(つд⊂)ゴシゴシ新聞

ケータイ業界で注目の「拡張現実」 利用の現場を訪問(COLUMN)
 最近、ケータイ業界で注目を浴びているのが「AR(拡張現実)」という技術だ。携帯端末などのカメラで現実世界を撮影すると、そこにデータや映像を重ね合わせて表示する。すでに20年近く研究されてきた技術だが、アップルの「iPhone」をはじめGPS(全地球測位システム)や無線LAN、加速度センサーを内蔵したスマートフォンの普及で、商用サービス化が現実味を帯びてきた。
 頓智・(トンチドット、東京・新宿)というベンチャー企業がiPhoneやグーグルの携帯OS「Android」向けに開発したのが「セカイカメラ」というシステムだ。アップルの「App Store」でアプリがようやく公開されたばかりだが、すでに革製品の有名ブランド「ロエベ」の表参道直営店で開催中の「ロエベ アマソナ展」(10月12日まで)において、商用運用が始まっている。
■無線LAN基地局で位置を把握
 店内でiPhoneのセカイカメラを起動させると、カメラに写った現実世界に様々なアイコンが張り付いた状態が見える。アイコンをタッチすると、ロエベのブランド情報がテキストや画像で表示される。iPhone本体を右に向ければ表示される内容が変わり、店内を移動しても別の情報になる。今回は13個の情報を仮想空間に貼り付けているという。
 セカイカメラでは、位置情報からデータを呼び出し、場所に見合った情報を画面に貼り付ける仕組みを採用しており、カメラで被写体を認識するまではしていない。ロエベの店内ではGPS情報を取得できないため、店内に5つの無線LAN基地局を設置した(2階に4つ、1階に1つ)。クウジット(東京・港)の「PlaceEngine」という技術によって、無線LANの電波の強弱から店内のどこにいるかを把握し、そこに見合った情報を表示させている。
 今後、セカイカメラが画像認識にまで対応するようになれば、応用範囲はさらに広がるだろう。例えば、店内に陳列した製品ごとに情報タグをつけておけば、カメラがその製品を識別して製品の概要から値段、ほかの色までを個別に知ることができるようになる。街中でセカイカメラを起動させて、店ごとの仮想的な広告を見るといったことも可能になる。
 さらに、あるユーザーが渋谷の一角にあるレストランでセカイカメラに「ここは美味しい」と書き込み、ほかのユーザーが渋谷駅前でセカイカメラを起動させてその情報を発見するといった使い方も考えられる。ユーザー同士はカメラを通じて位置情報に連携した話題を共有でき、コミュニケーションの世界観が広がることになる。
■アウトレットモールの買い物案内にも
 ARの世界を先取りしたともいうべき情報提供サービスもすでに始まっている。仙台市にある「三井アウトレットパーク仙台港」では、iPhone向けに場所とひも付けた情報を提供する「近未来のショッピング体験イベント」を10月12日まで開催中だ。
 iPhoneが「コンシェルジュ」の役割を果たし、来店客の買い物案内をする。三井アウトレットパーク仙台港は開業1周年の誕生祭というイベントを開催しており、それに合わせるかたちで2つのiPhone用アプリを開発した。
 「i-MOP仙台港」という専用アプリでは、施設内にあるショップを検索したりオススメ情報を入手したりできる。iPhone本体を横にすると地図画面に変わり、自分がどこにいて、目的のショップがどこにあるかを確認することが可能だ。
 セカイカメラのように現実世界をカメラで写したりしないので、厳密なARではない。しかし、実際に使ってみたが位置情報の精度はかなり高く、コンシェルジュとしての機能を十分に果たしていた。ユーザーの行動履歴や場所に合わせてキャラクターが話しかけてくる仕掛けも施されている。
 もう1つの「遊んでにゃ!」というアプリは、三井アウトレットパーク仙台港にすんでいる仮想のネコキャラクター「おふにゃん」が施設に関するクイズなどを出題する。正解するとポイントが貯まってプレゼントがもらえるというゲーム感覚のサービスだ。
 店内の10カ所に「おふにゃん」が記されたポスターが貼られており、ユーザーはポスターを探し出してカメラで撮影する。すると、画面からおふにゃんが飛び出してきてクイズを出題する、という仕掛けになっている。実はポスターにQRコードのようなものが埋め込まれており、カメラとアプリでそれを読み取ってクイズを表示するようになっている。
■手作りで用意したコンシェルジュ機能
 三井アウトレットパーク仙台港では今年3月ころにこのプロジェクトをスタートさせたという。企画を担当した三井不動産東北支店の浜武浩事業グループ長は「ショッピングでインタラクティブな楽しみを提供したかった。とはいっても、我々は三井不動産というハイテクとは縁のない会社。とにかく手探りでやってきた。コンシェルジュ機能の組み立てもゼロから考え、キャラクターも私が自分で描いたりした手作りのサービス」と振り返る。
 現在は1カ月間の期間限定サービスとなっているが、このようなガイドサービスは他からの引き合いも多そうだ。
 アウトレットモールは、シーズンが過ぎた製品や型落ち品なども扱うことで値段を下げている。そのため、在庫状況によって値下げ幅はまちまちとなる。その掘り出し物を探すのがアウトレットの醍醐味でもあるが、一方で、それがわからず魅力を感じない人もいる。
 このようなアプリがあれば、来店客は苦労しなくてもセール品を探し出せるメリットがある。また、通常の店舗マップは印刷物なため掲載する情報が限られ、最新情報を反映できない。店舗マップをアプリによってデジタル化することで、リアルな情報を客に届けられるようにもなる。
■ソニーコンピュータサイエンス研究所が発案
 これら2つのアプリは、いずれもロエベでも採用されたクウジットの位置認識技術とAR技術「KART(Koozyt AR Technology)」を連携させ、施設内の店舗情報を得られるようにしている。
 ロエベでは5カ所だった無線LAN基地局は、アウトレットパーク仙台港では120にも上る。1階だけでなく2階にも置かれ、ユーザーの位置を立体的に測位できるようになっている。
 クウジットの位置認識やARの技術は、もともとソニーコンピュータサイエンス研究所でオリジナルコンセプトが発案されたものだった。同研究所でプロジェクトに携わっていたメンバーが独立し、クウジットを設立した。
 「(おふにゃんで使われている)マーカーソリューションはARとしては1990年代からあった技術。昔はパソコンを背負って歩かなければ使い物にならなかったが、iPhoneのようなデバイスが登場したことで、気軽に実現できるようになった」と、クウジットの末吉隆彦社長は説明する。
 街単位でARをサービス化させて事業にしていくのはまだ時間がかかりそうだが、ショッピングモールや観光名所のコンシェルジュサービスとしては可能性が十分にあり得そうだ。位置情報を測位して高速処理することを得意とするスマートフォンの登場で、また新たなビジネスチャンスが広がろうとしている。



