の見取り図は描きにくい。
 いきおい、需要が供給を下回る需給ギャップの解消が遅れ気味だ。失業率は9%台半ばで高止まりし、食品・エネルギーを除いた消費者物価上昇率が1%を下回っている。米連邦準備理事会(FRB)内部ではデフレのリスクが警戒されだした。
 GDPの発表を受けた外国為替市場では一時、1ドル=85円台まで円高が進んだ。円高・ドル安を促す大きな要因が、米国側に2つある。
 ひとつは景気減速とデフレ懸念への政策対応。米国も財政赤字は深刻で一層の財政出動には限度がある。景気テコ入れは金融緩和に頼らざるを得ない。バーナンキFRB議長も、追加緩和の用意を見せている。米金利が低下すれば、その分だけ円高・ドル安が進みやすくなる。
 もうひとつは、米貿易収支の悪化だ。春先以降、米国の貿易赤字が再び増え出したのは、欧州の金融混乱でユーロ相場が大幅安となったためだ。外需拡大による景気回復を目指すオバマ政権には痛手だし、中間選挙を控えて米議会の保護主義圧力は高まろう。その辺の事情を織り込みドルは売られやすくなっている。
 日本の景気に対しても、米景気の先行きと為替相場の動向は重要な意味を持っている。輸出の落ち込みで日本の鉱工業生産が6月に前月比マイナスになるなど、外需主導の回復に黄信号がともりだした。
 今の水準から一層の円高になるようだと、経営者や投資家の心理を冷やす恐れがある。とりわけ米国が追加緩和に動くような際に、日本が手をこまぬいていれば円高リスクは高まる。政府・日銀は事態に目を凝らし、いざという際に機動的な行動に出る態勢を整えておくべきだ。
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