G8の形骸化を政府が懸念 G20定例化で
 日米欧に中国、インドなどの新興国を加えた20カ国・地域(G20)首脳会議の定例化が決まったことで、政府は主要国(G8)首脳会議の形骸化を懸念している。
 鳩山由紀夫首相は米国で「政治指導者が20人、25人集まって結論を見いだすのは至難の業」とG8が世界経済の議論を主導し続けるべきだと強調した。
 G20主導には、国連安全保障理事会常任理事国メンバーでない日本やイタリアなどが反対。国際社会での発言力や存在感が弱まりかねないとの危機感がありそうだ。



外為市場、強まる円高圧力 週内「87円」巡る攻防も
 外国為替市場で円高圧力が強まっている。米金融緩和の長期化観測などの「ドル安要因」に加えて、藤井裕久財務相による円売り介入に否定的な発言などの「円高要因」が浮上したことが、投機筋の円買いをあおっている。20カ国・地域(G20)首脳会議で「世界経済の不均衡」是正が決まったことも、経常黒字国の通貨である円の上昇を後押しする可能性がある。
 25日に1ドル=89円台半ばまで上昇した円相場の次の節目が今年1月の年初来高値(87円10銭)。週内に87円台を巡る攻防が強まると予想する参加者も増えている。



企業業績下振れ、円高で懸念増大 自動車など90~95円想定
 円相場が1ドル=90円を突破したことで、株式市場などで企業業績の悪化懸念が強まる公算が大きい。輸出関連の代表である自動車や電機の想定為替レートは、1ドル=90~95円に集中している。円高は輸出採算の悪化を通じて、なお回復の足取りが鈍い企業業績の下振れ要因になりかねない。
 円高の影響が最も大きいのが自動車業界。対ドルで1円の円高が進めば、トヨタ自動車とホンダの年間営業損益をそれぞれ250億円、120億円押し下げる見通し。追加のコスト削減が迫られる可能性もある。



中小の返済猶予「反対なら私を更迭すればいい」 亀井金融相
 亀井静香金融・郵政担当相は27日のテレビ朝日番組で、中小零細企業を対象にした返済猶予(モラトリアム)制度を巡り民主党に異論が出ていることについて「(反対なら)鳩山由紀夫首相が私を更迭すればいい」と述べ、制度導入を認めない場合には閣僚を更迭するよう求めた。亀井氏は国民新党代表でもあり、首相の対応によっては連立与党の枠組み問題に発展する可能性が出てきた。
 金融相はモラトリアム制度に金利の支払い免除を含めることについて「もちろん視野にある」と語った。制度の詳細は29日から大塚耕平内閣府副大臣(金融担当)を中心に検討を開始する考えを示した。大塚氏は日銀出身で、制度導入に慎重との見方もあるが「反対なら副大臣にならない」と自信を示した。
 金融相は番組後、記者団に対し、銀行の貸し渋りに関して「ちゃんとした貸し出しをしているかも(金融庁の)検査対象。私が担当相である限りやらせない」と強調。首相がモラトリアム制度に反対して更迭に踏み切る可能性は「首相と価値観を共有している」と否定した。



三越、早期退職制度改定で労使合意 人件費削減急ぐ
 三越伊勢丹ホールディングス傘下の三越は26日、早期退職制度の改定について労使間で合意した。50歳以上の社員を中心に割増退職金を従来より手厚くする。対象を40歳未満の社員にも広げ、年内にも希望者からの申し込みを受け付ける。今年度中に正社員の2割弱に当たる1000人程度が退職する見通しだ。高コスト構造から脱するため、人件費の削減を急ぐ。
 正社員約6200人の3割弱を占める50歳以上の社員に対しては、退職金の割り増しに加え、一定年齢以上の社員には一時金を上乗せする。退職後に契約社員として再雇用するプランも新たに用意する。

ガ━(゜Д゜;)━ン新聞

電機大手、格安品を拡大 日米欧でソニーなど、台湾勢に生産委託
 ソニー、日本ビクターなど電機各社が5万円前後のノートパソコンや1万~2万円台のビデオカメラなど、格安デジタル家電を本格投入する。機能を限定した格安のデジタル家電は日米欧など先進国でも需要が拡大しており、ノートパソコンでは世界市場の2割を占める。この分野で台湾メーカーなどに先行された日本勢は、中国に生産拠点を持つ台湾のEMS(電子機器の受託製造サービス)などを活用して巻き返す。
 ソニーは「ネットブック」と呼ばれる5万円前後のノートパソコンの設計・生産を中国に拠点を持つEMSに委託する。パソコン担当の事業部にEMSの窓口を設置。担当者を中国に置いて連携を強化する。ネットブックをてこに今後数年でパソコンの世界販売を620万台(2009年度計画)から1000万台超に増やす方針だ。



夫婦別姓導入へ…政府、来年にも民法改正案
 政府は、夫婦が別々の姓を名乗ることを認める選択的夫婦別姓を導入する方針を固めた。
 早ければ来年の通常国会に、夫婦同姓を定めている民法の改正案を提出する方向で調整を進める。現行の夫婦同姓は1947年に民法に明記され、約60年ぶりの大幅改正となる。
 夫婦別姓の導入は、政権交代により、衆院選の政策集に「選択的夫婦別姓の早期実現」を明記した民主党を中心とした政権が誕生したことによるものだ。民主党は、1998年に民法改正案を共産、社民両党などと共同で国会に提出したが、自民党が「家族の一体感を損ない、家族崩壊につながる恐れがある」などと強く反対して廃案となった。その後も、毎年のように共同提出してきたが廃案となってきた。
 一方、法務省も、96年の法制審議会(法相の諮問機関)で選択的夫婦別姓の導入が答申されたことを受け、夫婦別姓を盛り込んだ民法改正案をまとめた経緯がある。強い反発を示してきた自民党が野党に転じ、与党と法務省の考えが一致し、政府提案による法改正が可能となった格好だ。



リニア、大阪まで延ばすと… 総工費7~8兆円 JR東海試算
 東海旅客鉄道(JR東海)は東京―名古屋間で2025年の開業を目指しているリニア中央新幹線について、大阪まで延伸した場合の全体の工事費が7兆~8兆円になるとの試算をまとめた。東京―名古屋間より最大5割以上増える計算。JR東海は近く輸送需要見通しと合わせて公表する。
 リニアは東京―名古屋間を最短約40分で結ぶことを想定。東京―大阪間の所要時間は同約70分となり、現行の新幹線(最速2時間25分)の半分以下に短縮され、乗客の利便性は大幅に高まる。



報酬規制、米欧に難題 金融機関の活力・規律をどう両立
 【ピッツバーグ=梶原誠】金融機関の報酬規制が動き出す。25日、金融安定化理事会(FSB)が打ち出した報酬基準に20カ国・地域(G20)首脳会議(ピッツバーグ・サミット)が支持を表明した。金融機関の暴走を防ぐ狙いだが、規制の行き過ぎは活力をそぐ。金融機関は規律と活力の両立という課題に直面する。
 基準に目立つのは「例えば」という表現だ。「変動報酬のかなりの部分、例えば40~60%は、数年間の延べ払いができるようにすべきだ」。数値を例示し、小手先の変化で終えることがないようくぎを刺している。



フェリー各社、トラック向け運賃3~10%上げ 燃料高を転嫁
 商船三井フェリーなど中長距離の航路を持つフェリー各社が10月から相次いでトラックなど貨物用車両向け運賃を上げる。上げ幅は3~10%。燃料に使う重油価格の上昇を転嫁する。景気低迷に加え、高速道路料金の割引という政策のあおりで需要が減るなか、今回の値上げで一層の競争力低下に追い込まれそうだ。
 値上げするのは商船三井フェリー(主な航路は茨城県大洗―苫小牧)、新日本海フェリー(舞鶴―小樽など)、阪九フェリー(神戸・大阪―新門司港)、川崎近海汽船(八戸―苫小牧)など6社。トラックの運賃(車両の長さ12メートル未満、片道)は宮崎カーフェリーの大阪―宮崎間が4000円高い8万2400円。名門大洋フェリーの大阪南港―新門司港が6万2600円と2000円上がる。



台湾カジノ計画、住民投票で否決
 【台北=新居耕治】台湾西部の離島、澎湖島で26日、カジノ建設の是非を問う住民投票が実施され、反対票が賛成票を上回り否決された。カジノ建設は馬英九政権が打ち出していた離島振興策で、中国人観光客の呼び込みを狙っていたが、地元住民に拒否された形になった。



首相、訪米を終え帰国 内政課題は山積、まず「日航」「ダム」
 鳩山由紀夫首相は26日夜、外交デビューとなった国連総会や20カ国・地域(G20)首脳会議など一連の訪米日程を終え政府専用機で帰国した。オバマ米大統領と個人的な信頼関係を築けたとし、温暖化ガス削減の中期目標や核軍縮への取り組みをアピールするなど外交の滑り出しは上々だったが、首相を待ち受ける内政課題は難問山積だ。
 帰国後すぐに直面するのは日本航空の経営再建問題だ。「徹底的に新政権の目で見る必要がある」。訪米中、首相は経営再建問題を政権主導で進める考えを強調した。
 公的支援の可能性にも言及した首相は27日にも前原誠司国土交通相と再建策を協議する。建設中止を明言した群馬県の八ツ場ダム、熊本県の川辺川ダムを巡る自治体や地元住民との調整も迅速な対応が求められる。



イチロー、プロ18年初の退場…球審を侮辱
 【トロント=霜田聖】米大リーグ、マリナーズのイチローは26日のブルージェイズ戦の五回に見逃し三振を喫した際、球審に対して侮辱行為をしたとして退場処分となった。
 イチローが退場処分を受けるのは、日米を通じてプロ18年目で初めて。
 1番・右翼で出場したイチローは五回の第3打席、一死三塁の場面でカウント2―0から外角球を見逃し、三振と判定された。これに対して無言でベースから外れた場所をバットで指して、「投球はここを通った」というしぐさを見せたところ、退場を宣告された。
 この日は第1打席は二ゴロ、第2打席も左飛で、3打数無安打だった。マリナーズは延長十回の末、4―5でサヨナラ負けした。



日経社説 「均衡ある成長」へG20の試練が始まる(9/27)
 米ピッツバーグでの20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は、成長と雇用の着実な回復まで景気刺激策を続ける方針を確認した。危機後をにらみ、米国の消費に依存した世界経済を「均衡ある成長」へ変える協調の枠組みづくりも合意した。
 リーマン・ショックで恐慌寸前に落ち込んだ世界経済は、大規模な財政出動や金融緩和の協調で息を吹き返しつつある。凍り付いた資本市場や金融システムも安定してきた。だが日米欧で失業率が上昇を続け、自律的な成長もほど遠い。首脳声明が「刺激策の早すぎる撤回を避ける」と確認したのは適切だ。
 G20では危機後の世界経済を巡り歴史的ともいえる合意があった。
 まずG20を国際経済協力を話し合う「第一の定例協議」に位置づけた。経済外交の舞台は日米欧など主要8カ国(G8)から中国やインドなど新興国を加えたG20へ交代する。国際通貨基金(IMF)での発言権につながる出資比率も改め、過小評価だった新興国の比率を最低5%拡大する。世界経済での新興国の比重が高まった以上、必然的な流れだ。
 危機再発を防ぐ金融規制強化でも合意した。銀行に自己資本を質、量両面で厚く積ませる新たなルールを2012年末を目標に段階的に実施する。金融機関の報酬に一定の規制をかけ、経営者やディーラーが過度のリスクを負わないようにする。金融の創意や貸し出しを阻害してはいけないが、適度な歯止めは必要だ。
 世界経済が力強く、持続的にバランス良く成長するため、政策協調の枠組みを設ける点も新しい。米国などの経常赤字国が輸出増強や貯蓄率の向上に努め、日中などの黒字国は内需主導の成長を強める。G20で相互監視する体制も整える。
 金融危機の背景には世界経済の不均衡があった。金融や不動産のバブルで米国の家計が過剰消費に走り、日中は対米輸出を成長の糧にした。金融不安で歯車が逆回転を始めると世界規模で不況が広がった。
 危機の根を断つ考え方は妥当だが実効を上げるのは難しい。過去にも主要7カ国が不均衡是正に向け合意したが、改善はなかなか進まなかった。例えば日中が円高や人民元高の圧力にどう対応するのか。どの分野で米国が輸出を増やせるのか。G20が直面する新たな試練だ。
 就任間もない鳩山由紀夫首相は、子ども手当創設などで内需拡大に努めると表明した。国際的な要請に応えるには規制緩和など経済構造の改革に踏み込み、日本の成長力を一段と高める努力が欠かせない。



日本航空再建 特別チームで荒療治は可能か (9月27日付・読売社説)
 日本航空の自助努力に任せていては、とても再建できないと判断したということだろう。
 前原国土交通相が、深刻な経営不振にあえぐ日航の立て直しを委ねる、直属の特別チームを発足させた。
 日航が自ら策定中だった再建計画に代わって、より抜本的な案を作り、実行を指揮してもらうのが目的である。
 「親方日の丸」体質から日航を脱却させる荒療治といえる。これが再生の最後の機会ととらえ、日航は再生案作りとその実現に協力しなければならない。
 特別チームは「JAL再生タスクフォース」と名付けられた。高木新二郎弁護士や経営コンサルタントの冨山和彦氏ら、5人のメンバーで構成されている。うち4人は「産業再生機構」の首脳・幹部経験者だ。
 再生機構は2003年に設立され、バブル崩壊でつまずいたダイエーやカネボウなどを立て直し、産業界と銀行を苦しめていた不良債権問題の解決に貢献した。
 今回の特別チームは、この再生機構の一時的“復活”とも言えよう。難航する日航再建を、経験豊富な企業再生のプロに任せる、というわけである。
 特別チームは、まず日航の資産を精査して10月末までに新たな再建計画の骨子を作り、11月末までに最終案をまとめる予定だ。
 日航が、再建を外部の専門家に頼らざるを得なくなった一因は、経営陣の力量不足にある。
 日航は自前の再建計画に、従業員の賃金カットや6800人の削減、国内外50路線の廃止などを盛り込む予定で、OBに支払う企業年金の削減も考えていた。
 デルタ航空、アメリカン航空といった海外の航空大手との資本・業務提携交渉も進めていた。
 だが、いずれのリストラ内容についても、国交相は「具体性、実現可能性についてはまだまだ不十分」と述べている。
 路線を廃止される自治体や日航の労働組合は強く反発しており、実現は容易でない状況だ。
 年金のカットには日航OBが大反対している。外資との提携交渉は、国交省との思惑の違いもあって難航が予想される。
 こうした状況を考えれば、国交相が再建を進める体制を一新したのも当然だろう。
 ただし、特別チームによる新たな計画がまとまっても、それを着実に実行するのは現場の責任だ。日航経営陣は再建に向け、これまで以上に汗をかく必要がある。

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